今のようにオークションとかメルカリとかがない頃、無線機や部品の売買に使うのは基本的にどこの雑誌にもあった「売ります買います」コーナーが主なもので、他にはハムフェアなどのフリーマーケットでした。私も売買ともに随分と利用したものです。「ハムに悪い人はいない」、などというのは当時から幻想で、一定割合で悪徳なのがいるのは現在のオークションと一緒でした。
当時は電話番号は"104" の番号案内で簡単に調べられたので、特に「売ります」の投稿では電話番号を載せていなくても、雑誌が発売になるや否や何本もかかって来ました。私はこれを公平さを欠くフライングと見ていたので、「手紙が何通か届いてから判断します」と答えていました。取引条件は比較すべきものであり(悪徳なのもいましたから)、それが電話では一対一交渉になってしまう、という理由もなくもないですが、それより律儀に手紙を書く人を無視したくはなかったのです。
なお、秋葉原の一部の書店ではCQ誌は公式発売日の前日には店頭に並んだので、それで一日早く出物を見る事ができました。フライングとまでは言えない「知る人ぞ知る」の手段でした。
とにかく電話番号案内や電話帳の配布もそうですが、この時代は個人情報保護の観念が守る方にも守らせる方にもほとんどありません。雑誌の筆者でさえ、記事の中で住所を公表して質問や意見を受け付けていました。それに、「売ります買います」コーナーだろうと、雑誌に住所を書き込めばそれを元にダイレクトメールがやってきます。
1968年、未解決事件として今も有名な「三億円事件」が起きました。その証拠遺留品の中に「電波科学」誌の断簡があったのです。ある時、その捜査のルポ番組を見ていたら、「電波科学」誌のバックナンバーを机に積み上げ、読者コーナーに出て来る個人名を全部リストアップしている光景が映し出されました。そんな事をしたからには、聞き込み・張り込みも大規模に行われたのでしょう。私も売買利用程度の事から嫌疑を受けてはかなわないな、と思ったものです。