桜ヶ丘流星群 / マイナス人生オーケストラ | 安眠妨害水族館

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桜ヶ丘流星群/マイナス人生オーケストラ

¥1,028
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1. 行進への違和感 [inst.]
2. 桜ヶ丘革命
3. .溺れる人鳥
4. 明日、総理大臣を○します。
5. 死んだらおうちに帰りたい [inst.]
6. 流れ星

この季節に合いそうな作品を。
マイナス人生オーケストラが2011年にリリースした6曲入りのCDです。

アートワークから、実に彼ららしい。
一見美しいのですが、よくよく眺めると、首吊りのロープや、地面から伸びた手など、おどろおどろしいモチーフが隠されています。

彼らの魅力は、ポップでキャッチーなピコピコサウンドに乗せて、押しつぶされてしまいそうな負の感情を歌い上げてしまうこと。
そして、そのスタイルは、桜の持つ、鮮やかさと儚さとの二面性との相性は抜群なのである。
本作におけるキラーチューンとなる「桜ヶ丘革命」を聴けば一目瞭然。
ポップだからこそ、切なさが際立つ。
ポップだからこそ、ネガティブさが際立つ。
メロディだけをなぞっても切なさで涙が出そうになるサクラソングなのに、彼ら特有のストーリーテリング調の歌詞が重なると、いっそう感情を揺さぶられますよね。

四つ打ちリズムのダンサブルなナンバー、「溺れる人鳥」も、マイナーコードで展開されるメロディラインが秀逸。
魚ですら溺れるヴィジュアル界。
人鳥とはなんだ、と突っ込みたくなりますが、歌詞を読んでいくと感情移入してしまうから面白い。
物騒なタイトルな「明日、総理大臣を○します。」は、楽曲構成もカオティックですな。
やはりサビはノリやすく、アクセントとしての役割をしっかりと果たします。

インストを挟んで送り込まれる「流れ星」は、もう1曲のリードトラック。
ex-↑THE HIGH-LOWS↓の白井幹夫さんがゲストミュージシャンとして参加したことでも話題になりました。
ピアノをメインに据えたバラードなのだが、これが本当に物凄い。
戦争の苦しみを、初夏の淡い空気の中に溶かし込むような虚無感。
詩的であり、生々しい、まさに彼らの真骨頂である物語性は、考えさせられるショートフィルムのように、ずるずると後に引き摺ってしまう。
重力がある楽曲だ、ということなのでしょう。
ちなみに、アニメPVが公開されたときは別のタイトルだったのですが、放送禁止用語が使用されていたため、大人の事情で「流れ星」となったとのこと。

わいわいと盛り上がるライブのイメージが先行してしまいがちだが、何と言っても楽曲が良い。
アートワークにしても、歌詞にしても、読み込めば読み込むほどに味わいが出る。
音質などには改善の余地があるのかもしれないが、世界観のパッケージという意味での作品クオリティは、とても高いと思います。

インスト2曲を含むとは言え、6曲入りで1,000円+αという価格設定も嬉しかった。
シングルなのか、ミニアルバムなのかは置いておくとして、お得感が満載でした。
現在では、やや手に入れにくい作品になってしまっているので、定番曲や代表曲は、是非再録をお願いしたい。
今の彼らのサウンドで再現したら、ますます名曲になる気がするのですよ。

<過去のマイナス人生オーケストラに関するレビュー>
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