かつてNHKの人気番組「ブラタモリ」の中で、ex JA6CSH タモリ氏が水晶発振子を見ながら「これに電気をかけると発振する」、とコメントするシーンがありました。今風にモジュール化された水晶発振「器」なら確かにそうですが、「発振子」の方は原理として違います。
このよくある誤解の元は、世にある電子工作の解説がどれも「これが発振する回路」という立場でしか書かれていない事かなと思います。むしろ発振子の働きの説明は、回路の中で正帰還を止めているものの、その阻止能力には周波数的に落とし穴があってそこで帰還して発振が起こってしまう、と言う方がまだ良いかと思います。
古い形式であるFT-243型パッケージはベークライトの筐体に金属板の蓋をネジ止めした構造です。トリオTX-88A/D送信機や日新バナスカイ・マーク6トランシーバーのパネル上にある水晶ソケットもFT-243用で、1970年までくらいの「自作用の」標準です。ただし当時も既にメーカー製品が使うのはハーメチック・シール化されたHC-6/U, 18/U, 25/Uでしたし、逆に自作で米軍ジャンクのFT-241型を集めて選別だとかラティスに組んだとかは私以前の世代です。
私もFT-243型は新品で入手した4個が手許にあります。購入したのは秋葉原のラジオセンター・二階にある「菊地無線電機」で、1970年代初頭のこと。一個 800円とは水晶発振子としては少し安い方でしたが、当時でも旧式でしたから古い仕入れ品だったのでしょう。「菊地無線電機」は恐らく当時から業容も店の構えも、また主人も一切変わっていないという点では秋葉原で最古の店だろうと思います。その水晶が置かれていたガラスケースも当時のままです。
FT-243の脚は真空管のオクタル・ソケットのピンひとつ飛ばしの幅が適合し、部品入手に苦労した時代のOTの自作品のパネルにそれがあれば水晶用と思って間違いありません。専用のFT-243ソケットは買い占められた部品の一種で、ディップメーターのコイル用などにも使われてHC-6/U用よりずっと早く枯渇し、最後に買ったのはラジオデパートの「シオヤ無線」でした。ここもラジオ部品を扱いつつ老主人が長年頑張りましたが、ついに2023年に閉店してしまいました。
追記 ちょっと目を離していた間に菊地無線電機も閉店していました。また一つの時代の終わりです。