痛絶 / ムック | 安眠妨害水族館

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痛絶/ムック
 

1.───。
2.イタイ手紙
3.娼婦
4.鎮痛剤
5.廃
6.砂の城
7.夜
8.背徳の人
9.盲目であるが故の疎外感
10.断絶
69.
84.狂人
96.

2001年にリリースされた、ムックの1stフルアルバム。
3rdプレスまで販売されますが、すべてにおいて、ジャケットやら、曲順やら、アレンジやら、何かしらが違っているという、捻くれものの彼ららしい仕様。

僕が持っているのは、初回盤。
ブランクも含め、96トラックで、合計69分になるように収録されているこだわりようです。
"ムック"の語呂合わせで、69曲目、96曲目に何かしらの音が収録されていますが、メインの隠しトラックである「狂人」は、84曲目となっているので、ご用心を。
なお、3rdプレスである通常盤には、この「狂人」と、シングル「娼婦/廃」のシークレットトラックであった「僕の・・・」を合体させた、「狂った果実(笑)」がボーナストラックとなっています。

さて、肝心の内容ですが、これが物凄いインパクト。
不規則的に並ぶ言葉やサウンドがずっしりと心に響く感覚は、まるで、鈍器で殴られたような鈍い痛み。
従来のダークバンドが、ナイフで切り裂くような鋭さを追求していたのに対して、このアプローチは斬新でした。
彼らなりの初期衝動が詰まっており、所謂、密室系だった頃の音楽性が堪能できるといったところ。

フォークをベースにしたような昭和歌謡ナンバーから、ヘヴィーな楽曲、ハードチューン。
あらゆる角度から、ネガティブな心情を吐き出し続け、ガリガリと精神を削っていくようなスタイルは、近時のムックから入った人には抵抗があるのかもしれない。
ひたすら暗く、落ち込んだときに聴いたら、そのまま再起不能に陥ってしまいかねないレベルです。

しかしながら、これこそがムックであると考えている人も、未だに多いはず。
干支が1周して、その間に音楽性が次々に展開されていったにも関わらず、この時期のムックを求める人が一向に減らないことが、本作がシーンに与えた衝撃を物語っているでしょう。

もちろん、洗脳されるように頭がクラクラしてくる「イタイ手紙」、哀愁メロとハードな演奏がマッチした「娼婦」、静と動をはっきりと使い分けてドラマティックに演出した「夜」、とにかく彼らの持つ"痛み"の要素を言葉に乗せて吐き出す激情の塊、「盲目であるが故の疎外感」などなど、個々の楽曲も粒ぞろい。
この曲は蛇足だなぁ、というナンバーが見当たりません。

ベストアルバムも出ている中、これをムックの入門書とするには、少しドギツさがあるか。
それでも、これを聴かずに夢烏は名乗れない。
特に初回盤にこだわらなければ、収録曲も多く、音質的にももっとも向上されているだろう通常盤があれば良いのかな。
このレビューを書いていて、聴き比べたくなってきてしまったので、今更ながら、通常盤も入手しようかしら。

<過去のムックに関するレビュー>
シャングリラ
カルマ
COVER PARADE
鵬翼
アンティーク