鵬翼 / ムック | 安眠妨害水族館

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鵬翼 通常盤 ボーナスCD付/ムック
¥3,150
Amazon.co.jp

1. 輝く世界

2. サル

3. 赤線

4. 最終列車

5. 1R

6. 昔子供だった人達へ

7. 鳶

8. 雨のオーケストラ

9. こもれび

10. 蜘蛛

11. モンスター

12. 優しい記憶

13. ココロノナイマチ

14. つばさ


ボーナスCD

1. 遮断

2. 最終列車 ~70’S ver.~


久々にムックを、とのコメントをいただきましたので、5thフルアルバムの「鵬翼」を紹介します。

このバンドについては、アルバムを出す度に音楽的なジャンルを飛び越えてくるため、どの作品が一番好きかと聞かれると、非常に困る。

どれも比較対象にしにくいほど、個性的なのです。


その中で、個人的には、メジャー進出後のアルバムで一番リピートしたのではないかというのが、このCD。

初回限定盤にはライブ映像等を収録したDVD、通常初回盤には2曲入りのボーナスCDが付属される仕様になっています。


本作は、メジャーとしては3枚目のアルバム。

1st、2ndと、ラウド色の強い重苦しいヘヴィロックの傾向があったのですが、少し、原点回帰を試みたといったところでしょうか。

硬派で重低音を効かせた楽曲たちとは一転して、重厚さよりも、繊細さを意識したノスタルジックさに溢れている。

初期にあった「痛さ」の表現は薄まったものの、哀愁が漂うメロディには、これぞムックという意気込みが感じられます。


1曲目の「輝く世界」は、意表を突いたじっとりとまとわりつくようなミディアムナンバーなのですが、その後の展開には清々しさすら感じられる。

勢いのある「サル」、「赤線」と畳み掛け、シングル曲である「最終列車」へ繋げる流れが気持ちいいのです。

レトロで、疾走感があり、ちょっぴり切ない。

ここまでの構成で、すっかりとムック色に染められてしまいます。


そして、この流れで聴く、「1R」の哀愁感といったら・・・

フォークソングをベースとしたような、しっとりした歌モノは、昭和のワンシーンが脳内でありありと形作られていくほど、感情に訴えかける何かがある。

続く「昔子供だった人達へ」も、同じく哀愁を武器にしつつ、パンキッシュにアレンジして、淡い記憶の甘酸っぱさを上手に表現しているなぁ。


中盤以降も、手を変え品を変え、中だるみしないように、曲のバランスを整えている。

本編14曲というボリューミーな構成ですが、ちっとも飽きません。

「雨のオーケストラ」は、美しいメロディに、もの悲しさが際立つ。

よどみなく押し流されるような歌詞は、まるで言葉の通り雨。

タイトル通り、オーケストラ風のアレンジも相まって、壮大に仕上がっています。

へヴィなムックも恋しいと思うタイミングで、「モンスター」のような楽曲が待っているのも、心を見透かされているよう。


シングル曲の立ち位置が絶妙ですね。

キラーチューン「最終列車」、「雨のオーケストラ」を、序盤、中盤の重要な位置に挿入して、構成に起伏を作っている。

トリ前を飾る「ココロノナイマチ」も、インパクトとしては、上記2曲に負けてしまうかもしれませんが、何度も聴いたはずなのに、ここで聴くことで改めて発見できる良さもあり、当然ながら、侮れません。

ラストの「つばさ」が、ベタなバラードなのですが、全員でコーラスするようなあたたかさも、これはこれでアリじゃないか。


ボーナスCDについては、初期を思わせる激しさが魅力の「遮断」と、「最終列車」のフォークソングバージョンの2曲を収録。

これまた、4畳半ロックを自称していたころのムックを思い出せるようで、どちらも格好良いのです。


ハズレ曲がないのもさることながら、演奏も安定していますね。

今更触れる必要もないのだけれど、ギターがハイセンスなのは周知の事実として、リズム隊の成長がもの凄い。

重厚さで音が紛れてしまうことが減った分、フレーズのきめ細やかさがよくわかる。

ボーカルのファルセットが、今と比べてしまうと弱く、ピッチの甘さも露呈していまっていることだけが残念です。

荒々しい歌い方が得意のボーカリストから、オールマイティーな歌い手への進化の過程という時期。

歌唱力については、現在のほうが格段に上手くなっていますね。


賛否両論がある作品ではありますが、間違いなくクオリティは高い。

シーンに大きなインパクトを残した「アンティーク」は別として、圧倒的多数派が存在しないムックの作品群。

「カルマ」が好きな人もいれば、「痛絶」が好きな人もいる。

それが、ムックのアーティストとしての懐の広さでもあり、強みなわけで、評判なんてナンセンス。

まぁ、そういう前提の中で、あえて一枚をおススメするとしたら、僕は本作を選びますね。

初期からのファンにも、新規のファンにも、胸を張っておススメできる作品。


<過去のムックに関するレビュー>

COVER PARADE

アンティーク