不妊治療というと、どうしても1人目を希望する方のことが思い浮かびますが、実際には2人目、3人目を希望して通院されている方も少なくありません。当院でも、通院されている方の2〜3割は第2子以降を希望されている患者さんです。
ただ、1人目と2人目の治療は同じようでいてまったく違う悩みが生まれます。
多くの不妊クリニックではお子様連れでの来院ができません。もちろん、治療中の患者さんへの配慮として必要なルールではありますが、2人目不妊の方にとっては大きな壁でもあります。
通院は直前に決まることが多く、予定の調整に苦労することも多いことでしょう。一時保育も、空きがなかったり、何とか預けられても別れ際に泣かれて胸が痛んだり。そして採卵日当日に子どもが熱を出してしまえば、これまでの努力も水の泡。夫が休めなければ、キャンセルするしかない……そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。
預け先がなく、採卵日に子連れで3人で来院し、クリニックから少し離れた場所で交代で子供の面倒を見ながら採精と採卵をなさるご夫婦も週に何人もいます。私たちは自分たちのクリニックで妊娠して出産したお子さんの写真を見ることは多いのですが、実際にお会いすることは本当に少ないので、物陰に隠れるように子供をあやしている患者さんを見ると、嬉しさもあるのですが、でもそんな思いをさせて申し訳なく、いたたまれない気持ちになります。
そうなると、実家が近くて手厚いフォローが期待できる人はいいなー、いつでも預けられるし送り迎えもしてくれるし羨ましい、なんて思う方もおられるでしょうけれども、もちろん良い面もあるが、世話にならなければ黙っててもいいが、さすがにお世話になれば何も報告しないわけにもいかない、時には何かお礼もしなければならない、治療に余計な口を出されたり、気を遣ったりと別の苦労がついてまわります。
第1子に「赤ちゃんほしいな」と言われたとき、どう答えるかは簡単ではありません。何も聞いてこなくても、お子さんが、はなちゃんとかのぬいぐるみを抱いて「ねんねさせてるの」と言ったり、ふいにお腹を撫でてきたりすることもあるでしょう。そんな時、心の中で「ごめんね」とつぶやいたことは一度や二度ではないはず。
実際、「ママは赤ちゃんが欲しくて病院に通ってる」と、治療中からお子さんに伝えているご家庭もあります。特に、上の子が弟や妹を欲しがっている場合、「どうして今日も保育園なの?」「なんで延長保育なの?」という問いにも自然に説明できます。
一方で、「妊娠してから伝えよう」と考えるご家庭もあります。その場合でも、いつ伝えるのかは悩みどころです。心拍が見えてから? 4カ月を過ぎて安定期に入ったら? お腹が目立ってから? 答えはありません。お子さんの年齢や性格、ご家庭の方針によって、本当にさまざまですが、悩んで相談されることもあります。
1人目がいての治療となると、いただく側が申し上げることではないかも知れませんが、治療費を払うたびに、「これがあれば、子供に美味しいものを食べさせてあげられる、この時間があれば旅行にも連れて行ってあげられるし、かわいい服も買ってあげられる」なんて通院のたびに悩まれることもあるでしょう。きょうだいを望む気持ちは、時に罪悪感や無力感を伴って押し寄せます。
1人もいない時は、周囲も多少は気を遣ってくれるものです。でも、1人いるとなると、途端にその配慮が消え去る人がいます。「本当はいらなかったのに1回でできちゃった」なんて、悪気なく言われる3人目報告。生まれても、迷惑だから写真とか送ってこないでねと思っても、相手が親戚やきょうだいならブロックもできない。挙句の果てに「1人いるからいいじゃん、逆に羨ましい」なんて、デリカシーがないにもほどがある。ムカつく、悔しい、悲しい。この気持ちはどこへ持っていけばいいの?
立場が変われば違うつらさがある。
何人目だろうと子供を欲しい気持ちにはかわりありません。私たちは、2人目以降の治療に通う方々のご苦労にも、常に思いを馳せています。
私たちは、お子様を望まれる全ての方に最高最善の医療を提供できるよう、全力で頑張ってまいります。