アマチュア無線の裏側で

アマチュア無線の裏側で

1970から1980年代の忘れがたい記憶から

DXに興味を持った覚えのある人なら例外なく、そうでなくともCQ誌を定期購読したようなハムなら大概は国際返信切手券(IRC)の事はご存じでしょう。それが近々廃止されます。

 

IRCの事は世間一般を見渡してもアマチュア無線家以外が話題にする事はほとんどありませんし、目に付くところで廃止計画がニュースになる事もありません。従って長期ブランク中の人がこれを見たら、それこそ寝耳に水ではないでしょうか。もっとも、その利用実績の低さと通信の電子化の進展からすれば当然と言えば当然です。

スケジュールとしてはIRCの販売は来月末(2026年9月30日)まで、有効期限は本年末(2026年12月31日)までと随分と猶予期間のない流れで、国際的に厄介者扱いなのを感じさせます。最後の価格改定は2023年で1枚180円となりましたが、しかしその時点でも既に購入できる所は極めて少なくなっていましたから、廃止に向けた実態は着々と先行していたわけです。

 

IRC一枚だけでは本当に最低限の返信費用しかカバーしないので、QSLカード請求用のSASE(Self-addressed stamped envelope)には複数枚を添付するのが通例でした。そういえば昔のハム・ジャーナル誌で、ブーベ島のQSLを得るのにIRCを都合20枚送ったがビューロー経由で届いた、なんて話も紹介されていましたっけ。

ところで、IRCには換金性がありますし、それどころか俗にいうgreen stamps, つまり米ドル紙幣の同封もあるのが悪い配達人達に知られてしまい、途中で抜き取られる事案が海外で多発しました。特にQSLマネージャーにはこの手の封書が集中するだけに紛失リスクも高く、雑誌のDX記事には「安全な送り方」の指南も見られたものです。しかし、SASEによるQSL請求は昔からすれば著しく少なくなって、それも昔話になりつつあります。

 

今は電子化が進み、DXペディションでは「手数料」をClubLog などを通じたウェブ上で払う手段も普及してきました。しかしネットショッピングを連想させる形態ですから、QSLを出す方も貰う方も「award申請の権利の販売」という感覚になりつつあるようで、そこにちょっと抵抗を感じなくもありません。

当ブログも開設から2年ばかりを経て、改めて振り返りをしてみます。

 

本年6月からアメブロもBOT対策されてアクセス統計の様相が変わり、そのアルゴリズムは非公表ですが「一気読み」はかなりの割合でBOT判定されている疑いがあります。しかしリピーター数は40から50名という推測は変わらず、1年前の振り返りから増加はしましたが、もう落ち着き傾向に入りました。私の方からは相変わらず誰にもどこにも当ブログの存在をアピールした事がないにしては、妥当以上の現状でしょう。本当に限られた数ですが、それでも単に日記を垂れ流す種類のブログよりは読まれている手応えはあります。

 

内容については、やはり参照が多いのはリグ談義、あるいは自作話といったテクニカルな要素のあるテーマです。考えてみれば、アマチュア無線の制度や事件に関する話題は「ああそうだったね、懐かしい」という種類のものなので、なるほど私と全く世代を同じにする人々だけにしか興味を持たれないような気はします。読者の年齢的にも50-60-70代がほとんどで、特に60代中心の山型なのがそれを裏付けています。

また、50代と40代との数のギャップが非常に大きく、アマチュア無線人口の著しい分断がここにあるという事がよく分かります。まして10代から20代は、他の目的での検索が偶然に当サイトのインデックスにヒットしただけなのでしょう(タモリ氏とか)。

 

誤字の訂正や思い出し事項の追記は随時行っていますが、特に一件だけ、パーソナル無線の投稿は削除しました。

この記事は昨年末の頃には検索流入によりアクセス数がコンスタントに最多になっていたのですが、私自身に運用経験がないために参照に値する内容はないと思い、一部の記述を他の記事に移した上で元の記事は削除と決めました。これにより直後はクリック頻度が3割くらい減りましたから、云うなれば都合の悪い情報をweb上に暴露されてしまった人々が実行する逆SEO対策も同然ですね。

私は「はじめに」で書いた通りで当ブログの目的は記憶の整理が第一であり、アクセス数には拘泥しないのですが、いざ当サイトを開かれて羊頭狗肉に思われるのは意外、がっかりされるのは存外という思いは持っているのです。

 

自作では感電が一番の危険ですが、その次は商用交流の扱いでしょうか。以前、同軸ケーブルに関する話は書きましたが、今回はそれ以外のことをいくつか。


ある電子工作系のYouTubeで「電源スイッチは片切ではなく両切にしましょう」という主張を見ました。日本の100Vプラグは接地側が一定しない構造なので、電源コードを抜かない限りホット側が半分の確率で常時接続になる。従って両方切断すれば安心だ、という意図で、これは良い着眼と指摘をしたものだとご満悦のようです。しかし・・・

小型の二極双投(DPDT)スイッチで両切りする配線は、必然的にホット・コールドの両ラインがすぐ隣に平行に並びます。密閉環境ならともかく、塵埃と水分がやってきそうな場所では最悪トラッキング現象で火が出る可能性があり、この人はその方面の事は知らないのでしょう。スイッチの素材は耐えても、そこまで来ている平行コードの塩ビ素材のところでこの現象は起こりえます。

また、初心者がこの両切り接続するとチョン付けイモハンダが外れて短絡、しかもヒューズをスイッチの下流に入れてしまうという「しくじり」も併用して、ヒューズを通らずショートという危険もあるかもですね。


ところで、電源トランス一次側の90-100-110Vなどのタップ、特に昔は90Vタップが普通にあったのは、電力事情が悪かった時代には100Vを大きく割り込む事が地域や時間帯によりあったからです。かつて「ラジオの製作」誌のJA1CNE 杉本氏の投稿で、テレビ(もちろん真空管式)の映りが悪くなったらヒータートランスを単巻接続にして100V側に挿入し、電圧を少し上げれば良いとありました。それを正しく100Vが届く環境で常時やってしまうとヒーター電圧過剰で寿命を縮めますから、真空管が安価だった頃ならではの工夫です。今は101V ± 6Vの範囲になければ電力会社に是正を求めることができます。


近年、「電源タップの寿命は5年」とかいう生活の知恵をあちこちで見ます。しかし検索してみると、ほとんどがそれの供給元である延長コードメーカーの主張が元ネタのようです。壁のタップも同じ構造なのに、そちらの方はどうでもいいのですかな? そこはハムなら自己判断できると思いますが、ただし新品のプラグでも定格一杯の15Aでは接触抵抗でかなり発熱をするのは一度体感してみてもいいかも知れません。

なお、日本語の「コンセント」は英語で wall tap, wall socket, outlet などです。日常生活用語なのでどれか一つ、というものではありません。

私は1石とか2石の規模のトランジスタ・ラジオは全部この光和のエレキットで経験したのですが、良い入口に恵まれたと思っています。それはエレキットが優れていたのは機構的な面だけでなく、説明書の内容もだったからです。例えば付属の半導体はゲルマダイオードOA70(松下)とトランジスタはRF用に2SA100(松下)とAF用に2SB54(東芝)でしたが、それだけでもラジオの回路は何種類も考えることができます。しかもそれらを実際にいくつも製作例に掲載した上で各々の特徴まで説明があり、趣味としてならば大人まで学べるような内容でした。

 

それもそのはず、誠文堂新光社関係の著作で有名だった奥澤清吉氏が関係されていたのです。それはエレキットの解説が(理解はしていなくとも)何となく頭には入っていたので、後に「初歩のラジオ」誌などを読むと同様の記述が繰り返し見られる事で気が付きました。

 

回路例はラジオ以外にもワイヤレスマイクとかモールス練習機とかインターホンとか色々とありました。中でも特に教材としての「本気度」を感じさせるのがシグナル・インジェクターとシグナル・トレーサーが含まれていた事で、どちらもラジオの修理用ツールです。

シグナル・インジェクターはブロッキング発振器そのものです。低周波から高周波までを含むので、AF~IF~RFの回路のどこに繋いでも受信音を発生させますから、AFから順に上流に遡って音の出なくなる不良箇所を探すという使い方です。

シグナル・トレーサーはこれとは逆に上流のRFから下流に向けて不良個所を探す道具で、検波器とAF増幅(省略することもある)からなります。

これらの回路は修理用ツールなので単体では何もできませんが、あえて作例に入れていたのは単なる「数かせぎ」ではない事は、他の掲載例の解説と読み合わせてみれば明らかでした。実質的にラジオの原理の解説の一部になっており、奥澤氏ならではの成果物だったと思います。

 

シグナル・インジェクターは便利ですがキットの盤上のままと言うわけには行かず、回路をコピーして実用品を作りました。それがアマチュア無線を始めてからも有用だったので、今も手元に残る唯一の小学生時代の製作物、しかも現役です。

 

まだ1960年代の事、小学生の私が並三ラジオとかの真空管工作をする一方で、トランジスタに最初に触れたのは学習用の電子教材、「光和」の「エレキット」でした。どんな物かはそのキーワードで画像検索して頂くとして、その構造は部品が一個毎の基台にマウントされ、それを穴開きボードに並べてからクリップ付きのワイヤで配線するというものです。

 

これは必要な部品だけを並べ、しかも配置が自由という点は、今の私達がブレッド・ボードやユニバーサル基板で試作するのと全く同じなのです。説明書でもこの利点を活かし、回路図の描き方や信号の流れを意識した部品配置が示されていました。これは教材として実に優れた特徴なのですが、今ではそもそも利点や欠点を評価しようとする事自体の声を耳にしません。ほとんどの人にとっては深く考える以前に玩具扱いで片付けられ、記憶から失われたのかも知れません。


一方で主流になったのは「学研」の「マイキット」の形態で、そちらでは全ての部品はボード上に最初から固定されており、その間の配線だけを行う方法です。確かにその方がローコストで壊れにくそうですが、回路図と対比して信号の流れを考えるのは大変難しくなります。使わない部品まで大量に盤面に混在しているのも見通しを悪くし、両方触ってみれば学習用になり得るのはエレキット方式が唯一無二だと確信できます。まして(これまた有名な)「電子ブロック」は教材の顔をした実際は玩具でしかありません。


私はエレキットを兄弟に、つまり2組プレゼントされていたので後には回路の組み合わせ、例えば2石ラジオの掲載例にもう一石増幅を加えるなども試していました。そう書くと簡単そうですが、実際には回路同士の接ぎ方がわからず、かなり試行錯誤したものです。

エレキットのその後は部品取りとなり、ツマミ(旧JIS 規格のイモネジ!)とGeのトランジスタ、それにソリッド抵抗は今も手元に残っています。バリコンはポリバリではなく真空管用の立派な物でしたが、電極タッチを直そうとも思わず捨ててしまいました。今思えばこれが一番価値がありましたね。

 

ひと月半ほど前のこと、2026年の5月、秋葉原の東京ラジオデパートで「門田無線電機」(カドタではなくモンタ)が閉店しました。これで電子工作用の部品を商う老舗がまた一つ消えた事になります。

 

東京ラジオデパートの現ビルは1973年の建築ですが、私は前身の木造の頃から通い始めた場所です。現ビルに新築なった時から電子部品商が数では多くを占め、老店主のシオヤ無線とか接客のできない店とか、このブログでも幾つか話題として取り上げて来ましたし、今後も間違いなくあるでしょう。しかし当初からの老舗も閉店に次ぐ閉店で今も当時のまま、という店はもう片手くらい?の数ではないでしょうか。

 

東京ラジオデパートはエスカレーターが一か所で、それを囲むように店舗が配置されています。つまり各フロアの通廊は2本に分かれた構造ですが、最上階(3F)で降りて左に向かうとエスカレーターの真横が門田無線でした。ところで私は引っ越しを重ねながらも、そのうち通算40年間は秋葉原に通える距離内には居住したのでラジオデパートにも数知れず出入りしましたが、この門田無線の面した廊下だけは1976年を最後に今年でちょうど50年間も歩いたことがありません。そこを通らなくても門田以外の店は一つ残らず出入りできたので不自由しなかったのです。まぁ、きっかけはごく個人的なこととだけ。ただし習慣として長く続いてしまうと、私のような迷信深い人間はジンクス的な事を恐れて止めるに止められなくなるものです。

ですから冒頭の書き出しの様子からして門田無線の思い出話か、と思われたら期待外れの大違いなのですが、息の長い趣味なれば、他人から見たら馬鹿げた事のひとつふたつは誰にでもあるものでしょう。

 

さて、秋葉原の駅前には「ラジオ会館」というこれも昔から有名なビルがありますが、私の秋葉原通いの人生の中で旧館を取り壊して再建・・・したそのビルがまた取り壊しと再建という歴史を見ています。終活を考えるほどに私も年齢も重ね、そういう例は幾つも見るようになってきました。ただし次の再建時には私はもう生きていそうもないですね。

管球式時代のアマチュア無線機はどれも内部に余裕があり、改造や回路の追加は充分に可能だったので、工作好きのハムは色々とやってきました。大掛かりなものでは、CQ誌にCW/AM機・トリオ9R-59D/TX-88DラインのSSB化記事が掲載されたことがあります。特に送信機は新造にも近くなりますが流用可能な部品も多く、元々59Dラインのキットは個別に部品を買うのと大差ないと言われた廉価設定だったので、秀逸な外観デザインが手に入る分はお得だったと思います。ただ、その力作の改造も性能は同時代の八重洲の普及機・FL/FR-50Bラインにも及ばなかったのでしょうが、完成までの過程が趣味の醍醐味でしょう。

 

9R-59Dは原型が高1中2ラジオなので「改造」はどうしても改良というより回路の追加が主になりますが、私は説明書にもあった局発のバッファ定電圧放電管マーカー発振器を追加したのはもちろん、FM用のIF(Tr式)回路の追加、ハム軽減のヒーター直流点火、最後に外部ユニットを製作してデジタル表示にしています。その他に色々所有している管球機は原型での動態保存を心がけていますが、八重洲のFL/FRDX400ラインは「たすき掛け」方式ではないのが物足りなかったので自作のデジタル周波数メモリーを組み込んであります。その他手放した物ではFR-101DD用のバンド拡張用シンセサイザとか直読式の周波数カウンタへの交換とか、トリオの2m/6mクリスタル・コンバーターCC-26が中身はガラガラ、ほとんど空洞なのでトランスバータ化したとか、それは色々と遊べました。

 

かつてスタンダード工業が改造を勧める広告を打ったことがあります。スタンダードの機器と言えばV, UHFのポータブル及び車載用という商品群なので、構成はソリッドステートで小型ですから実装も高密度、普通に言えば改造には向かないような製品ばかりだったのにも関わらずです。その雑誌広告ではケースを開けたトランシーバーと工具を前にしたお兄さんのイメージ写真があっただけで、何も改造アイデアの提示もありません。もちろん改造すれば保証など無くなります。

サービス部門からすれば迷惑でしかないその広告の真意は今でも不可解なもので、「自作派の精神も理解していますよ」というアピールだったのだろうか?と思うしかありません。

テレビも大型化に従って水平出力管も強化され、日本では12DQ6や21JS6や30KD6を経て、多分、松下の40KG6Aが最大到達点です。いずれも600mA管ですからカソードを加熱する電力は頭の数字(ヒーター電圧)に比例して大きく、これらの6.3Vヒーター管の6DQ6B(50W用)、6JS6C(100W用)、6KD6(200W用)を八重洲が主に採用しましたが、他にも6DQ5、12B-B14、6JM6も単発的に動員しています。

最大である40KG6Aはテレビ受像機がソリッドステート化される間際、つまり真空管式は全てトランスレス化されていた時代に登場したので、6.3V管の6KG6は海外だけで日本製はないと思います。また、外国製の6JS6や6KD6が八重洲機には使えないのと同様、どこの国の6KG6/40KG6も松下の40KG6Aとは互換性の保証はありません。むしろ別物です。

 

さて、松下が6146/6146Bの安価な代替品としてトリオ向けにS2001を製造したのに引き続き、S2002(コンパクトロン管)とS2003(オクタルベース)も上市して「シングルでも100W機が可能」、をメリットにハム用に営業をかけたという噂を聞いた事があります。これらは電極構造は40KG6Aそのものの流用で、ヒーターを6.3Vにしたものです。ならば、S2002は松下が作らなかったはずの6KG6そのものではないかと? いや、40KG6Aはマグノーバル管ですからソケットが違います。

 

S2002は松下RJX-1011という当時は国産最高価格(43万円)のトランシーバーが唯一の採用で他に使用例はない(S2003も)、と一般に言われていますが、小さなメーカーがリニアアンプに使った例があったはずです。いずれにせよ構造的にはテレビ球そのものという事実から推測できるのは、当初から市場の狙いはハム専用で、耐久性を問われる産業用途は想定になかったのでしょう、S2001ならプロの使用例も見たことがありますが、あちらは6146という真正の送信管が原型ですから基本構造からして違います。

 

水平出力管が比較的低い電圧でも大電流が可能なのはカソードの電子放出能力にあり、そこを最も節約した電池管とは全く逆の設計です。従って開発のポイントも、また残された弱点もカソードに皺寄せされていて、酷使された水平出力管では陰極物質が剥落して管内に落ちている事があります。カソード温度が不均一だと電流のスポット集中により一段と傷みやすくなるので、ヒーター電圧の不足は禁物です。

さて、前回より話題にしているテレビにも改めて説明が必要な時代になってしまいましたが、アメリカと共通化されたNTSC規格でラスター・スキャンによりブラウン管(CRT)に画像表示するという、2011年の地デジ化完了で廃止されたアナログ方式の物で、それも真空管時代の機器を対象にしています。

 

ラスターで描画するためにはスキャン回路は垂直と水平両方に必要ですが、垂直側は16A8(6BM8の16V版)とか18GV8といったmT型のビーム管でも賄えても、水平方向は周波数がはるかに髙く(と言っても15.75kHz)低インピーダンスを駆動するので大出力の素子が必要です。ところがそのレベルのパワーを扱うには、どうしてもプレート電圧が高くなりがちで普通なら高価で大型な耐圧部品が必要となり、絶縁対策も厳重な実装になってしまいます。工業機器ならその手の設計こそ常道ですが、そのようなコストの掛かる内容ではテレビは家庭に普及しません。

 

しかし同じパワーなら少しでも低電圧・大電流で稼ぐ方が安価に仕上がるので、それが価格を抑えなくてはならないテレビ受像機が大型化するに従い、低いプレート電圧でもパワーの出せる水平出力管が次々と新規開発された理由でした。球自体が安価、かつ、バリコンなどの部品も高耐圧が不要ならばハムの送信用にも渡りに船で、元々が高周波向けの管種ではありませんがHF帯の増幅なら何とかなったのです。

余談その2 水平出力の15.75kHzは送信機のごとき大出力ですから、フライバック・トランスやら偏向コイルやらを振動させて大きな音響となって漏れていました。しかし一応は可聴域内とは言え、当時は誰も気にしないでテレビ視聴していたのです。つまり、その程度の周波数のモスキート音を流すくらいでは若者の溜り場からの追い払いがロクにできるわけがありません。

余談その3 水平走査信号は鋸歯状に近い上に大電力ですから、高調波も15.75kHz間隔で一杯出ます。特にローバンドでは邪魔で、大事な場面ではテレビをオフにするのも当たり前でした。特にこの雑音を「バズ音」と呼ぶ事が多かったのですが、「ブザー」とかネット用語の「バズる」のbuzzと同じなので本当は「バズ」だけで充分ですし、意味ももっと広範です。

 

当ブログでは目下のところ、最多アクセス記事はトリオの終段管シリーズです。ほとんど検索からの流入なので、恐らくは代替品とか購買情報を求めて来られているのでしょう。ただし、それだけ終段に真空管が現役で使われている背景があるはずなので、テレビの水平出力管に関しても書いてみる事としました。

 

テレビ用の水平出力管は安価にして大出力が得られる手段です。例えばアメリカのハム用機器というと物量と高価格のイメージが強いのですが、当然あちらにも小遣いの乏しい無銭家と廉価品市場は存在し、テレビ球の6LQ6とか6LF6を用いたリニアアンプが昔は販売されていました。ちなみに6LQ6はトリオも採用。また、6LF6は40KG6Aと同様に最大クラス(Pd=40W)の水平出力管です。

 

テレビ球は日本では製造中止になるまでもっぱら八重洲無線が採用を続け、中でも大型の管は6KD6 (Pd=33W)でした。私が初心の頃、雑誌で6KD6は条件が良ければ1Aでも流れると読んだ事があります。それどころかピークでは1.4Amax(連続でも0.4A)とかいう数字も規格表には見えます。その1Aという電流値を私が想像する目安は、昔の自転車が搭載していたダイナモ式ヘッドランプの6V/6Wという電球でした。

余談その1 かつて三洋電機・eneloop ブランドで電動アシスト自転車が販売されていましたが、実は三洋と自転車業界の関わりは遥かに古くからあり、ダイナモと投光器とBA15s口金の自転車用電球で長らく主力メーカーでした。

100V/100Wの照明用電球でも1Aですが、そちらはどちらかといえば100Wというパワーの目安でした。ともかくその1Aという電流値が6KD6の(見た目は何も存在しない)真空中を流れるというのがまず直観に反しますし、まして800Vとか1,000Vならそのパワーはいかほどなのかと、最初に想像したのがそのような事でした。

当時のリニアアンプは本当に無茶をしたもので、6KD6の最大定格990Vとか自然空冷許容ブレート損失33Wなどどこ吹く風、1,250Vだとか強制空冷で数秒間なら実損失200Wとかそんな感じです。リニアの世界には「本格的送信管」というキャッチフレーズもありましたが、テレビ球は「本格的消耗品」でした。