鳴門教育大学准教授 坂根健二
東日本大震災の被災地では、今なお困難な状況が続いています。ただ、多くの学校で授業が再開され、子どもたちにも笑顔が見られるようになりました。しかし、心の奥は厳しいものを抱えており、大人たちの支えが必要です。
いまだ余震や原発事故など、不安定な状態が続いています。その都度、過去のつらい記憶がフラッイュバックのようによみがえってくることがあるかもしれません。その時こそ、大人が「今は大丈夫だよ」と抱きしめることも必要でしょう。
子どもは、大人たちが苦しんでいる時には、精一杯我慢をします。決して表情などに出さず、けなげに踏ん張ろうとします。暗い顔をせず、笑顔で接してくれます。
今、そのことを大人が理解し、子どもたちをしっかり支えていくことが大切です。その支えで、子どもたちの心の安定が図れます。
復興の過程では、親と離れ、子どもだけで別の学校に通うことも少なくないでしょう。こうした時だからこそ、周囲の大人たちが親のようになり、接してあげてほしいと心から重います。
「我慢しないで泣いていいよ」
「思いっきり甘えなさい」
こんなメッセージが子どもの心に届けばいいと思うのです。ことさら子どもたちに「大丈夫?」なんて聞かずに、横にいて、ただ、わがままを聞くことも必要だと思います。
災害に遭遇した子どもは、大きな音、揺れ、サイレンなどに敏感です。災害に遭遇していない子どもたちにも繰り返しテレビから流れる津波被害の映像などが、子どもたちの不安をあおっています。恐怖の再生産が起きています。
こうした時は、あわててテレビを消すという態度よりも、大人から別の話をしたり、興味が湧く何かを子どもに与えたりしてください。ちゃんと子どもたちは、大人たちが配慮してくれていることに気づいてくれます。
最近の子どもは我慢しない、自己中心的と言われます。実は違います。子どもたちこそ、周囲を気遣い、今。自分に何ができるか真剣に悩んでいます。
子どもゆえに何もできないから、不安になったり、ふさぎ込んだりしてしまうのです。また、それを隠すために、笑顔や元気な行動が表れるのです。
子どもたちが本当の笑顔を取り戻すためにも、私たち大人ができるか、今一度考えていきたいと思います。