DXに興味を持った覚えのある人なら例外なく、そうでなくともCQ誌を定期購読したようなハムなら大概は国際返信切手券(IRC)の事はご存じでしょう。それが近々廃止されます。
IRCの事は世間一般を見渡してもアマチュア無線家以外が話題にする事はほとんどありませんし、目に付くところで廃止計画がニュースになる事もありません。従って長期ブランク中の人がこれを見たら、それこそ寝耳に水ではないでしょうか。もっとも、その利用実績の低さと通信の電子化の進展からすれば当然と言えば当然です。
スケジュールとしてはIRCの販売は来月末(2026年9月30日)まで、有効期限は本年末(2026年12月31日)までと随分と猶予期間のない流れで、国際的に厄介者扱いなのを感じさせます。最後の価格改定は2023年で1枚180円となりましたが、しかしその時点でも既に購入できる所は極めて少なくなっていましたから、廃止に向けた実態は着々と先行していたわけです。
IRC一枚だけでは本当に最低限の返信費用しかカバーしないので、QSLカード請求用のSASE(Self-addressed stamped envelope)には複数枚を添付するのが通例でした。そういえば昔のハム・ジャーナル誌で、ブーベ島のQSLを得るのにIRCを都合20枚送ったがビューロー経由で届いた、なんて話も紹介されていましたっけ。
ところで、IRCには換金性がありますし、それどころか俗にいうgreen stamps, つまり米ドル紙幣の同封もあるのが悪い配達人達に知られてしまい、途中で抜き取られる事案が海外で多発しました。特にQSLマネージャーにはこの手の封書が集中するだけに紛失リスクも高く、雑誌のDX記事には「安全な送り方」の指南も見られたものです。しかし、SASEによるQSL請求は昔からすれば著しく少なくなって、それも昔話になりつつあります。
今は電子化が進み、DXペディションでは「手数料」をClubLog などを通じたウェブ上で払う手段も普及してきました。しかしネットショッピングを連想させる形態ですから、QSLを出す方も貰う方も「award申請の権利の販売」という感覚になりつつあるようで、そこにちょっと抵抗を感じなくもありません。