国産アマチュア機においてGe TrからSi Trへの転換が充分に進んでいた1970年頃でも、まだ電力用途についてはGe Trもよく見掛けました。例えば井上電機のIC-71では変調器終段、および専用の電源ユニットではTO-3型Ge Trの2SB426が使われています。それらの用途にはSiで何も問題ないのですが、当時はパワー用ではまだSi とGeは価格で良い勝負でどちらも選択肢にあったのです。実際、「井上IC-71とトリオTR-5200」で書いたように井上が「模倣」と嚙みついたトリオTR-5200は同世代ですが、変調器は2SD234とSi Tr化済でした。
それらと型番が一つ違いで規格も大体同じ2SB425と2SD235とともに自作の定番、しかも一番人気の東芝製。当時はそのあたりのトランジスタが量産品だった事がうかがい知れます。
ところがDC-DCコンバータでは少々特有の事情があり、Si TrよりもGe Trの方が効率の良い物が簡単・確実に作れます。出力100ワット級ともなれば、その真空管の終段を動かすためのDC-DCコンバータは12V で30A近くを扱いますからこれは重要なことで、トランジスタに要求される耐力も10ワットAM機の変調器の比ではありません。FT-101が発表された際、その宣伝資料で目についたのは存在感あるヒートシンクに付いたDC-DC用のGe Trと、それに表示されたDELCOというアメリカの見知らぬブランドでした。
Ge Trではもう新製品が開発される時代ではなかったというのに、どうやら国産品はハイパワー品では無駄に高価、あるいは今ひとつ信頼されていなかったようなのです。FT-101より後の発売、かつロングセラーだったトリオTS-520でもDC-DC用はモトローラ製のGe Trでしたし、大学にあった日立のミニコンピューターでも電源部だけはアメリカ製のパワートランジスタが並んでいるのを見て、そのような感想を持ったのでした。