水の迷宮 著:石持浅海 | 105円読書

水の迷宮 著:石持浅海

 
水の迷宮

石持浅海:著

光文社 ISBN:4-334-07586-X

2004年10月発行 定価890円(税込)












石持浅海は、まだ作品数は少ないのだが…けっこう好きで、過去の作品も読んでいる。今回は水族館を舞台にした、推理小説で…ラストがなかなか感動的。

3年前に死んだ同僚の命日に…羽田国際環境水族館の館長宛に届いた携帯電話の脅迫メール。そして、展示生物を狙った攻撃が開始され…犯人からの要求に、職員たちは東奔西走する。そんな中…館内で殺人事件が発生した!?

相変わらず、舞台設定が巧みで…いかに読者に違和感なく…閉鎖的環境を作り出すかが上手ですね。とんでもない事件が起きているところで、さらに不可解な殺人事件が追打ちをかけるというシュチエーションは前回の「月の扉」にも似ている。


あっと驚くようなトリックというのは存在しないが…論理的に推理を組み立てていき、限られた容疑者の中から真犯人を見つけていくという推理小説の王道的な部分がちゃんと楽しめ…なおかつ水族館職員たちのキャラクターもよく描けていて、非常に楽しませてもらった。


そして…探偵役になるのが、たまたま水族館の飼育係である友人を訪ねてきていた電機メーカーの社員の深澤。あれれれ…もしかしてこの頭脳明晰な一般人…「月の扉」でハイジャック犯に探偵役をおおせつかった、着ていたTシャツの文字から“座間味くん”と呼ばれていた、本名不明の乗客ではなかろうか?

作中でそういった明言はしていないのだが…“八丈流人”という地名の入ったTシャツを着ているセンスとか、その他時々、語られる深澤の情報から、なんとなく同一人物ではなかろうかと推測できる。安易にキャラクターのシリーズものとして描いてないところが、けっこう憎い。







個人的採点:75点