失心 / マイナス人生オーケストラ | 安眠妨害水族館

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失心/マイナス人生オーケストラ


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1. フライングヒューマノイド
2. 盛者が殺しにやってくる
3. 桐島、人間やめるってよ。
4. 足元ばかり見ている

マイナス人生オーケストラのニュウシングル。
「心中」、「心外」に続くココロの旅シリーズ第3弾となります。

中にも外にも収まることの出来なかったココロの行き着く先とは。
そして潰された肉体の末路は。
そんなコピーとともに世に送られた作品は、ズバリ「失心」。
前作同様、書き下ろしの3曲に、オムニバスの参加曲「桐島、人間やめるってよ。」を収録しています。

なんというか、とにかくマイナス人生オーケストラらしいところにオチを持ってきたな、と。
バランスやコンセプト抜きに、とにかく彼ららしさを感じることができる作品になったのでは。<

まず、リードトラックとなる「フライングヒューマノイド」からインパクトが大きい。
切なさを前に出したテクノサウンドは彼らの王道でもあるのだが、AメロからBメロへ、サビから間奏へと場面が変わるたびに、3拍子になったり4拍子になったりとテンポが切り替わっていく。
文字にすると難解に思えるのだけれど、それが実に自然に展開され、流れるように耳に入っていくのだから恐れ入ります。
勢いだけでなく、しっかりした構成力で成長を示してくれましたね。

あっけらかんとした明るさで、人間の闇とも言える部分をストーリーテリング風に切り裂くのは、「盛者が殺しにやってくる」。
軽快なリズムで、ところどころコミカルに表現しながらも、考えさせられるテーマを持ってくるあたりは、まさに彼らの真骨頂ですな。
「桐島、人間やめるってよ。」は、エフェクトボイスで荒々しく攻めていく。
バンドサウンドがガツガツ前に出てくると思ったら、徐々に電子音が強くなっていき、最終的にはカオティックに。
歌詞の内容とリンクするように、ドラマティックな演出となっています。
オムニバスで単体で聴くよりも、作り込んだ作品の中で触れることで、より味わいが深まりました。
この楽曲のポテンシャルが引き出されていくような感覚、たまりません。

そして、締めくくりはバラードである「足元ばかり見ている」。
「フライングヒューマノイド」の世界観に戻ってきたイメージで、3拍子と4拍子を掛け合わせて進行していくところも、リンクを意識しているようです。
展開にアクセントがついたことでベタになりすぎていないし、これまでの物語の終着点としてもふさわしいクロージング。
最後に残る喪失感は、決してハッピーエンドではないのだが、バッドエンドでもない気がしてしまうから面白いのですよ。

それぞれが異なるアプローチながら、それぞれがマイナス人生オーケストラを体現するような楽曲たち。
負のオーラに包まれた主人公が、明るく切なく心地良い絶望の淵に落ちていく。
想像の先を行くのが彼らですからこれでシリーズ完結なのかもわかりませんが、現時点での集大成として、一度耳にして損はない作品に仕上がりました。
ポップでキャッチーなメロディと、シニカルでブラックな歌詞のギャップという、彼らの真骨頂をこれでもかというくらいに突っ込んだ力作です。

<過去のマイナス人生オーケストラに関するレビュー>
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