THE END OF THE WORLD / MUCC | 安眠妨害水族館

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THE END OF THE WORLD / MUCC

THE END OF THE WORLD THE END OF THE WORLD
2,850円
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1. THE END OF THE WORLD
2. ENDER ENDER -Album Edit-
3. Ms. Fear
4. HALO
5. Tell me
6. 999-21st Century World-
7. 369-ミロク-
8. JAPANESE
9. Hallelujah
10. World's End-In its true light-
11. 死んでほしい人

MUCCの1年7ヶ月ぶりとなるフルアルバム。
先行シングル3枚を含む11曲が収録されています。

通産で12枚目のオリジナルアルバムとなる本作。
音楽性としてはフリーダムであったが、どれも"ムックっぽさ"を醸し出していた前作「シャングリラ」を"保守的だった"と振り返って作成されただけあって、自由度は、更に高まった印象です。
デジタルサウンドもあれば、生音も強め。
今風の楽曲があると思えば、昭和的で時代錯誤なナンバーも。
相変わらず、チャレンジ精神は旺盛なようですね。

レトロなブルース調の「THE END OF THE WORLD」でスタート。
原点回帰な歌謡曲路線で進むのかと思ったのも束の間、ダンサブルなシングル「ENDER ENDER」で一気に盛り上げる。
ヘヴィーながら、サビでは歌謡曲のようなキャッチーさを見せるのは、「Ms. Fear」。
前作に入っていた「Mr. Liar」と関連性があるのだろうか。

再び送り込まれる「
HALO」は切ないギターロックと、この段階で前作にも負けず劣らずのカオスっぷり。
ギターソロ前に「ギター!」と合いの手を入れるなど、そのうえで、遊び心が豊富です。
ライブでのアイディアを、CDにもパッケージしてみた、といった楽曲が多いような気がするな。

歌モノ「Tell me」でメリハリをつけると、ノリの良い「999-21st Century World-」、初期を思わせるレトロな「369-ミロク」、その流れから歌謡テイストを残したバラードである「JAPANESE」と、よくもまぁ、ネタが尽きないものだと感心するくらいにタイプの違う楽曲を次々と。
コーラス隊との掛け合いが気持ち良い疾走ロックである「Hallelujah」、本作中もっともポップなパンクチューン、「World's End-In its true light-」の繋ぎは、ラストスパートを意識したのかしら。
何気に、この2曲をスタートに持ってきてもハマるな、と思ったり。

ラストは、「死んでほしい人」は、タイトル的には、「大嫌い」みたいなズタズタナンバーをイメージしたのだけれど、大いなるブラフ。
タイトルのどギツさとは裏腹、とてもピースフルでメッセージ性の強いバラードとなっています。
バンド側は、賛否両論のあるアルバムを作りたかったとのことだけれど、この曲には、確かにそういう要素はありますかね。
こういう歌詞を求めていなかったというファンは当然いるでしょうし、一方で、だからこそ救われるファンもいるのだろう。

言ってしまえば、ごちゃごちゃしている。
"最低限のムックらしさの線引き"を、自ら放棄してしまうくらいのアグレッシブさを、どう捉えるかといったところ。
何でもやってみるスタンスが裏目に出ている部分もあって、確かに保守的ではないのだが、アルバムの軸が見えにくくなっているのも事実でしょう。

ただし、そこにコンセプトをもたらしているのが、テーマとなっている「終わり」。
表題曲である「THE END OF THE WORLD」に加え、シングル曲として本作のコアにもなっている「ENDER ENDER」、「World's End」と、実に3曲もの中心的な楽曲に"END"というワーディングを持ってきたことからも、彼らの叫びが、どこに向けられているのかが明確です。
混沌の中で、麻痺してしまった痛みの感覚。
それに対して、終わりを"次のはじまり"と捉え、命を燃やして生きていこうとするメッセージ。

本作のテーマを知れば知るほど、この無秩序なアルバムにも意味が通ってくるから面白い。
音楽的なテクニックは十分に持っているバンドではありますので、多種多様なサウンドに触れたい人にはもちろんですが、歌詞や制作過程から、背景を深読みして楽しみたいリスナーにはもってこいの作品。
このバンドに、守りに入るという言葉は必要ないなぁ。

<過去のMUCC(ムック)に関するレビュー>
シャングリラ
カルマ
COVER PARADE
鵬翼
痛絶
アンティーク