• 30 Jul
    • COMIC REVIEW 『とりかえ・ばや』(さいとうちほ作)

      COMIC REVIEW 『とりかえ・ばや』(さいとうちほ作) とりかえ・ばや 1 (フラワーコミックスアルファ)/小学館 ¥463Amazon.co.jp STORY時は、平安時代です。 ある日、上流貴族・藤原丸光(まるみつ)に、子供がさずかります。 丸光には、ふたりの奥方がおりましたが、そのふたりの奥方に、ほとんど同時に、それぞれひとりの赤ん坊(男の子と女の子)が産まれました。そして、女の赤ん坊には、沙羅双樹(さらそうじゅ)、男の赤ん坊は、睡蓮(すいれん)と名付けられます。 月日がながれ、きょうだいは成長しますが、姫君の沙羅双樹は女らしく振る舞うことができず、若君の睡蓮は男らしく振る舞うことができません。 ふたりは双子のように美しくそっくりの容姿に成長します。 やがて14歳になったとき、その評判が帝の耳にまで届き、丸光は、女の子の沙羅双樹を、男の子のふりをさせ、宮中に宮仕えさせることになります。 一方の(男の子の)睡蓮は、女としての本性を隠したまま、東宮(とうぐう)様の世話をするために仕えることになりますが……。 とりかえ・ばや 2 (フラワーコミックスアルファ)/小学館 ¥463Amazon.co.jp REVIEW男女のきょうだいが、それぞれ、男は女のフリをして生き、女は男のフリをして生きる、という物語です。 原作の『とりかえばや物語』の成立は、平安時代末期と言われています。作者不詳の物語です。 1巻の作者(さいとうちほ)からのメッセージでは、『これを読んだ時は「日本人のDNA恐るべし」と驚きました。「男装女子」に「男の娘」に「BL風」…て今のサブカルチャーじゃあないですか-。古くて新しい日本の古典に敬意を表しながら挑戦しています。』とあります。 たしかにそうですね。今でもアニメの登場人物ふうに、コスプレしたりする日本のサブカルチャーはクール・ジャパンとして、世界に輸出されています。そのサブカルチャーの源は、実は平安時代からすでに端を発していたのかもしれませんね。 現代でも、自らの性に違和感をおぼえるマイノリティーの方は、少なからずいらっしゃいます。最近では、同性同士の結婚を、法制度的に認めようという動きもあります。アメリカでは、すでにそのような法制度が整っているところもあると聞いています。ですから、今にかぎらず、昔から、自分の性に悩む人は、けっこういたのだなあ、と。平安時代成立の物語ですが、まさに現代に生きる人間にとっても、身に覚えのある、切実なテーマといえるかもしれません。 とりかえ・ばや 3 (フラワーコミックスアルファ)/小学館 ¥463Amazon.co.jp にゃん子さんの感想 絵がきれいでいいです。 石路(つわぶき)、ほんとムカつく。自分勝手すぎる。(石路は、いろんな女と交わる、イケメンだけど、浮気性のおとこです。) 沙羅双樹は、女だけど、男のフリしたりして自分を抑えているのに、石路は自分勝手に行動して、ほんとムカつきます。すべての女性の敵だと思います。 男なのに女のフリしてる睡蓮は、はじめ人前に出るのも恥ずかしく思う子でしたが、東宮様の下で働くようになったりして、ちゃんと成長しています。 女東宮がホンワカしていて、超カワイイ、と思いました。 登場人物それぞれの気持ちがわかりやすい漫画だと思います。 にゃん子さんの評価↑ とりかえ・ばや 4 (フラワーコミックスアルファ)/小学館 ¥463Amazon.co.jp 編集長のまとめ 女と男って、難しいやね。と思いました。 古典文学の『とりかえばや物語』のいいところを、漫画でお手軽に楽しく読めるのがオススメですね。 なかなか波瀾万丈の物語展開だと思います。 心理学者の河合隼雄さんの著作に、「とりかへばや、男と女」があります。古典「とりかえばや物語」をとりあげた本です。併読すると、理解が深まると思います。 ブログTOPへhttp://ameblo.jp/nyankodoo/にゃんくへのお仕事のご依頼はこちらmtkm2008@gmail.com にゃんくの作品は楽天Kobo、パブーにて好評販売中です。 http://books.rakuten.co.jp/rk/1c74b4af05053d31b2f92fd81bf5f00a/ http://p.booklog.jp/users/nyanku にゃんくへのお仕事のご依頼はココナラからでもOKです。 http://coconala.com/users/252145

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  • 29 Jul
    • BOOK REVIEW 『洗脳 地獄の12年からの生還』(ToshI著)

      洗脳 地獄の12年からの生還/講談社 BOOK REVIEW 『洗脳 地獄の12年からの生還』(ToshI著) 1997年、ボーカルとして、人気絶頂にあったなかでのX JAPAN解散。 それからの洗脳騒動……。 この間、Toshlにいったい何があったのか? 自分の身に起こった出来事やこころの内を、すべてありのままに綴ったノンフィクションです。 X JAPANのファンならずとも、凄絶な内容に思わず、アクション映画のように、Toshlに迫る危機に手に汗をにぎってしまいます。 でも、これは、驚くべきことに、現実に起こった出来事なのです。 テレビ番組では、ダウンタウンに、「警察に駆け込んだことも、何度もある」と語っていたToshl。それでも、やはり夫婦間の問題として、Toshlを助け出すことが長年誰にもできなかったのでしょう。 Toshlが、MASAYAに上納した金額は、約10億円。 当時、それも、あのX JAPANの元人気ボーカルが、地方のドサ回りをさせられて、CDの販売の営業をさせられたり、トラックの荷台をステージにして、歌をうたい、必死にMASAYAに渡すお金をつくり続けていたのです。 その一方で、Toshlの食事は、コンビニのおにぎりだけ……。 身もこころも困憊の果て、Toshlは何度か倒れ、命の危険にさらされます……。 毎月、その月つくるお金の額を、MASAYAから宣言させられるToshl。金額がすくないと、暴力をうける有り様です。 逃げ出せばいい、と誰しも思いますが、逃げ出しても連れ戻され、暴力をふるわれます。精神的にも、状況的にも支配され、逃げ出すこともできない日々。 いったい何故このような関係におちこんでしまったのでしょうか? そもそものはじまりは、Toshlの妻となる守谷香との出会いでした。 はじめは、俳優起用のオーディションで、応募してきた守谷香を、Toshlが選んだことで、親交がはじまったようです。 それから、守谷はToshlの心の支えとなっていきます。 その頃、ToshlはX JAPANの活動で悩んでいました。 リーダーのYOSHIKIから、もっと高い表現力をもとめられ、(ウィキでは、高音を要求され、となっています)何度も厳しいダメ出しをされる日々。 「ぼくはYOSHIKIの求めるものに応えられない……」 (YOSHIKIもYOSHIKIで、プロ意識の高い人です。たった一曲作るのに、何ヶ月もかけるほどの、こだわりを持った人です。だからこその、作曲者としてあのクオリティがあるのでしょう。) Toshlは、守谷の助言の影響で、X JAPANのカラーから、すこしずつ遠ざかっていきます。ビジュアル系の外見をやめ、たとえば、他のメンバーは髪を派手に染めて、ビンビンに立たせているのに、自分だけ髪を黒くし、ナチュラルな感じにしたり……。 その後、Toshlは、MASAYA主宰のホームオブハートのセミナーに参加させられることから(妻の守谷の手引きにより。守谷は、MASAYAの愛人のような存在だったようです)、いよいよ搾取と隷従の道へはいっていきます。 そのセミナーは、MASAYAのシナリオ通りに、はじめから仕組まれたものでした。そのセミナーに参加したメンバーも、ホームオブハートのメンバーが大半だったのですが、そのことを知らないToshlは、仕組まれたセミナーで、感動体験をあじわいます。 そして、MASAYAから、「X JAPANは悪の権化だ」と説かれ、悩んでいたToshlは、いよいよ X JAPANからの脱退を表明します。その意志を、幼稚園からの幼馴染みのYOSHIKIも翻意させることができませんでした。 「Toshl! 戻ってこい!」 ファンが涙して呼びかけるフィルムがネットにも残っていますが、とても印象的なシーンです。むしろ、ToshlはX JAPANから離れられることを、このとき、自分にとって良いことだと信じて疑わない、晴れやかな表情をしていました。 でも、このときから既に、MASAYAや守谷の、Toshlへの暴力ははじまっていました。Toshlは、自分が受ける暴力は、MASAYAや守谷が自分のためを思ってしてくれていることだと信じて疑いませんでした。セミナーの感動体験により、Toshlは、MASAYAにお金を上納することすら、自分に課された修業のようなものだと思い込まされていたのです。…… あの美しいX JAPANの音楽の裏側には、これだけ激しい葛藤と地獄があったとは! 人は、お金のために、どこまで残酷になれるのか? 人は、他人の不幸に、どこまで無関心になれるのか? 純粋な人だから、ここまで悪人を信用してしまったToshl。 暴力をふるわれているのに逆に相手のことを信用してしまう心理など、いろんなことを考えさせてくれる本です。 Toshlはたいへんな経験をしましたが、自分のこころの傷に耐えながら、この本を書き上げたことは、すばらしいです。そして、この体験は、皆で共有するべきものだと考えます。 事実は小説より奇なりといいますが、まさにその通り。 この本を読んだあとは、X JAPANの曲は、涙なくして聴けないかもしれません。 ただのタレント本とは一線を画しています。オススメの本です。 ブログTOPへ http://ameblo.jp/nyankodoo/ にゃんくへのお仕事のご依頼はこちらmtkm2008@gmail.com にゃんくの作品は楽天Kobo、パブーにて好評販売中です。 http://books.rakuten.co.jp/rk/1c74b4af05053d31b2f92fd81bf5f00a/ http://p.booklog.jp/users/nyanku にゃんくへのお仕事のご依頼はココナラからでもOKです。  http://coconala.com/users/252145

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  • 26 Jul
    • 口コミで評判の渋谷の森クリニックのご紹介

      口コミで評判の渋谷の森クリニックのご紹介 「ムダ毛を何とかしたい」とか、「ふとももの太さが気になる……」、「ニキビがひどい」、「もう少し、鼻が高かったら」など、人それぞれ、容姿・外見については、お悩みやコンプレックスがあることと思います。ぼくもそういう経験がありましたから、その気持ちはよくわかります。 そこで今日紹介させていただくのが、口コミでたいへん評判が良い『渋谷の森クリニック』さんです。 ↑来院された吉木りささん 渋谷の森クリニックは、ほくろ除去、わきが対策、脱毛処理はもちろん、目、鼻、口、顎、耳などお顔を美しくするための矯正をはじめ、美容・美白効果のある注射など、お客さんのさまざまな要望に対応されている美容クリニックです。 HPを見ていて、すごく評判が良いので、ぼくもちょっとお願いしてみようかしらん? と思ったほどです。 興味がある方は 渋谷の森クリニック で検索してみてください。 文字数の関係で、とても全部は紹介しきれないくらいサービスを多数提供されているのですが、ぼくは今回HPを見てはじめて知ったのが、アートメイクという先進的な医療行為です。このような方法もあるのかと感心しました。 というのは、ふつう、女性の方は、毎朝かなりの時間を割いてお化粧をされると思いますが、アートメイクの施術をうけると、その手間がかなり軽減される効果があるようです。 アートメイクとは何か、といいますと、医療用ニードル(針)で眉の部分を染色する、一種の医療タトゥーになります。 一度施術をうけると、その効果は数年続きます。 特筆すべきは、化粧よりも、自然なかたちで色を入れられるという点で、施術時の痛みも少なく、数年で色が消えるということです。だから、刺青のように、入れてしまってから後悔する、ということもないようです。 また、水などで色落ちすることもないので、「お化粧しないと人前に出るのは恥ずかしい」という気持ちを持っていらっしゃる女性の方には、お化粧しないでも、美しいお顔で行動できるという点で、アートメイクは強い味方になるのではないでしょうか。 ↑来院されたソナーポケット ko-daiさん もちろん、アートメイクはごく一部のサービスになります。 他には、美容注射のお得なキャンペーンなども随時実施されているようです。 詳細は、「渋谷の森クリニック」で検索して、HPをご覧ください。 興味をもたれた方は、まずは無料でご相談されてみてはいかがでしょう? より美しく活動していくためのきっかけとして、安全・安心の、『渋谷の森クリニック』を、活用しない手はありませんね。 ↑来院されたgenkingさん 連絡先を掲載しておきますね。 渋谷の森クリニック 東京都渋谷区神宮前6-18-1クレインズパーク4階 副都心線 明治神宮前駅 7番出口 徒歩5分 JR線 渋谷駅 宮益坂口 徒歩8分 TEL:03(3409)5959 フリーダイヤル:0120(612)777 診療時間11:00~22:00 休診日:水曜日 お電話受付時間11:00~20:00 初診受付は19時半まで ↑来院された鈴木亜美さん

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    • お手頃価格で、おいしい・新鮮、『鮪師 まぐろ亭』(しびし まぐろてい)のデリバリーお寿司

      お手頃価格で、おいしい・新鮮、『鮪師 まぐろ亭』(しびし まぐろてい)のデリバリーお寿司 飲食のデリバリーって、値段が高かったり、こちらの指定した時間通りに来てくれなかったりしますよね? ところが、先日関西に帰省した時に、ひと味もふた味も違う宅配寿司のサービスを発見したんです。 そして一番伝えたいのは「何をおいても、お寿司がすごくおいしかった!」ということです。   「ネタが大きくて新鮮でこの値段でこの味はおトク」だと感じました。 自宅で本格料理が気軽に食べれたので、また頼みたいなと思いました。      たまたまその日、親族が沢山集まっていたので、食事の準備を待たせると気まずかったのです。 ですが、まぐろ亭の配達員の方は時間通り来てくれたのでホッとしました。 食べた親戚一同が美味しいなと言ってたので皆さんにおすすめさせて下さい。 こちらにURLを記載しておきます。 http://www.kame8suisan.jp/ 『鮪師 まぐろ亭』(しびし まぐろてい)さんです。  読者の方で関西にお住まいの人は、一度チェックしてみて下さい^-^ 食べてから興味が出てググッてみたのですが、いろんな取組をされていますね。  例えば、マグロの水揚げ時に、独自の工夫をこらしていたり、商品を届けるまでに、いろんなことに手間暇かけられていたり。 なるほど、食べた時のあの味が今まで食べたのとちがうなと思ったのはそういうことだったのかと、おいしさの理由が理解できました。   そして特筆すべきは『鮪師 まぐろ亭』さんは、お寿司作りの見学も多くの方に向け開放しているようです。 こんな宅配寿司サービスたしかにないな~。普通裏側って見られたら嫌だし、隠しますもんね。   ↑写真は、ポーランドから来日した人が『鮪師 まぐろ亭』の見学に参加している様子です。 すこし緊張されているようですね。   ↑さらに、ポーランドの人が、お寿司を握る体験をされている図です。はじめてのお寿司づくり♪ でしょうか。 ドキドキですね。   ↑そして、見学の際に自分でお寿司をつくり、それを食べてる様子です。 (さて、自分で作ったお寿司のお味のほどは?! さぞや最高でしょうね。) 遠国ポーランドからも、その技術を偵察しにやって来るほどなんですね。   今やSUSHI(寿司)は、外国ではラーメンより人気のジャパニーズフード。  日本のクールな(カッコいい)食べものだといろんな情報で見ますよね。 お寿司づくりをやってみたい人、脱サラをして一旗あげたいという野心のある人、飲食店を一回失敗した人、そういう人は『鮪師 まぐろ亭』で技術を学び、お寿司づくりのノウハウを吸収して自分の店を創ってみたらどうでしょう? 「一国一城の主」を、目ざされてみるのもいいかもしれませんね^^ http://www.kame8suisan.jp/

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  • 25 Jul
    • COMIC REVIEW 『ローゼンメイデン』(PEACH-PIT著)

      COMIC REVIEW 『ローゼンメイデン』(PEACH-PIT著) Rozen Maiden 1 (バーズコミックス)/幻冬舎 STORY 桜田ジュンは中学生。父母が仕事で海外に出張中なのをいいことに、心配する高校生の姉を尻目に、自宅でひきこもりを続ける日々をおくっています。 あ る日、「まきますか まきませんか」と記載された怪しげな通信販売の用紙に、ジュンが「まきます」を選び○をつけると、まもなく自宅にかわいらしいアン ティークドールが届きます。ジュンがぜんまいで人形のネジを巻いてみると、ドールはねむりから目覚め、ジュンにビンタを浴びせ、 「私の名は真紅(しんく)。薔薇乙女(ローゼンメイデン)の第五ドール。おまえはこれより真紅の下僕となる。」 そのような口をききます。驚くジュンですが、ドールと指輪の契約を結んだジュンは、それから否応なしに、ドールたちの戦いに巻きこまれていきます。 すなわちローゼンメイデンは天才人形師ローゼンが生涯かけて作りあげた伝説の人形シリーズで、全7体。それぞれが魂として持つローザミスティカを奪いあう<アリスゲーム>という名の戦いに。 Rozen Maiden 2 (バーズコミックス)/幻冬舎 REVIEW 2002年~2014年にかけて連載されたPEACH-PITの漫画です。 「月刊コミックバーズ」にて連載された『Rozen Maiden』が1巻~8巻まで刊行され、途中「週刊ヤングジャンプ」に舞台をうつして、『ローゼンメイデン』として1巻~10巻まで続編として刊行されました。 緻密にして繊細なアンティークドール「ローゼンメイデン」シリーズという設定で、次々とかわいらしいドールたちが登場してきます。 それぞれ人形たちは性格も違います。極端にワガママなものもいれば、ドジっ子もいる、超絶クールに振る舞うものや、対となる武器を所有し二人そろった時に強力なちからを発揮する双子のドールもいます。 彼女たちのユニークなキャラに、作中人物たちのように、思わずドールの収集家になりたいと思う人もいるかもしれません。 Rozen Maiden 3/Tokyopop ドールのぜんまいを巻いてしまったことから巻きこまれる不条理な世界に、ひきこまれました。 真紅のマスターとなり、人形たちのアリスゲームという戦いに巻きこまれてしまうジュンもまた、ひきこもりという重大な「心の病」を抱えています。 真紅のライバルとして登場する水銀燈(すいぎんとう)は、黒を基調とした衣装やその翼をつかう戦い方などから、カラス(=悪者)を連想させますが、その関係も、読み進めるにつれて、どうやらアリスゲームが導入されたことから険悪化してきたことがわかってきます。ジュンだけでなく、ライバル水銀燈、幼女のようなかわいらしい雛苺にいたるまで、登場するドールそれぞれの成長もおもしろいです。 アリスゲームに負けローザミスティカを奪われたドールは動かなくなります。そんな残酷な戦いに、ドールたちを駆りだした「お父様」ことローゼンとは何者なのか? 果たしてアリスゲームを生き残り、ジュンはひきこもりを克服できるのか、最後までその展開に目がはなせませんでした。 ただひとつ残念だったのは、雛苺の登場シーンが少ないと感じたこと。雛苺には、もっともっと活躍してほしかったです! 感想の半分以上:にゃん子、記事執筆:にゃんく にゃん子さんの評価 Rozen Maiden 4/Tokyopop ¥1,047Amazon.co.jpRozen Maiden 5/Tokyopop ¥1,130Amazon.co.jpRozen Maiden 6/Tokyopop ¥1,130Amazon.co.jp ¥価格不明Amazon.co.jp Rozen Maiden, Tome 8 :/作者不明 ¥価格不明Amazon.co.jpローゼンメイデン 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)/集英社 ブログTOPへ http://ameblo.jp/nyankodoo/ にゃんくへのお仕事のご依頼はこちらへ mtkm2008@gmail.com にゃんくの作品は楽天Kobo、パブーにて好評販売中です。 http://books.rakuten.co.jp/rk/1c74b4af05053d31b2f92fd81bf5f00a/ http://p.booklog.jp/users/nyanku にゃんくへのお仕事のご依頼はココナラからでもOKです。 http://coconala.com/users/252145    

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  • 22 Jul
    • ついに本文公開! スリーセブン

      スリーセブン にゃんく みっくんがギャンブルに手を染めたのは、社会人になってから四年め、二十六歳の冬のことだった。 当初はそれほど本格的にはじめようと思っていたわけではなかった。暇もあるから試しにやってみよう。職業柄、まったく知らないよりも、一回くらい経験しておいた方がいい。そのような考えからだった。 そのとき坐った台が、「北斗の拳」だった。 「北斗の拳」の漫画も子どもの頃親しんでいたし、何といってもレバーを下げると同時に液晶画面でアニメーションが動きだすのが、それまでに経験したことのなかったあたらしさで、おもしろいと感じた。 ゲームをはじめて、四千円ほど投入した頃だった。大当たりをひいた。何しろはじめての大当たりだったから、わけもわからずボタンを押していると、左隣のおばちゃんが、敵のザコに表示されている数字の順番に、機体の正面に三つ横に並んだボタンを、たとえば、左、右、真ん中、だとか、右、真ん中、左、だとかいうふうな順番で押していくのだと教えてくれた。その番号の順番にボタンを押さないとせっかく大当たりしているのにメダルが出てこないのだ。みっくんは親切なおばちゃんに礼を言ってスロットを続けた。 その大当たりが終わるとすぐゲームをやめて席を立った。 換金所でお金に交換すると、一万二千円ほどが手に入った。ずいぶん簡単にお金が手に入るもんだ。みっくんがギャンブルのおもしろさに目覚めたのはこの瞬間だった。 それから頻繁にパチンコ屋、つまりスロット店に足をはこぶようになった。 新宿の、歌舞伎町の入り口にある、規模の大きな店である。フロアには無数のスロット機が並び、そのほとんどが「北斗の拳」に席巻されていて、しかも一階から五階まで全部がスロットエリアである。住んでいた寮から電車で数十分の距離にあるが、みっくんがわざわざ電車に乗る手間までかけてこの店によく足を運んだのは、最初の勝利を味わったのがこの店であったということもあるし、台数が多いので、小規模の店より、高設定の台が多いだろうという思惑もあった。 はじめの頃は、軍資金をそれほど潤沢に用意して行かなかった。 或る時、液晶画面では派手な演出が続き、いかにも大当たりしそうな気配なのだが、焦らすようになかなか当たらず、ついに財布のなかの金の全部であった三万円ほどを使い果たし、それ以上遊技することができなくなった。 みっくんはあきらめ席を立つと、若いおとこがその席にすぐ陣取った。 おとこは友人と連れ立って店に来ており、みっくんの打ちおわった台の表示を見て、何やら打つ前からすでに勝利を手中にしたかのような、含みのある笑みを友人と交わし合っていた。 みっくんは嫌な予感を胸に抱きながらも、おとこがゲームをするのをすこし離れた後方から窺っていた。 果たしておとこが打ちはじめてほどなく大当たりになった。しかも何ということか、かなり連チャンして、おそらくみっくんの呑み込まれた三万にちかい金額がメダルに形を変えて機内から吐き出されようとしていた。 あと三千円手持ちの金があれば、そのような悔しさを味わわなくて済んだのに…。それからは、みっくんはスロットに出掛ける時は常に軍資金を潤沢に準備しておく必要性を肝に銘ずるようになった。 パチスロをギャンブルではなく、安定的に収入を得ることができるものと見なし、そのための技術とかスキルなどを記載しているという触れ込みのブログを熟読しはじめたのもその頃のことである。 はっきり言ってそのブログを読んでも大当たりは引けないのだが、それはそのブログの作者が持っているスキルを正直に告白していないからであって、作者自身はまさにブログに書いているような理念を実践して仕事もせず毎日スロットを打ち続けて収入を得ているらしいのである。だからみっくんはすこしでもその作者にあやかりたいと、そのブログを読むときは真剣そのものだった。 人真似だけではなかった。みっくんはみっくん独自のやり方も発案し、それを実地に試してもいた。 「北斗の拳」には天井なるものがあって、それはだいたい二千に設定されている。つまりレバーを二千回叩きおわると、「天井」にぶち当たり、ラオウとの死闘であるバトルボーナス、つまり必ず大当たり(777)が出現する仕組みなのである。もちろん、十回だけで大当たりすることもあるし、六百とか、七百とかで当たるかもしれない。つまり、いつバトルボーナスに巡り会えるかは、機械の内部で抽選されていることだから、外部からはわからない。でも、大当たりしないことが無限に続くわけではない。二千回レバーを叩くと必ず大当たりする仕組みになっている。それが天井という設定なのである。 みっくんはそれに目をつけて、千六百とか、千四百とか、いわゆるハマっている台に好んで手をつけた。つまり千六百であれば、あと四百打てば必ず大当たりするし、千四百であればあと六百打てば確実に大当たりが引ける。それを当て込んでのことである。 しかも「北斗の拳」はいちど大当たりをひくと、連チャンが何度続くか、未知数だった。そういうシステムなのである。つまりケンシロウがラオウとの死闘を繰り広げるかぎりバトルボーナスは続く。その間、ケンシロウがラオウに倒されなければ、メダルは吐き出され続けるのである。極めてギャンブル性の高いスロット台であった。だから、人気もあり、中毒者も増えた。大当たりが一回で終わることもあれば、ほとんど無限に続くこともある。(無限に続くことは実際にはあり得ないことだが、後になってみっくんの知るかぎり、三十回くらいが上限だっただろうか。一回の大当たりで連チャンが続き、二十万近く勝つ場合だってある。三十回より長く連チャンが続くこともあるらしいが、みっくんがそれを現実に見たことはなかった)。 ハマった台ばかりを狙い、バトルボーナスが出ればそれを消化した段階ですぐその台を離れる、すなわちケンシロウが斃されればすぐその台から移動する、そしてまた次のハマった台に移動する、という作戦を展開し、夜の七時ころから店に入店し、十一時の退店までに十二万円ほど大勝したことがあった。メダルに換算すれば六千枚。みっくんの作戦が図にあたったのである。この日は客寄せのために、どの台もメダルを出す設定にされていたのであろう。 しかし店側としては一人の人間に勝たせすぎるのもおもしろくなかったのかもしれない、この時の換金所の対応はおかしかった。 歌舞伎町のこの店は、メダルをプラスチックの板に交換したあと、レシートも何も渡さないから、板を少なめに渡されても客の方はインチキに苦情をいえず、泣き寝入りするしかない。インチキなんてしないだろうとは思ったけれど、みっくんは大勝したことであるし、念のためにメダルを換算したときの、6012枚と記載されたレシートを携帯電話のカメラで写真におさめておいた。 店のカウンターでメダルを交換し、プラスチックの板を何枚かもらった。板一枚で幾らに相当するのか不明であった。けれども、メダル一枚で二十円に相当するから、この枚数では十二万円ほどの金額になるはずであった。みっくんは換金所に行き、板を係の者に差し出した。係の者が渡してきた金額は、八万円であった。みっくんは不審に思い、携帯におさめてあった画像を係の者にみせて、金額が少ないのではないかと言った。しばらくして、奥から責任者らしい、眼光するどいおとこが一名出てきて、係の者と短い会話を交わしていた。そしてその責任者の指示により、係の者の手によって、あっさりと先刻の金とは別に、さらに四万円がみっくんに手渡されたのである。お金はちゃんともらえたけれど、腑に落ちず、みっくんは苦情を申し立てた。 「おかしいじゃないですか」 はじめから十二万渡しておけばいいのに、知らなければすっとぼけようと思い、みっくんに八万だけ渡していた。これ以上文句を言われると面倒くさいと考えたのだろうか、すぐにお金を追加で渡してきた店側の対応に、みっくんは意図的なインチキを感じたのである。 すると責任者らしいおとこは、 「そんなことが言える立場なのか」 と一喝するように言った。それ以上みっくんは何も言いかえせず、ちゃんと十二万円もらえたことだし、その場はいちおう引き下がって家路についた。けれども、後から考えると、インチキしておきながら、「そんなことが言える立場なのか」とは大きく出たものである、と思った。そもそも店はそのような目線で客をゴミのような存在として見ているのである。客をただ、金を吸い取るカモとしてしか見ていないのである。だから、「そんなことが言える立場なのか」などという台詞が出てくるのである。たとえば、飲食店に行って、勘定が間違っていて苦情を言ったときに、店側が、「そんなことが言える立場なのか」とは言わないだろう。謝るだろう。ところが、「そんなことが言える立場なのか」と来た。パチンコ店の客だから、そのような暴言が吐けるのである。思い出すだに業腹だった。 それでこの店に来るのはやめにすれば良かったのに、みっくんは行くことをやめなかった。この日大勝したことで、店側の対応はそれはそれとして、勝ったことに関しては気をよくしたのである。あの責任者にはムカっときたが、店に行かなくなるより、このまま勝ち続けた方が得策だと考えたのである。ソロバンをはじき、この日のような大勝を続けてゆけば、まさにパチスロで人生豊かに暮らせるのではないか。今日のような大勝を十回すれば百二十万稼げるわけだし、それを十年続ければ千二百万円もらえる。工夫すれば、さらに勝てるかもしれない。そうなれば、今の仕事を続ける必要もないのである。まさにスロットで夢が実現できるではないか。甘い空想は膨らみ、みっくんのテンションは見えないところで高まるばかりだった。 それから休みの日はもちろん、仕事がおわったあともスロットをするために同じ店に通いはじめた。 みっくんが着ていた緑のダッフルコートには煙草の臭いが染みついてとれなくなった。マルイで買った、けっこう良いコートだった。煙草の煙のせいか、コートの緑色までくすんでしまっている。スロットをする時は高い服は着ていけないなとみっくんは思った。 金はスロットにほとんどをつぎ込むようになった。勝ったときだけキャバクラに行ったり、外食でステーキなどを食べるが、負けるときの方が多いから、食生活も偏ったものになる。吉野屋の牛丼で済ませたり、コンビニのおにぎりで腹を膨らませて気を紛らわす。スロットのために日常生活に必要な金は節約しギャンブルにすべてをつぎ込むようになる。 着る服も、まるで貧乏人のように毎日同じ暗い色のセーターを着、しかも染み着いた煙草の臭いをとるために洗濯の回数が増えたせいで、裾の部分が破れてきた。それでも新しい服を買うことは躊躇われ、いずれスロットで勝った金でちゃんとしたものを買おうとは思っていても、累計でみると結局投資した額より負けた額の方が右肩あがりに増えてゆく。服のことなどかまっていられなくなり、どうせ誰も見ていないだろうと高をくくり、みっくんは裾の破れた服を着つづけることになる。 勝てないのは分析が足りないのだ。或いは、店に行き、すぐに台に坐るのではなく、良い台が空くまで待つ忍耐と時間も必要なのだ。スロプロの人は、仕事をしていない分、すべての時間をスロットに費やせる。だから僕より有利ではないか。その分のハンデを補わねばならない。みっくんはそのように考え、仕事がおわり、寮にかえり私服に着替えると、脇目もふらずスロットに出掛ける。長時間店に入り浸るようになる。みっくんの寮の部屋のなかは掃除もされずに荒れ放題になってゆく。それどころか、勝ち負けに左右されて、まともな食生活も送れなくなっている。日常生活の細かい部分が置き去りにされ、すべてがスロットを中心にまわっていくようになる。 日によって勝ち負けのパターンはいろいろで、一日として同じ日はなかった。 一万円くらいまで勝って、それから小さい勝ち負けを繰り返し、最終的には五万円ほどマイナスになり、一万円勝ったところでやめておけば良かったと反省することもあったし、そうかと思えば僅か二、三千円勝って、これくらいの勝ちで換金するのもどうかと思って打ち続けたら、そのままずるずると三万円ほど負けたこともあった。 負けばかり続くわけではなかった。平日の朝方店に行くと、どの台も二百ばかり打って、そのあとは捨てたように誰も打っていない日があった。閑散としている。みっくんはギャンブル歴が浅くて、どの台が出るのかわからないし、液晶画面の演出を見ても高設定の台かどうか判断はできない。でも打つ人が打てば、二百ほど打つだけで出る台かどうかわかるのだろうか。だからどの台も、このようにうち捨ててあるのだろうか。 そんな疑問があたまをかすめながらも、みっくんは何気なく選んだ中ほどの一台に坐る。打ちはじめて三分ほどでラオウステージに移行する。ケンシロウが歩きつづける、漆黒の世紀末の荒野に、雷が落ち、北斗七星が光る。みっくんの後ろに通りかかったおとこがそれを見て、深くて長いため息を漏らすのを背中で感じる。数台離れた台で打っているおとこも、みっくんのほうを振り返っている。皆に注目されている気がして、みっくんは良い兆候だと気を良くする。みっくんには後ろで漏らしたおとこのため息の意味がわからないが、ラオウステージに移行したので(ラオウステージは他のステージより大当たりを引きやすいのだ)、期待の予感にこころ躍らせながら、徐々にペースをあげてレバーを叩く。馬の蹄が響く。ケンシロウの手前で黒王が静止する。いかついラオウの顔のアップ。「待っていたぞ、ケンシロウ!」 バトルボーナス、ゲットォォォー! 過激なギター音に乗せて、ケンシロウが次々とザコを打ち斃してゆく。みっくんはケンシロウに同化する。ボタンの押し方やスピードも、だんだんと北斗神拳に近づいていっているようだ。ラオウのパンチ。幻のトキがケンシロウの背後に現れ、トキの動きを盗んだケンシロウは無敵になる。 「ラオウ、天にかえるときが来たのだッ!」 連チャンは続く。このまま何処かに辿り着けるような気がする。生きることは、ひとりぼっちだ。仕事をしている時も、休みの時も、友達とたまに話しているときですら、孤独を感じる。けれどスロットを打っているときは、ひとりだと感じないですむ。打ち終わった時、此処ではない何処かへ辿り着いていることを夢見て、みっくんはレバーを叩きつづける。 結果は、久し振りの大勝だった。五万円勝った。みっくんがそれを機に席を立つと、さっきため息を漏らしたおとこが奪うようにすぐみっくんがいた席に坐る。他の席は空いているのに。……三十代手前だろうか、黒っぽい上下の、痩せぎすのおとこだ。まだ立ち去らずに角の通路からうかがっているみっくんのほうは見向きもせずに、ゆったりと煙草に火を点け、煙をくゆらせながら、画面から脇目もふらず、レバーを同じ間隔で叩いている。もう出ないだろうとみっくんは内心おとこを可哀想に思っている。僕がこれだけ出したのだから、もう出ないよ、きっと。みっくんは悠々と昼飯を食べに行く。でも、何となくさっき自分が捨てた台のことが気にかかり、食事がおわると店に舞い戻っている。すると、おとこは大当たりを引いている。あろうことか、みっくんが出したよりも多くのメダルを獲得し、床にでんと置いた二箱のケースのなかに溢れんばかりにメダルを積み上げている。… 男の漏らしたため息はそういう意味だったのかとみっくんは思う。僕が捨てた台は、出る台だったのだ。みっくんは勝ったにもかかわらず、もっと勝てていたのにという悔しい気持ちも抱えながら、歌舞伎町をうろつきはじめる。しかしみっくんにはもう、勝利の味が染み着いている。スロットで勝ったときの、突き抜けるような高揚感は、忘れられないほど軀に刻み込まれている。 夕方まで適当な漫画喫茶にはいり、時間をつぶしたあと、アルタ横の銀行のまえでミミラを待つ。時刻は六時五分まえだ。 昼の三時に、みっくんからミミラに、 「今、新宿にいる」 とメールを送ると、三十分ほどして、 「今、起きた」 という返事がミミラから来ていた。だからいくらミミラが寝坊の常習犯だとしても、約束をすっぽかされることはない筈だった。 寒さは厳しさを増しており、漫画喫茶であったまった軀からどんどん熱が奪われてゆく。何処からともなく吹きながれてきた枯れ葉が、いずこへか吹きとばされてゆく。 約束の六時を三十分すぎて、ミミラはようやくやって来た。下はブルーのジーンズ、寒そうに茶色のフード付きブルゾンに首をうずめている。小さい背――身長はたぶん百五十くらいしかなくて、みっくんより二十センチは小さいが、ヒールの高さでそれを補っている――小さな頭――やや茶色がかった髪を後ろでポニーテイルふうに束ねている――整った顔に、軀ぜんたいから漲る若さ、愛嬌のある表情は、みっくんより六歳若いのに、歌舞伎町でみっくんが足元にも及ばないほどの輝きをはなっている。この町に馴染んだその姿は、彼女を此処で生まれ育った住民であるかのように見せているけれど、ミミラは沖縄出身で、半年前東京に出てきたばかりの二十歳なのだ。 ミミラのほうから腕を組んでくる。そうすることが当たり前とでもいうふうな自然な仕種で。みっくんのまわりに一瞬ぱっと桜の花が満開になったようだ。こうして腕を組んで歩けば、ふたりを中心にしたこの小さな円のなかに、誰も近づけない、見えない壁が築かれている。知らない他人が見れば、ふたりのことをずいぶん前から付き合っている間柄と思うかもしれないけれど、みっくんがミミラと逢うのは今日がこれで二回め。はじめて逢ったのが十日ほどまえで、キャバクラ店の中でのことであった。 地下にある薄暗い居酒屋の個室にはいり、そこで軽く食事をする。 ピザと甘ったるいアルコールと、唐揚げやポテトなどが運ばれてくる。ミミラはほとんど食べ物を口にしない。飲み物はノンアルコールをすこし。みっくんばかりが食べ、アルコールを口にふくんだ。 ミミラとのとりとめのない会話。個室のまえを通りかかる客の男たちの話し声が波のように大きくなり、遠ざかってゆく。みっくんはミミラに悟られないように彼女の軀をこっそり眺めている。 スロットで勝った先週の一月中旬、キャバクラに行き、女を侍らせ、酒を呷った。十五分から二十分でみっくんの隣のソファには、着飾った女たちが交代でやって来た。瑞々しいほど若い女。胸の大きい女。愛想のいい女。気がきく女。色々なタイプの女がいた。そして二時間そこにいた、その中でいちばん最後に来た女がミミラだった。 店内の中央のステージでは、ちょうど楽器の演奏と、しなを作った水着姿の女たちの出し物がはじまっていた。他の客や女たちは皆、ステージに注目していたが、みっくんだけは隣に坐ったミミラに釘付けになっていた。というのも、これまで隣に腰掛けた女たちにはそれぞれ長所があったけれど、皆完璧ではなかったから。その点、ミミラにはまさに完璧という言葉がふさわしいように思えた。このような女が生きて歩いて言葉を喋っていることが不思議に思えるほどだった。昔、中国の皇帝が、お気に入りの后のことを、『言葉を話す花』と表現したというが、ミミラは今まさにうつくしい盛りの花だった。みっくんはミミラを所有したいと思った。そして、自分にはそれができると思った。 「怪獣みたいな名前ですね」 みっくんはミミラと印字された彼女の胸の名札を指さして言った。 「お店の人がふざけてつけたの」 とミミラが応えた。 居酒屋で食事をおえると、地上にあがり、再びみっくんはミミラと腕を組み、店を出て歌舞伎町を闊歩しはじめた。中古のブランド品を売っている店の前に来ると、ミミラが足をとめた。ショーウインドーに陳列されたブランドもののバッグに見入っている。 「どうしたの? 見たいの?」 とみっくんが訊くと、ミミラは「うん」と頷く。じゃあ、見てみようよ、とみっくんはミミラの手を引いて店内に入っていく。ガラスケースのなかに時計、バッグ、財布などを陳列した店内は、三十歩ほどでぐるりと一周できるほど、広くはない。ミミラはいちいち足をとめて、そのたびに、「これかわいい」とか、「あ、これ前から欲しかったんだ」などという台詞を呟きながら商品を指差してみせる。みっくんは、ミミラの保護者になった気持ちで、「どれどれ?」とか、「あ、似合いそう」などと言ってミミラのご機嫌をとろうとする。 気がつけばみっくんは、ミミラのためにリボンの模様の入った長財布を買わされていた。レジでお金を支払っている短いあいだが、ミミラに自分のことを一番恰好よく見せることのできる時間だった。 けれども会計を終えるか終えないうちに、みっくんの傍でミミラがもうひとつ欲しそうな様子を見せはじめる。今度はカバンの前で足をとめて、白い手袋をはめた店員に、もうそれをガラスケースの中から取り出させている。 急いで会計をおえて財布をポケットにしまうみっくんを見あげて、「あ、これも欲しかったんだ、あたし」、「かわいい!」などの台詞を連発しはじめる。財布一個ですら、同伴入店の額と合わせれば、今日のスロットの勝ちで補えないほどだったけれど、みっくんは、ミミラのハイテンションを前に、「ああ」「ああ」などと上の空の言葉を発し続けるばかりである。 「ダーリン」 もう一押しと踏んだのか、ミミラがみっくんに腕をくみ、無意識のうちに、あるいは意識的に、その豊かな乳房を押しつけてくる。魅惑的で柔らかな物体に、触れているような触れていないような感触が、みっくんを舞い上がらせる。 「お願い。これ、どうしても欲しいの」 ルイ・ヴィトン モノグラム。斜めがけバッグ。これを買ってあげれば、ミミラを思いのままにできるのだろうか。乳房だけではない。そのすべてを我が支配下におさめることができるのだろうか。そう考えれば、安い買い物ということができる。収支はマイナスになるが、それはまたスロットで勝って補えばよいだけの話だ。みっくんにはスロットがある。ギャンブルがある。そしてミミラがいる。 レジで勘定をすませると、ミミラが抱きついてくる。 「キャー、ありがとう」 喜ぶミミラを見て、買ってあげて良かったな、とみっくんは思う。品物を両手に提げたミミラを連れて、歌舞伎町を歩きだす。 「うれしい、男前」 さあ、夜はこれからだ。このままホテルに行くのか。お誂え向きに、ラブホテルも近くにある。隣には、自分のものになったミミラがいる。みっくんが隣を歩くミミラに視線をあてて口を開きかけると、その時ちょうどミミラの携帯に何者かから電話がかかってくる。邪魔者。 緊張の時間。我が軍門にくだったはずのミミラの声が、甘ったるい甲高い声から、機械的な冷たい事務的なものに変わってゆく。何かしら不穏な気配。 ミミラは電話を切ると、 「店の人から」と彼女は言った。「そろそろ行きましょ」 ミミラがすたすたと前を行きみっくんを誘導しはじめる。 「あ、何処へ…?」 手の中にあった、愛玩用のかわいいミミラが、脱走し野生化し、逃げ出してゆく。 「何処って、店に行くのよ。八時までに着かなくっちゃ」   みっくんは腕時計を見た。現在時、七時四十五分。 「ちょっとくらい遅れても大丈夫じゃない?」 みっくんの声は間が抜けて響いた。みっくんは、この期におよんで、まだラブホテルに行けるのではないかという夢にしがみついたままだった。その夢のために、プレゼントをふたつも購入して、奮発したのだ。 「三十分以上遅刻したら、無断欠勤ってみなされて、罰金三万円なの」とミミラは言った。「ごめんね」 今やその夢が儚い幻のように雲散霧消しようとしていた。根が生えたようにその場にへばりついているみっくんを、面倒くさそうにミミラが睨んでいる。みっくんの達成が瓦解してゆく。甘い夢の世界が、泥色の現実に浸食されてゆく。こんなに時間がないのは、元はといえばミミラが遅刻してきたからだと、みっくんは今になって急に妬ましく思う。 ミミラが歌舞伎町を自分が働いているキャバクラ店のある方へ向けてみっくんを先導してゆく。みっくんはミミラが両手に提げているプレゼントを、今から戻って行って店に返品したらどうだろうと空想した。ラブホテルに行けないのだから、それくらいしても良さそうである。しかしそんなことをすれば、ミミラとの関係はそれでジ・エンドだろう。 「あの」 みっくんは、奥手な女学生みたいに、もじもじしながら早歩きのミミラに声をかける。 「はあん?」 面倒くさそうにミミラが振りかえる。もう、両手の品物は、誰かからもらったプレゼントではなく、自分で買った品物だと言わんばかりである。 「ミミラ、僕のこと好き?」 ミミラがぽかんと口を開けている。 「どうしたの、急に……?」 路傍には、雑居ビルから出されたらしきゴミ袋が三袋ほど打ち棄てられている。その脇には、酔っぱらいが吐いたと思しき、乾燥しかけの吐瀉物。 「僕、ミミラのことが好きだよ。ミミラは僕のことどう思ってるの……?」 路傍の辻々にちらほらと立っている客引きのおとこたちが、訝しそうにふたりを睨んでいる。 「あたしのことが好きだって……?」ミミラが大きな瞳をさらに丸くする。「だって、まだ、会ったばかりじゃないのよ」 確かにそのとおりである。そう言われてみると、会ってまだ二回めなのに、好きだなどと口走っているみっくんの方がちょっとおかしいのかもしれない。 「でも、やっぱり、ミミラのことが好きだ」 みっくんは辛抱強く続ける。汚い街で、プラトニックな愛の告白を。それとも今、みっくんを突き動かしている熱い衝動は、傍の吐瀉物と同じ、一時的な吐き捨ての「性欲」のなせるわざなのだろうか。 「あたし、あなたを怒らせちゃうくらい、ワガママよ」とミミラが言った。「あなたに、あたしの彼氏がつとまるかしら?」 みっくんとミミラはしばらく睨み合っていた。ミミラは実際、怪獣なのかもしれないとみっくんは思う。みっくんの健全な未来をとことんまで破壊し、荒れ果てた荒野に変えてしまう、誰にも制御不能の、ウルトラかわいい新種の怪獣。 みっくんはミミラの突き刺してくるような澄んだ瞳から目をそらさなかった。 「つとまるよ」 とみっくんは言った。 ミミラが薄く笑った。馬鹿にした素振りのようにも見えるし、良くとれば、みっくんのことを見直したかのようにも見えた。いずれにせよ、ミミラはひらりと反転し、背中を見せて歩きはじめた。やや歩数を歩んでから、みっくんを振り返り、 「行きましょ」 何でもなかったかのように歩きだした。みっくんは引き離されないよう小走りに付いて行った。 あと百メートルも行けば彼女の勤めるキャバクラ店に着いてしまうというところで、みっくんはスピードをあげてミミラに追いついた。そして出し抜けにミミラの両肩を両手で摑み、正面から廻り込んだ。彼女にキスをしようとしたのだ。まだ誰も捕獲したことのない、世界に一匹だけの茶色の蝶のように、ミミラはひらりと指のあいだからすり抜けた。 「何するの、がっつかないでよ」 みっくんがまだミミラにしがみついて、キスしようとするのを、ミミラが軽くいなして、「あはは、今度ね、今度!」 ふくれっ面をするみっくんを残し、ミミラが我慢しきれずに吹き出した。みっくんの思いはカラ廻りのまま、都会の薄暗く翳った存在感のない月と同じように、中空に浮かんだまま置き去りにされる。 八時五分過ぎ。店の入口に着くと、前回と同じように客案内のおとこが立っていて、二人を一瞥すると、襟元につけたマイクで何事かを報告している。店の階段をおりていく。ミミラのヒールがカツカツと鳴る。みっくんはゆっくりとしか階段を下りられないミミラに合わせて、時々振り返りながら地下へと向かう。地下のクロークでダッフルコートを預けると、ミミラに座席まで案内され、店の奥のほうにあるソファに坐る。控えめのオレンジのライトで照らされたステージ上には、ドラムセットが置いてあり、まだ誰の姿もない。ステージを囲むように放射状に広がったソファの列にも、客の姿はまばらだった。ステージに向かって右側の前列、先客の中年の、バーコード頭の脂ぎった顔の親爺が入ってきたみっくんを眺めるともなく眺めている。ミミラがみっくんの隣にはべり、おしぼりを渡してくる。ミミラの仕種はもう、疑似恋人気分から、明らかにひとりのお客に奉仕するプロの仕種にかわっている。みっくんはその変貌を悲しく思う。金さえあれば、誰にでも手にはいる時間。誰でもない時間がはじまったのだ。 十分ほどとりとめのない話をしたあと、知らない嬢がミミラと交代してみっくんの隣に坐る。たぶん若いのだろう。悪くはない。けれども、どうしてもミミラと比べてしまう。すると見劣りする。花ではない。手垢のついた人間という感じ。人間が、ドレスを着て、精一杯花のふりをしようとしている。だからその嬢とは特に話が弾まない。十分経てば何を話したのか忘れてしまうような内容だ。話すことに意味があるのかわからなくなる。みっくんの口は重くなり、嬢も二、三度話題をふったあとは、みっくんの短すぎる答えのまえに、怖れをなしたかのように黙り込む。嬢が退屈そうに、時折人通りのあるクロークのほうを目でちらちらうかがっている。それから十分ほどすると、また違う嬢が交代し、みっくんの隣に坐る。日本語がカタコトの、アジア系の外国人だった。そういえば日本の女より軀がひとまわり大きい。女はみっくんに携帯の番号の書いた名刺をわたし、しきりに後で電話をかけるよう持ちかけてくる。 「わかた」 みっくんは女の真似をしてカタコトの日本語で答える。「わかたよ」 最後にミミラがみっくんの隣に戻ってくるけれど、一セットの四十分がきたので、みっくんはミミラに帰りを告げる。ボーイが会計をもってくる。 「こんど、終わりまでいてくれたら」ミミラが言う。「いいことあるかも」 みっくんはソファから立ちあがり、通路を歩きながらミミラを振りかえる。 「いいことって?」 そう訊ねるみっくんに、彼女は指を口にあて、ただ「内緒」と言うばかりで教えてくれない。みっくんのあたまの中で「内緒」の中身が渦をまきはじめる。ようやくミミラにみっくんの思いが届いたのだろうか。しかし最後までいるとなると、何時から入店するかにもよるが、いったい幾らかかるのだろう。……ミミラが階段をあがる思案顔のみっくんを最高の作り笑いで見送ってくれる。ミミラはこれから二時――閉店の時刻まで仕事である。みっくんと同じような男の客を何人も相手にするのだ。 「また連絡するよ」 とみっくんはミミラに言って別れる。給料日はまだ三週間ほど先であった。ミミラに「内緒」を実行してもらうためには、幾ら必要だろう。三週間の生活費と、ミミラの「内緒」のために必要な金のことを考えると、どうしてもスロットで持ち金を何倍にも膨らませる必要がある。そして今みっくんにはそれが可能なものに思えている。やり方さえ間違えなければ、今日のように、それは簡単に手に入るに違いなかった。(続く) ひたむきに生きるみっくんの、誰にも言えない恥ずかしい人生をのぞき見るには、好評発売中の楽天Koboか、パブーの販売ページへ今すぐGO! 楽天Kobo http://books.rakuten.co.jp/rk/1c74b4af05053d31b2f92fd81bf5f00a/ パブー http://p.booklog.jp/users/nyanku   ブログTOPへ http://ameblo.jp/nyankodoo

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  • 21 Jul
    • COMIC REVIEW『お父さん、チビがいなくなりました』西炯子

      COMIC REVIEW『お父さん、チビがいなくなりました』西炯子 お父さん、チビがいなくなりました (フラワーコミックスα)/小学館 STORY 60代の、お見合い結婚した夫婦<勝(まさる)と有喜子>の関係を軸に、物語は進行します。 勝と有喜子の子供(息子と娘ふたり)は、結婚したりして、それぞれ家を出て、彼らも今はふたりで暮らしています。 長年連れ添ったふたりはオシドリ夫婦と見られていましたが、飼っていた黒ネコのチビが行方不明になったころから、その関係にすきま風がふきだし、有喜子が勝に「離婚したい」と言い出すまでになります。 そんな勝と有喜子を心配する三女の娘(菜穂子)は独身で、恋人さがしが難航していますが……。 勝と有喜子の過去の出会いなどフラッシュバックも挿入しながら、物語は展開します。 さて、いなくなったチビは帰ってくるのでしょうか? にゃん子さんの感想 絵もいいです。 おもしろいです。 だけど、この話はマンガだからいいのであって(お父さんの顔もカワイイし)、これが現実だったら、女の人が「離婚したい」なんて言い出すのはよっぽどのことだから、やっぱり離婚しちゃってると思います。 でも、ネコがいなくなったと同時に、勝の知り合いの志津子さんという同年配の女性が登場してきますが、その人と昔話をしているときに、自分の奥さんの話がちょこちょこ出て来て、あらためて昔のことを思いだす、という展開がうまくできてるなと思いました。 「(勝が)わたしのことを好きだと思ってた」と思う志津子さんみたいな女性は、「いるよね」×2と思いました。女ってやあね。 お父さんが、最後、ズルイな、とすこし思いました。 菜穂子の恋人になる男性が、すこしイヤでした。 でも、とにかくカワイイ漫画です。 カワイイは正義です。 にゃん子さんの評価 にゃんくの感想 村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』を思いだしました。 たのしく読めます。 物足りないところがあるとすれば、構成が単純で、既視感がありました(つまりネコがいなくなって、それを飼っていた人間たちの関係がおかしくなる、というストーリー)。 本文:にゃんく

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  • 20 Jul
    • コミックレビュー『天人唐草』山岸凉子

      天人唐草―自選作品集 (文春文庫―ビジュアル版)/文藝春秋 ¥669Amazon.co.jp コミックレビュー『天人唐草』山岸凉子 「天人唐草」 父親に、「女性とはこういうものだ」、「もっとおしとやかに」など、厳しく矯正して育てられた娘が、成長してどのような未来をむかえるか、を描いた作品です。 「ハーピー」 高校男子の物語です。 彼は、同級生の女子が、ギリシャ神話に登場する女面鳥獣、ハーピーではないかと疑いはじめます・・・。 とくにお気に入りだったのは、 「籠の中の鳥」です。 これは、鳥人伝説が残る村の、最後の生き残りの少年の物語です。 融(トオル)少年は、11歳まで、祖母の手ひとつで育てられました。 祖母は目が見えない代わりに、「飛ぶ」ことのできる女性で、その特技を生かして、わずかばかりの収入を得て暮らしていました。 しかし、融少年は、五体満足の体をもっている代わりに、一族特有の、「飛ぶ」という特殊能力を持っていません。 祖母が臨終の間際、「飛ぶ」ことのできないトリは、死ぬしかない、と少年を諭し、飛んでみせるよう言いふくめますが、融少年はやっぱり飛ぶことができません。 祖母が亡くなり、民俗学の調査員のような人見さんという男がやって来て、融少年を引き取ります。 義務教育を受けていなかった融少年は、一年生の知識から勉強することになります。 融少年は、並外れた吸収力で、遅れていた知識の吸収をおこなっていきます。 そんな暮らしにもやっと慣れはじめた頃、融少年が慕っていた人見さんに結婚話が持ち上がります。 融少年は、人見さんと別れなければならなくなることを恐れて・・・。 「飛ぶ」ということがどういうことなのか?  ズラし方がうまいです。なるほど、そう来るか。 上手な構成が、短編のお手本のような作品です。   にゃんくへのお仕事のご依頼はこちらmtkm2008@gmail.com にゃんくの作品はパブーにて好評販売中です。 http://p.booklog.jp/users/nyanku にゃんくへのお仕事のご依頼はココナラからでもOKです。 http://coconala.com/users/252145

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  • 19 Jul
    • COMIC REVIEW『ポーの一族』(萩尾望都作)

      COMIC REVIEW『ポーの一族』(萩尾望都作) ポーの一族 復刻版 1 (フラワーコミックス)/小学館 ¥463Amazon.co.jp 1972~1976にかけて連載された萩尾望都の漫画です。 人の目をしのび、永遠に生き続ける吸血鬼『バンパネラ』ポーの一族。 ポーの一族たちと人間との出会い、葛藤、別れを、壮大なスケールで描いたドラマです。 2016年、発売当時のままの姿で復刻、小学館から①~⑤巻まで同時発売され、話題となりました。 2016年に『月刊フラワーズ』に新作が発表されています。 ポーの一族 復刻版 2 (フラワーコミックス)/小学館 ¥463Amazon.co.jp にゃん子さんの感想 さっそく5巻ぜんぶ買いました。 カッコいい外国の男の子(エドガー)が主人公の吸血鬼という、その設定だけでトキメきます。 そんなエドガーは、妹に一途で、学校に通うなど普通の少年っぽいところもあるヴァンパイアだけれど、妖しい魅力もアリ、人を助けに行くときもアリ、でも人間を殺そうとするときもアリなど、多面性をあわせ持った魅力的なキャラクターです。 ヴァンパイアとして自由に生きている姿が描かれていますが、宿命を背負った彼らの切なさも同時に感じさせてくれる物語です。 ストーリーがさくさく進むので、あっという間に引き込まれますヨ。   にゃん子さんの評価 ポーの一族 復刻版 3 (フラワーコミックス)/小学館 ¥463Amazon.co.jpポーの一族 復刻版 4 (フラワーコミックス)/小学館 ¥463Amazon.co.jpポーの一族 復刻版 5 (フラワーコミックス)/小学館 ¥463Amazon.co.jp ブログTOPへ http://ameblo.jp/nyankodoo/ にゃんくへのお仕事のご依頼はこちら mtkm2008@gmail.com にゃんくの作品は楽天Kobo、パブーにて好評販売中です。 http://books.rakuten.co.jp/rk/1c74b4af05053d31b2f92fd81bf5f00a/ http://p.booklog.jp/users/nyanku にゃんくへのお仕事のご依頼はココナラからでもOKです。 http://coconala.com/users/252145    

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  • 18 Jul
    • コミック・レビュー『黒鳥(ブラック・スワン)』山岸凉子

      コミック・レビュー『黒鳥(ブラック・スワン)』山岸凉子 黒鳥―ブラック・スワン (白泉社文庫)/白泉社 ¥566Amazon.co.jp 『黒鳥(ブラック・スワン)』、『貴船の道』『緘黙(しじま)の底』『鬼子母神』が収録されたコミックです。 『黒鳥(ブラック・スワン)』 STORY 主人公はアメリカ人のバレリーナ、マリアです。 マリアは、所属するバレエ団の天才振り付け師・ジョージに見初められ、彼と結婚しますが、ジョージはそれまで何度も離婚をくりかえしている人物でした。 しかも、当の結婚相手の容色がおとろえだす年齢になると、離婚をしているのです。 結婚生活も数年が経過したころ、マリアは自分が若くないことに怖れと不安を感じはじめます。 いたたまれなくなったマリアは、予言者の祖父のもとを訪れます……。 にゃん子さんの感想 こういう振り付けの男の人、いそうだなと思いました。リアリティがあると思う。   にゃん子さんの評価↑ 『緘黙(しじま)の底』 STORY 父親による娘の虐待(近親相姦)という重いテーマを扱っています。 読後感がいくらか爽やかなのが救いです。 にゃん子さんの感想 わたしは、『緘黙(しじま)の底』がいちばん好きでした。 主人公の保健の先生じゃなきゃ、女生徒の気持ちがわからなかった、っていう理由がわかるような気がしました。   にゃん子さんの評価↑ 『貴船の道』 STORY 不倫の果てに、旦那の妻が死亡し、 旦那の妻におさまることのできた愛人が、 死んだ元妻の亡霊に悩まされる、というストーリーです。   にゃん子さんの評価↑ 『鬼子母神』 STORY 王子と悪魔の双子の兄妹、 それと母親が菩薩、父親が表札(ネームプレート。玄関に表示する、あのネームプレートです)というキャラ設定がユニークな作品です。 読みすすめていくと、なぜ兄妹が天子と悪魔なのか、なぜ母が菩薩なのか、父が表札なのかがわかります。 受験戦争に押しつぶされる兄の様子を、妹の視線で描いた作品です。 これもおもしろく読めます。 にゃん子さんの感想 今もこういう話ありそう。山岸凉子の書く話は、古くないと思いました。おもしろかったです。 にゃんくの感想 このコミックの中では、『鬼子母神』がいちばん好きでした。   にゃん子さんの評価↑ にゃんくへのお仕事のご依頼はこちらmtkm2008@gmail.com にゃんくの作品はパブーにて好評販売中です。http://p.booklog.jp/users/nyanku にゃんくへのお仕事のご依頼はココナラからでもOKです。  http://coconala.com/users/252145            

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  • 17 Jul
    • 芥川賞予想

      芥川賞予想 もうすぐ芥川賞が発表されますね。7月19日の夜に発表予定だそうです。 さて、恒例の、にゃんくの芥川賞の予想のコーナーです。(いつからはじまってん!) にゃんくの予想は、このお二人のダブル受賞です。 今村夏子「あひる」 2010年、デビュー作の『こちらあみ子』が太宰賞と三島賞のダブル受賞に。 『こちらあみ子』はほんとうに良い作品で、傑作だと思います。『こちらあみ子』で太宰賞を受賞したときに、「これから書いていく自信がない」というふうなことを本人は言っていたのだそうですが、それから6年後、芥川賞候補になりました。ちょっと感慨ふかいですよね。物語性のある作家さんですから、受賞すれば、喜ばしいことです。 崔 実(チェ シル)「ジニのパズル」 純文学の群像新人賞受賞作ながら、「ジニのパズル」はベストセラーになっているようです。 何にしても、今回もダブル受賞はかたいでしょう。 本命は、今村夏子さん。彼女と誰をくっつけてダブルにするか。そういうことです。 ほんとうは、「この作家がいちばん!」ってな感じで、ひとりの受賞にするのがのぞましいんだと思うんですけれどね。

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    • コミック・レビュー『珠玉の名作アンソロジー5 どこかにある猫の国』

      コミック・レビュー『珠玉の名作アンソロジー5 どこかにある猫の国』 珠玉の名作アンソロジー 5 どこかにある猫の国 (小学館文庫 珠玉の名作アンソロジー 5)/小学館 ¥720Amazon.co.jp 波津彬子 岩館真理子 萩尾望都 奈々巻かなこ 奈知美佐子 よしまさこ 草間さかえ 他計14名の作家による、 猫を重要な登場人物にすえた物語集です。 にゃんくが特におもしろかったなと思ったのは、一話目の、 『灰色の貴婦人』(波津彬子作) です。 STORY ある日、資産家の老婦人が死去します。 老婦人は、 「わたしの資産は、すべて<レディ>にゆずる」 とその遺言に書きのこしていました。 なんと、<レディ>とは、老婦人が愛していた猫のことなのでした。 その日から、残された莫大な資産を目あてに、 気まぐれ猫「レディ」を手なづけようとする人々が、屋敷に押し寄せてきます。 西炯子作『黒猫が…見てる』 もおもしろいです。 STORY 女性高生の高橋さんは、 同級生の男子・黒川くんに、 「自宅に帰ってくるといつもクツが脱ぎっぱなし」 であることや、 「部屋の窓辺にししゅうの壁かけを飾ってある」 ことや、その他いろんなことを知られていて、不気味に思います。 高橋さん家(ち)には、お兄ちゃんが拾ってきた真っ黒いネコがいて、いつもじっと高橋さんのことを見つめているので不気味に思いますが…… にゃん子さんの感想   いろんな漫画家さんのネコの話が読めて、超おトク! しゃべるネコあり、擬人化のネコあり、普通のネコあり、すべてのネコ漫画を網羅しています。 岩館真理子さんの漫画は読んだことなかったけれど、 『夕暮れバス』(岩館真理子作) は、絵とストーリーが合っていて、良かったです。 死んだネコが連れていかれるバスの話? と読みました。 笑いもアリ、涙もアリ、ちょっと感動もアリ。 私、この人の絵が好き、と思いました。   にゃん子さんの全体評価 ブログTOPへ http://ameblo.jp/nyankodoo/ にゃんくへのお仕事のご依頼はこちら mtkm2008@gmail.com にゃんくの作品はパブーにて好評販売中です。 http://p.booklog.jp/users/nyanku にゃんくへのお仕事のご依頼はココナラからでもOKです。http://coconala.com/users/252145

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  • 13 Jul
    • かばん

      かばん にゃんく 新幹線の乗り場には待ち人が既に十数名並んでいる。子供連れの若い母親。還暦を過ぎたとおぼしき夫婦。スーツを着た二十代の男……などなど。 GW前の平日の宵ともなれば、当然といえば当然なのかもしれない。 目当ての新幹線がやって来るまでには、まだ間があった。僕の前に並んでいた女――特徴のない女だ。何の変哲もない、誰が見てもごく普通の主婦だ。高価なアクセサリーを身に付けているわけでもなく、かといって、みすぼらしい身なりをしているわけでもない――が、こちらの緊張を解きほぐすような柔らかい声で、 「ちょっとこの荷物、見ていてくださらない? 忘れ物しちゃったのよ。すぐに戻って来るから」 そのように僕に頼んできた。 僕はごく自然な流れで、頷いた。 「ちょっとの間」なら、あえて申し出を断ることもないように思った。 それは茶色の鞄だった。 僕の前――女が並んでいた場所に――それはひとつぽつねんと置かれてある。 僕は周りを見回してみた。 そのようなありふれた鞄に注意を払っている者は誰ひとりいなかった。 ボストンバッグ。いい具合に膨らんでいる。これ以上、何も入らない、というくらいパンパンなわけではない。かといって、何も入っていない虚さというわけでもない。八割方詰まっている、といったところ。 ブランドもののバッグじゃない。 何処のメーカーかも分からない、ごく普通の、安物の革製のバッグだ。使い込まれていて、ところどころ色褪せてすらいる。 僕は周りを見回してみた。 まだ女は戻って来ない。 「ちょっと」という割には、なかなか女は帰って来ない。 その時間的経過は、すでに僕の中では、「ちょっと」という範疇から微妙にはみ出していた。 でも目くじらを立てなくてもいい。今この瞬間、「あら、ごめんなさいね。助かったわあ」という女の愛想のいい声を聴いたなら、笑顔で「どう致しまして」と僕は言えるだろうから。 でも、ついに新幹線が到着するベルが鳴り出してしまった。 ルルルルルルルル。 鞄はそこにある。 自らの存在を主張するように、まるで大昔からそこにあるかのように、大きくデンと構えている。 さすがに周りの待ち人たちも、ちらちらと鞄の存在に気まずい視線を投げかけはじめてしまった。 鳥のような尖った鼻の先で、新幹線が風を切ってホームに滑り込んで来て、止まった。 乗客たちが、鞄の後ろに立っている僕を邪魔そうに回り込みながら(中には舌打ちをする者までいた)、新幹線の乗車口から次々と乗り込んで行く。 女はまだ来ない。 どうしたと言うのか? 新幹線の窓から、乗客たちの色とりどりの顔が、ぼくを物珍しそうに眺めているような気がした。 「君、乗らないでいいのですか? 君、乗らないでいいのですか?」 車掌がそう言っているように聞こえた。 実際には、車掌はそんなことは言っていなかったのかもしれない。ただ、「間もなく扉が閉まります」的なことを言っていただけなのかもしれない。でもその時の僕には、そういうふうに聞こえたのだ。 ついに新幹線のドアーは、音を立てて閉まった。ぷしゅう。 僕は指定席の新幹線に乗り過ごしてしまった。 女と女が残したこの鞄のために。 別段、指定席には座れなくとも、自由席の車両に乗ることはできる――この混み具合では座れるかどうかは分からないが――。 女は遅れてやって来るに違いない。 僕はそのような希望的観測に縋って女を待ち続けた。 茶色のボストンバッグを手に提げながら、僕は乗客たちが並んでいる列から十歩離れた位置に移動して女を待っていた。元いた列に、女が戻って来ないか、視線を五秒ごとに投げかけながら。 僕はまるで結婚式に花嫁がやって来ない新郎のような気分で、ただ女の到来をやきもきしながら待ち続けていた。 しかし、一時間経ち、二時間待っても、女は戻ってきやしなかった。 僕はしょんぼり項垂れて、鞄を手に提げて、駅員のいる改札に鞄を届けるために歩き出した。 かばんが、ずしりと来た。嫌な重さだ。まるでいのちひとつ運んでいるようだ。 おかしいな? さっきまで、こんな重さじゃなかった筈なのに…… 僕は訝しく思い、鞄を指でつついてみた。それは妙にやわらかだった。弾力があり、かといって、ふにゃふにゃというわけでもなく、適度に筋肉が引き締まった柔らかさなのだ。 あと三十メートルほど行けば、駅員がいる改札に辿り着くという段になって、僕は待て待てとはやる自分を立ち止まらせた。このまま駅員にこの鞄を引き渡し、中を開けてみて、とんでもないものが出て来たら、どうするのか? そのような不安が僕を襲ったのである。 僕は鞄のチャックをつまみ、ゆっくりと、しかし、ほんのちょっぴりだけ、それを開いてみた。途端に、強烈な血の臭いが、鼻先をぶった。 僕は慌ててチャックを元に戻した。 しかし今や、家路を急ぐサラリーマンや、酔客たち、夜の仕事をしているとおぼしき女たち、それら通り過ぎて行く周囲の人間たちの足が、この危険で異様な臭いのためにいっせいに立ち止まってしまっていた。 ちょっと待って。これは僕の鞄じゃない。 僕は彼らにそのように説明を試みることを考えたが、どんなにうまく説明しても彼らが納得してくれるようには思えなかった。 そこで僕はステップを踏むことにした。ステージ上で、観客達を前に、ダンサーが踊っているように。胸を張り、得意げな顔つきで。タンタンタタタン。タンタンタタタン。 まるで何事も起こらなかったかのように、軽やかなステップを踏んだ。 すこし、躓いた。足がもつれた。もともと運動神経は良いほうではないのだ。 無数の観客たちは、しらけた表情で、再びおのおのの行く先に顔を向けて立ち去りはじめた。 ふう。額から、いっせいに生暖かい汗が噴き出してくるようだった。 いったいこの鞄の中には、何が入っているのか? あらためて外見を点検してみると、どうして今まで気付かなかったのだろう、かばんは奇妙な具合に膨らんでいる。まるでバラバラに切断された手や足が、収まりきらずに革を突き破ろうとしているかのようだ。 僕は目の前が、真っ白になったような気がした。 はじめから、あの女はかばんを取りに戻って来るつもりなどなかったのだ。 そう考えると、今まさに、あらぬ罪が、僕に押しつけられようとしているように思えた。 正真正銘、無実の僕に。 いくら僕が身の潔白を主張したとしても、かばんの中に詰め込まれた、途方もない罪深さを前にして、いったい誰が僕の弁解に耳を傾けてくれるというのだろうか? 僕は居ても立ってもいられない気持ちだった。 できるだけ遠く、可能な限り速く、このかばんから遠ざからなければならない。 僕は牛歩でその場を立ち去ろうとしていた。 公衆電話で話している、知らない若い女性が、不審げにじっとこちらを見ている姿が視界のはしっこに映っていた。 それでも僕は懸命に牛歩のランナーになってその場から離れようとしていた。夢の中を泳ぐように。鮭が川の流れに逆らって上流へ向かうように。 やっとのことで新幹線のホームに戻ると、ちょうどタイミング良く新幹線が滑り込んできた。鷹のように、翼を広げて、僕に救いの手を差し伸べてきた。 追っ手から逃れる気持ちで、僕はその懐にもぐり込んだ。 僕は乗り口の近くに、扉に向かって立っていた。 扉の窓からは、後方に飛び去っていく景色が見えはじめた。 知らないうちに、新幹線は音も立てずに、滑走していた。 かばんの中には、百年分の不幸がぎっしり詰まっている、と僕は思った。 それは決して許されることのない罪だ。 開けた瞬間に、僕の人生を地獄に叩き落とすだろう。 けれども、それは誰かが開けなければならないし、かばんというのは誰かに開けられなければ気がすまないのだ。 たまたま開けさせられたのが、僕だったというだけの話だ。 新幹線の自由席は満席だった。 扉の窓の外には、小さな景色が現れては瞬時に消え去っている。 ぐんぐんぐんぐん遠ざかって行く。何もかもから遠ざかって行く。唯一の汚点から、逃げて行く。世界を吹き飛ばす爆弾から。異臭を放つ腐乱死体から。死刑を宣告する死に神から。 街を超え、野を越え、山を越え。 空には、輝かしいばかりの星々だけが瞬いている。 僕はあの女のことを恨んでいた。なんて途方もない罪を僕に押しつけるのかと。でも、外の景色を眺めていると、そのような考えも形を変え、女を許してもいい気分になっていた。すこし気分に余裕ができていたのだ。だって、あの女だって、きっと誰かから押しつけられたに違いないから。あの身に覚えのない罪を、突然知らない誰かから、背負わされてしまったのだろうから。女も生きるのに必死だったのだ。謂われのない不幸は、誰もが、誰かに押しつけたくなるものなのだ。 その時、僕はふと思い出していた。 狭いアパートで孤独死をした継母のことだ。 僕はあの義母を許さなかった。 義母は連れ子である自分の息子には無限の愛を注ぎ、血の繋がりのない僕を虫ケラのように扱った。 父は中年の女と何処かへ出奔し、結局、義母は父から捨てられた。 そういう状況になった後、僕に対する義母の態度は一変した。 猫かわいがりしていた自分の息子は、とんでもない悪人へと成長し、義母は僕を頼らざるを得なくなったのだ。 思えば、かわいそうな人だった。 暑い夏の日に義母は死んだ。 義母の胃の中には、ほとんど何も残っていなかったそうだ。 躯もガリガリに痩せて、そんな義母の躯中に蛆虫がびっしり湧いていたそうだ。 僕は警察署に行き、遺体を確認させられた時、義母の顔を一瞬見ただけで、「もう、いいです」と警察官に言って顔をそむけた。 僕は義母がこんな形で死んでから、ようやく彼女を許す気持ちになれた。 車内に、異臭を放つ浮浪者が紛れ込んでいた。 浮浪者は車両の向こう側の端っこの通路に立っているのに、臭いはここまで漂って来るのだ。 誰もが不愉快な視線を交わし合っている。 僕も思わず自分の鼻をつまんでしまった。 しばらくすると、小便がしたくなってきた。 けれどもトイレに行くには、その臭い浮浪者の隣を通り過ぎなければならない。後ろにトイレはない。あるのは浮浪者の向こうのトイレだけだ。 僕は仕方なく、大きく息を吸って、できるだけ浮浪者の近くで息を吸わないように工夫して、通路を進んで行った。 僕は浮浪者の隣をすり抜けようとした時、 「お前はいつも逃げてきた。お前の罪は、めぐりめぐって、大きくなって帰ってくるだろう。お前は、それから、逃げ切れはしない」 そう浮浪者が囁く声が耳に入った。 僕がぎょっとして浮浪者を見ると、白い髭に覆われた初老の浮浪者は、既にあらぬ方向に顔をそむけている。 僕がトイレで用をすまして出て来ると、浮浪者はいなくなっていた。あの強烈な臭いですら、今や跡形もなく消えていた。 僕は不思議な思いで元のデッキへ戻ると、同じく立っていたサラリーマンふうの男性に尋ねた。「あの浮浪者、何処へ行きました?」 男性はうろんげな顔をして、首をかしげ、 「さあ、知りませんよ」 と言うと、関わり合いになりたくないとばかりに目をそらした。 僕はあの浮浪者は何だったんだろうと思った。 駅にも着いていないのに、いなくなるなんて。 僕は頭の中で、あの浮浪者が囁いた言葉を何度も反芻していた。浮浪者は、鞄を置き去りにした僕のことを言っていたのだ。 そう考えると、いてもたってもいられなくなってきた。 新幹線が駅に到着するまでの間が、永遠のように感じられた。 目的の駅ではなかったけれど、新幹線が停車した時、僕は逆方向に向かうホームに走った。そして、逆戻りする新幹線がやって来るtと、それにとび乗った。 行ったり来たりしている僕を、車掌や、乗客たち全員が、訝しげに見つめているような気がした。 僕は彼らから目をそらして、ひたすら窓の外を眺め続けた。時間の流れがひどくのろくなったように思えた。 ようやくあの駅に戻って来ると、僕はかばんを置き去りにしたあの場所へ向かった。既にかばんが開封されていて、中から飛び出した不幸の固まりに、周囲の人間が愕きの人だかりを作っているのではないかという最悪の可能性が、脳裏をよぎった。けれども予期に反して、あの場所は先程と同じく閑散としていた。公衆電話が目に飛び込んで来た。中で話していた女は既にいなくなっていた。 僕は周囲を見回した。もう一度、見回した。でも、どうしたことか、あのかばんが、なくなっているのだ。 僕は拍子抜けする思いで、通りがかりの人間に訊いてみた。「僕のかばん、知りませんか」と。通りがかりの人は、忙しそうに、首を横に振って、立ち去った。 僕はその場に立て膝をついて、天井を仰いだ。 僕は涙していた。許されることのない罪を犯した犯罪者が、寛大な神に感謝を捧げるように。 (了) いかがでしたか? 小説「かばん」は? この作品は、ぼくが2013年8月ころ、書きあげたものです。 「果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語」という長編ファンタジーを書きあげたあとの作品になります。 「果てしなく・・・」は一年以上かかって書いたもので、書き上げた後はほんとうにヘトヘトでした。それからしばらく休んで、肩のちからを抜いて書いた作品が、この「かばん」です。 ところどころ、幼稚ともとれる表現が見られるかもしれませんが、それがある種のパワーというか、勢いになっているように思います。また、自分のなかでは、それほど気に入った作品でもなかったのですが、読んでもらうと評判はなぜか良かった作品でもあります。 率直なご感想をいただけると、うれしいです。 にゃんく

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    • ダンサーVSネコちゃん 椅子とり合戦のゆくえは・・・?

      ダンサーVSネコちゃん 椅子とり合戦のゆくえは・・・? http://animalive.me/fun/dancer-vs-cat-chair-taking お色気たっぷりの女性ダンサーと、かまってちゃんラグドールの心理戦です・・・

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  • 12 Jul
  • 11 Jul
  • 10 Jul
    • コミックレビュー『鬼』山岸凉子作

      鬼 (潮漫画文庫)/潮出版社 ¥617Amazon.co.jp コミックレビュー『鬼』山岸凉子作 STORY 天保八年、奥州枯野村は飢饉にみまわれ、家々の親たちは、口減らしのために、大穴のなかに子供たちを捨てます。 穴のなかで、飢餓におそわれた子供たちは、体力がつきて死んでいきますが、生き残ったものは、先に死んでいった者の肉を喰らい、自分たちを捨てた親のことを恨みながら、それでも生き延びようとしました・・・。 その大穴がある東北の田舎の寺に、現代に生きる美術大学の学生たちのサークルの一団が訪れます。 寺の住職の妻は妊娠していますが、その寺では、昔から後継ができないというジンクスがあり、サークル学生たちが寺を訪れたあと、そのジンクスどおり、住職の妻は体調をくずし、入院します。寺に取り残された学生たちは、その昔、悲惨な出来事があった大穴のある場所を発見し、そこで不思議な体験をします。 REVIEW 超常体験を描くのが得意の山岸凉子ならではの作品。 大穴のなかで、ウジ虫の湧いた、仲間の肉を食らう少年たちの様子が、怒気せまる筆致で描かれています。 読み終わったあと、飽食の現代日本で生活していることの幸せを、しみじみ感じることのできる作品です。 他に、「肥長比売(ひながひめ)」、「着道楽」を収録。   にゃんくへのお仕事のご依頼はこちらmtkm2008@gmail.com にゃんくの作品はパブーにて好評販売中です。http://p.booklog.jp/users/nyanku にゃんくへのお仕事のご依頼はココナラからでもOKです。 http://coconala.com/users/252145

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  • 09 Jul
  • 06 Jul
    • 『親子のプレミアム・サロンコンサート』に参加して、人生変わる体験を

      人生変わる体験ってありますよね? あの頃にこの本を読んでいれば、人生もっと変わっていただろうにな、とか。 あの体験があったからこそ、今の自分があるんだ、とか。 ぼくは5歳のころから、10年間、ピアノを習っていました。 10年習っていたので、そこそこのレベルまでいったのですが、親からただ「習いに行きなさい」と言われて通っていただけなので、内心イヤイヤ教わっていました。 だから、結局それほど上達はしませんでした。 でも、もし子供のころ、  「ピアノや楽器を演奏することは、こんなに楽しいんだ」 という感動体験を味わっていたとしたら、練習にも力がはいり、もっともっと上手になっていたかもしれないし、音楽のすばらしさに目覚めて、ミュージシャンをめざして、今頃は、XジャパンのYOSHIKIみたいになっていたかもしれません。  (XジャパンのYOSHIKIはちょっとビッグ過ぎますが)、それでも、子供のころの夢は大きく描いて、描きすぎということはありません。   大事な話はここからです。 今、そんな感動体験ができる、参加型のコンサートがあるんです。 気軽にバイオリンなどのクラシック楽器を体験できるコンサートです。 演奏家は、いずれも技術に自信のあるプロの方々です。 赤ん坊からシルバー世代まで楽しめる、感動できる音楽を聴いてもらうために、腕にみがきをかけて、日々練習している模様です。 ただ聴くだけでなく、観客が参加できる仕掛けもいろいろ工夫しているそうです。小さな子供がたくさんいる前提だから、飽きさせず、さらに興味を引き出す仕掛けが必要なんだとか。そして楽器体験でも、本物の楽器を触らせてくれるだけでなく、楽器の買い方とかレッスンの選び方などの相談にも乗ってもらえるそうですよ。いきなり音楽教室を覗くより気がラクですよね。 音楽を楽しむことに、年齢は関係ありません。 ことばも関係ありません。音楽は直接こころに訴えかける力があります。 親子そろって、休日にコンサートに出掛ける。 このような楽しみをもつことは、素敵ですよね。 子供と一緒に楽しみつつ、遊びつつ(ここが大事です!)、 才能が無限に開花する可能性も、こっそり作れてしまう。 それって、やっぱり、最高だと思います。 それは、『親子のプレミアム・サロンコンサート』といいます。   URL↓を記載しておきますので、チェックしてみてくださいネ。 http://085concert.com/  

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    • CINEMA REVIEW『アリスインワンダーランド~時間の旅~』

        CINEMA REVIEW 『アリスインワンダーランド~時間の旅~』(製作/ティム・バートン、監督/ジェームズ・ボビン) STORY 「美しく成長したアリスは、父の形見のワンダー号の船長として、3年にわたる大航海を成功させてロンドンに戻ってきた。だが、彼女を待ち受けていたのは、父の愛した船を手放すという厳しい現実。途方に暮れる彼女の前に、突然、青い蝶アブソレムが現れ、友だちのマッドハッターの危機を告げるのだった。」(映画を見た人に配られるチラシより引用) REVIEW 現在(2016年7月)、公開中のディズニーの実写映画です。 2010年公開された前作『アリス・イン・ワンダーランド』(Alice in Wonderland、ティム・バートン監督)の続編です。 「不思議の国のアリス」と「鏡の国のアリス」、それぞれのストーリーの後日談的な、新しいオリジナルのストーリーです。 登場人物には、「不思議の国…」「鏡の国…」以外のオリジナルのキャラも登場します。 今作の新しい登場人物として、胸の中央部が時計になっている「タイム」(時間)という、偉そうなおヒゲを生やし、大時代的?なコスチュームをまとった、おっさんが登場します。 名前通り、時間を支配しているとんでもない人物なのですが、この「タイム」というおっさんが、ゴレンジャーみたいな大げさな衣装をつけて、やることなすこと個性的すぎて面白かったです。 お馴染み、鏡からワンダーランドに入りこんだアリスは、病気になったマッド・ハッターの家で彼と話をします。マッド・ハッターは、死んだ家族を取りもどしたい、と言います。「彼らは死んではいない」と。 でも、アリスは、さすがに死んだ人たちは戻ってこない、とマッド・ハッターに話します。 マッド・ハッターは、そう言うアリスをドアの外に出してしまいます。「帰ってくれ。あんたは、ぼくの知っているアリスじゃない」と。 ショックを受けたアリスですが、その後、いろいろ調べていくうちに、マッド・ハッターの家族は死んでいないという確信を得ます。 そうして、アリスは、クロノスフィアという、タイムマシンのような乗り物を、タイム(例のおっさん)から奪って、マッド・ハッターの家族を連れ戻すための時空の旅に出ます。…… タイムは、ことあるごとに偉そうにしているのですが、アリスにクロノスフィアを盗まれたことで、どんどん弱っていきます。(何しろ、体が<時計>なわけですから、時空を遡られると、健康に良くないらしいのです) その様がおもしろかったです。 でも、弱りすぎて、死にそうになったときは、さすがに哀れで、かわいそうに思いましたけれど。 * 映画の感想です。 何しろ、迫力がすごい! 新しい映画をみるたびに思うことですが、邦画のCG技術、映像技術は、ハリウッド洋画に引き離されるばかりという印象です。 ストーリーもよくできていると思います。(脚本作りに一年半かけたらしいです)。 主に、赤の女王と白の女王の確執が原因で、ストーリーが展開されていきます。 時折挟まれる小ネタも、古いけれど、思わず笑ってしまいます。 タイムが初登場時に、柱に頭をぶつけるところなど、観客の肩の力をぬかせる効果があると思います。 現実世界で船を手放さないといけない悩みと、不思議の国での冒険へ挑むことが、ラストでどう関係してくるのか、最後まで目が離せません。 とにかく見終わったあと爽快になれる作品です。 前作も面白く、好きだったけれど、今作の出来は、それ以上だといえるのではないでしょうか?   「アリスインワンダーランド」が面白かった人には、「命泣組曲」はいかが? 女子大生・虹乃は、病院のベッドである朝目覚めます。 なんだか変てこりんな病院です。医者と看護婦は昼日中から、LOVE会話をしているし、虹乃の娘を自称する四十代のおばさんまで現れる始末。 早く退院したい虹乃ですが、強引に病院の中央ドアから脱出しようとしたとき、双子のようにそっくりの警備員にボケ老人扱いされ、取り押さえられます。しかも、その時、ガラスに映った自分の姿が老婆になっていることに気づかされます・・・。 ナンセンスと失笑の嵐! 「アリスインワンダーランド」に負けていません。ただいま、映画化交渉中! なーんてね。 でも面白いことは事実です。↓ http://p.booklog.jp/book/101483   ためしに読んでみてください。 にゃんくへのお仕事のご依頼はこちら mtkm2008@gmail.comにゃんくの作品はパブーにて好評販売中です。http://p.booklog.jp/users/nyanku にゃんくへのお仕事のご依頼はココナラからでもOKです。http://coconala.com/users/252145

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