T.R.E.N.D.Y. -Paradise from 1997- / MUCC | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

T.R.E.N.D.Y. -Paradise from 1997-/ムック

¥2,300
Amazon.co.jp

1. 睡蓮
2. D・f・D (Dreamer from Darkness)
3. B.L.U.E ~Tell me KAFKA~
4. HATEЯ
5. レインボー
6. Rendez-Vous
7. TONIGHT

2015年第一弾となるMUCCの新作。
久しぶりに、ミニアルバムでのリリースとなりました。

狙ったのは、"90年代のダサかっこよさ"。
もともとレトロな楽曲は得意だったし、原点回帰でもするのかな、と思ったりもしたのですが、よくよく考えてみれば、初期の彼らの音楽性は、70's、80'sを意識したフォーキーな鬱ロック。
これまで、通ってきていそうで、通っていない、絶妙なラインをコンセプトに定めてきたといったところです。

初っ端の「睡蓮」から、7分を超える大作。
トランス調だったり、へヴィネスを重視していたり、壮大さもあって・・・
ドラマティックに変化する展開とダウナーな歌詞により、彼ららしさを存分に堪能できる楽曲なのですが、これを聴くことで、この作品で何をしようとしているのかも明らかになってきますね。
確かに、メロディやノリ、フレーズといったところは90年代風なのだが、サウンドは現代とクロスオーバー。
過去に遡るアプローチを、懐かしさではなく、新鮮さを出そうとするベクトルに用いているのである。

「D・f・D (Dreamer from Darkness)」も、メロディは哀愁たっぷりなのだが、リフがメタリックで、新世代のミクスチャーといった出で立ち。
続く「B.L.U.E ~Tell me KAFKA~」も、ノスタルジックな切なさが前に出てきたと思ったら、やはりヘヴィーで重苦しいシャウトパートが待っていたりと、素直に懐メロ感を味わせてはくれません。
激しさのある「HATEЯ」もしかりで、重さに特化していると見せかけ、急にブラック風のノリが出てくる。
次々と面白い切り口が登場して、改めて、メインコンポーザーであるGt.ミヤさんの引き出しの多さに圧倒されてしまいますな。

ちょっと展開がコロコロ変わる楽曲ばかりで疲れたな、落ち着いて歌モノを聴きたいな、というタイミングで「レインボー」を持ってくる構成もあざとい。
本来の90'sのサウンドに寄せていて、がむしゃらに詰め込むのではなく、ときに引いてみる試み。
切ないアルペジオがじんわりと響きます。
「Rendez-Vous」は、歌詞における単語の使い方が、彼らなりの90年代の表現なのだろう。
こちらは、メロディは最近のMUCCなのだが、サイケでバブリーなアレンジに"トレンディ"な空気を感じました。

ラストは、また極端に振れてきたな、という「TONIGHT」。
ヘビメタシャウトからスタートする典型的なジャパメタサウンド。
"ダサかっこいい"とはこのことで、この吹っ切れ方は気持ち良い。
開けたサビでベタに盛り上がり、最後はポップに抜けていくのですが、この辺りの音の流れ方、フックでタイトルの歌詞を連呼する手法、クラシカルなギターソロ・・・
実にたくさん小ネタを盛り込んできたなという力の入りっぷりで、インパクトは絶大です。

毎回手を変え品を変え、ロックンロールを追及していくMUCCですが、そういう意味では、今回も相変わらずのMUCC節と言える。
コンセプト作品ということで、凝縮された7曲ではありますが、トータルで40分ほどのボリュームになっており、食い足りなさはありません。

90年代の情緒を現代のサウンドで強引に蘇らせた1枚。
「T.R.E.N.D.Y. -Paradise from 1997-」というタイトルに嘘偽りなし。

<過去のMUCC(ムック)に関するレビュー>
THE END OF THE WORLD
シャングリラ
カルマ
COVER PARADE
鵬翼
朽木の灯
葬ラ謳
痛絶
アンティーク