八重洲のボールドライブ | アマチュア無線の裏側で

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1970から1980年代の忘れがたい記憶から

八重洲はFT-400の途中からアナログVFOのダイアルにボールドライブ機構を採用しており、それを指して雑誌広告でも製造元の英 Jackson Brothers社の名を出した上で「ゴールデンタッチ」と称しておりました。イギリスのVMARS(Vintage & Military Amateur Radio Society)に投稿されたFT-200の記事(G4DDI)でも "The tuning drive is a British made Jackson, and remains perfectly smooth in my 30year old set." と、お国自慢的に誇らしげに書かれていますし、とにかくFT-101はじめ多くの機種に実績を残しました。

 

さて、メインダイアルはデザイン的にパネルから突出しているので常に衝突の危険がありますが、この際にボールドライブが犠牲になってギヤトレインを守るという(恐らくは意図しなかった)効能もあります。私もこれをやってしまい、精密な心臓部の輸入品だからさぞかし髙かろう、と思いつつ八重洲から取り寄せたら500円(1985頃)だったのには拍子抜けしました。

Jackson Brothersの広告を見ると見当がつきますが、元来はそれほど精密な狙いの製品ではないらしく、一体全体、八重洲はどこでVFOへの適用のヒントを得たのでしょうか? 採用後は高級っぽく宣伝した手法も上手でしたね。しかし全部そのままVFO用に使えたわけではなく、「FT-101メインテナンス・ガイド」によれば選別と擦り合わせと芯出し作業が必要とありますが、私の経験では多少揺さぶって落ち着かせて程度で何とかなっています。

 

ボールドライブの失敗談はほとんどグリスの事でしょう。塵埃が入ったとか固着したとかで洗浄すると、手応えが無くなってカラカラ・ゴリゴリ、果ては空転という顛末です。これはホームセンターなどで容易に手に入るリチウム石鹸グリスではどうにもなりません。あれは見た目は半固体でも、動きを与えている最中はサラサラの油と同様の働きをするものなのです。ここでキーワードは「粘着グリス」。その中でも特に粘稠(ねんちゅう)な物を素材サイトで探せば使えるものに行き当たるでしょう。粘度は半端なものでは駄目で、びっくりする程の物が必要です。

このグリスの働きゆえにボールドライブの回転は「粘る」独特の感触があります。ダイアルの操作感は慣れに密接しているので、最初にトリオ機から入ったユーザーはまず「ボールドライブの方が良い」とは言わないものです。