2025年ーーーーーーーーーーーーーーーー
イタリア共和国 カラブリア州
ブーツの先、リカーディ
モデナ家
居間
ーーーーーーーーーーーーーーーー11:03
【 ねえ、ママ】
【 ただいま。あれ?カリーナ。小学校は? 】
【 熱っぽいから帰らせてもらったの。ジュゼッペおじいさんに迎えに来てもらったよ】
【 そう。私はスマホ忘れて家を出たからね。あなたのせいで(笑)買い物に寄ってきたのよ 】
【 うん。おかえり。………ねえ、ママ、聞きたいことがあるの】
【 なあに。カリーナ】
【 カリーナ・アザロって誰?】
【 ………。………知らないわ。どうしたの】
【 さっき工房でジュゼッペおじいさんが電話で言ってた。すっごい驚いてた。カリーナって私と同じ名前だよ】
【 ………そう。ママは知らないわ】
2025年ーーーーーーーーーーーーーーーー
シチリア自治州 パレルモ県
カプチン・サンフランシスコ修道会前
裏路地
ーーーーーーーーーーーーーーーー11:05
【 .........? ......... Ciao. Carina. Cosa è successo? Il denaro? 】
【 Già. 】
「どうした?」
「迷子かな。この子。服がボロボロ。お金がどうとか?」
「警察に連れて行かなきゃか?」
「ちょっと待って」
【 お嬢ちゃん。どうしたの?何かあった? 】
【 今からお母さんに会いに行くの 】
【 そう。近くにいるのね。でも、服はどうしたの? 】
【 お母さんはずっとずっと昔から私を待ってる。連れて行ってくれる? 】
【 いいけど………。じゃあ警察に行きましょうか。 】
「おい、何を話してるんだ?」
「お母さんのところへ連れて行ってほしいみたい」
「警察か。面倒だな。いろいろ書類を書かなきゃいけないだろ?近所の人に頼めないのか」
【 これあげる 】
【 ん? 】
少女は古く薄汚れた赤いドレスの裾をまくりあげた。
其処からは沢山の古びた金貨が飛び散った。
「え?え?」
「おおお!?」
【 お母さんはブーツの先にいる。ケーサツは嫌い。これを全部あげるから連れて行って】
「ん?何だ?何を言ってる??」
「いや?お母さんのところに連れて行ってくれたらこれをあげるって?」
「………。………おい。………由加、今、アンジェラとビデオ通話つなげれないか」
「ビデオ通話?どうだろう………。何これ?金貨?」
「アンジェラにこの金貨が何か聞け。銀行員だろ」
【………アンジェラ、カメラ見える?これ分かるかな。すごく古い金貨】
【 (ええ………。いや………………。どうしたのこれ。やば。バプテスマの聖ヨハネ………?どこで手に入れたの!?) 】
【 ………うん。うん。そう、うん………。アンジェラ、ありがとう】
「………重ちゃん。これ………中世イタリアのフローリン金貨だって。30枚で5千万円以上はするって………」
【(………大人はいつも馬鹿だね。今も古いコインと小さな棺に夢中)】
2025年ーーーーーーーーーーーーーーーー
イタリア共和国 カラブリア州
ブーツの先、リカーディ
モデナ家
地下皮革工房
ーーーーーーーーーーーーーーーー11:08
【 ………ねえ。お父さん。カリーナがね、カリーナ・アザロの存在に気づいてる】
【 ………。聞かれたか。すまない、さっき本人から電話があった】
【 ………またなの?】
【 ルーシェ・サンフランシスコ教会が当てにならないのなら、俺が解決するしかない】
【 そうね………。絶対に母親には会わせられない】
(つづく)