死期折々 / マイナス人生オーケストラ | 安眠妨害水族館

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死期折々/マイナス人生オーケストラ

死期折々 死期折々
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1. 人に成って

2. 真っ赤な本当

3. 桃太郎

4. 桜ヶ丘革命

5. メイデイ×メイデイ

6. 少女、時々 雨。

7. ひかりごけ

8. 8月32日

9. 老女椿

10. SHOUJO+ISSUE

11. 舌打ちのオーケストラ

12. 聖夜、蛍の光。

 

3月にフルアルバム、6月にミニアルバムを出したばかりだというのに、またもフルアルバムをリリース。

"十執念"のマイナス人生オーケストラの勢いが止まりません。

 

本作は、"四季"と"死期"をテーマにしたコンセプト作品。

1曲目から12曲目まで、それぞれが1月から12月までの季節とリンクしていて、いずれも"死"にまつわる歌になっているという、駄洒落をシリアスなテーマに変えてしまう、なんとも彼ららしいアイディアのもとで制作されています。

 

再録曲もいくつかあるとはいえ、制作期間の短さはどうしても気になってしまうところでしょう。

しかしながら、「人に成って」、「真っ赤な本当」という序盤の2曲を時点で、そんな心配は吹っ飛んでしまう。

ハードな演奏とピコピコサウンドを融合させて、マイナーコードで疾走するお得意のスタイルの延長線上ではあるのだけれど、音の厚みを重視してタイトに仕上げたり、激情的な演出を加えて、マンネリとは決して言わせない彼らのプライドが伺える進化型に。

納得感を与えたうえで、アルバムとしてもスタートダッシュを遂げていきます。

 

「桃太郎」は、タイトルでは想像できないジャジーなナンバー。

歌詞を読み進めていくことで、叙述トリック的に主人公が母親から愛されなかった理由が明らかになるのだけれど、"桃=女の子の象徴"、"太郎=男の子の象徴"で、性同一性障害ということでしょうかね。

この楽曲に限らず、時期柄にまつわる物語が存在するため、ストーリーテラーとしてのVo.栗山"H∧L"ヰヱスさんの才能がいかんなく発揮されているのも、本作の特徴。

例えば、「ひかりごけ」では猟奇殺人の加害者の視点、「8月32日」は誘拐作人の被害者の視点で描かれているのだけれど、どちらも妙に感情移入したくなるリアリティがあって、明らかにフィクションであるにも関わらず胸を締め付けられる。

ラストの「聖夜、蛍の光。」の叙事的な描写は、その極みとも言えるのではないかと。

 

「桜ヶ丘革命」、「少女、時々 雨。」、「SHOUJO+ISSUE」は、過去の音源からの再録。

いずれもオリジナルは手に入りにくいので、テーマにも沿っているということであれば、現体制で復活させてくれるのは素直に嬉しい。

世界観に没入するステージングにシフトしつつあるH∧Lさんに倣って、おふざけ要素を薄めているのも、個人的にはプラスに作用していると考えています。

コンセプトありきなので、曲順を調整できない制約はあるが、攻撃的な激しさを持った「老女椿」、ラストに向かうネガティブなポップチューン「舌打ちのオーケストラ」、クワイアが聖夜の演出をしてクライマックス感を煽る「聖夜、蛍の光。」と、要所要所で気の利いた楽曲が送り込まれており、案外、バランスはとられていました。

 

ちなみに、「メイデイ×メイデイ」の掛け合い部分は、Plastic Treeの「May Day」からのオマージュということでよいのかな。

わかる人にはわかる遊び心で、従来にはあまり見られなかったアプローチ。

思わずニヤリとしてしまったリスナーも多かったのでは。

さすがに、サウンド面でのチャレンジは少なめではあったけれど、個々の楽曲の良さで勝負できる内容に仕上がった。

久しぶりに、歌詞カードをじっくり読みたくなる作品に出合った気分です。

 

<過去のマイナス人生オーケストラに関するレビュー>

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