女優 杏(あん)さん 火曜午後9時 フジ系

 連続ドラマ初主演となる、フジ系「名前をなくした女神」で、サラリーマン・秋山拓水(つるの剛士)の妻で幼稚園の息子を持つ専業主婦の侑子を演じている。〝侑子漬〟の毎日が続き、左手薬指の結婚指輪もすっかり体になじんだ。
 子どもの小学校受験をめぐって、〝ママ友〟たちの友情、嫉妬、見え、裏切りなどが複雑に絡んだ人間関係がドラマでは描かれる。「主役といっても、輪の中心に置いていただいて、みんなに支えられているようなもの。恵まれています」と、あくまでも控えめだ。
 一番の課題は「母親をいかに自然体で演じられるか」。そのため、待ち時間などは可能な限り息子役の俳優と一緒に過ごすようにしている。「モニターに映る自分の顔が優しくなっているのがうれしい。子どもの存在が母親にさせてくれる。子どもって、そういう力を持っていると感じます」
 新しい台本を手にするたび、ママ友役の共演者たちと過激な内容の話題で盛り上がる。現場は和気あいあいとした雰囲気だが、ドラマ内の侑子は人間関係で誤解を生み、孤立していく。「空気を読めない発言をしたり、人の私生活に立ち入ったりしてしまう侑子を見ていると、彼女にも過失があると思える。悪意がないからいい、ということではないと思う」と冷静な見方をする一方で、「それが人間。私自身も無意識のうちに人を傷つけていることがあるかもしれない」と、わが身に置きかえる。
 幸い侑子には、理解のある夫がいる。「それで随分、救われると思う。秋山家では家族がいろんなことを共有しているし、話もよくする。いいファミリーです」
 ファッションモデルを経て、4年前に女優デビュー。「もともと、あまり感情が顔に出る方ではなかったのですが、いろんな役を演じ、感情表現することで普段の生活でも表情が豊かになった」と、うれしそうに話す。
 自他共に認める読書好きで、年間100冊以上は読破する。「活字人間です。書くことも好きなので、いつか本も出したい」。読書で鍛えられた読解力は、台本を読み込む力にもつながるはず。
「面白いのは台本を読んだ際のイメージが監督と違っているとき。共演者にもまた違った捕らえ方があり、それらが合わさって一つの作品になる。そこにもドラマの面白さを感じます。