「アンテナとリニアはアマチュアに残された最後の聖域」・・・
という「わかったような」台詞は昔から存在しました。「送受信機の自作は難しく、メーカー製に何もかも及ばない」、という事で、SSB普及が一巡した頃から言われ出しました。昔、実力不相応な背伸びルポをCQ誌あたりに書いていた某氏が火元臭いと私は睨んでいるのですが、それはさておき、少なくとも工作経験の乏しい人の発言だろうと思います。
本当はその頃にはもう自作の理由には「メーカー製は買えない」という要素はほとんどなく、「技術が身につくし、何より楽しい」が原動力でした。例えば「スポーツなど疲れるためにお金を浪費するだけの無意味」と主張したら「体が丈夫になるし、何より楽しい」と言い返されるのと同じです。それにHFのSSBで最も難しいのはマルチバンド化であり、モノバンドならばハードルは格段に低いのです。それでも中学生とか新品に手の出ない層はもちろんいましたが、当時は既に市販の機器も歴史を経て、諸雑誌の売ります買いますコーナーばかりでなく、中古の流通もありました。それで手に入る6m 1W機など安いもので、入門はそれで充分できたのです。
「分かっていない人の分かったような発言」、で同類なのは「自作はメーカー製より高くつく」です。部品を全部新品で揃えたらそうなるでしょうが、自作趣味の者はタダ同然で入手したジャンク部品を必ず持っていますし、そもそも市販品と同等の機能を目指すとは限りません。
なお、真空管式のリニアアンプは確かにメーカー製以上のものが自作可能でした。過去形なのは、真空管リニアは部品点数も配線量も少なく、それら部品がかつては中古で入手可能、今は困難だからです。メーカーは新品の部品しか使えないので貧弱な572Bとかで頑張りましたが、アマチュアの一点物ならジャンクでハイスペックな部品も使えますからね。
この点、アンテナの方が素材の入手・重作業・耐候性工作などと、電子系とは畑違いのスキルがないことには自作可能な形式の選択肢は狭いものでした。ハムの世界にパソコンが入ってくる少し前の頃、雑誌のネタが枯渇しかけて、製作・実験記事がアンテナに偏ったことがあります。特に、一時期の某誌が「釣竿アンテナ」ばかり掲載していましたが、それも、この無責任なフレーズの弊害の一つだったかも知れません。