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『にゃんころがり新聞』

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ご迷惑をおかけして申し訳ございません。

 

2018年1月のPV数順のランキング発表です!

(にゃんころがり新聞のみ。にゃんころがりmagazineはふくまず。)

 

1月1日~31日までのPV数の集計になります。

それでは、発表です!!

(タイトルをクリックすると、そのページに飛べます。)

 

 

 

 

10位

 

おもしろくて英語が上達すると評判の「オレ単」をやってみた!

 

 

 

 

 

 

9位 

 

 

サカナが野菜を育てる時代がきた! にゃん五郎もびっくり!

 

 

 

 

 

 

8位  

 

新大久保「とんちゃん」~口コミグルメ情報

 

 

 

 

 

  7位 

 

『ぼくのコーヒー飲んだの誰?』の巻 にゃん五郎の物語 第9話

 

 

 

 

 

 

 

6位 

口コミで評判になっている「玄関.jp」~玄関ドアの交換・リフォーム専門店

 

 

 

 

 

 

5位

 

 

牟尼庵(むにあん) 京都カカオ亭のキューブシュー~口コミスイーツ情報

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4位

 

『郁(いく)はサイコパス?』~~~馬鹿(うましか)ルームメイトvolume2

 

 

 

 

 

 

3位

 

『ひとりの少年の物語~安田てるひさ物語』4コマ漫画


 

 

 

 

2位 

 

 

 

 

 

『美女と細め野獣カップル』4コマ漫画

 

 

 

 

 

 

 

 

1位

 

ネットカフェ『コミックタイム』が居心地がよすぎて入りびたるネコの末路

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語

ー④ー

 

 

 

 

 

にゃんく

 

 

 

Ⅱ 冬のはじまり

 

 

 家計が苦しいといいながら、ケイは決して実の娘であるミミを働かせたりしませんでした。子供心にリーベリは不公平を感じないわけではありませんでしたけれど、それを口に出したりはしませんでした。不平や不満を少しでも言葉にすると、それが何倍にもなって返ってくるような恐ろしい気がしましたし、何より家にいても息がつまるような緊張を続けなければなりませんでした。それより働きに出ていた方が意地悪なケイから逃れることができましたし、ミーシャに会うこともできました。ほんとうのところ、リーベリが小さな体に耐えきれないほどの仕事をケイから云いつけられても精神的にやっていけたのは、ミーシャの存在が大きかったのでした。ミーシャがいたからこそリーベリはいくら家でケイに理不尽なことを云われても今までやってこれたのです。
 ところが、リーベリがN宅で働きはじめてから五年ほどが経ったある秋の日に、紅葉した樹々の下で肩を寄せ合っているリーベリとミーシャの姿をケイが偶然見つけました。ケイは我が目を疑いました。厳しく働かされているものと思っていたリーベリが、こんなところでN宅の放蕩息子といちゃついているではありませんか。ケイはその場で声を出すのを思い止まって、しばらくリーベリの様子を観察していました。するとリーベリは放蕩息子から勉強を教わったり、昼寝をしたり、実にリラックスして家では見せない笑顔を湛えているのでした。
 次の日、ケイはロゴーク村の東方にあるエフエル村に出向いてリーベリの様子を探りました。案の定、N宅の明り取りの向こうの居間では、リーベリとN宅の子供たちが、暖炉のある部屋で卓子を囲んで紅茶などを飲みながら何か楽しげに話している姿が見えました。足の悪い奥さんの笑顔もチラチラ見えます。そしてリーベリは、例の放蕩息子と連れ立って遊びに出掛けるのでした。リーベリは仕事をするより遊んでいることの方が多いようです。ケイはしばらく鬱積した表情を顔に浮かべていましたが、ある考えを実行に移すことに決めると意地の悪い微笑を口の端に浮かべました。
 それから数日が経った或る日の夕方、ケイはリーベリが自宅に帰るのと入れ替わりに、肩を怒らせてN宅の門口を激しく叩きました。
 はじめに門口に出て行ったのは、五歳になるいちばん下の妹でしたけれど、この子は何か叫び声をあげながら、どうしていいか分からずに、七歳になるお兄ちゃんを門口に連れて行きました。
「お母さん呼んで来てくれる?」とケイはその男の子に云いましたが、七歳になるその子は母親を呼んで来る代わりに、台所に行って母親のお手伝いをしていた九歳のお姉ちゃんの背中を指でつついて玄関に連れて来ました。
「お母さんいる?」ケイは顔を引き攣らせて云いました。
 九歳の女の子は家の奥に引っ込むと、しばらくしてからトイレに入っていた十一歳のお姉ちゃんの手を引っぱって玄関に戻って来ました。
「お母さんは?」
 十一歳の女の子は部屋で本を読んでいた十三歳のお兄ちゃんを呼んで来て戸口に顔を出しました。
「……」ケイはもう何も云いませんでした。
 十三歳のお兄ちゃんは微かに震えているようであるその中年の女性を不気味に思いましたが、その女性が帰る気配がないのでどのように対処すれば良いか判断に困り、夕食をつまみ食いしていたミーシャの肘をつっついて、一緒に玄関に来てくれるよう頼みました。
 ミーシャが現れた時、ケイは眉をぴくぴく痙攣させて、機嫌の悪い低い声で、「お母さんいるの? いないの? どっちなのよ!?」と早口でまくし立てました。ミーシャは吃驚して、
「どちら様でしょうか?」と何度か尋ねましたけれど、来訪者は何故かひどく機嫌を損ねていて、「お母さん呼んで来て」の一点張りで、それ以上のことは話そうとしません。ミーシャは内心快く思いませんでしたけれど、とりあえず母親に来訪者がいることを告げました。
「誰?」と足が悪いながらも、一生懸命夕食のサラダに出す野菜を洗っていたミーシャの母親は云いました。あとサラダさえ出来れば、夕食の準備はできあがりなのです。
「変なおばさん。名前聞いても云わないし」
 誰だろうと母親が首をひねりながら松葉杖をついて戸口に出てみると、ケイが笑顔で門口に立っています。ミーシャとミーシャの弟妹たちは柱の陰に隠れて、大人たちの会話に耳をそばだてていました。
「お久しぶりね」
「あら、奥さん、こんにちわ」
「うちの娘がかなりご迷惑をお掛けしているみたいだわ」
「いいえ。とんでもない。よくやってくれていますわ」
「お宅でご馳走をよばれたりしているみたいね。あの子、母親である私にそういうことを何も云わないのよ。私、馬鹿にされているみたい」
「あら。たいしたことじゃありませんのよ。いつもよく働いてくれているお礼ですのよ。気になさらないでくださいな。お友達が出来て、息子も喜んでいるんですよ」
「あの子がいるとお宅のご迷惑になるでしょう? ああいう子だし」
「ああいう子?」
「つまり陰気ってこと」
「……全然そんなことありませんわ。かわいらしいお子さんじゃありませんか」
「実は私、近々昼間に仕事に出掛けようと思っているのよ。夫の畑仕事だけではやっていけないのよ。だからあの子にはうちで家事の手伝いを少しでもやってもらわなくちゃいけないの。そうでないと、家の中が無茶苦茶になってしまうでしょう?」
「……」
「だから、あの子のお勤めを今月いっぱいで打ち切りにしてもらってもいいかしら? 今日はそれを云いに此処まで来たのよ」
「息子が残念がりますわ」
「それは子供同士のことよ。会おうと思えばいつだって会えるわよ」
「それはまあ、そうですけれど……」
「我が儘云って御免なさいね」
「……でも、家庭の事情じゃ、仕方ないことですわね」
 話が纏まると、ケイはさっさと帰って行きました。
 ケイがいなくなると、柱の陰に隠れていた小さな子供たちがいっせいに出て来て騒ぎはじめました。七歳になるミーシャの弟などは、扉の方に丸出しにしたお尻を向けて、ペンペン叩いてみせたりしています。
 リーベリの契約がまもなく打ち切りになることを知り、とくに残念がったのはミーシャでした。
 ミーシャはどうにかしてリーベリの契約を継続してもらえないか母親に交渉をお願いしましたけれど、母親の力でももはやそれはどうすることも出来ないのでした。

 

 

 

 

ー⑤ーにつづく

 

 

 

 

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果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語

ー③ー

 

 

 

 

 

にゃんく

 

 

 

 

 

 

 リーベリは、九歳になると、隣村のエフエル村のN宅でお手伝いさんとして働くことになりました。この時代、子供たちが働きに出されること自体、珍しいことではありませんでしたけれど、それでも九歳というのは早い方でした。
 普通その年齢の子供たちはまだ村の老人などが読み書きを教えてくれる地域の小さな学習所のようなものに通うことになっていました。ケイから命令された家事をこなすために、その学習所にも行けないことが多かったのですが、お手伝いさんとして働くことになってからは結局一度も学習所に行くことが出来なくなってしまいました。
 そうして学習所での同年代のお友達とも顔を合わさなくなり、彼らと次第に疎遠になっていき、リーベリはますます孤独になりました。
 勤め先での仕事が一段落しても、次は実家での仕事が待ち受けていました。リーベリは毎日の仕事に追われて疲れ果てていました。でもいくら疲れていても、ジュリアが遺したノートだけは開かない日はありませんでした。たとえ数行しか読むことが出来なくても、ジュリアのような魔女になるために毎日寸暇を惜しんで修練を積みました。そこには丁寧な字でジュリアの使える魔法のほとんど全てがびっしりと記載されていました。「私に万一の事があった時のために」とジュリアは長い年月をかけてそのノートをリーベリのために完成させてくれたのですが、もしかしたらジュリアは自分の命がそう長くないことを予感していたのかもしれないとリーベリは成長してから考えることがありました。
 満足がいくほど学習所にも通わせてもらえなかった為、リーベリにはジュリアの書いた文章の意味が理解出来ないこともありました。そういう時にはリーベリは国語の勉強から始めなければなりませんでした。勤め先のN宅の子供たちは六人兄妹で、朝目覚めてから夜眠りに就くまでほとんど騒ぎっぱなしの騒々しさでしたけれど、長男のミーシャはリーベリと同い年でした。リーベリはミーシャよりよほど勉強が遅れていました。リーベリはミーシャから要らなくなった読み書きの綴り方の練習帳を貰い、家に帰ってそれを使って夜更けまで勉強しました。
 N夫妻は、やんちゃ盛りの六人兄妹の中でも(いちばん下の妹はまだ0歳の赤ん坊でしたが)とりわけ長男のミーシャにはほとほと手を焼いているようでした。ミーシャは村の悪ガキとつるんで教会に行っては高価な像をこっそり壊してきたり、売り物の野菜を見つからないように盗んで来たりしたからです。そんなミーシャが、リーベリの袖を引っ張って、外に遊びに行こうと誘うのでした。
「リーベリさんには大切なお仕事があるのよ」とミーシャの母親がいくら諭しても、ミーシャには馬の耳に念仏でした。最後には母親の方があきらめて、ミーシャの手に引かれリーベリは家事から解放されるのでした。

 

 ミーシャとリーベリはふたりで色んな場所に遊びに出掛けました。夏は着替えを持って、エフエル村のきれいな小川の流れる場所まで行きました。色とりどりの魚たちが泳いでいる中でふたりは小川で遊びました。冬は降り積もった雪を掻き集めて自分たちの身長と同じくらいの雪だるまを作ったり雪合戦をしました。悪さもしました。痛快だったのは、教会で一度ミーシャの頭を叩いたことのある神父さんに泡を吹かせたことでした。昔、その太っちょの神父さんは、教会の中でお祈りもせずに子供たちだけでペチャクチャお喋りをしているミーシャの後ろにやって来て、ミーシャの頭を叩いたことがあったのです。そのことがあったので、ミーシャはいつか仕返しをしてやろうと考えていました。
 或る日、ミーシャはリーベリと一緒に、その太っちょの神父さんがいる教会にこっそり忍び込みました。そして、教会全体を叩き起こすような乱打の鐘を撞き、逃げ出したのです。神父さんは何事が起こったのかと吃驚して出て来ましたが、すぐに下手人が知れると、怒ってふたりを追いかけて来ました。でも神父さんは赤ん坊が生まれるかのようなお腹を抱えています。少し走っただけでもう立ち止まってゼイゼイと荒い息を吐いていました。ふたりは安全な場所に逃げると、お腹を抱えて笑いました。
「もう止めましょう、こんなこと」精一杯笑った後、リーベリはミーシャに云いました。「人を揶揄って遊ぶのは良くないわ」
「これで最後だよ。ぼくの頭を叩いた仕返しさ」
 とミーシャは勝ち誇ったように云いました。

 

 悪さばかりしていたわけではありません。ミーシャが喜ぶので、リーベリはミーシャに魔法をかけるのを見せてあげたりしました。ミーシャは何回リーベリから教わっても、いっさい魔法というものを使えるようにはなりませんでした。多分血のせいもあるのでしょう。いくら努力しても、魔法を使えるようになる人とならない人が世の中にはいるのです。ミーシャはリーベリが指の先で灯した蝋燭の焔の鮮やかな色に、いつまでも見惚れていました。
 その逆に、ミーシャがリーベリに請われて読み書きを教えてあげることもありました。ふたりは草原に寝転がったり、仰向けになって熱心に勉強したり、お喋りをしたり、疲れたら昼寝をしたりしました。名前もわからない鳥が聞いたこともないような美しい旋律の鳴き声で歌っていました。

 リーベリは毎日の出来事を残らずミーシャに話して聞かせました。家で義母に冷たくされていること、学習所に行かせてもらえないこと……ミーシャはリーベリの大切な話し相手であり、かけがえのない友達でした。ミーシャはリーベリの境遇に同情し、また憤慨してくれました。その話を聞いてからミーシャは自分の家ではリーベリを粗略に扱わないよう母親に頼みました。そのおかげでN宅でのリーベリの仕事量ははじめの頃に比べるとかなり楽なものになりました。また、リーベリは実家では食べさせてもらえないようなケーキなどのお菓子をよばれたり、夕食も一緒に誘われてご馳走になったりするようになりました。
 ミーシャの母親もリーベリが真面目に仕事をしますので、リーベリのことを気に入ってくれているようでした。

 

 

ー④ーにつづく

 

 

 

 

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北海道栗山町のいちご~ふるさと納税返礼品特集

 


writer/にゃんく

 


寄付額は、5000円でした。

去年(2017年)に寄付しました。


11月1日に返礼品の「いちご」が栗山町から到着しました。

 

 

おいしい!

 

ユーシーアルビオンという名前のイチゴのようです。
こんなにおいしいイチゴを食べたのははじめてです。

寒いところで育ったいちごだから、なおさらオイシイのかな? と。

 

にゃん子いわく、この時期のイチゴはない。だから、高い。
市価で1パック1200円くらいするのではないか? とのこと。
となると、2パックで2400円だから、還元率は50%に近い。

ふるさと納税、あまっている限度額があったら、北海道栗山町のいちごもオススメかもしれません。

 

今年、ふるさと納税できる人は、候補にくわえてみるのも、いいかもしれませんよ。

 

 

 

 

 

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果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語

ー②ー

 

 

 

 

 

にゃんく

 

 

 

 

 

 

 同居して十ヵ月ほどが経つと、リーベリは様々な家事をケイに云い付けられるようになりました。まずは毎日の食器洗いでした。
 冬の凍てつくような寒さの中、凍るような水で食器を洗っていると、手が罅割れてあかぎれが出来ました。余りの冷たさに立ち竦んでいると、「何もたもたしているの?」と罵声が飛んで来ましたし、貴重な水をすこしでも無駄に使うと叱責を受けました。慣れない作業に、うっかり食器を取り落として割ってしまう事もありました。そんな時ケイは、「ほんとにこの子は何をやらせても役に立たないねえ」と心の底から呆れたように云うのでした。
 それでもリーベリはケイから愛されたいがために、一生懸命家事をこなしました。井戸の水汲み、洗濯、料理の手伝い、家のお掃除など、同じ年代の子供が外で遊んでいるのを見ながら、リーベリはあらゆる仕事をこなしました。けれどもケイに褒められたことはただの一度もありませんでした。
「うちは家計が苦しいんだから」がケイの口癖でした。その癖、ケイは隣町まで足を伸ばして、アイドリにおねだりして新しい服を買って来るのでした。
 ケイは初めて家にやって来た頃とは別人のようになっていきました。
 同じ母親と云っても、ケイとジュリアとでは随分様子が違っているとリーベリは思いました。何だか、自分とミミに対する扱いに差があるように思えたのです。
 リーベリはケイに冷たくされるたびに、優しかったママ、ジュリアのことを思い出しました。
 ジュリアは村はじまって以来の偉大な魔女で、使えない魔法はないほどの実力の持ち主でした。
 けれども、ジュリアは全然尊大なところはなく、村人思いで優しく、例えば不治の病が進行した老人たちの家を訪れては彼らに魔法をかけ、その痛みを和らげてあげていましたし、風邪を引いた病人ならその場で額に手をかざすだけで治すことが出来ました。また、飛んでいる鳥の羽に金縛りをかけたりして、村人たちがひもじい思いをしないように常に心を砕いていました。
 そのため、ジュリアは村人達からの信望も篤く、皆から慕われていました。

 はじめてリーベリがジュリアから魔法の手ほどきを受けたのは、まだ五歳の頃でしたけれど、
「修行に励めば、あなたは私より立派な魔女になれるわ」とリーベリはジュリアからその素質を褒められました。
 リーベリとしてはただ、忠実にママの云うとおりにやっただけでしたが、この時褒められたことが嬉しくて、リーベリは将来ジュリアのような魔女になることを心に誓いました。
 ママから魔法を教わった期間はそれほど長くはありませんでしたけれど、リーベリはママから魔法を教わるのを楽しみにしていました。時には魔法をひとつ覚えるにしても血の滲むような苦しい我慢が必要でした。それでもリーベリは途中で投げ出したりしませんでした。
 まだ若いジュリアが亡くなると、村の広場でジュリアの死因について井戸端会議を開催している村人たちの噂話がリーベリの耳にも入りました。何でも魔法の世界には禁止されている呪文があって、その魔法を使うと一日より長くは生きられないという話でした。そして、ジュリアはその禁止されている魔法を使ってしまったのではないか、ということでした。リーベリの姿を見ると村人たちはその話題について口を噤んでしまったので詳しいことはそれ以上は分かりませんでした。
 その噂話については真偽のほどはよく分かりませんでしたけれど、たしかに村人たちの病の治療をした後は、普段は快活なジュリアも家に帰って死んだネズミのように布団の中で眠りこけていることがありました。後になってリーベリが思ったのは、やはりそのような病気を治す魔法を多く使うことにより、ジュリアの寿命の方が縮んでしまったのではないかということでした。後々リーベリの頭の中に、人の治療に関する魔法についてはより慎重であるべきだという考えが生まれたのは、自らの母親を亡くした経験があったからかもしれませんでした。

 

 

 

 

 

 

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果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語

ー①ー

 

 

 

 

 

にゃんく

 

 

 

 

 

 

第Ⅰ章 新しいママと新しい妹

 

 

 

 

Ⅰ ミミとメメ

 

 

 新しいママとなるケイがやって来た日は気持ちのよい春の風が吹いていました。
「今日から、よろしくね」とケイはリーベリに云いました。それから、かたえの幼い女の子の頭に手を添えてお辞儀をさせました。「ミミちゃん。仲良くして下さいね、ってご挨拶するのよ。この子があなたのお姉ちゃんになる人なんだからね」
 ミミは、ちっちゃくて、金色に光るきれいな髪をした、大きな瞳をくりくりさせている可愛らしい女の子でした。
「仲良くして下さい!」とミミは子供らしい元気な声で云いました。
「よく云えたねえ」ケイがすこし大袈裟に褒めました。
 ミミは、女の子の人形を胸の前に抱えていました。
「この子、メメって云うのよ」とミミは薄い金色の髪を持った人形をリーベリに紹介しました。「ミミのお誕生日にね、お婆ちゃんがね、プレゼントしてくれたの」
 リーベリは鼻先を人形に近付けて、しばらく見つめていました。
「かわいらしいお人形ね」
 リーベリにそのように褒められて、ミミは幸せこの上ないような笑顔をこぼしました。
 ケイが笑って、「このあいだのミミの五歳の誕生日に、お婆ちゃんがプレゼントでくれたんだけど、それからすぐお婆ちゃん、亡くなっちゃったのよね」とミミの話を補足しました。
 ミミはこのお人形をとても大事にしていて、何時どんな時でも、メメと行動を共にしているのでした。

 夕食には父のアイドリが隣町で手に入れて来たガチョウを焼いて食べました。父の隣には新しい妻であるケイが座り、卓子(テーブル)を挟んで向かい側にリーベリとミミが座りました。アイドリとケイは、顔をつき合わせて長い時間話し込んでいました。大人にしか分かってはいけない話みたいにふたりは低い声で囁き合っていました。
 アイドリもケイもミミと同じく金髪の髪を持っていました。ひとりだけ違っているのはリーベリでした。リーベリの髪は亡くなった母親の髪の色を受け継いで黒色なのでした。
 それから一ヶ月もしない頃、リーベリはミミに魔法のかけ方を教えてあげました。ミミは新しくできたお姉ちゃんにはじめて魔法を教わったこの日のことを一生忘れませんでした。
 或る日のこと、母親のケイがキッチンに立っていて、誤って包丁で指の先をほんのすこし切ってしまいました。ケイがあっと声を出して指を押さえていると、ミミがやって来てケイの負傷した指を自分の小さな掌で包みました。ミミの掌からは、金色の優しい光が漏れ出ているように見えます。ケイはこの子はいったい何をしているのだろうと訝しみましたが、やがてミミが手品でも披露するように掌をパッと離しました。すると不思議なことに切れていた筈のケイの指先が元通りに治っているのです。
 ケイが驚いて、
「ミミちゃん、いったいどうしたの?」と訳を訊ねると、
「お姉ちゃんに魔法のかけ方を教わったの」とミミが答えました。
 それを聞くとケイは目の色を変えて、「あんまり変なこと、教わらないほうがいいわよ」と刺のある言い方をしました。
 実際ミミは一生懸命、その魔法をかけたのでした。それはほんのかすり傷でしたが、それ以上の怪我なら、当時のミミには手に負えなかったに違いありませんでした。もっと喜んでくれてもいいのに、どうして母親が突然不機嫌になったのか、ミミは子供心に理解できず、ずっと後々までこの出来事を覚えていました。

 それから二ヶ月もしない頃でしょうか、居間の暖炉の前で、リーベリとミミが遊んでいました。はじめは仲良くしていたふたりですが、ひょんなことからブロンド髪の人形をお姉ちゃんが盗ったと云ってミミが泣き出してしまいました。リーベリも七歳になる今までひとりっ子だったのに突然妹ができて、妹の扱い方にいまいち慣れていませんでした。
「返して」「ちょっと待って」「返してよ。それ、わたしのだよ」「今返すから」
 しばらくふたりは人形の奪い合いをしていましたが、そのうちミミが泣き出してしまいました。ケイが吃驚してやって来ますと、ミミは、「お姉ちゃんがわたしの人形を盗った」と云って泣きじゃくっています。
「リーベリさん。どうして妹をかわいがってあげないの? あなたお姉さんじゃないの?」
 とケイは云いました。
 リーベリは、「あたし、盗ったりなんかしていないわ」と弁解しましたけれど、ケイはほとんどリーベリの話を聞いていませんでした。その間にもミミは泣き続けています。ケイは眉間に皺を寄せて、
「リーベリさん、ちょっとお外に行っててもらえるかしら? リーベリさんがいると、ミミちゃんがいつまでも泣き止まないで困るわ」
 と云いました。
 リーベリはそれ以上家にいることも出来ずに、半ば追い出されるように戸口に向かいました。
「もう泣かないでいいわよ、わたしのかわいいミミちゃん。これからは、リーベリさんに大事なものを渡してはいけませんよ」
 家を出る時に、居間の方でケイがそう云っている声が聞こえて来たような気がしました。リーベリは聞き間違いだと思って深く考えないようにしました。
 何となく家に帰ることも出来ずに、リーベリは外の小道を何度も行ったり来たりしていました。あたしは盗ったりなんかしていないのに、とリーベリは思いました。ただ、ミミがいつも大事そうに抱えているから、すこし触ってみたかっただけなの。だけど、新しいママはあたしの話を最後まで聴いてくれなかったわ……。
 村の通りがかりのおじさんから、「どうしたい? お嬢ちゃん、困ったことでもあったのかい?」と声をかけられましたが、リーベリは、「何でもないの」と答えると、おじさんに泣いていることを悟らせないように脇目もふらず家から五十メートルほど離れたところにある、今は涸れてしまった川の跡に沿ってただ真っ直ぐに歩いて行きました。何故泣いているのを隠したかというと、おじさんに知れたら、おじさんが心配してケイに、「お宅のリーベリちゃんが泣きながら何処かに歩いて行ったよ」と相談に行ってしまうかもしれないと思ったからでした。四十軒ほどの農家が点在するこの村では、お互いが顔見知りでした。
 その日、リーベリが家に帰り着いたのは陽が暮れてからでした。リーベリの頬に涙の跡が残っていても、ケイはそんなことには気が付きませんでした。リーベリが「ただいま」と云っても、返事をしてくれる人すら、そこには誰もいませんでした。

 

 

ー②ーにつづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語

 

 

 

にゃんく

 

 

 目次

   第Ⅰ章 新しいママと新しい妹

         Ⅰ ミミとメメ

         Ⅱ 冬のはじまり

          Ⅲ 再会

          Ⅳ 不穏な力

          Ⅴ 神様が下さった宝物

     Ⅵ 血の交わり

  第Ⅱ章 奪われた光と奪われた恋人

         Ⅰ リーベリの奇妙な家来たち

      Ⅱ 放浪

         Ⅲ  元王宮の兵士

     Ⅳ いまだ少年の影を宿した山賊のかしら

       Ⅴ 人形だって恋くらいするさ

     Ⅵ 関所の憲兵たち

     Ⅶ 王子の犯した罪

         Ⅷ  執事のかえる君

         Ⅸ  戦利品

         Ⅹ 鞭打つリーベリ

     ⅩⅠ 訪れた朗報

     ⅩⅡ 代理官殿とふたりの参謀

  第Ⅲ章 戦争

     Ⅰ 執事のついた嘘

     Ⅱ 死に神の予言

     Ⅲ 誤算

     Ⅳ 愛から生まれた悲しい話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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writer/にゃんく

 

 

 今回は、コリアンタウンである新大久保の「とんちゃん」に行ってまいりました。

 

 

 新大久保に来るのは、ほとんど14年ぶりになります。
 以前来たときは、まだ24歳くらいでした。
 当時、新大久保の百人町にある安旅館に泊まったのですが、百人町は今は知りませんが、当時は異様な雰囲気で、ヤクザみたいな人がうろうろしていて、怖かったです。あとで聞いた話では、やはり百人町は東京でも「治安が悪い」という話で、「やっぱり」と思ったものです。

 

 今はだいぶ新大久保も、「怖くない」町になってきているようです。
 しかし、町並みは、駅から降りたら、半分「韓国」みたいな町ですよね。韓国人もたくさん歩いています。

 

 さて、今回行ってみた「とんちゃん」は、それこそ口コミによる紹介です。「めっちゃうまい」という評判で、たのしみに来店しました。

 

店名 とんちゃん
場所 東京都新宿区大久保2丁目32−2リスボンビル 1F

 

 

 今回注文したのは、口コミ評価の高い、安くておいしいランチメニュー「Dセット1290円」です。

 

 

 お店のスタッフさんが、まずは焼肉を焼いてくれます。

 

 

 プレートが斜めになっているのは、余分な肉のあぶらが自然と排水溝に流れるようにするためだそうです。すごい。そこまで考えてある!

 

 

 ドリンクは別ですが、あとの小鉢は、お代わり自由だそうです。

 

 

 

 こんなふうに、肉をどんどん一口サイズまで切ってくれます。

 


 

 

 そして、肉が焼きあがったら、このネギと肉をサンチュにくるみ、食べます。

 

 絶品だったのは、最後に出てくる、「ガーリックチャーハン」!

 

 

 これは、特殊なタレをまぜて作られていて、こんなにおいしいチャーハンははじめて食べました。

 ドリンクを入れても、2000円くらいで、おなかいっぱい、うまいものを食べられます。

 ちょっとした韓国旅行気分も味わえます。

 今回は、平日でお店にはすぐ入れましたが、土日は一時間以上待つこともあるようです。

 気になった方は、ぜひ行ってみてネ!

 

 

 

 

 

 

 

にゃんくのこのランチセットの評価5

 

(本ブログでの、レーティング評価の定義)

☆☆☆☆☆(星5) 93点~100点
☆☆☆☆★(星4,5) 92点
☆☆☆☆(星4) 83点~91点
☆☆☆(星3) 69点~82点)

 

 

 

 

執筆者紹介

 

にゃんく

 

 うれしい時! 悲しい時! いつだって口がちょんがっている、にゃんころがり新聞の編集長です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おすすめラーメン情報、スイーツ情報、こんごも続々更新予定です。

過去の記事は↓こちらです。

 

 

 

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writer/にゃんく

 


STORY

 

 在日韓国人の少女ジニが主人公の物語。
 ジニは小学生のあいだは、日本の学校に通っていましたが、中学になってから、日本にある朝鮮人の学校に通うようになります。
 

 同じ在日韓国人・朝鮮人ですが、韓国語を話せないジニは、周囲のクラスメートになじめません。
 しかし、クラスメートもさまざまです。
 嫌がらせをしてくる同級生の女子もいれば、友達になっていろいろ世話を焼いてくれるありがたい子もいます。はたまた、ピンチを助けてくれる(白馬の王子様的な)男の子が登場したりもします。
 

 イジメにあったりもしますが、タフにそれを乗り越えていこうとするジニ。
 けれど、1998年9月、北朝鮮が弾道ミサイルを日本海にむけて発射した翌日、ジニの人生が大きく変転します。
 ジニはミサイルが発射された翌日、チマ・チョゴリ(朝鮮人の民族衣装)を着て、電車に乗り、登校します。
 見るからに朝鮮人のジニは、いつもと違う満員電車の雰囲気のなかで、圧殺されそうになります。
 車内でもみくちゃにされ、大切にしていたウォークマンが引きちぎられそうになります。
 目的の駅で降りることができず、池袋までやって来てしまったジニは、一目散に服屋に入店し、服を買い、トイレでチマ・チョゴリを脱ぎます。
 そして、ジニはゲームセンターに移動します。
 それでもまだ、悪運はジニに襲いかかることをやめません。
 ジニはゲームセンターで、日本の男たちに性的暴行を受けてしまいます。

 

 ジニの通う朝鮮学校では、教室に北朝鮮の指導者である金親子の肖像画がかかげられています。肖像画は、学校でいちばん大切なものであるかのように、そこに飾られています。
 ジニはゲームセンターで暴行を受けた日から、革命が必要だと考えるようになります。
 やがてある日、金親子の肖像画を手にしたジニがとった行動は……。
 

 

REVIEW

 

 作者は、崔実(チェシル)、1985年生まれ。
 在日韓国人三世です。日本の小学校を卒業後、朝鮮語ができないまま朝鮮学校に進学し、その後アメリカに留学したそうです。
 小説『ジニのパズル』では、語り手の、アメリカからの回想という形をとっています。 STORYでの要約は、ほぼ作者の実体験なのかもしれません。日本でのエピソードは、かなりリアルに描かれています。

 

『ジニのパズル』は、2016年、群像新人賞を受賞、崔実(チェシル)はこの作品でデビューします。 『ジニのパズル』はそのまま芥川賞の候補にもなっています。(受賞はしていません。)

 

『ジニのパズル』は、日本という異国でなじめない、朝鮮人の少女の物語です。
 もちろん、『ジニのパズル』が問いかけているのは、それだけではありません。ジニは日本だけでなく、逃れるようにやって来たアメリカでも孤立しています。 

 

 マイノリティを主人公にし、世の中の常識のなかで殺されていく「個」に光をあてる手法は、まさに文学の伝統的な手法です。
 

 

 独裁者や常識という名の悪に対抗できる手段は、むかし、文学しかありませんでした。(今は科学技術が発展したため、それこそ、ツイッターであるとか、いろいろと方法はあるかもしれません。)

 

 

 それにしても、この作品は、映像作品にすれば、かなりの緊張感をもった作品になるのではないかと思います。何しろ、周りにいる人間たちが、すべて「敵」なのです。ものすごい世界です。そのなかで、少女はたった一人で立ち向かわなければならない。

 

 さて、この作品を読まれた方はどう思われましたか?

 

 

 

 

執筆者紹介

 

にゃんく

 うれしい時。悲しい時。食事をしている時。いつだって、口がちょんがっているにゃんころがり新聞の編集長です。

 

 

 

 

 

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*「読書するにゃん五郎」は、小林。様に描いていただきました!