きみにしか聞こえない CALLING YOU 著:乙一
乙一の短編集…ホラーでもないし、ファンタジー色も強いけど…どのようなジャンル別けにしたりいいのかわからないので、とりあえず“その他のミステリー”にしておく。この間読んだ、「さみしさの周波数」同様…せつない物語。
「Calling You」
友だちもいないので、携帯電話を持っていない高校生の少女…実は携帯電話を持つことに憧れを持っていた。実在しない携帯電話を頭の中にイメージしいると…いつしか頭の中で着信音が!恐る恐る、頭の中で電話をとってみると…それは自分と同じような境遇の少年からの着信であった!?
オチはよめてしまうが…設定の奇抜さが郡を抜く。物語として、無難に綺麗にまとまっていた。
「傷 -KIZ/KIDS-」
“オレ”と同じ特殊学級に転入してきた少年アサトは、他人の傷を癒し…その傷を自分の身体に移してしまうという特殊能力を持っていた。
子供の純真さ、大人の醜さをストレートに突きつけられたような話。
「華歌」
列車事故で恋人を失った“私”は、入院先である病院の裏庭の雑木林で奇妙な植物を見つけた。花弁のあわせめから、髪の毛のような黒いものが垂れ、人間のうめき声のような妙な音を発していた…。
読み終わった後に、思わず前半ページを読み返してしまった。なるほど…まんまとやられました。収録されている他の2作品よりも、どろどろっとした印象…人間の姿かたちをした植物という発想が、おどろおどろしく感じる。最初こそとっつきにくい感じだったが、クライマックスで明かされる真実への違和感を微妙に感じていたのかもしれない。
個人的には前回読んだ「さみしさの周波数」の方が好きかな?でも相変わらず文章の上手さに、拍手。乙一ワールドを堪能。
個人的採点:70点