LASTING HOPE@新宿ReNY(2018.10.28) | 安眠妨害水族館

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Sabãoとして初の全国ツアーとなった『Sabão LIVE TOUR 2018 「LASTING HOPE」』。

そのファイナルである新宿ReNYでの公演に行ってきました。

 

この日は、Vo.Tamaさんのバースデー当日でもあり、1998年10月31日にHysteric Blueとしてデビューしてから丸20年という節目。

クラウドファンディングにより映像作品としてリリースされることも決定しており、まさにアニバーサリー的なライブであったわけですが、同時に、Tamaさんのライブ活動休止、それに伴うSabãoのライブ活動満了も発表されており、実質的なラストライブでもあるという。

そんなこんなで楽しみと寂しさが渦巻く中でスタートした公演でしたが、はじまってしまえば余計なことを考える暇はなく。

とにかく盛り上がって、とにかく楽しかった、それに尽きました。

 

 

オープニングアクトとして登場したのは、女性シンガーのアサキさん。

Dr.楠瀬タクヤさんの教え子にあたるとのことで、Sabãoのアルバムにもリミックスで参加。

エレクトロなトラックメイクと、没入型のパフォーマンスに引き込まれます。

 

系統としては、ラップやR&Bの路線なのだけれど、外に向けてメッセージを発するというよりも、ひたすら内向的に感情を吐き出すようなステージング。

そのうえでメロディアスな部分も多くて、パジャマのような衣装も含めて、なかなかにツボでしたね。

淡々と歌っていくだけなのに物凄いインパクトで、ちょっとチェックしてみようかな、と。

まずはミニアルバムを聴いてみればいいのかしら。

 

 

そして、あまり間隔をあけずに登場したSabãoのふたりと、サポートメンバーのGt.久次米真吾、Ba.蛇石徹、Key.重永亮介。

もはや、サポート3人も含めた5人編成でSabãoというイメージにもなってきた感がありますな。

20歳になる心境を歌う「Dear」を1曲目に持ってきてデビュー20周年を自ら祝うと、早くも「今~present~」、「メーデー」と畳みかける展開に。

てっきり、「今~present~」、「また明日」の2曲は終盤に持ってくるのだと思っていたし、「メーデー」がこのタイミングで聴けるとも思わなかったし、良い意味で裏切られたと言いますか、固定化しつつあったセットリストに変化をつけてきました。

 

序盤から中盤までは、盛り上がる楽曲と、聴かせる楽曲を交互に披露。

個人的には、20年歌ってきたからこそ、こういう曲が出来たという「Milk」が、今まで聴いた中で一番響いた。

出会ったときにはまだ子供の目線で曲を作っていたバンドが、いつの間にか子供に向けた曲を書いている。

それは当然、自分にも当てはまって、時間の重みと、その一方で"歳をとるのも悪くない"という幸福感と、たくさんの感情が降ってきたのが、この曲だったのですよね。

熱量が冷めないまま、浸る余地も与えてくれる絶妙なセットリストだったと、改めて振り返って感心してしまいます。

 

この日のハイライトのひとつは、「ta chi ma chi」。

サビ前のブレイクで楠瀬さんのMCが入るという、ツアーを通してのお約束で、Tamaさんも"トイレ休憩ですよ"と冗談めかして腰掛けるなど、完全に楠瀬タクヤオンステージでした。

あくまで曲の一部という位置づけであり、映像化される場合もカットされないと思われる通称、"魔の時間"。

セルフインタビューに答えてみたり、V系バンドに在籍した経験を活かして、それっぽい煽りをしてみたり、ようやくまとまって曲に戻ったかと思いきや、2番のサビ前のブレイクでも再びMCに突入したり、とやりたい放題。

 

ところが、これが壮大な伏線だったとは。

メンバーからも一言、という流れから久次米さんに喋らせつつ、蛇石さんに振ると、"本当にトイレに行ってもいいですか?"とステージから捌けるというフリーダムさを演出。

続く重永さんが、Sabãoに関われた感謝の気持ちを曲で表現する、と鍵盤を奏でると、そこから流れてきたのは「ハッピーバースデー」。

タイミングを見計らって蛇石さんがケーキを持って再登場するという、バースデーサプライズが計画されていたのです。

 

今思えば多少強引さはあるのだけれど、トイレ休憩と言い出したのはTamaさんだし、久次米さんが直前のMCで普通に"お誕生日おめでとう"と言っていたので、逆にバースデーサプライズが意識から消えていた。

ツアー全体でフリーダムさを作り出していたので、多少の無茶が見えにくくなるという用意周到っぷりで、ここまで綺麗にハマったサプライズは見たことがありませんでしたよ。

重永さん、テンション上がったら本当に曲で気持ちを表現しそうだし。

 

そんなわけでひとつのピークを迎えたライブなのですが、これはまだ序の口だったようで。

徐々にピリっと空気が引き締まっていくのを感じていると、ここで佐久間ファミリーの先輩であるex-JUDY AND MARYのGt.TAKUYAさんが登場。

音出しで「そばかす」のイントロを奏でるだけで騒めきが起きるなど、めちゃくちゃオーラがありましたね。

楠瀬さんにMCのグダグダを駄目出しをしたり、Tamaさんが活動休止することについて"商店街バンドはどうするの?"と詰め寄ったり、怖い先輩を演出しながらも、"佐久間さんの分も、という気持ちで来た"と、ファミリーとしての仲間意識もチラ見せし、完全にオーディエンスを取り込んでいたのでは。

Sabãoのふたりは、Hysteric Blueを結成する前にJ・A・Mのコピーバンドをやっていたという経緯もあり、夢のようなステージだと緊張が隠せない様子。

20周年にして、こんな初々しいふたりを見ることができたのも収穫かな、と。

 

TAKUYAさんと一緒に演奏されたのは、「RADIO」、「グロウアップ」、「くじら12号」。

J・A・Mの2曲と、ヒスブル時代の楽曲を協奏する、文字通りスペシャルなライブで、この選曲であれば緊張するのも納得というもの。

ラストライブの位置づけを考えれば、カヴァー曲が多くなると文句も出そうなものだが、こればかりは興奮が勝ってしまいます。

アニバーサリーのライブにおいて、音楽活動をはじめたきっかけの楽曲を披露したと思えば、必ずしもゲストありきの選曲ではないとも取れるでしょう。

あえて寄せている部分もあってのことだが、TamaさんによるYUKIさんの再現度が物凄かった。

ヒスブル時代から似ているとは言われていたけれど、実際目の当たりにしてしまうと圧巻です。

 

完全に火が付いたオーディエンスを前に、ラストは「RUSH!」、「アソビ」、「BIG VENUS」と、ライブ映えに全振り。

もう、楽しさが勝って、あまり記憶に残っていない。

この辺りは、映像作品が届いたときに補完していくことにしましょう。

 

 

アンコールは、新曲である「未RISE」と、最大のヒット曲である「春~spring~」。

アルバム「MeRISE」のラストの楽曲と、スタートの楽曲。

実は、リピートで聴くと繋がるような仕様になっていて、それをライブで再現した形なのですよね。

 

クラウドファンディングのリターンであるイベントが控えているからか、ややあっさりと終わった印象はありましたが、間違いなく、Sabão史上で最高のライブでした。

なんとなく、続きがありそうな、これで終わりという実感がないのだよなぁ。

活動休止の理由は、Tamaさんの体調面の問題のようで、当面は裏方で歌の活動を続けるとのことですが、何かのきっかけでまた帰ってきてくれることを期待してしまう。

この日のセットリストに不満はないけれど、まだまだ聴きたい曲もたくさんあるのですよ。

 

とりあえず、青春にひとくぎり。

20年、ありがとうございました。

 

1. Dear

2. 今~present~

3. メーデー

4. また明日

5. KNOW

6. Milk

7. なぜ…

8. ふたりぼっち

9. ta chi ma chi

10. RADIO (JUDY AND MARY)

11. グロウアップ

12. くじら12号 (JUDY AND MARY)

13. RUSH!

14. アソビ

15. BIG VENUS

 

en1. 未RISE

en2. 春~spring~