鳴門教育大学准教授 阪根健二
 思春期になり、わが子が言うことを聞かない。非行に走るようになった。もう取り返しがつかない――このように悩んでいる保護者は意外に多いものです。そうした悩みを抱えている人の中には、「これまで十分に甘えさせることができなかったことが原因では」と考え、「私の子育ては失敗だった」と落ち込んでしまうかたもいます。
 私はいつも、「子育てのやり直しはきかないのでは」と不安な思いを打ち明けてくださるお母さんには、「悩まないでください。今からでも、大丈夫ですよ!」と答えています。
 実は、思春期の子どもにまつわる、さまざまな問題は、子ども自身というよりも、保護者の方の不安や揺らぎの方が問題なのです。
 子どもは少々のやんちゃをします。逸脱することがあるのが自然です。その時に大人がどのような態度をとったのかが重要です。幼少期ならば、叱る程度でも十分でしたが、思春期になればそう簡単ではありません。
 叱るよりも、子どもたちに責任を持たせることに重点を置くべきです。
 もし、警察等の関係機関で指導される状態になっても、そこで受ける処置に対して安易にかばうよりも、それを共に乗り越えようという姿勢が必要です。謝罪ややり直しも、大人が率先して範を示し、それを子どもに実行させることがポイントです。
 家庭内での反抗程度なら時間が解決してくれるでしょうが、もし、万引きなどの非行があったら、さすがに動揺してしまいますね。ただ、こうした場合も、あわてず一緒に謝罪に行き、心の底からおわびをしましょう。その行為を子どもは見ています。そして、本人にもしっかりと責任をとらせます。これが再起のきっかけとなるのです。
 ただ、これらの対応は、保護者自身の中にある、世間体への意識を変えないとできません。何より、子どもを思う本来の心を思い起こすことです。つまり、周りの目や中傷などを気にしないで、子どもと共にこれまでの人生を取り返す決意をすることです。これができれば、子どもはあなたの深い心を理解するようになり、変わっていくでしょう。
 〝子育ての失敗〟なんて言わせない、すてきな子どもがあなたの前に帰ってきますよ。