アルフレード・サラフィア

(Alfredo Salafia、1869年11月7日 - 1933年1月31日)

19世紀の旧イタリア王国、シチリア島出身の化学者。

剥製・エンバーミング(死体防腐処理)の専門家。

1920年、時のロンバルド将軍に依頼され、肺病により2歳で死去した将軍の娘、ロザリア・ロンバルド(写真下)に防腐処理を施す。

そのミイラは105年経った現在でも当時の面影を残している。

 

 

一般展示されているロザリア・ロンバルドのミイラ

(Rosalia Lombardo 1918年12月13日 − 1920年12月06日)

 

 

本作は上記の歴史を元にしたフィクションです。

 

 

 

 

現代、2025年。

 

2025年ーーーーーーーーーーーーーーーー

イタリア共和国 シチリア自治州

カプチン・サンフランシスコ修道会 裏

アントニーノ・アゴスティーノ通り

ーーーーーーーーーーーーーーーー11:01

 

 

「んんー………。重ちゃん、なんか微妙な見学だったよ………」

 

「………ロマンがねぇなぁ。世界一美しい死者を見たんだぞ!?」
 

 

「こんなの悪趣味の極みじゃん。少女のミイラなんて………。静かに眠らせてあげないと」

 

「誰だって一度は永遠に生きてみたいと思うもんだよ。俺は今も思ってるけど」

 

 

「ロザリオ・ロンバルドは絶対にそんなこと望んでなかったと思う。医者は………名前なんだっけ?」

 

「シチリア人のアルフレード・サラフィア。晩年、誰にもその死体防腐処理の方法を明かさずに死んだんだ。最近になって解明はされたけどな。できることなら俺も頼みたいよ」

 

 

「本当にそう思うの??分かってないなぁ………。あ、こっちいこ」

 

「………はは。由加、どこへ行くの?」

 

 

「いや………。ガイドブックどおりなんてつまらないよ。たまにはこうして路地裏に入ってみるの。そこでしか見れない生のイタリアもあるから」

 

「でも迷わないか。大丈夫?」

 

 

「フィレンツェの路地裏で飲んだカプチーノが最高だった。一瞬、自分が世界のどこにいるか分からなくなるの。素敵な体験だった」

 

「んーでも………。これはただの団地じゃあ………」

 

 

「………そうね。ただの団地だね。。日本よりはちょっとおしゃれだけど」

 

「そうかぁ?まあ一度、カプチン修道会まで戻ろう。一般市民の生活がそんなに見たいかね」

 

 

その時、2人の目の前に1人の幼い少女が通りかかった。

 

団地に子供がいるのは不思議ではないが、その少女は様子が違った。

 

 

丈の長い赤いドレスを着ているが、その衣は擦れてボロボロ、そして髪の毛はまるで洗ってないボサボサ、しかしその陶器のような白い顔には、その見すぼらしい身なりを全て覆すような、暁色の瞳があった。

 

 

「.......Ciao, sono Carina Azaro.

 

.......Tua sorella ha incontrato Rosalia?

Probabilmente era una bella faccia addormentata.」

 

 

【 ………こんにちは。わたしはカリーナ・アザロ。………お姉ちゃんたちはロザリアに会ってきたのかな?

綺麗な寝顔だったでしょう 】

 

 

【 .......Ciao………。お嬢ちゃん………?どうしたのその服? 】

 

 

【 ………えへへ。ねえ、お姉ちゃんたち。お金持ちになりたくなくない?(笑) 】

 

 

 

 

(つづく)