汝が久しく深淵を見入るとき、深淵もまた汝を見入るのである。
by フリードリヒ・ニーチェ(1886)
もし、人間がそれらの深淵に折り合いをつけたとしても、それ自体がまた大きな深淵となり得えてしまう。
しかし前のめりになる後ろ手は引いてくれるのでしょうか。
そして深淵の向こう側の怪物達も私達に怯えているのかも知れません。
どちらもお互いが分からないですから。
と、ふと気づくと
私は板張りの狭い部屋に閉じ込められ、四肢を部屋の隅に括り付けられていた。
私を拘束していた手足の内側から、黒い芋虫たちが這い出てくる。
もそもそと、長い針。沢山の毒を持っているようだ。
蝋燭に照らされ嬉々として影が踊っている。
醜い。
私に強いられていた冠から、青い天使たちが舞い降りてきた。
テニスボールほどの子供だろうか。私に一生懸命語りかけてくる。
青い肌の青い目から沢山の涙がこぼれ落ちる。
美しい。
彼らは美しく、または醜かったが、かけてくる言葉は一緒だった。
(あナタハ ドレくライ闇ガワかル………?、??)
「分かんないよ。だいたい闇が喋んじゃないよ。
そしてそんなものは、ハジめッカラ存在しナイ。区別してんじゃねーよ」
青い天使が私に耳打ちする。
【もう少しだよ】
だけど私はその青い天使を鷲掴みにして言う。
「アなタの祈りは要らないの」
貴方の祈りは要らないの。
ねえ。深淵さん。