シリーズ2記事目は、妊娠判定時のβ-hCGが高い時についてです。

 

一般的には妊娠判定時のβ-hCGは高い方が胎嚢確認率・妊娠継続率が高いことが知られています。β-hCGが高すぎる場合に気になるのは胞状奇胎と多胎妊娠です。

 

いきなり脱線しますが、多胎妊娠には1卵性と2卵性とあり、1卵性には、MM双胎(1絨毛膜1羊膜性双胎)、MD双胎(1絨毛膜2羊膜性双胎)、DD双胎(2絨毛膜性2羊膜性双胎)の3種類、2卵性は基本的にはDD双胎(2絨毛膜性2羊膜性双胎)があります。(レアケースで例外があるとかないとかいう話もあるのですが、ここでは一般的なお話をします)

 

産婦人科医の中でもご存じない先生がおられるようですが、1卵性のDD双胎も存在します(ただし、頻度は0.2~0.3%程度とごく低頻度です)。

 

1卵性双胎はいずれも、胚盤胞になった時点で細胞が約半分ずつにパカンと分かれて、分かれ方によりMM/MD/DDになりますが、いずれにせよ、細胞数が半分になる(1人あたりで考えれば減る)ので、余計に細胞分裂する必要が生じ、発育はその分遅延します(昔は2細胞あるいは4細胞期に細胞が半分になって双胎が成立すると考えられていた時代もありましたが、今は胚盤胞になった段階で半分になると考えられています)。PGT-A胚の場合でも妊娠判定時のβ-hCGの数値がやや低めに出ることがありますが、それと同じ理由で、理論的には1卵性の双胎の場合はβ-hCGの値は単胎妊娠とあまり変わらないことになります。

 

一方、2卵性の場合は、もともと受精卵が2つあり、半分にはなっていませんのでβ-hCGは高く出る可能性があります。また、胞状奇胎の場合はβ-hCGは高く出る可能性もあります。

 

ただし、そもそもがβ-hCGの値は個人差・周期差が非常に大きすぎて、β-hCGが1000以上だったけど1人だったとか、β-hCGが高くて行けるかなと思ったら流産したとか、β-hCGがそんなに高くないけど双子だったとかいうことはいくらでもあり、現場の実感としては、β-hCGが極端に低い場合はうまくいかないことが多いとしても、それ以外の場合は、β-hCGの数値自体が予後予測ツールとしてそんなに的確だという印象は持てません。数字が高かろうが低かろうが、単胎も双胎もあるし、うまく時もいかん時もある、そもそも論で胞状奇胎なんてほとんどない(エコー所見が疑わしい時に考慮すれば良い)。。と書いてしまうと何の説明にもなっていないですが、これが正直な実感です。治療する身としては一喜一憂してしまうものですが、精神論はさておいたとしても、数値が一定以上あれば、その程度の数字に一喜一憂して翻弄されることに何の意味もないです。

 

次回は、こちらのほうが皆様気になっていると思いますが、妊娠判定時のβ-hCGが低い時についてです。早く次を読みたいよ、という方、ぜひ「いいね」をお願いいたします。