アマチュア無線の裏側で -3ページ目

アマチュア無線の裏側で

1970から1980年代の忘れがたい記憶から

電波関係の手続きも年ごとに電子化が進みましたが、昔は全て紙での提出、しかも正本副本の2部作成が必要だった、などの事情は「工事設計書の記入」でも書いてきました。しかし、今月(2025/10)から無線局免許状さえも電子化されたのを機会に、もう少し詳しく思い出してみます。

 

当時の電波法には「アマチュア局では免除・省略」、という例外規定は今よりもかなり少なく、何かにつけプロの世界と同様でした。例えば船舶の通信室などプロの局を見学すると、壁に掲載された無線局免許状などの体裁は全くアマチュア局と同じですし、それにハムだからといって指定事項などの項目の省略がないのにも気づきます。「一体どこが違うかな?」と興味を持って眺めていたものです。そのような中、10ワット局のJARL保証認定による予備免許と落成検査の省略は導入済でしたから、これは当時としては大変な例外措置だったのです。

ただし、JARL認定登録機種の制度による工事設計書のブロック図記載の省略は未実施で、それを全部手書きするのは大変な作業でした。ですから開局申請代行を始めた販売店もあったのでしょうが、大した対価が取れたとも思えず、割が合わない仕事だったことでしょう。

 

とにかく私・駆け出し者には申請書類をどの程度丁寧に書く必要があるのか分かりません。極端な話、印刷済のブランク様式を使わなくては受理されない、くらいは無意識に思っていました。考えてもみてください。小学校から中学に上がるくらいの子供にとって無線関係の手続きとは、親の保護下でもなく自分ひとりの名の下で行なう恐らく初めての公的申請行為です。当時は私の身近に指導者はおらず、用語からして難しいのにまして手を抜く算段などに頭は回りません。

 

もちろん本当は法の指定する内容ならば全て手書きで構いませんし、黎明期の申請者は誰もがそうしていたのです。 私は6m 1W移動機のトリオTR-1100があったのに移動範囲を陸上だけで開局してしまい、後に海上を追加したのが最初の変更申請でしたが、その時には市販の様式を買わずに法令集を見て手書きする知恵を得ていました。

 

八重洲の初期のHF機、例えばFTDX100とか初期型FTDX400トランシーバーやFL/FRDX400送受信機などのダイアルは一回転当たり50kHz変化でした。続いて25kHzがしばらくの間主力となり、さらに後にFT-101などの「いわゆる100kHz」ダイアルになりました。何が「いわゆる」なのかというと、50や25kHzのダイアルと違い「100kHzダイアル」の1kHzスケールはノブと一体ではなく間にボールドライブを介して減速されて回転しており、実際の操作で言えば大体16kHz/回転だからです。トリオもほとんど同じ推移で、TS-500の50kHz、続くTS-510の25kHzを経て、TS-520などの「100kHzダイアル」に至り、これが国産では機械式VFOの到達点です。

 

いずれにせよ減速比は大きくなる一方で、デジタルの時代を迎えると、キリの良い10kHz/回転仕様が現れます。これについてアメリカの雑誌のレビューで「10kHz/回転は粗すぎる、5kHzくらいが良い」とあったのを見て、この筆者はどれだけ不器用なんだ、と思ったこともありましたっけ。

私はまさに50kHzと100kHz仕様のFTDX400を所有して両方に慣れていますが、確かに50kHz/rev.は少し慎重に回す必要があるもののSSB/CWでは問題なく、広いバンドのサーチは楽、かつ微妙な同調も両立できて操作性は良好だと感じています。この点、現在の機器にある「回転速度感応」の早送り機能では「何か聞こえた」、という瞬間に急停止は難しいので、決して50kHz/回転のダイアルと同様には使えないのです。

 

井上の6m AM/FM機、IC-71のダイアルは独特で、左右どちらにも半回転ほど回すと急に手応えが固くなり、言うなればバックラッシュが半回転もあるノブのような操作感なのです。それはその点を境に減速比が1/36から1/6に切り替わるからで、ワンノブで自在に移動ができる便利な機構でした。ただし糸掛け式でしたから、いずれHF機ではギヤトレインによる製品が出るだろう・・と当時は予想したのですが、これはハズレで、次にはもうシンセサイザーとエンコーダーの時代になってしまいました。

「アンテナとリニアはアマチュアに残された最後の聖域」・・・

という「わかったような」台詞は昔から存在しました。「送受信機の自作は難しく、メーカー製に何もかも及ばない」、という事で、SSB普及が一巡した頃から言われ出しました。昔、実力不相応な背伸びルポをCQ誌あたりに書いていた某氏が火元臭いと私は睨んでいるのですが、それはさておき、少なくとも工作経験の乏しい人の発言だろうと思います。

 

本当はその頃にはもう自作の理由には「メーカー製は買えない」という要素はほとんどなく、「技術が身につくし、何より楽しい」が原動力でした。例えば「スポーツなど疲れるためにお金を浪費するだけの無意味」と主張したら「体が丈夫になるし、何より楽しい」と言い返されるのと同じです。それにHFのSSBで最も難しいのはマルチバンド化であり、モノバンドならばハードルは格段に低いのです。それでも中学生とか新品に手の出ない層はもちろんいましたが、当時は既に市販の機器も歴史を経て、諸雑誌の売ります買いますコーナーばかりでなく、中古の流通もありました。それで手に入る6m 1W機など安いもので、入門はそれで充分できたのです。

 

「分かっていない人の分かったような発言」、で同類なのは「自作はメーカー製より高くつく」です。部品を全部新品で揃えたらそうなるでしょうが、自作趣味の者はタダ同然で入手したジャンク部品を必ず持っていますし、そもそも市販品と同等の機能を目指すとは限りません。

 

なお、真空管式のリニアアンプは確かにメーカー製以上のものが自作可能でした。過去形なのは、真空管リニアは部品点数も配線量も少なく、それら部品がかつては中古で入手可能、今は困難だからです。メーカーは新品の部品しか使えないので貧弱な572Bとかで頑張りましたが、アマチュアの一点物ならジャンクでハイスペックな部品も使えますからね。

この点、アンテナの方が素材の入手・重作業・耐候性工作などと、電子系とは畑違いのスキルがないことには自作可能な形式の選択肢は狭いものでした。ハムの世界にパソコンが入ってくる少し前の頃、雑誌のネタが枯渇しかけて、製作・実験記事がアンテナに偏ったことがあります。特に、一時期の某誌が「釣竿アンテナ」ばかり掲載していましたが、それも、この無責任なフレーズの弊害の一つだったかも知れません。

 

コリンズのKWM-2トランシーバーなどを見るとRF出力が100Wクラスなのに端子がRCA, つまりピンジャックなのには大概の日本人ハムは驚き、かつ不安になるのがお約束です。しかしオームの法則で仮に100Wを計算すれば、実効値で電圧は70V程と電流は1.4Aにしかなりませんからまったく問題視するに値しません。もちろんインピーダンスが整合値から外れると電圧も電流も高くもなり得るのですが、その振れ幅まで考慮したところで全然大した事はないのです。

 

ここまで書いてみて急に思い出したのですが、かつて「1.5D-2Vでも整合すれば1kW通せる」、と雑誌記事で読んだ事があり、さすがに直感的に無理そうに感じてそのまま忘れていました。

さて、気づいたからには確認してみましょうか。まず電圧は224Vになりますが、ポリエチレンの絶縁耐力は高いのであの直径でも全く不安はありません。また、誘電正接もプラスチック素材中最良なのでその損失も問題にならず、心配すべきは細いがゆえの端末処理の失敗だけです。なお、真空管式のリニアアンプでRFデッキを電源部から離す場合、アマチュア的には何kVという高圧配線用に同軸ケーブルを使う事がありますが、これも耐圧性能が信用に足るからです。

しかし表皮効果を無視しても電流の4.5Aというのがかなり大きく、あの芯線の細さで大丈夫だろうか?とこちらの方が気になります。ところが、規格の0.18sq撚線というのを一般的な電線の仕様と比較してみると、確かに電流許容値あたりに相当するようで、つまりは1.5D-2Vで1kWとは条件を整えればギリギリ正しいようなのです。私も意外でしたが、1kW用には5D-2Vでも不安な人が多いのではないでしょうか。

 

さて、以前「同軸ケーブルに商用電源100ボルト?」の投稿で、同軸ケーブルをACコードの代用とするのは御法度、と書いたきりそのままにしていましたが、絶縁トランスを介すれば許されるのかも知れません。これを否定するとリニアの高圧ケーブルはじめ、多くの自作の要素が引っ掛かってしまいます。但し全く無条件でもないのでしょう。そのあたりの事は私にも知識がありませんので、ここでは指摘に留めておきます。

 

既に2SC710と2SC460では銀マイグレーションにより不良化する話、それと「井上IC-71と深夜放送」でもその採用の事など少し書きましたが、特に代替品の話を改めて。

 

これらの代替には「小信号用なら何でも、例えば2SC1815」、という意見は実際よく見ますが場所によりけりです。2SC1815は前回書いた通りで、実用的なコレクタ電流領域でも結構髙い周波数まで増幅しますから、例えばHF機の発振やバッファには立派に使えます。また、メーカーや機器によっては、品種統一を優先してAF増幅にも2SC710を使っている場合もありますが、それを2SC1815で代替するのはむしろ好都合、それこそ元々「低周波電圧増幅用」なんですから、僅かとはいえノイズも減る方向です。

 

しかし、低電流でなるべく大きな変換出力を得たいコンバータ段とか、AGCのコントロールが最重要な IFの初段には明らかに向いておらず、そこは餅は餅屋で、データシートにRF, MIX, CONV などを用途として書いてある品種が適するのです。半導体メーカーがそれこそ山ほども品種を作り分けたのにはちゃんと意味があります。

このようなラジオにおけるトランジスタの適性と使い方の話は、私は最初に奥澤清吉氏の著作で覚えました。氏の記事は目的は製作でも、設計を理解するための手掛かりがあるのが特徴でした。

代替品としてよく候補に上がるものでは2SC1675が入手しやすいでしょう。hFEランクを大体でも合わせればまず問題ないはずで、トリオ/ケンウッドでも回路図中で「2SC460 or 2SC1675」という形で図面指定している場合があります。たまたま私の場合はよく似た2SC1674を昔々に多数購入していたので、それを利用していますが、もちろん充分です。

また、2SC829も「トランジスタ互換表」に記載されていたので代替品としてよく言及されます。松下のカラー・テレビに使われて多く流通しましたし、私もジャンク品を持っていますが、雑音が多めという噂が昔からあって敬遠してきたので実際のところは知らぬままです。

 

表題のトランジスタの事は過去記事でも関心が髙いようなので、まずはひとつ。

 

A 「2SC1815はhFEの直線性が素晴らしい。真の代替品はない」

B 「そのhFE特性を使って何を作るんですか?」

 

これはネット上のやりとりですが、その下心は明白です。Aはオーディオマニアで「hFEの直線性が良ければ低歪のアンプができる」、と信じたいのですが根拠がなく、「そうです最高なんです」という聞きたい回答を誰かに期待しているのです。

これに対しBは、Aのその意図は知った上で、かつトランジスタ増幅器の歪はそんな問題ではない事も知った上で、はたまたAは質問返しに答えられないであろう事も予想して意地悪をしているのです。なかなかの「第1級イジメ質問」ですね。

ちなみに、この手の掛け合いは過去何度も行われ、恐らく今後もあるでしょう。野次馬根性丸出しで見るのが痛快です。

 

それにしても、2SC1815のhFEのフラットさは実にコレクタ電流 1μAくらいから数十mAまでにも及び、その優位は本当に何で活かすのが有効なのでしょう。温度係数をキャンセルした上で直流の測定器とか考える事はできますが、OPアンプを使った方が良さそうですし、アマチュアの私では知恵が足りません。

 

2SC1815のデータシートで示された推奨用途は「低周波電圧増幅用」です。ここからなのか、「fTが80MHzしかないのでRFには使えない」、という意見はこれまた散々目にしましたが、fTはコレクタ電流依存性が強く、3mAという普通の実用域でも200-300MHzには達します。それが証拠に、80MHz台のFMワイヤレスマイクにも採用例があります。もちろん、2SC2347とか2SC1906の方がもっと向いていますが、微弱電波ではなくなりますね、多分。

 

2SC710や2SC460の代替に2SC1815が使えないか? との興味もまた深いようなので、それは次回に。

今時の無線機の周波数は一つの源発振による管理が主流ですが、そこに外部の基準発振を接続できる機種もあります。アマチュア無線用としては過剰スペックですが、超高精度もお金か工夫次第で身近になりました。

 

周波数カウンタなどの基準にはカラー・テレビのサブキャリアが利用された事もあります。これは放送局側のルビジウム発振器の精度が大元で、秋月電子のキットが有名でしたがアナログ地上波の廃止で終わりました。しかしルビジウム発振器自体が入手できればそれが一番です。かつて私もそのひとつ、EFRATOM LPRO-101の中古が安価に出たと噂を聞いてeBayで入手し、カウンタ(FR-101用自作品の再利用)と一緒にケースに組み込み現用中です。私の所有する周波数カウンタ、SSG、FG、スペアナは全て外部基準にロック可能なので、その用途です。

 

ところでこのLPRO-101がデジタルオーディオのクロックに使うと音質向上するとかで(1bit ADのジッター対策、でしたか?)後に評判になったのです。こうなると日本では無駄な部品を付けて高値転売とは想像通りの流れですが、ともかくその使用例を見ると誰もが皆、市販のスイッチング電源ユニットを使っているのです。市販オーディオ機でも内蔵クロックは極めてQの髙い水晶発振ではあるだろうに、それとルビジウムとの差が分かると主張する人たちが安い汎用スイッチング電源にケチはつけなくていいのですか?

 

しかしスイッチング電源程ではないにせよ、シリーズ式だろうと大ゲインの閉ループ制御ですからノイズは出ます。我々にも容易に得られる低ノイズ電源としてはまずは電池、汎用的には非安定化の整流出力にLPFをしっかり入れる事を考えるべきですが・・・某Q&Aサイトでそう書いたところ、別な回答者から「それよりまず平滑回路が重要」と突っ込まれました。いや、私は平滑回路をLPFと呼んだつもりでしたが、「その人が知っているLPF」とは周波数も作用も違う別物なのでしょう。

Q&Aサイトの利用には回答者のレベルを疑う必要は常にあるようです。

八重洲無線のセパレート機FL-101/FR-101は大雑把に言えば、既にベストセラー機になっていたFT-101トランシーバーを受信部と送信部に分けたような構成です。そこにそれぞれ機能を追加・・と言いたいところですが、FR-101受信機の方はともかく、FL-101はFT-101の送信部とほぼ同じ機能にしては価格は近いので、損な買い物でした(送信機の出荷数は少ないのである程度仕方ありません)。それはともかく。FT-101とは周波数関係などは共通で他の回路も良く似ていますし、トランスバーターとかリニアアンプとかのオプション機器類も共用でした。その割にはダイヤル回りのデザインや色調など外観は統一されていない、という少々チグハグな所もあります。

 

ところで、私の入門当時の八重洲のフラグシップ機はトランシーバーはFTDX400、セパレートはFLDX400/FRDX400という全管球式機でした。私はこれらを動態保存していますが、すべて外観がよく統一されているのでシャックに映えますし、リニアアンプ、外部スピーカー、トランスバータ、外部VFO、それらも後継機種のFT-401に至るまで統一デザインです。

ところが101ラインとは対照的に、セパレート機FLDX400/FRDX400とトランシーバーFTDX400は、基本構成も回路も内部構造も操作系も、それこそ大きな事から些細な点まで全部が違うのです。似ているのは顔と名前だけです。それが同時代の販売なのですから、これは完全に別々のチームが開発したとしか思えません。

 

社内で競合機種の開発が並行してコンペになる事はありますが、スパコンを例にとればCRAY-2とCRAY X-MPのように、取捨選択されず両方とも製品化まで漕ぎ着けるのは珍しいケースです。ましてアマチュア無線機程度の経済規模でそんな経営方針は考えにくいのです。あるとしたら合併後の過渡期などでしょうが、八重洲もスターを吸収合併したのでその名残だったのでしょうか?

後に八重洲はスタンダード工業も取り込んで一時期バーテックス・スタンダードになっていたのはご承知の通り。スタンダード製品はHF機こそありませんが、V/UHF機が操作性など細かい点でセンスが良く、当時の八重洲に欠けていたものを持っていました。しかしそういった出自のカラーが時とともに失われるのは宿命のようなものです。

4X150Aなど小型外部アノード管はほぼ強制空冷式ですが、ヒートシンクへの伝熱冷却を用いる真空管も昔から存在します。しかしアマチュア機への適用例で知られるのは、Signal/One CX-7トランシーバーのRCA 8072、それにヒースキットSB-230リニアアンプのEimac 8873の例にほぼ限られると思います。

 

高圧の掛かるアノードからの伝熱には耐熱性でかつ熱伝導率の髙い絶縁物が必要ですが、SB-230の発売とともにハムにも知られるようになったのがベリリア(酸化ベリリウム)で、見た目は真っ白いセラミックの一種です。同時にその毒性もヒースキットから注意喚起されていましたが、その程度は?というと、それは放射性物質や青酸カリよりはマシですが、管理されぬままに家庭内に存在すべきではないレベルです。塊のまま扱っているうちはまだしもですが、削れなどで生ずる粉塵は極めて有害です。

これを契機に、高周波用のパワートランジスタにもベリリアの採用があるという事実がハムにも知られるに至りましたが、当然それらも興味本位の破壊は厳禁です。なお、ベリリアの毒性を嫌い、熱抵抗的には劣るのですが後には窒化アルミニウムも使われるようになりました。

 

ところで、半導体の放熱に「エポキシ接着剤で貼る」という投稿を何回か見たことがあります。恐らく、半導体のブラスチックパーケージはエポキシである、とどこかで耳にしての事だと思いますが、半導体の封止材とはチップやリードフレームとの膨張率を合わせ、かつ放熱する目的から、大雑把に言えば7割くらいの無機物に「つなぎ」に樹脂を入れたような組成なのです。エポキシ樹脂単体での熱伝導率は少しも良くないので、それよりは伝熱グリスを塗って押し付ける方が良好です。

ただ、その伝熱グリスにもベリリア粉末入りのものがあります。CPU用の高級品にも使われているかも知れません。見分け方が紹介できればベストなのですが・・・残念ながら決め手がありません。

 

相互運用協定などという言葉もなかった昔のこと、外国の免許で日本でハム局を運用することは一律に不可能でした。1970年、それに風穴を開けたのが駐日アメリカ大使で、自らハムだったマイヤー氏の対日交渉です。当時の電波法では外国人には個人局は許可されませんでしたが、社団局の開設という手段での運用でした。マイヤー氏は外交官として赴任した国々での運用歴など、ハムとしての深い経験をアピールして雑誌にはAdvanced級の免許のコピーまで掲載させるなど、大きな記事の扱いになっています。とにかく我々一般人の眼に入る表向きは、国際交流で目出たいこと一色、という報道姿勢でした。

ところが、JA1AN 原・元会長の回想には、この際に全権大使の立場を傘に物凄い圧力を掛けられたという話が出てきます。行間には遺恨までありそうに感じましたので、ペリーの黒船とか砲艦外交とかそんな様子だったのでしょう。ただし開国と同様、いつかは通る道ではありました。

 

逆に原会長のJARLも多少のことはやっています。1976年のこと、JARLが50周年記念の期限付きで沖ノ鳥島をDXCCの新エンティティとすべくARRLに請願して認められます。ところが独立エンティティには本来該当しないので、筋の通らないゴリ押しだという反対運動が起こって総会にまで届きました。しかし反対派も「私は沖ノ鳥島とはQSOしない」というスローガンを持ち込む以上のことは大して出来ず、結局JARLはDXペディション局7J1RLを送り出しています。

 

これは誌上で読んだだけですが、ある紛糾した総会の壇上で、原会長が「友あり遠方より来る、そういう感じでやりたいのだ」と言ったそうです。しかし組織が大きくなれば全部を総会に諮ることは不可能で、どうしても多くの判断を理事会に委任という形になりますが、そこに危うさもあって常にシャンシャン総会とは行きません。

沖ノ鳥島の件にしても、「新エンティティを貰ってきたぞ」という手柄話のつもりが、公表したら紛糾とは、さぞかし担当理事と事務方は面食らったことでしょう。