105円読書 -54ページ目

七人の迷える騎士 著:関田涙

 
七人の迷える騎士

関田涙:著
講談社 ISBN:4-06-182325-6
2003年7月発行 定価1,050円(税込)









関田涙、美少女探偵ヴィッキーが活躍する、「蜜の森の凍える女神」に続くシリーズ第二弾目。「蜜の森の凍える女神」は前に読んで、けっこう楽しめたので、今回も期待が高まった。

1年前の文化祭で起こった密室事件…女子更衣室で発見された猫の死体と怪異な暗号文に“一年後~学園に恐怖を齎す”と記された脅迫文の真意は?脅迫文の予告どおり…学園の文化祭で次々に起こる連続殺人、童話“白雪姫”の見立殺人に美少女探偵ヴィッキーが挑む!

前作は“嵐の山荘”ものの王道のような物語だったが…今回は学園ミステリの王道か?(なんか霧舎巧の霧舎学園みたいなノリだった)暗号解読、密室トリックを簡単かつ鮮やかに見破る名探偵の活躍を最初に提示し…それが発端となり連続殺人に発展していくという展開は、なかなか楽しい。いっぱい怪しいヤツが出てくるが…あっと驚く真犯人と動機がちゃんと用意もされている。

途中で…読者への挑戦が挿入されるのも、前作からのお約束である。確かに…最後まで読み終わった時に、らしき伏線はあったことに気づくき…推理小説としてフェアではあるが、ちょっとだけ卑怯かなって思ってしまった。うーん、今までにもこういう内容の推理小説あったけど、まんまと騙された。とんでもない方法で人はいっぱい死ぬけど…あまり陰惨なイメージはなく…推理小説として普通に楽しめたので、いいだろう。395ページ…読み応えもそれなりにあり。

美少女探偵だけでも…キャラクターものとして充分な感じではあるが、今回は美人キャリア警視まで登場させるあたり、ちとやりすぎではないかと(笑)でも、嫌いじゃないです。






個人的採点:70点






このミステリーがすごい! 2005年版

このミステリーがすごい!
2005年版

宝島社 ISBN:4-7966-4406-7
2004年12月発行 定価730円(税込)









お金がある頃は、毎年年末に、ちゃんと新刊で買っていたのだが…最近は古本の100円コーナーで出回るまで待ってしまう“このミス”。5ヶ月遅れで…ようやく入手。今回はなんと…表紙が山本英夫の「ホムンクルス」ではないですか!?

昔は上位20位のうち半分以上は…新刊で読んでいたのだが…そっちの方も最近はサッパリ。ランキングされたので、新刊購入したのは綾辻行人の「暗黒館の殺人」くらいだ。ようやく2003年、2004年あたりの上位ランキング作品が100円コーナーで出回ってきたので、かなり買い溜めはしてあるし、読んだものも出てきているが…。

その代わり…“2004年ミステリー界のルーキー総チェック 新人賞ソーカツ対談 杉江松恋×藤田香識”で誉められたり、ヤリ玉に挙げられた作品は、けっこう読んでいるのがあった。やっぱ有名作家よりも知られていない新人作家の方が…古本屋でも早く安くなるんだなぁっていうのを実感しています。

好きな作家の見逃している作品、知らない作家…紹介されているあらすじなどを読むと、読みたくなる。リストアップして…早速明日から、ブックオフの100円コーナーを頑張って物色することにしよう。






個人的採点:75点







さて現在は…関田涙の「七人の迷える騎士」を読書中。まだまだ半分程度しか読めていない…頑張って続きを読むことにしよう。

著者: 関田 涙
タイトル: 七人の迷える騎士

きみにしか聞こえない CALLING YOU 著:乙一

きみにしか聞こえない CALLING YOU

乙一:著
角川書店 ISBN:4-04-425302-1
2001年6月発行 定価500円(税込)
 







乙一の短編集…ホラーでもないし、ファンタジー色も強いけど…どのようなジャンル別けにしたりいいのかわからないので、とりあえず“その他のミステリー”にしておく。この間読んだ、「さみしさの周波数」同様…せつない物語。

「Calling You」
友だちもいないので、携帯電話を持っていない高校生の少女…実は携帯電話を持つことに憧れを持っていた。実在しない携帯電話を頭の中にイメージしいると…いつしか頭の中で着信音が!恐る恐る、頭の中で電話をとってみると…それは自分と同じような境遇の少年からの着信であった!?

オチはよめてしまうが…設定の奇抜さが郡を抜く。物語として、無難に綺麗にまとまっていた。


「傷 -KIZ/KIDS-」
“オレ”と同じ特殊学級に転入してきた少年アサトは、他人の傷を癒し…その傷を自分の身体に移してしまうという特殊能力を持っていた。

子供の純真さ、大人の醜さをストレートに突きつけられたような話。



「華歌」
列車事故で恋人を失った“私”は、入院先である病院の裏庭の雑木林で奇妙な植物を見つけた。花弁のあわせめから、髪の毛のような黒いものが垂れ、人間のうめき声のような妙な音を発していた…。

読み終わった後に、思わず前半ページを読み返してしまった。なるほど…まんまとやられました。収録されている他の2作品よりも、どろどろっとした印象…人間の姿かたちをした植物という発想が、おどろおどろしく感じる。最初こそとっつきにくい感じだったが、クライマックスで明かされる真実への違和感を微妙に感じていたのかもしれない。


個人的には前回読んだ「さみしさの周波数」の方が好きかな?でも相変わらず文章の上手さに、拍手。乙一ワールドを堪能。







個人的採点:70点







女子大生会計士の事件簿 DX.2 騒がしい探偵や怪盗たち 著:山田真哉

女子大生会計士の事件簿 
DX.2 騒がしい探偵や怪盗たち

山田真哉:著
角川書店 ISBN:4-04-376702-1

2004年11月発行 定価540円(税込)








この間読んだ、女子大生会計士の事件簿 DX.1に続く、第二弾を、100円で見つけたので、早速買ってきた。

女子大生会計士・藤原萌実と入所一年目の新米会計士補・柿本一麻が監査の先々で出くわす奇妙な事件。 偽造領収書、インサイダー取引など…短編7作品+オマケ。

この巻の一番最初に載っていた“<競艇場から生まれた>事件”が…元々の連載第一回だそうで、萌実と、柿本の出会いみたいなのが描かれている。やっぱり、最初の方は…扱ってる事件もショボイし、キャラ小説としてもハジケ具合が弱い印象。

ただ…著者の一番のお気に入りだという“<十二月の祝祭>事件”なんかは…ビジネス+ミステリーに…ファンタジーまで取り入れたなかなかの力作。DX.1よりいっそうバラエティに富んだ短編が集められた印象を受ける。

ビジネスミステリーというテーマとしては、やはりDX.1の方が全体的に面白かったかな?






個人的採点:65点






水の迷宮 著:石持浅海

 
水の迷宮

石持浅海:著

光文社 ISBN:4-334-07586-X

2004年10月発行 定価890円(税込)












石持浅海は、まだ作品数は少ないのだが…けっこう好きで、過去の作品も読んでいる。今回は水族館を舞台にした、推理小説で…ラストがなかなか感動的。

3年前に死んだ同僚の命日に…羽田国際環境水族館の館長宛に届いた携帯電話の脅迫メール。そして、展示生物を狙った攻撃が開始され…犯人からの要求に、職員たちは東奔西走する。そんな中…館内で殺人事件が発生した!?

相変わらず、舞台設定が巧みで…いかに読者に違和感なく…閉鎖的環境を作り出すかが上手ですね。とんでもない事件が起きているところで、さらに不可解な殺人事件が追打ちをかけるというシュチエーションは前回の「月の扉」にも似ている。


あっと驚くようなトリックというのは存在しないが…論理的に推理を組み立てていき、限られた容疑者の中から真犯人を見つけていくという推理小説の王道的な部分がちゃんと楽しめ…なおかつ水族館職員たちのキャラクターもよく描けていて、非常に楽しませてもらった。


そして…探偵役になるのが、たまたま水族館の飼育係である友人を訪ねてきていた電機メーカーの社員の深澤。あれれれ…もしかしてこの頭脳明晰な一般人…「月の扉」でハイジャック犯に探偵役をおおせつかった、着ていたTシャツの文字から“座間味くん”と呼ばれていた、本名不明の乗客ではなかろうか?

作中でそういった明言はしていないのだが…“八丈流人”という地名の入ったTシャツを着ているセンスとか、その他時々、語られる深澤の情報から、なんとなく同一人物ではなかろうかと推測できる。安易にキャラクターのシリーズものとして描いてないところが、けっこう憎い。







個人的採点:75点







Aコース 著:山田悠介

Aコース

山田悠介:著
幻冬舎 ISBN:4-344-40580-3
2004年10月発行 定価480円(税込)









山田悠介を読むのは「親指さがし」に続いて2冊目になる。一応、これもホラーなのだろうか?中高生なんかには人気があるらしいが…今回もやや子供向けな印象。新刊当時、本屋で平積みになって売られていたり、大々的に宣伝されているのが記憶に残っているが…相変わらず中身が薄いなぁと思うのは自分だけか?

ゲームセンターの新アトラクション「バーチャルワールド」に挑んだ五人の高校生。炎につつまれた病院から、敵の攻撃を避け、脱出するといった内容のバーチャルゲームなのだが、リアルすぎる設定に一同驚きを隠せない。ゲームの設定にないはずの、女性の自殺を目撃したり、謎の少年が現れたり…奇妙な事件が起こる。はたして、これは本当にゲームの世界なのか?

思わせぶりで、何のひねりもないオチ。奥浩哉の「ガンツ」のパクリ?みたいな印象を受けてしまった。ホラー作家だったら、ホラーらしいオチ、ドロドロした怖さみたいなのを出してくれたほうが、面白く読めただろう。

まだ「親指さがし」の方が、面白かったかなぁ。ネットなどで評判を調べると、そこそこの評価されているみたいなんだけど…本当に?って疑ってしまう。誉めてるのは、やっぱ若い世代なんだろうか?山田悠介はまだ2冊しか読んでないので、偉そうに語れないけどさ…。同じ若手のホラー作家だったら、乙一の方が全然面白いなぁ。






個人的採点:40点







僕と先輩のマジカル・ライフ 著:はやみねかおる

僕と先輩のマジカル・ライフ 

はやみねかおる:著
角川書店 (ISBN:4-04-873508-X
2003年12月発行 定価1,260円(税込)









さすがに青い鳥文庫は読んだことないのだけど…講談社ノベルズや、コミック化された少年名探偵虹北恭助シリーズはいくつか読んでいる、はやみねかおるの作品。「ササメケ」「パンテラ」のゴツボ×リュウジのイラストが、なかなかいい感じだ。

井上快人はこの春合格したばかりの大学生。彼を慕う幼馴染で、霊能力者の春菜は、大学まで同じにして、いつも一緒につきまとう。親の援助を一切受けずに、一人暮らしを始めるため、安い家賃の下宿先を探していた快人…一ヶ月1万円で借りられる格安の物件を見つけるのだが…安いには何かわけがあるらしい。偏屈な、下宿人にたちに囲まれて新生活をスタートさせる快人であったが…その中でもずば抜けて奇妙キテレツな先輩、長曽我部慎太郎の出会いが、彼の大学生活にどんな影響を与えるのか?春夏秋冬を通して彼らが遭遇する…摩訶不思議な事件の数々とは…?

霊能力者の幼馴染に、オカルト好きの先輩という…ファンタジック、オカルティックな設定があり、騒霊、地縛霊、河童、木霊というそういう路線の事件が起きるのだが…ズバっと論理的な解決を見せるあたりは、推理小説として充分楽しめる。死人も出ないし、全然陰惨な事件は起きないのは…この作者らしい。ほのぼのしていて、子供でも読みやすい。主人公を大学生に設定したので…今までの作品よりも大人が読んでも楽しめる作風になったのが、良かったと思う。

やはりシリーズ化でも目論んでいるのか、キャラクターの細かな生い立ちや、主人公たちが加入させられる“あやかしい研究会”の実態を明らかにしていないのが、ちょっと物足りない感じだ。






個人的採点:60点






湘南人肉医 著:大石圭

 
湘南人肉医

大石圭:著
角川書店 ISBN:4-04-357206-9
2003年11月発行 定価580円(税込)









「呪怨」のノベライズ小説で有名な、大石圭のホラー作品。角川ホラー文庫から出ている1冊。初めて読んだのだが、実は、著者が住んでいる場所、作品の舞台に選ぶ場所と同じ、湘南近辺に住んでいるので…前から興味があった。この作品が映画化もされたので…ちょっと読んでみようかと思ったわけです。

業界でゴッドハンドと呼ばれている天才整形外科医…小鳥田優児。手術で吸引した患者の脂肪を自宅に持ち帰り…食べてしまったことから、人の肉…それも若くて綺麗な女性の肉を食べることに快感を感じてしまう。一度食べたら病みつきになる人肉…彼は自分の欲求を満たすために、どんどん過激な行動をとっていく…。

湘南が舞台になっているけど…トラベルミステリーのように、それほど緻密な描写が描かれているわけでもない。主人公が平塚に住んでいるというのも、サラっと流している感じ。地元民として、もう少し地理的な描写など詳しく書いてくれたら、ご当地ものとして、もっとはまれたかな。

物語のほうは…醜いハンニバル・レクター?人肉を食すというのが、当たり前になっている主人公の話ですからね、読み進めていくと、だんだんとグロイという感覚を感じなくなってくる。すっげー鬼畜な犯人なくせに、憎めないやつで…親近感が沸いてしまうのは何故だろう?ヤバイ…自分にも変な嗜好があるのかなぁ。

主人公の元恋人、現在セックスフレンドという…医院長のバツイチ娘、秋本加奈子先生が…頭の中で物凄いイメージになってるんですけど、このキャラクター、実写映画ではどんなになっているのだろうか?DVD出たら、見てみたいなぁ。

意外と面白かったので、実は100円コーナーで、大石圭の角川ホラー文庫作品を、片っ端からまとめ買いしてきてしまった(笑)






個人的採点:70点







リトル・バイ・リトル 著:島本理生

リトル・バイ・リトル

島本理生:著
講談社 ISBN:4-06-211669-3
2003年1月発行 定価1,365円(税込)










高校生作家の芥川賞候補作という帯に惹かれて、手にした…。似たようなところで、綿矢りさの小説を読んだことあるけど…自分よりも若い世代の作家さんたちって、小説として物足りなさを感じてしまう。でも、自分が通り過ぎてしまった年代を懐かしんだりするのに、思わずこういう作品を読みたくなってしまうんだよなぁ。

高校を卒業したばかりの“ふみ”は…家庭の事情で大学受験を断念し、アルバイト生活をしている。母子家庭で、父親の違う幼い妹と3人で暮らし。家族の問題、年下のボーイフレンドとの淡い恋…大人になりかけている一人の女の子の日常を描いている。

なんかホっとできる作品だったなぁ。もうちょっとドロドロしててもいいんじゃない?なんて、オジサン世代になってくると思ってしまうのだが…。10年前は、自分も色々、細かなことで悩んでいたなぁと懐かしい気分で読んでしまいました。若いっていいなぁ…戻りたいな、あの頃に…。






個人的採点:60点







極限推理コロシアム 著:矢野龍王

極限推理コロシアム
矢野龍王:著
講談社 ISBN:4-06-182366-3)
2004年4月発行 定価861円(税込)











第30回メフィスト賞受賞作品…俗に言う“嵐の山荘”な本格推理のアレンジ。特殊環境を舞台にした綾辻的なテイストではあるが…。

僕こと駒形祥一は、気がつくと自分の部屋ではない、知らない部屋に軟禁されていた?二つの館、何者かによって外界から遮断された建物内に連れ込まれたそれぞれ7人の男女が…二組、合計14人の男女が、それぞれの館内で起こる、殺人事件を…片方の館よりも早く解決しないと死の代償が待ち受けるという、とんでもないゲームに遭遇する。

綾辻行人などの新本格派を読んできた人たちなら、簡単に見破れるトリック。これがダメというわけではなく…推理小説としては、ベタで楽しめるのだが、キャラクターや背景などがイマイチ。

自分が思いついたトリックのアイデアに酔ってしまったのか…トリックと設定だけで、最後まで突っ走ってしまうので、小説としてやや退屈に感じる。まだ「金田一少年の事件簿」の方が、物語としては面白い。

正直、期待はずれ…。







個人的採点:55点