前回書いた経緯を自分ながら改めて見て今、思うことが2つあります。
まずは昔のアメリカ製品に感じた「驚きや憧れの対象」が今は無くなってしまった、ということ。個人的に思うのは、Drake TR-7 (1977)あたりが日本製品を仕様で凌駕した最後の例という感じです。しかし今から期待しようにも、アメリカの有力メーカーはアマチュア無線バブルの時期に集中的に規模を拡大した日本メーカーが台頭した煽りを喰らって、もう全部が退場済です。
続いて、近代的な多機能の中には機器が寿命を迎えるまでの間に一体何回使うかな?、と思うものが増えた事です。これに伴い、押しボタンが異常に増えたパネルを「天然痘」と評した人もおりました。天然痘が根絶される以前には社会的に使えなかったであろう表現ですが、正鵠を得ています。昔の八重洲FTDX400なんてトランシーバーは最高級機だったというのに全てが回転ノブ操作で、押しボタンもスライドスイッチもトグルスイッチも一つもないですよ。かつてFT-200を気に入ってくれたG4DDI局も、今は日本製の microprocessor boxesには興味はないと言い切っていますね。
しかしHFの主なモードであったSSB/CWは今に至るも中心にあり、かつてHF帯でAMモードがSSBに完全に駆逐された程の大転換は二度と起こっていないのです。今は栄えているFT8にしても、いずれ新方式に代わられ発展的に解消されるものでしょうし、Free DVとかDMRデジピーターとかの現代的な技術も将来は同様のことになるでしょう。なるほど主流がSSB/CWに停滞していては、それは昔の「趣味の王様」も地位から滑り落ちます。
しかしそれならば、と開きなおって基本性能と操作性に徹底的に注力したシンプル化への回帰はないのでしょうか。現に昔の業務用の受信機など古株には今でも人気がありますし、いまどきのハムは老人クラブなのですが・・・しかし一般論として日本人は付加機能が大好きですから、やはり商業的には無理なのかも知れません。
シンプル化をあまり強調すると、実用一点張りの業務用ではなく趣味なのだから・・と言われてしまいそうではあります。しかし、アマチュア無線界の新たな通信技術というものは大体が海外の在野の人達が創始しており、日本のハム機器メーカーが主導したものではない、というのが歴史の示すところと思いますが、いかがでしょうか。