心外 / マイナス人生オーケストラ | 安眠妨害水族館

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心外/マイナス人生オーケストラ

心外 心外
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1. 日本劣等!謝罪回収の旅! ~断罪!平成の20面相現る!~
2. 復讐甲子園
3. 天使キラーEL
4. 愛と平和の死者

寺子屋所属となったマイナス人生オーケストラ。
本作は、移籍後第一弾となったシングルです。

書き下ろしの3曲に加え、オムニバスの参加曲であった、「復讐甲子園」をパッケージした、全4曲が収録されています。
フルアルバム「心中」をリリースして、その次のシングルが「心外」。
意味はまったく異なるのだけれど、対になっていることを想起させて、なかなか面白い言葉遊びである。

「心中」が歌モノ中心であった反動か、意図して異なるアプローチを詰め込んできたのか、ライブで盛り上がりそうなアッパーチューンを軸に構成しているのかな。
トップバッターの「日本劣等!謝罪回収の旅! ~断罪!平成の20面相現る!~」は、彼ららしいピコピコサウンドも目立っていますが、同じくらいかそれ以上、生音でのせめぎ合いも前に出てきているハードナンバー。
コーラス隊による「断罪!」の連呼や、ソリッドなギターによる攻撃性が、歌詞の世界観とリンクして、単純に盛り上げるだけでなく、物語としての味わいも深めていきます。
サビの歌メロは徹底してキャッチーなあたりは、安定感があると捉えることもできるでしょう。

続く「復讐甲子園」は、昭和のラジオ放送のような音声からスタート。
タイプ的には1曲目に近い、恨み、怒りを攻撃性のあるサウンドに乗せて発散させる楽曲。
こちらは、ストーリーテリングよりも負の感情の瞬間的な爆発を切り取った発想勝負の歌詞となっていますね。
相変わらず、サビはポップでキャッチー。
とにかく、ライブで弾けているメンバーの姿が浮かんできます。

様相が変わってくるのは、「天使キラーEL」。
ピコピコサウンドが強まるメロディアスチューンとなっていて、詳細は語られないのだが、切ないストーリーが背景にあることをイメージさせる。
読み取れるのは顛末だけなのに、それでもこんなに感情を揺さぶられるのだから、人間の想像力とは素晴らしいものだ。
Vo.栗山”HaL"ヰヱスさんの描く世界観に感服である。

本作のコンセプトはネガティブな言葉で綴る"愛と平和"とのことだが、それをもっとも体言しているのが「愛と平和の死者」。
言葉遊びからストーリーを膨らませているのだろうが、とてもメッセージ性の強いナンバーに仕上がりました。
総合的にはパンキッシュなポップソングなのだが、何気に凝った展開となっており、一筋縄ではいかないところがポイントなのだろう。
どうやったってストレートには攻めてこない。
だけど、直接心を殴られたような即効性がある。
そんなマイナス人生オーケストラの魅力を詰め込んだ1曲と言えるのかもしれません。

同系統のハードナンバーを2曲畳み掛けてイメージを作り、切ない歌モノでもうひとつの顔もアピールすると、最後はメッセージ性の強いポップチューンで締めくくる。
1曲1曲には無駄な飾りつけも多いのだが、少ない曲数でアピールする流れの構築には、まったく無駄がない。
"らしさ"という点で捉えれば、前作の「心中」よりも、この「心外」のほうが彼ららしい気がします。
もちろん、実験性のある楽曲も入れてバランスを整える必要があるアルバムと、力を入れれば入れるほど望ましいシングルとの求められるものの違いは考慮する必要はあるのですが、それを差し引いても、密度の濃い作品になったのではないかと。

事務所に入ったことが、彼らのスタンスにどう影響していくのかは未知数。
ただし、音楽性に特段の変化は見られませんでしたので、本作において、それを意識しすぎることはないと思われます。
バックアップ体制が整い、いよいよ進撃の開始となるか。
ますます注目度は上がってきそうですので、今後の活動に期待したいものですな。

<過去のマイナス人生オーケストラに関するレビュー>
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