その心は。/マイナス人生オーケストラ
その心は。
3,000円
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1. おしまい駅に夜が来る
2. 絶命、絶対。
3. 君に眠剤をあげよう
4. スプーン曲げの少年
5. 凡才テレビくん
6. 人殺しのエンドロール
7. 足元ばかり見ている
8. 日本劣等!謝罪回収の旅! ~断罪!平成の20面相現る!~
9. 花よ 蝶よ
10. 器用で不器用な男の話
11. 銀河鉄道の朝
12. お負けの人生
3度目の加入となる小川万次郎がベースロイドに復帰。
矢沢もとはるがギターロイドに転向するという驚きの人事が発表されたマイナス人生オーケストラ。
本作は、"ココロの旅"シリーズの最終章となるフルアルバムです。
"誰も幸せにならない"ストーリーテリングは相変わらず。
どの楽曲も負のオーラに塗れていて、ネジが一本外れてしまった主人公たちの心内景色を描写。
その圧倒的なリアリティは、フィクションであるとは思えないほどに心を揺さぶるのです。
ココロを旅したというのは、そういうことか。
そして、その行き着いた先である本作が、「その心は。」なんて、出来すぎていて舌を巻くしかないじゃない。
その意味で、楽曲で伝えたいこと、表現したいことについては、過去作品からの延長。
マイナス人生オーケストラらしさが全開と言えるのですが、驚かされたのは、音楽性の広がりや、サウンド面の進化でしょう。
もちろん、しばらくぶりに5人編成となり、音に厚みが生まれたのは大きく、バンドとしての主張が強まっているのは事実。
ギターが2本になったことで、アレンジの選択肢が増えているのは間違いありません。
しかし、それだけでは説明できない感覚的な部分での成長も見て取れるのですよ。
たとえば、これまでの彼らは、色々な要素を重ねて重ねて、という傾向が強かった。
それに対して、本作に収録された楽曲については、歌を聴かせるということに重きを置くというコンセンサスがとられている印象で、そのためには引き算的なアプローチもとってきています。
結果として、音の隙間に想像が入り込む余地が生まれたというか。
コンセプトどおり、リスナーの心にすっと入り込むきっかけになったのでは。
1曲目から圧巻の世界観を見せつける「おしまい駅に夜が来る」、彼ららしい言葉遊びとともに、賑やかしく負を振り撒く「絶命、絶対。」、ノスタルジックな歌謡ポップス風の「君に眠剤をあげよう」と、大事な導入部分をタイプの異なる新曲で固めたところにも、本作への自信がうかがえる。
計算できるシングル曲に頼らず、アルバムの流れを現体制になってからの楽曲で作り出そうとする意図が、見事にハマっています。
マンネリ感もなければ、期待外れ感もなく、新しいけれど彼ららしい。
思いっきり新境地に振り切れるのではなく、ありそうでなかったニッチな路線でキラーチューンを作り上げる。
言葉にすれば簡単だけれど、それをやってのけるのが進化だよな、と。
また、切なく疾走する「人殺しのエンドロール」の王道感は、シングル曲の間にあって存在感を十分に発揮。
中盤の盛り上げに一役買っているし、「花よ 蝶よ」の淡々と美しいメロディを紡いでいくスタイルも、的確にツボを突く。
感情が炸裂するバラード、「銀河鉄道の朝」から、相応しくあっけらかんと明るく負を唱える「お負けの人生」に繋げるラストシーンも見事でした。
捨て曲なし、アルバム曲がどれも良い仕事をしている。
聴いた後に残るこの気持ちは、喪失感なのか、絶望感なのか、それとも幸福感だったりするのだろうか。
最新作が最高傑作。
ファンとしては、これ以上ないぐらい嬉しいことですよね。
結成間もないバンドならともかく、10周年(彼ら的には"10執念"らしい)を迎えるマイナス人生オーケストラが、だもの。
聴いた瞬間に名盤だと断言できる1枚です。
<過去のマイナス人生オーケストラに関するレビュー>
失心
心外
心中
ゴスロリを脱いでも
地球の転び方
ネットで叩ぃてゃノレ!
サブカルチャー入門~もしもし渋谷~
アイアム ア ロボット
未来予想図X
人間の証明
桜ヶ丘流星群
神様、ディスコにて堕天。