アマチュア無線の裏側で

アマチュア無線の裏側で

1970から1980年代の忘れがたい記憶から

1970年頃の顕著な動きのひとつはFETの採用が増えたことでしょう。品種としては自作でも、またメーカー採用も三菱のJFET,  MK10が初期の定番でした。当時もN-chならEIAJ規則に従い2SK型番が既に常識で、なぜこれがハウスナンバーで市販が続いていたのか分かりませんが、ともかく安価で入手容易だったのです。なお時代柄、パッケージが2SC710と同じなので銀マイグレーションによるトラブルには要注意です。

 

品種には価格と利用技術の両側面から来た流れがあり、MK10に続いてまずは2SK19と3SK22のJ-FET時代。それからMOSになってトリオでは3SK35、八重洲では3SK40です。やがてゲート接地用に再びJ-FETで米シリコニクス社U310/J310が(メーカー採用よりも海外情報が先行して)現れ、同等の2SK125(ソニー)が標準に・・・あたりまでは潮流と言えるでしょう。

二桁という数字の若さがFETの少ない時代を物語り、同じ頃に2SCなら四桁番が既に自作用にも使われていました。また、ソニーのトランジスタで自作用にも出回った品種は過去に多くありません。

上記の流れで「FET採用で高性能」が当初高らかに宣伝された効能は、「髙安定VFO」と「混変調に強い」でした。しかしVFOへの適用では「トリオのVFO回路」でも書いたように、半導体よりも大きなドリフト要素を潰してからでなければ本当の評価はできません。また、混変調の方では素子と回路次第でもあります。例えばBJTの低いインピーダンスが同調回路をダンプする回路はまずいでしょうし、FETの方が伝達特性で有利、という理屈もあります。しかし素のままでダイナミック・レンジが非常に大きいパワー用BJTの実例もあるなど、まったく一概には言えません。

 

「FET信仰」は同時代のBCLラジオにも存在し、と言いますか、購買層は完全に宣伝に乗せられていました。オーディオでも「電流経路にPN接合がないので音が良い・・」とか、?的 な説明を何かで見た記憶があります。トリオが「IC&FET」、ソニーが「IC+FET」などと少しだけ表現を変えてバネルを飾っていたのは懐かしいものです。しかしそれらを契機にFETの価格は下がり、用途も広がったのは確かです。ほぼ半導体化の出来たトリオTS-520の頃には中枢部以外にも普通に使われ、わずか5年間くらいでもう「FETだから高性能」とは誰も言わなくなっていました。

八重洲FRDX400受信機の特に重要箇所でもない固定チャネル発振が途中で2SC372からMK10に変わっていますが、単にコスト増だったと思います。「高くても使ってみたかった」?みたいな例は割と八重洲にありますね。

昔の雑誌記事にはそれが執筆された時点で既に内容が古いこともよくありました。「カーボンマイクとクリスタルスピーカー」の入手性の事やら、ゲルマニウム・トランジスタの採用などその例ですが、他にも色々と思い出すものがあります。

 

アンテナから同軸ケーブルを室内に引き込むにはどうしたらよいか? 

「子供の科学」誌でJA1HMN 野川氏が紹介されたのは、「窓ガラスの一枚をベーク板に入れ替えてコネクタで引き込む」でした。筆者も「オススメしたいな」と書いていた通り、いいアイデアなのですが、我が家には障子のようにグリッド分けしたガラス窓はありませんでした。可能だった家はその当時でも古い建築だったと思います。

 

続いて、「ラジオの製作」誌にJA1CNE 杉本氏の書かれた乾電池の生死判定の話。まだマンガン主流の頃です。

テスターを大電流レンジ(例えば500mAとかだったか?)に設定し、一瞬だけ触れて勢いよくメーターが振り切れれば使えるとの話。しかし当時もアルカリ乾電池は存在し、これは短絡電流が5Aから10Aにも達しますから、世の中には電池の種類に気の回らない人もいる以上は相当リスクのある提案です。とりわけ内部抵抗の低いニッカド電池ではさすがにいけません。

ちなみに私の場合、2.5V/0.3Aの豆電球の光り具合で判断しており、慣れると1.2VのNiCd/NiMHから、3Vのリチウム一次電池までどれでも見当がつくようになります。

 

同じく「ラジオの製作」誌にJA1ZB 松田氏の投稿された管球式車載機の製作記事について。

これが車載用というのにヒーター電圧が6.3Vなのです。そこで、「今日はこっちの半分、明日はあっちの半分と使えばよい。車載用だから12Vにしなければならない、というのはどうかと思います」、が筆者コメントだったと記憶します。しかし、自動車用の中古バッテリーは当時の入門ハムの愛用品でしたが 6Vのタップは見た事がありません(昔はあったのか?)。また、球式ですからDC-DCコンバータも別途必要で「持っていればハムをやっている限り必ず役に立つ」、という事だったのですが・・・多分、その機会なくトランジスタ時代を迎えた人がほとんどだったと思います。

昔はV, UHFのFM送信機のパワー段には可変容量ダイオード(バラクタ)による逓倍回路がよく用いられました。業務用の450MHz帯はもちろんの事、150MHz帯の車載機も1960年代まではこの形式で、充分に電力増幅した基本波を逓倍してBPFを通しそのままアンテナに出力するのです。動作原理としても、旧式なVHFコンバータの局発に使われた小信号ダイオードによる逓倍とは違い、はるかに効率の高いものです。

 

私がまだ初級の頃、既に430MHz帯は10MHz幅が解放されていましたが435(よんさんご)と呼ぶ習慣もまだ残り、市販機がやっと出たという位の事ですが、144MHzからのバラクタ逓倍の記事がCQ誌に掲載され、当時でも特別感のあった430MHzはおろか、1200MHzまで出力していたのはまるで雲の上の世界でした。

その測定で使われた電力計がBIRDのmodel43 で、オスカーブロックのSWR計しか持たない私にはこれまた別格の存在でした。BencherやVibroplexのCWパドルもですが、半世紀以上も商品として現役とは驚きです。

上記の「バラクタ」とはvaractor diode、それはvariable reactance の意味で、送信出力段に使うのですから何ワットもの電力に耐える部品です。

ところで「可変容量ダイオード」と言えば、普通は「バリキャップ」のvaricap diode、こちらは variable capacitance でFMのリアクタンス変調とか、FMラジオのAFC回路に使われる小信号用を想像する人がほとんどでしょう。今のハムはバラクタ使用の逓倍回路には縁のなくなった現状も関係あると思います。なお、英語資料でもvaractorもvaricapも使われている単語です。

 

それから色々な参考図書や雑誌などを読んでいて、ちょっとした事に気付きました。大体は逓倍に使うパワー用がバラクタ、小信号用がバリキャップですが、両者とも「バラクタ」と表現されることはあっても、逆に全てを「バリキャップ」と呼ぶことはないらしいと感じたのです。

これはどうやら「バラクタ」、varactor diodeの方が専門用語としては一般的で、多分ですが「バリキャップ」は商標起源です。小信号用まで全てを「バラクタ」と書いていた筆者はプロかそれに近い経歴の人だったのかも知れません。

コイル巻き作業では手が緩むとほどけますし、完成後もユルユルで簡単に定数が変化しては困ります。そこで巻止めに使われたケミカル類が二種類ありました。

一つは「マジックハンダ」と呼ばれた飴色のホットメルト樹脂で、半田鏝で扱えるからその名になったようです。巻止め箇所にちょっと塗る感じでメーカー製品にも非常によく使われています。

もう一つの「高周波ニス」は溶剤に溶かした樹脂で、コイル全体への塗工にも使います。市販品ではサンハヤトの「高周波ワニス」が有名で、比較的近年までロングセラーを続けましたが廃品種になりました。

「ニス」も「ワニス」もvarnish なのは塗料の用語で同じですが、なぜか雑誌記事では高周波「ニス」表現が多かったようです。商標登録の関係でしょうか?

高周波ニスの自作は大昔の私が電子工作を始めた頃から知られ、しかも今に至るも内容が全く変わりませんが、発泡スチロールをシンナーに溶解したものです。スチロールを選ぶ理由は、tanδがごく小さく高周波特性の優れた樹脂で溶剤に溶けるものは他に無く(ポリエチレン・ポリプロピレン・テフロン、全部無理)、しかも入手が容易だからだと思います。

 

ところで本家サンハヤトの「高周波ワニス」には「溶剤としてイソプロビルアルコール、酢酸エチル、ブタノール、キシレン、エチレングリコールモノブチルエーテル、フェノールを含む」、と何だか一杯書いてありますが、これは塗料用シンナーにありがちな組成なので恐らくサンハヤトの自家配合ではなく、そういう仕入品だったのでしょう。しかし肝心な樹脂の組成が分かりません。スチロールではない気がしますが、違ったならば高周波的にはスチロール以上という事はないと思います。

 

スチロール樹脂は炭素の含有比が大きいので、燃やすと不完全燃焼の煤が出ます。つまり焼けた後に導電性のカーボンを残しやすいという事であり、私がレアショート箇所に注入した絶縁材としてはよりによって最低の選択でした。それゆえに塗り直しで回復する事は二度となかったのでしょう。

結局、ガラ巻きコイルの構造も、またスチロール系の樹脂も高周波用途のものであり、電源に使うべきではないのです。

レアショートという言葉、本当は「層」を意味する layer ですからレアステーキではあるまいに、レィヤー、せめてレヤくらいにして欲しかったのですが・・・要はコイルの故障の一種です。電源トランスはコイルを何層にも巻き重ねますが、その層間の電位差に絶縁材料が耐えられずに放電破壊して起こるのがレアショートです。

 

アメリカ製の管球式リニアアンプにとっては日本の湿度は苦手なのか? 多いトラブルは固定キャパシタのバンクか、あるいはレアショートで要するに絶縁破壊です。修理はトランスごと交換するのがが本筋ですが、不良箇所が露出するまでコイルをほどき、再びそこから巻き直したという体験談は一度ならず聞いたことはあります。レアショートは現象観察から発生の事実は分かりますが、具体的な箇所は解いてみるまで分からないことが多く、もし深層で起こっていたら巻き直し作業は根性物語でしょう。そんなトラブルがあるのは高圧巻線に違いないので、巻き数も半端では済まないからです。

もう一つ、電源トランスをアマチュア用途に一個でも特注できる先には家内制手工業的な工場が結構あって、中には融通が利いて他社製品の巻き直しも請け負う所もありました。探せば今も皆無ではありません。

 

昔のハム・ジャーナル誌のQ&Aでも電源トランスがレアショートしたがどうにかならないか、という質問がありました。質問者は絶縁材の注入での解決を期待していましたが、回答はショートした経路の全部で絶縁材料が駄目になっているのです、と、それだけでした。それは言外にですが、「もう出来ることはありません、諦めなさい」という意味なのです。これが乾式ではなく油浸漬のコイルだったならば劣化物の流動という効果がありますし、それこそ昔はPCBが活躍した分野ですが、アマチュア規模のトランスの構造ではありません(違法な超ハイパワー局にはあるかも。劣化測定にはフルフラール検査というものがあります)。

 

同じ事は誰しも考えるもので、私も前回書いた自作DC-DCのレアショート事例において、一度は「自作高周波ニス」を絶縁破壊した部分に注入してみたものの、短時間復活しただけで終わりました。再び同じ個所でショートが発生して以後は塗り直しても二度と回復しないという経験をしていたので、「経路上の全てが駄目」という説明には頷くばかりでした。

 

さて、その高周波ニスというものですが・・・ここでまた回を改めます。

コイルの巻き方にも色々とありますが、中波用コイルのように巻き数の多いものは市販品はハニカム巻き、自作ではスパイダーなどと複雑な形が用いられます。これは端から綺麗に揃えた巻き方よりも線間の容量が小さくでき、Qが髙く変な共振点を持たない良質なコイルを作るための重要な製造方法です。その点では、手先ひとつでなるべく無規則に巻くいわゆる「ガラ巻き」でも割に近い効果が得られるのですが、同じ物が二つと作れないのが欠点です。しかし一点物の自作には充分です 。

 

ところで私が中学生の頃、わざわざ新品のヒータートランスを買って巻き直し、小さなものですがDC-DCコンバータを作った事があります。なぜ新品だったかって、もちろん最初はトランジスタともどもジャンクを買うつもりでしたが、以前書いた白衣の糞野郎に難癖をつけられて店を追い出されたというのがその時の話なのです。ただし当時のトランスの価格はインフレ率をスライドして換算しても現在の半分以下だったと思うので、分解を前提で新品を買う事にそれほどの抵抗感はありませんでした。

同時に巻替え用に何種類ものゲージを購入したエナメル線には今も未開封の残りがあります。終活の一環としてこれから使ってやる予定の物の一つです。

そのDC-DCは大変小容量ながら数百ボルトを発生させるので巻き数も多いですし、とにかく手間のかからないガラ巻きをしてしまったのは完全に失敗でした。なぜならガラ巻きの構造では巻線間の交差がランダムな場所で起こるので、たまたま電位差の大きな箇所で交差していると簡単に線間で絶縁破壊するからです。つまりガラ巻きは電圧は低いが線間容量を気にする高周波用途には適しますが、電源用にはよほど低圧でない限り使うべきではありません。

私の場合、まずはDC-DCの出力も確認できて上手く行ったと思ったものの、不用意に無負荷にしたところで電圧が急上昇してせっかく巻いたトランス内でレアショートが起きてしまいました。その時初めて噂に聞くオゾン臭というものも体験したので、無負荷では相当な高電圧が出たのでしょう。これはデューティ比の低いブロッキング発振を使っていたからには、ありがちなことでした。

 

次回はレアショートの事から。

昔は同一人物が同一エリアで複数の呼出符号の免許を受けている事は割によくありましたが、電子化が進んで免許情報の管理が強化され、「名寄せ」で統合に導かれる話は以前も書きました。その際、「固定局と移動局が別なのは可」、と一度は書いたのですが、後で訂正せざるを得なくなりました。今では、少なくとも関東総通では固定と移動も統合の対象になる旨の説明をweb上で見つけたからです。しかしまだエリア違いでは複数コールも適用されています。

 

私もエリア違いの2コール持ちですが、両方実際に使用していれば、もちろん考えなくてはならないのはQSLカードの転送の事です。それがJARLではどのように扱われていたか。

1970年を迎える前には既に別のコールサインでもQSLの転送を受けられる制度がありましたが、当時はその転送手数料が会費と同額の年1,200円だったのです。しかし「個人局の会員資格は個人単位」に付与なので、転送扱いの方のコールサインには投票権やJARL News交付などのサービスがありません。つまり年会費と同額なので別人のフリをした方がお得という不合理で、入会金(それも100円)が免除というだけの差でした。

 

正直者が馬鹿を見る規定でしたが、それで何となく通用していたのも当時の会費が安かったからでしょう。その後は差がつけられ、現行の規定では個人正会員の年会費は7,200円、かつ年額3,600円と会費の半額で転送手数料もまだ存在します。ただしJARLの運営を危ぶませて来たのはQSL転送なので、半分という額がそのサービスの差に比例しているのか?はちょっと疑問はあります。わざわざ転送手数料を払うほどの局はアクティビティが高そうな気がするからです。

 

さて、私は第2コールの転送料を暫くは払っていたものの、負担が急に上がった折に納入を止めました。確か会費が3,000円の時まで転送手数料は1,200円に据え置きだったのが、会費4,800円時に2,400円に倍増したと思います。

しかしその後、「会員資格は個人ごとですね?」と念を押してからコール入りの門標板を注文したところ、第2コールでも問題なく発行を受けられました。それがいつしか駄目になって今に至るのは、JARLも主張が一貫していないのか、それとも私の依頼を捌いた人の判断がその当時でも異例だったのか?

「ラジオの製作」誌を毎月購読していた初心者時代、その連載にJA1AJQ 大沢氏がラジオ少年を経てハム局開局のため、自作に苦労した顛末話がありました。その中で MOPAとCOPAという略語を知ります。前者は Master Oscillator & Power Amplifierの略で、発振器プラス増幅器の構成の送信機を指し、特に水晶発振を使っていれば Crystal Oscillator & Power AmplifierでCOPAとなります。一番単純な形ならば2ステージ、それに逓倍とか中押し増幅が加われば3ステージとなって、それはトリオのTX-88シリーズなどのAM/CW送信機の基本構成です。従って、以前書いたトリオVFO-1は外部VFOという付加機器ですが、それ単体で6AQ5ファイナルの完全な3ステージ・MOPAなわけです。

AM/CW時代は確かに自作は送信機の方が受信機より簡単だったので、COPAを自作して受信機はキットとかメーカー製品、というのは入門から中級クラスまでの標準的構成だったようです。

 

ところが、このMOPAとCOPAという言葉、その後は半世紀以上を経ても超OTの回顧話以外では見ることがなく、典型的な無駄知識になってしまいました。恐らくですが、火花式とかがまだ使われていた時代の造語で、それらと対比して純粋に電子式、それも発振段だけではなく増幅付きの先進的な構成である、という含みだと思います。まして発振方式が自励でなく水晶なら特筆に値するプレミアムで、わざわざCOPAと呼んだのではないでしょうか。

そういえば、以前の免許状の指定事項には発振方式も明記があり、「水晶発振・自励発振」とか記入されていました。それも「水晶発振」だけ印刷済で、「自励発振」はゴム印です。さらに昔のスポット割当て時代は水晶発振限定、その後もVFOだけでは免許を受けられなかった頃の名残でもあったようです。

 

さて、その大沢氏のCOPAの話に戻り、印象的だったのは、「AMとCWの切り替え方が分からず、CWでは変調器の球を全部引っこ抜いた」、という豪快な話でした。私はこれに非常に共感するところがあります。というのは、私もラジオを受信機代わりにするにもミュートの方法が分からず、スイッチで全プレート電源を落とした経験があるのです。これでは無負荷の時に上昇したB+電圧が次に印加される瞬間に不安定な事が起こりますから、AF出力管だけでも通電しておけば随分違ったでしょうが、そんな事は思いつくはずもありませんでした。

先日、しばらく使っていなかった置時計を再び稼働させようと電池を入れても無反応。そこで裏蓋を開いてみてびっくり、電池の片側の板バネ電極に何も配線がないのです。以前は動いていたのだから、これはおかしい。そのうち時計の隅の方から緑色の灰のような物が見つかって全てを理解しました。

 

この電極、ステンレス製だったのです。そこで「これはハンダが付かないぞ」と、困った現場の判断でステンレス用フラックスを用い、その後の洗浄が必要な事は知らなかったようです。それで残った腐蝕性のフラックスが裸銅線をすっかり跡形も無くしたのに違いありません。専門の時計メーカーならありえない作業ですが、クリスタルガラスのメーカーが時計のムーブメントを仕入れて組付けた装飾用時計だったので、そこに無理があったようです。

 

ラジオ工作ではステンレスは半田付けできないものの分類でした。実はかなり昔から可能でしたが、リスクを伴うので初心者への紹介は避けていたのかも知れません。難しいのは強固な酸化被膜が邪魔だからで、錆びない理由もそこにあります。従って強い腐食性の専用フラックスで被膜を除去すればハンダは付く、という理屈なのです。

つまり、ステンレスの半田付けは周囲への腐蝕性が懸念されるので、少なくとも電子機器の内部では避けるべきかと思います。どうしても、という場合はこれで完全と確信できるまで徹底的に洗浄することです。

 

アルミハンダは私は使った経験がなく確かな事が言えません。しかしアルミも強固な酸化被膜が邪魔なのは同じ事なので、やはり経年的な問題があるかも知れず注意に越したことはないでしょう。

 

なお、アルミにオイルを塗って空気を遮断して酸化を防ぎつつ研磨し、その濡れたままの状態なら通常のハンダが付く、という話もあります。実践にはノウハウもありそうですが理にかなっていますし、ステンレスにも適用可能かも知れません。

 

その他のハンダ関係の話題については過去記事の「ハンダの種類と使い分け」、「ハンダ付けに伴う幾つかの話題」をどうぞ。

昔、ハム・ジャーナル誌にJA1AEA鈴木氏が、「オールバンドをコンパクトにカバーするにはスラグ・チューンが最適」と書いていたと思います。私は3バンドまでしか経験はないのでそこまで実装密度を切実に感じた事はないのですが、その通りだなと思う事は色々とあります。

バリコン同調の場合、まず真空管用の耐圧のバリコンは小さくありませんし横方向に展開します。加えて周波数直線など回転角と容量変化の関係を工夫すると、羽根は非常に異形となってしまいます。これに対し、スラグ・チューン(μ同調)では動きは直線的ですし、回転角との特別な関係も不等ピッチの採用や駆動カムの形状の工夫でできます。いずれもコリンズが大昔から実用化しています。

ところが可変インダクターにはバリコンのような多連の汎用品がないのは自作上の難点で、鈴木氏もコリンズの外し品を使っていました。コイルメーカーだったトリオは9R-59や自作向けに全波受信機用のコイル・パックを販売していましたが、初期にスラグ・チューンに手を染めなかったので、その後も無線機一般にバリコン一徹で通したような感じがあります。これに対し、八重洲はFT-101での採用を皮切りに幾つもの機種でスラグ・チューンを活用し(俗にギロチン)、特にFT-301用の機構は160mバンドまで対応しながら本当にコンパクトです。

 

半固定の同調回路を作る場合も、以前はコア入りのコイルを多用しました。それら部品が入手しにくくなり今はトロイダル・コイルとセラミック・トリマーで組む事が多くなりましたが、トリマーは可変範囲が狭く、コイルの方で合わせていた頃より「やり直し」が増えた感じがします。コイルは不等ピッチも可変範囲の拡大に利用でき、そこにも小型化の要素があります。

 

スラグ・チューンが量産で使われた例には昔のカー・ラジオがあります。5個くらい並んだ機械式の選局ボタンで「ガチャメカ」を駆動してダストコアをプリセットした位置まで動かす仕組みが真空管時代から存在し、それは回路の方がIC化しても採用は続いていました。私が最初に乗った日産シルビアS110型の純正ラジオもこの類でした。

あとはゲルマや1、2石程度のラジオでしょうか。ポリバリコンのように簡易ダイアルの付属したラジオ専用の「μ同調器」には市販品があり、「子供の科学」誌あたりの初心者向け工作の素材でした。