春の気配を漂わせ、それでもまだまだ寒い2月の末。
夜型の私は、ちょうど日本馬たちが遠征しているサウジアラビアのレース、『2023サウジカップデー』を中継で観ていました。
「日本馬の応援だ!夜更かし、夜更かし!!(ワクワク)」という感じでした(笑)
今回、日本からは20人(20頭)の大所帯で遠征していたのでした!
昨年『2022サウジカップ』の時は、遠征した日本馬がなんと4勝という大収穫でした。
日本勢にとって、基本、相性の好い感じのサウジのレース。
今年2023年バージョンは、どうなるのか…。
全体的に、おおらかな雰囲気の開催です。
バラエティ豊かな20頭の日本馬たちは、それぞれ5つのレースに出ました。
他の国からの遠征勢や地元勢に対しても、決して油断はできませんでしたが、やってくれそうな予感を持ちながら…。
第4レースの1351ターフスプリントGⅢ(1351m芝・左)では、バスラットレオンが勝ちを掴みました。
切り込み隊長的に、まず一つ、日本勢に勢いをつけてくれました。
ここで勝ちがついたのは良かったと思いました。
鞍上・坂井瑠星騎手の迷いの無い、スパッとした騎乗も迫力でした。
この1351ターフスプリントGⅢで、5着に健闘したレシステンシアは、これが引退レースで、最後も“彼女らしい逃げ・先行(ダッシュ力)”で、日本馬としての華があったと思いました。
ずっと応援してきましたので、「お疲れ様」という気持ちでした。
長丁場の第5レース、レッドシーターフハンデキャップGⅢ(3000m芝・左)においては、シルヴァーソニックが意地を通し、日本のステイヤーとしての力を示しました。
シルヴァーソニックは、昨年2022年の天皇賞・春GⅠで、スタート直後に躓いて、騎手が落馬してしまい、競走中止(当馬はカラ馬で完走2番手)というアクシデントを乗り越えてきた馬です。
もちろんその後も、めげずに活躍を続けていましたが、今回の遠征は本当の意味で、「意地の見せ所」だったと思います。
他の日本馬たちもそれぞれのレースで見せ場を作って…。
そして、最大の舞台でもあった第8レースがやってきました。
2023年2月25日(土)日本時間26日2時35分
サウジアラビア・キングアブドゥルアジーズ競馬場8レース
サウジカップGⅠ(1800m・ダート左)(13頭立て)
賞金総額2000万ドル・1着賞金は1000万ドル(日本円で約13億6000万)という世界最高の賞金レースとして有名な超・大舞台!
このレースは、とにかくすごいメンバーが揃っちゃったみたい…。
日本馬たち、豪華にぶつけていきましたよ!
‟逃げの神髄パンサラッサ”
私は「パン君」と呼んで応援しているのですが、皆様もよくご存じ「逃げの名手」。
今までのレースでも(2022年宝塚記念GⅠ、2022年天皇賞・秋GⅠなど)、先頭を奪い、彼のペースに巻き込んでブッ飛ばせば、後続は次々消耗していく。
追いつける馬など、ほぼいないのではないでしょうか(イクイノックスやタイトルホルダーとかでなければ…ボソボソ…)。
さて、パン君にとって重要なのは“主導権を握れるか”なわけですが…。スタートこそが肝心でした。
それに本来は「芝の馬」なのです。
実はダート戦は、2020年の12月に一度走ったのみ(しかもその時は11着)なのです。
ハッキリ言って、不慣れな馬場なのですが、このダートならば射程圏内のはず…。しかし、それでも、どうなのだろうか…?
何でもサウジのダートは、単に砂というよりも、ウッドチップ(木くず)材質も混ざったりしていて、実質“オールウェザー”に似ているという話がちらほら。
ただ今年は、メンテが変わり、そのウッドチップの含有量も少なめらしいと、グリーンチャンネルの中継内でも解説があったり。
正直、ダートを滅多に走らない馬にとっては、吉と出るか、凶と出るか?
矢作芳人厩舎陣営も、見立てに自信があるから挑戦しているわけですが、本当に“一大チャレンジ”だったのでは…と。
そして、一緒に走る他の日本馬たちも…
2022年チャンピオンズカップGⅠ優勝馬ジュンライトボルト。ダート馬として勢いに乗っている時期!
(ちなみにこのジュンライトボルトは、アドマイヤグルーヴの妹の孫です。)
ジオグリフも新たな活路を見出そうとしていますし、ヴァンドギャルドも良いところを見せてほしい…と。
繊細でありながらも底力のあるカフェファラオや、才能豊かなクラウンプライドにも頑張ってほしい…とテレビ画面を見つめていました。
ここに出た日本馬は6人(6頭)。
中継内ではジャパニーズ6(シックス)と紹介されていました。
日本馬はサウジのレースとは相性が好い感じではありますが、サウジカップGⅠにおいては、日本馬は今まで最高が6着という成績でした。
果たして今回、歴史を作れるだろうか…。
ドキドキしながら、最大の勝負が始まったわけなのです。
そして…結果は…この通りでしたね!
2023年2月25日(土):日本時間26日2時35分に行われた
サウジアラビア・キングアブドゥルアジーズ競馬場8レース
サウジカップGⅠ(1800m・ダート左)(13頭立て)
(ダート:良)
1着 パンサラッサ(JPN) 吉田豊騎手
2着 カントリーグラマー(USA) L・デットーリ騎手
3着 カフェファラオ(JPN) J・モレイラ騎手
4着 ジオグリフ(JPN) C・ルメール騎手
5着 クラウンプライド(JPN) D・レーン騎手
7着 ジュンライトボルト(JPN) R・ムーア騎手
11着ヴァンドギャルド(JPN) M・バルザローナ騎手
()内は調教国
日本のパンサラッサが、偉業を達成しました!!
私と同じ、同志の皆様はよくご存知と思われますが、実にパンサラッサらしい競馬をしていましたよね!
最初の一完歩が肝心でしたが、それを上手いダッシュで踏み出せた!
ここが全体的にも大きかったと思います。
さて、パンサラッサは後続勢を率いて、レースは確実に進む。最後の直線へと差し掛かる。それぞれに活発な動きが出始めた!
そこへ、好位置をとっていた同僚の日本勢が進出して来る!
正直、「日本馬のライバルは日本馬なのだろうか…!?」という様相。
しかし、それだけ全体的に、日本馬たちのペースで進んでいたという事なのだと感じました。
先頭に立ったのがパンサラッサという事で、形としてはシンプルでしたし、他の日本馬たちも目印にしやすかったのかもしれません。
するとそこへ突如、アメリカの実力馬カントリーグラマーが、すごい脚で突っ込んで来た~!!
カントリーグラマーは昨年2022年のドバイワールドカップGⅠの覇者!事実上、世界の砂の王者(ちなみに来月3月は同レースの連覇がかかりますね)。
そしてその鞍上は、あのランフランコ・デットーリ騎手…ハッキリ言って、一番恐ろしいのが追って来たのでした…。
かなり迫って差してくる!残り50を切っていた…しかし、そこからが長く感じる!
「パン君、逃げ切れ~~~!!」
テレビに向かって、つい叫んでしまいました(←オイオイ、日本は深夜だよ)。近所迷惑になっていたら、今更ながら、すみません…。
逃げ切れるのか、逃げ切れるのか…う~~~ッと、そこがゴールでした!
その瞬間、パンサラッサは、カントリーグラマーをギリギリ振り切って、ゴールに粘り込んでいました!
着差をみれば、3/4馬身と、それなりに差はついていましたが、リアルタイム観戦ではクビ差ぐらいまで迫られていたような気がしました。それほどアメリカのカントリーグラマーの勢いはすごかったです。
「パン君、よくぞ振り切った」と、素直に思います。
そして、少し間をおいて「それでも、振り切れる強さがパン君だ」とも思いました。
1800mはとりわけ得意な距離ですし、見事に流れを作り上げ、後続勢をとことん振り回しましたね!
全体的に、好調時のテンポで淡々と逃げた様子だったので、この激戦直後でも、呼吸がスムーズに整った感じでした。
こうして、歴史的快挙達成!!
パンサラッサ「まあ、こんなものかのう!」と、セリフが聴こえて来るようでした。
(私の脳内では、彼は若々しいのに、喋り方だけはおじい…もとい、仙人みたいに落ち着き払っている印象なのです)
でも、何だか、いつもより少し自慢げにしているパン君が印象的。
さり気なく、ダートでも勝ったという事で「二刀流」となりましたね。
それにしても、(テレビ画面で見ている限り)この力の要りそうな感じのするダートを、よくぞここまで。
凱旋門賞馬モンジューの孫だけあって、深い馬場でも結構平気なのかも?
(モンジューは、あのエルコンドルパサーのライバル)
更に父馬ロードカナロアからも、優れた心肺機能も引き継いでいる感じですね。
「これが競馬であり、これがレースだ」と、そんな風に思える、颯爽とした競走だったと思います。
パンサラッサの担当・池田康宏厩務員の男泣きが、観ているこちらの胸にもグッときました。この7月に定年なのだそうで…その手前に、大きな大きな偉業達成を支え抜いて。
鞍上・吉田豊騎手も、ここまでパンサラッサと組み続けた強みを、バツグンに発揮していました。
矢作芳人厩舎も、もう完璧に海外遠征のスター厩舎ですね。
そうそう、4Rを勝ったバスラットレオンも矢作厩舎でした。
ついでに、私も夜更かしした甲斐があったと感じました。
この晴れやかな様子をリアルタイムで観られましたもの。
Twitterでは「パンサラッサ」がトレンドワード入りしていたとか。
最大のレースをゲットです!
そして、上位5着までに日本馬が4人(4頭)も入ったという結果も、快挙でしたね!
カフェファラオが粘り強く3着を確保。さすが2022年フェブラリーステークスGⅠの優勝馬。柔軟な競馬ができていました。
ジオグリフとクラウンプライドも、掲示板に入りました。
ジュンライトボルトは、ダートはダートでも、ウッドチップも混ざるサウジのダートは向いていない気がしました。
ヴァンドギャルドは、ダート戦がそもそも向いていないみたい。来月3月のドバイターフGⅠ(芝)に選出されているらしいので、そちらの方が良さそうです。
とにかく日本馬の中でもパン君の適応力はバツグンだったわけですが、済んでみれば、サウジのダートは得手不得手が別れたなと思われます。
そしてアメリカの馬、2着のカントリーグラマーの勢いが思い返しても凄まじかった。今回のサウジカップデーも、全体を見渡すと、やはり“ダートの本場であるアメリカ勢は強し”という印象でした。
いつまでも尽きない話になりそうですが、最初から最後まで先頭を一貫し、歴史を作ったパンサラッサの誇らしげな様子を観られて嬉しかったです。
ただ前を向いて、自分のペースで先頭を。颯爽と!
2023サウジカップデーでした。