ぴょんぴょこさん、がいました。

 

ぴょんぴょこさんは森で二本足で跳ねています。

 

翼がついていますが飛ぶことはできません。

 

 

 

ある男の子と女の子が、森のぴょんぴょこさんに会いに行きました。

 

何とぴょんぴょこさんは友達がいないのに、全ての生き物の言葉が分かります。

 

 

 

 

 

どんぐりを持ってきたよ。

 

ありがとう。ぴょこぴょこ。

 

 

 

おいしい?

 

僕が拾ったものよりおいしい。ぴょこぴょこ。

 

 

 

あなたは、神様を嫌いになったことはない?

 

だれ?知らない人だ。ぴょこぴょこ。

 

 

 

………わたし達にも翼があるんだ。

 

ほんとう?きみたちは飛べるの? ぴょこぴょこ。

 

 

 

奪われて生まれてきたのに、かなしくはないの?

 

………今日もどんぐりがあって、君たちに会えたもの。ぴょこぴょこ。

 

 

 

わたし達と一緒に暮らそう。わたし達はもう翼なんていらない。

 

なくなったら何か変わるの? ぴょこぴょこ。

 

 

 

ぴょんぴょこさんと、翼を失った男の子と女の子は楽しそうに、森の奥へと消えてゆきました。

 

 

 

 

 

ぴょんぴょこさん達は、森の奥の奥で、どんぐりのケーキを食べていました。

 

ぴょんぴょこさんは、とてもとても嬉しくなってしまって、泣き出してしまいました。

 

 

 

 

 

今日は家族ができたからです。

 

 

 

 

 

 

 

 

(2025/7/13加筆)

 

 

 

マイノリティを生き抜いた

Cozy さんに捧ぐ

 

 

 

 

 

 

ぴょんぴょこさん、がいました。

 

ぴょんぴょこさんは森で二本足で跳ねています。

 

翼がついていますが飛ぶことはできません。

 

 

 

ある女の子が森でぴょんぴょこさんと出会いました。

 

何とぴょんぴょこさんは友達がいないのに、全ての生き物の言葉が分かります。


 

 

どうして飛ばないの?

 

生まれつき飛べないんだ。ぴょこぴょこ。

 

 

 

どうして翼がついてるの?

 

僕にも分からないんだ。ぴょこぴょこ。

 

 

 

ずっと1人でいるの?

 

お腹が空いて起きたら、ここに居たんだ。ぴょこぴょこ。

 

 

 

家族はいないの?

 

それが何か分からないんだ。ぴょこぴょこ。

 

 

 

生きていて楽しい?

 

ただここに居るんだ。どんぐりを食べてムクドリの巣を見守るの。ぴょこぴょこ。

 

 

 

………いつもどんぐりを食べているの?

 

うん。ぴょこぴょこ。

 

 

 

じゃあ明日拾ってくる。

 

ありがとう。ぴょこり。


 

 

ぴょんぴょこさんは恥ずかしそうに森へ消えてゆきました。

 

 

 

女の子は天を見上げて言いました。

 

「ぴょんぴょこさんは弱い遺伝子だから、淘汰されても仕方がありません。しかし、それなら何故、心を与えたのですか」

 

 

 

ぴょんぴょこさんは森の奥の奥でどんぐりを食べていました。

 

ぴょんぴょこさんの顔は真っ赤でした。

 

 

 

 

 

明日はまた、あの女の子に会えるかもしれないからです。

 

 

 

 

 

 

 

(つづく)

 

 

 

ぴょんぴょこさん、がいました。

 

ぴょんぴょこさんは森で二本足で跳ねています。

 

見た目はカンガルーの様ですが、背中には立派な翼がありました。

 

 

 

しかし、ぴょんぴょこさんは飛ぶことができないのです。

 

ただ翼がついてるだけで何の意味もありません。

 

 

 

ある男の子が森でぴょんぴょこさんと出会いました。

 

何とぴょんぴょこさんは友達がいないのに、全ての生き物の言葉が分かります。


 

 

どうして飛ばないの?

 

生まれつき飛べないんだ。ぴょこぴょこ。

 

 

 

どうして翼がついてるの?

 

僕にも分からないんだ。ぴょこぴょこ。

 

 

 

どうして友達がいないの?

 

みんな僕のことがわからないから。

 

僕も僕のことがわからないから。ぴょこぴょこ。

 

 

 

………いつもどんぐりを食べているの?

 

うん。ぴょこぴょこ。

 

 

 

じゃあ明日拾ってくる。

 

ありがとう。ぴょこり。


 

 

ぴょんぴょこさんは恥ずかしそうに森へ消えてゆきました。

 

 

 

男の子は天を見上げて言いました。

 

「失敗したら、謝らなきゃいけないよ。何にも怒らないなんて、誰にでもできることじゃないよ。彼がもし、そっちに行くときには、一番いい席を取っておいてください」

 

 

 

ぴょんぴょこさんは森の奥の奥でどんぐりを食べていました。

 

ぴょんぴょこさんは嬉しそうでした。

 

 

 

 

 

明日は友達ができるかもしれないからです。

 

 

 

 

 

(つづく)

 

 

 

 

 

 

 

私はひとり聖堂にいた。

 

 

1時間は祈っただろうか。

 

 

帰宅すると姉はまた居なかった。

姉はもう助からない病気だ。

お世話になった人達に挨拶をしてまわっているのだろう。

電動式の車椅子だから移動は一人でもそんなに難しくない。

 

 

父も母も姉も、もう覚悟をしている。

だから食卓は明るい。

野球の話で父と姉は喧嘩をする。

私はケラケラと笑う。

 

 

私は随分と前から婚約をしている。

でもいざ入籍、挙式となるとためらってしまう。

姉は祝ってくれるだろうけどいつ「その日」が来るか分からないのに自分だけが幸せになってもいいのかと思う。

 

だからこの話は家庭内ではタブーだった。

 

 

そしてまたある日、私はひとり聖堂で祈っていた。

何とか姉が助からないものかと。

1時間は経った。

 

私は席を立った。

その時どこかから声が聞こえた。

 

 

 

『貴方は姉の為に死ねますか?』

 

 

 

何?誰?どこから聞こえたの?

 

そして私はその内容にも戸惑った。

姉が助かる。私は死ぬ。家族は泣く。婚約者も泣く。

 

そこに意味はあるのだろうか。

 

でも姉は小さい頃から何でも譲ってくれた。

オモチャも母親が何を言わずとも、笑いながら譲ってくれた。

 

 

それでも………。

私が死んだら元も子もないんじゃないか?

 

 

しかし、ふと姉の優しい声が頭に響いた。

 『はい、ゆうちゃん。これあげる』

 

 

 

「死ねます」

 

  

 

『では………姉を助けましょう』

 

 

 

聖堂は静寂に戻った。

 

 

 

その後、ある薬が厚生労働省に認可された。

情報が少なく値もかなりするので見過ごしていたが、これからは保険で買える。

 

 

それを使うと姉はみるみる回復した。ガリガリだった身体が通常に戻った。

姉は理学療法に通った。すると………歩けたのだ。

 

 

父と母は涙した。

駆けつけてくれた婚約者も涙を浮かべていた。

そして私を抱きしめた。

 

 

でも………ごめんね。私は貴方と一緒にはなれない。

病気か事故か。私はそろそろ居なくなるよ。

 

 

私は一人で聖堂に行った。

今日は祈らなかった。

声を待っていたが、もう逃れられない運命だと分かっていた。

 

 

私は聖堂を出ようとした。

そうすると後ろから声が聞こえてきた。

 

 

 

『………覚悟。私が見たかったものはそれだけです』

 

 

 

私は涙した。

祈りは無駄ではなかった。

 

 

どうして私たち姉妹を?

地球に80億人も人がいるのに?

どうして姉を助けたの?

私の命なんて吹けば飛んじゃうよ。

 

 

どうして………。

声の主は私が自分自身の為にしか、

祈っていなかったことを見透かしていたのだろう。

 

 

だから………。

次の日から私はまた毎日1時間、今度はこの世界の為に祈った。

そこは残酷で、悲しくて、そして愛のある世界。

 

 

 

 

 

届け。私の祈り。

 

 

 

 

 

 

 

(2025/07/10加筆)

 

 

 

桃華も1歳になったか。

一番かわいい時だ。

 

 

でも妻は韓流ドラマばかり見てる。

最初の子をお産で亡くしたのだ。

 

 

また子を授かったが、妻は悲しみから逃れられていない。

「失った」というとても強い感情が、妻を無感覚にしている。

だから新しい命に触れられない。怖いのだ。

 

 

もしまた心を解き放って抱きしめた存在が居なくなると………。

妻は韓流ドラマの好きな場面を巻き戻して観て。

また巻き戻してまた観て。それをずっと繰り返している。

 

 

僕は妻を責めない。育児放棄を咎めない。

いくら「授かって」も「失う」ことは人間を壊してしまうことがある。

彼女の傷が癒えるまでは僕とベビーシッターでフォローしていく。

 

 

………だけど妻よ。僕の身体はどこも痛まなかった。

だけど心は引き裂かれたよ。僕は今、桃華がいるから精神を保ってる。

でもそれも………薄氷を踏む思いだ。

 

 

 

ある日、帰宅すると珍しく妻が桃華をあやしてた。

 

 

僕は後ろから声をかけた。

 

「疲れてない?」

「………分かってるんだけど、私がひつこく観るから覚えたんだろうけど………だろうけど………」

 

 

妻は泣いていた。

僕はよくわからなかったが、妻を後ろから抱きしめた。

 

 

その時、桃華と目が合った。桃華は産まれて初めて喋った。

 

「まタあえラェ」

 

 

妻が韓流ドラマを見過ぎたからだ。

好きなシーンの、セリフのひとつだった。

でも確かに桃華は言った。

 

「また会えたね」

 

 

それが偶然であり、その理由もわかってる。

だけど僕ら夫婦の黒くて大きなダムは壊れてしまった。

 

 

妻は言った。

 

「おかえり、また会えたね」

 

 

 

 

 

桃華はキャッキャと笑った。

 

 

 

 

 

 

(2025/07/08加筆)

 

 

 

 

君が呼吸に困っている時

 

僕はテレビを見ていた

 

徐々に生が消えるのに

 

僕は気づかなかった

 

 

僕は君の骨を焼き

 

河原で一番綺麗なところへ埋めた

 

だからいずれ流れてしまうだろう 海まで

 

 

存在とは慟哭だ

 

 

心臓は破裂しそうになりながら

 

その時を今か今かと奏でている

 

声にならない嘆き悲しみ

 

 

君は幸せだったのかもしれない

 

生き物として正常だったから

 

 

しかし僕は

 

ひと呼吸を慟哭している

 

繰り返す悲劇だ

 

 

この世には少しだけ

 

そんな人間がいる

 

 

 

だから助けて

 

 

 

 

 

………………………対詩を✂️詰め込む………………………

 

 

 

 

 

君が呼吸に困っている時

 

僕はテレビを見ていた

 

徐々に生が存在するのを

 

僕は気づかなかった

 

 

僕は君を抱きしめて

 

丘のお家の庭から

 

ふわりと雲に飛び乗った

 

ふかふかと 遠くに海が見える

 

 

存在とは慟哭だ

 

 

赤ん坊は産まれたくない、存在したくないと

 

元気に産声をあげる

 

だけど母親の顔がとてもよく見える様になってからは

 

ああ、ここで暇をつぶすか

 

なんて自分でオシメも変えれないから悪態もつくよ

 

 

君は幸せだ

 

生き物として、人間として正常だから

 

 

しかし僕は

 

ひと呼吸を慟哭してみせる

 

どうしてこんなにも残酷で、美しい世界なのかと

 

だけど少し照れて笑いながら この夜を祝っている

 

 

この世にはそんな人間がたくさんいる

 

 

 

 

 

明日はケーキを食べようか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緋色の浮橋が

 

骨組みを保てず

 

溶け合いすぎた

 

依存という名の血と肉

 

 

 

僧侶たちの口笛が

 

渇きをもたらし

 

その組み合わされた常軌から

 

滑り落ちた灰と骨

 

 

 

陶器のような鎖骨を

 

指先でなぞりながら

 

二つの頭蓋が白く干上がり

 

焦げた香りだけが残った

 

 

 

この緋色の浮橋の上

 

貴方の骨が真っ直ぐと

 

この泥団を蹴りますよう

 

血と骨が溶け合いますよう

 

 

 

形を持たぬ、確かなものが在りますよう

 

いとも単純な理が、息づきますよう

 

 

 

 

 

そして貴方が私だけのものになりますように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(2025/07/06加筆)

 

 

 

 

貴方が私の人生を愛してくれたから

私はやっと存在することができた

 

私の黒く塗りつぶされた人生を、貴方は愛すと言った

だから私はやっと呼吸ができた

 

少し出遅れたが

私は貴方をずっと包むだろう

たとえ貴方がどんな色であろうとも

 

 

互いの運命の呟きのタイミングは少し違っていた

 

私は出遅れた分もっと貴方を愛そうとするが

貴方の愛の前では

 

何と出過ぎて小さいなことなのだろう

 

 

運命とは

 

 

 

なんとも甘く

 

シンプルで

 

 

ずっと心の奥がむず痒い

 

 

 

 

 

 

 

貴方はもう眠ったのかな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(2025/07/05加筆)

 

PhotoShop等、画像制作ソフトで創作。

文字が小さいので拡大してご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒南風(くろはえ、梅雨の時期に吹く、雨を伴った湿った南風)

 

 

 

 

牡丹模様が泥かむる

 

 

祭り囃子が届かぬ

記憶の底のバス停で

 

 

君を呼び出し

浴衣の裾を捲くる私は

 

 

友情を守りたかったのか

それとも退路を断ったのか

 

 

君を受け入れるということ

大人になってしまうということ

 

 

これじゃ、沢山のものが壊れてしまうと分かっているのに

 

 

花火が死ぬ夕暮れに

無味無臭のバス停で

 

 

私は

 

 

 

雨に逃げる

 

 

 

 

 

 

青時雨(あおしぐれ、青葉に降り積もった雨が、時雨のようにぱらぱらと落ちる)

 

 

 

 

祭り灯りが萎びてく

 

 

祭り囃子が届かぬ

幼き記憶のバス停へ

 

 

あの娘の声へと向かい

雨に逆らう僕は

 

 

想い出を守りたかったのか

それとも退路を断ったのか

 

 

あの娘を感じるということ

男女を理解してしまうこと

 

 

これじゃ、沢山のものが壊れてしまうと分かっているのに

 

 

花火が死ぬ夕暮れに

無味無臭のバス停へ

 

 

僕は

 

 

雫をさがす

 

 

 

 

 

 

 

そんな雨の匂い

 

そんな髪の香り

 

そして蒸れた肌を包む大気が

 

 

 

 

 

僕らをおかしくした

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな梅雨の終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(2025/6/30加筆)