One of 泡沫書評ブログ -13ページ目

One of 泡沫書評ブログ

世の中にいったいいくつの書評ブログがあるのでしょうか。
すでに多くの方が書いているにもかかわらず、なぜ書評を続けるのか。
それは、クダラナイ内容でも、自分の言葉で書くことに意味があると思うからです。

元マイクロソフト日本法人の社長である成毛さんが書評ブログ をされているが、こういう本物の活字マニアに対抗(?)してまで、このような泡沫ブログをなぜ続けるのだろうか? というのをときどき考えるw


他にもこういう素晴らしい書評ブログ があったりしてつくづく思うのだが、結局、読んでて楽しいブログは、「今までこんな本あったなんて知らなかった!」という、世界の広がりを感じられるような本を紹介してくれるようなやつなのだと思う。だから、多くの人が読んでるようなメジャーかつタイムリーな本を(素人が)取り上げてもつまらないし、色々なランキングによく登場するようなベストセラーばかりを取り上げても誰も読んでくれないだろう。そういうのは、わざわざここで紹介しなくてもみんな知っているだろうし、わたしなんかに勧められなくても読むだろう。


だから、やはりわたしなんかは、こういう本を紹介したりすればいいのかもしれない。


戦闘技術の歴史 1 古代編 3000BC-AD500 (1)/サイモン・アングリム

¥4,725
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なんと面白そうな本だろう! といっても実はまだ読んでいない。というか、買ってすらいないw


久々に立ち寄ったリアル書店で見かけた本なのだが、値段を見てビビってしまった。かつては本の値段など気にしなかったが、今は諸々の事情でお財布と相談しないといけなくなり、色々と計算しないといけない。情けなくも悲しいことだ。バランスシートを見ながらいずれ手に入れようと思う。


戦闘技術の歴史 2 中世編 AD500-AD1500/マシュー・ベネット
¥4,725
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ところで最近はリアル書店の売り上げが伸びず、経営が大変なことになっている。だがリアル書店にもいいところはある。もちろん便利さや検索の容易さの面では圧倒的にネットに負けるが、リアル書店の良さは、こうした「ふっと面白そうな本に予期せず出会う」というところにあるだろう。もちろん色々なジャンルの書評ブログをまめに巡回していれば「もっと面白そうな本に出会う」ことが可能であり、もっと効率よく回れるのだが、それを知った上でなお、ぶらぶらと本屋を歩き回って、面白そうな本を手にとってパラパラやるという「娯楽」は今後も残って欲しいと思う。


まあでも、”リバタリアン”的には「売れない本屋を救済するのは間違っている!」と言わざるを得ないわけだがw

りびんぐゲーム 1 (ビッグコミックス)/星里 もちる
¥509
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君は星里もちるを知っているだろうか。軽妙なタッチで日常を描く・・・というと今なら「らき☆すた」のようなイメージになってしまうかもしれない。日常を描きながら登場人物の心象描写を巧みに織り交ぜながら成長を描く・・・というと「よつばと」の評みたいになってしまう。適切なたとえが思いつかないのだが、「いかにもビッグコミック的」というたとえが思いついた。そうだ、この漫画は「ビッグコミック的」である。


そういうとなんのことだかさっぱりだろうからw、一応解説らしきものを書いてみると、この本は「居場所」という概念を基軸に人の営みを描く作品だ。形而下の概念では居場所というのは住居そのものであるが、この登場人物たちは形而上的な意味での「自分の居場所」を探している(ように思える)。その一つのギミックとして、バブル崩壊後の東京の高い家賃が使われているわけだが、それはあまり本質的ではないだろう。現実問題として住むところが必要なのだという意味での住居が手に入れにくいという中にあって、その居場所を確保するだけでは本当の居場所ということにならないということで・・・まあ、要するにラブコメである。


ちなみにわたしは何を隠そう「島根県」の産で、ヒロインのいずみちゃんが島根県の出身だと知って非常に驚いた(だからこそこの本を今でも大切に持っているのかもしれない)。当時中学生だったわたしは相当な衝撃を受けて、いずみちゃんに自分を重ね合わせたりしていたものだ。当時も今も島根県というと「どこにあるかイメージがわかない」という土地なのだろう。作者も解説でそんなことを言っていたw


なお実際には、わたしよりずみちゃんのほうが少し年上なのだが、作中は雷蔵の主観で描かれるから、いずみちゃんが年上だと思うと少し座りが悪いw 逆算するといずみちゃんは1975年生まれだから、今年で35歳になる計算だ。雷蔵は45歳くらいか。もはや中年である。時の流れは恐ろしい。

朝日新聞の正義―逆説の新ゴーマニズム宣言/小林 よしのり
¥1,470
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今から10年くらい前はまだインターネットがそれほど浸透していなくて、まさか10年後に新聞をはじめとする大手メディアが凋落するとは、誰も夢にも思っていなかっただろう。その当時はまだ新聞の権威は高く、多くの人は疑いなく新聞に書いてあることを信じていたし、メディアリテラシーなんていうような言葉は一般にぜんぜん膾炙していなかった。普通の人は新聞にカラーがあるなんて考えもしなかったはずだ。



しかし一方で「ゴーマニズム宣言」や「新しい歴史教科書をつくる会」などのアウトサイダーが「従軍慰安婦」問題における大手メディアの「偏向」ぶりをいち早く指摘し、新聞の報道に対して真っ向から異を唱えていたのもこの時期だ。いわゆる「自虐史観」と総括される左翼的な言説全体に対する反論の「はしり」のようなものだろう。この本はこうした文脈で世に問われたものだ。なぜタイトルに「朝日新聞」としたのか、それはやはり日本の「左翼的なるもの」を一番表しているのが朝日新聞だからだろう。わたしには信じられないが、朝日新聞はかつて日本の知性を代表する新聞と言われていたらしい。今や朝日新聞と言えば反知性主義の代名詞で、メディア全体が「マスゴミ」と揶揄される中にあって、さらに朝日だけは特別に電波呼ばわりされる始末だ。こうした流れとなったのは、本書の力が大きいのではないだろうか。



本書の流れはインターネットにも波及し(と、わたしは勝手に思っているが)、2000年ごろには「狂想 主に朝日のゆんゆん投稿 」というサイトが立ちあげられるなど、2ちゃんねるや個人サイトなどで大手メディアを批判するのは一種の流行となったように思う。とにかくマスコミは馬鹿にするという、ある種のスノビズムすら見られるようになったのは残念なことだが、これまで素朴に信じていたものがまるでデタラメだったと知れば、多少感情的になってしまうのは致し方ないことだろう。(最近はこうした反動が行き過ぎて、なんでもかんでも「マスゴミ」呼ばわりすることがメディアリテラシーだと思っているひとも増えたような気もするが・・・。)



今の水準で考えれば、新聞というのはどこも偏向していて、それは程度の差はあってもどこも同じであるというのが一般的な見方だろう。むしろ人間の言説なのだから完全に中立というのは原理的にあり得ない。したがってジャーナリズムというのを少しでも考えると、日本の大新聞のやっている「不偏不党」とか「客観報道」というのは存在せず、問題はむしろそういう態度をしつつ偏向した情報を流す大手新聞のやり方である。このような認識は、このインターネット時代にはもはや「常識的なメディアリテラシー」だが、こうした考え方が一般的になったのは、やはり本書の功績が大きいだろう。



今となっては既にそうした議論をはるかに超え、新聞というメディアそのものが存亡の危機にさらされているが・・・それはまた別の話になるので、このへんで。



朝日新聞血風録 (文春文庫)/稲垣 武
¥470
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「悪魔祓い」の戦後史―進歩的文化人の言論と責任 (文春文庫)/稲垣 武
¥710
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新聞・テレビはどこまで病んでいるか―「靖国」「教科書」「小泉改革」報道他 (小学館文庫)/稲垣 武
¥500
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バイオハザード/ダークサイド・クロニクルズ(通常版:初回特典冊子「ダークサイド・レポート」同梱)/カプコン
¥7,340
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わたしのうちのゲーム機はほぼバイオハザード専用機と化しているので、これでようやくWiiのソフトがふたつになったw 言うまでもなくもう一つは「アンブレラクロニクル」である。(ちなみにPlayStation3も、わざわざ「BIOHAZARD5」のためだけに買ったw どんだけカプコンに貢献しているんだろう)


今作は偶数番に登場するレオンと、「4」で闘った「かつての同僚」ことクラウザーの新シナリオを基軸に、過去を振り返り「2」と「ベロニカ」のステージを進めるというスタイルとなっている。したがって、登場するのはレオンとクレア、クリス、スティーブとなる。もちろん、エイダやシェリーも登場します。グラサン男は・・・ネタばれになるので本作をプレイしてほしい。


ボリュームは前作に比べるとやや少なくなっている。全シリーズをプレイした私に言わせれば、「2」の部分は問題ないが、「ベロニカ」の部分は少し端折りすぎであり、逆に妙な演出に凝り過ぎていて少しNGだと感じた。またメインストーリーである「ハヴィエ」編はやや消化不良だろう。あと、PS3の高画質に慣れるとWiiのCGの粗さが目に付いてしまう。ま、このへんはご愛敬だろう。


操作方法は前作から少しだけ変更となっていて少しとまどうが、まあ若ければすぐに慣れるはずだw

7割は課長にさえなれません (PHP新書 648)/城 繁幸
¥735
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昨日発売されたという城さんの新著。中身は相当平易に書かれているので、2時間もあれば十分読める。体調が悪かったので2日かかってしまったが・・・急いで書評して、少しでも売り上げの裾野を広げたいと思える内容。この本は明確な若者に向けたメッセージであり、われわれのような無知な若者世代こそが読むべきだと思うからだ。だから少しでも多くの人がこれを読み、投票行動となって政治家に影響を与えるようになってもらえればこの国の状況も少しはよくなるだろう。


同じような労働市場の改革論に八代尚宏さんの本があるが、少し専門的にすぎ、また学者が書いた本という意味で読書をしない層には敷居が高いだろう。そもそもハードカバーだと読む人は限られる。そういう意味でも、手に取りやすい新書で出したのは大変に意味があるだろう。本文中の「大日本商事」のたとえ話も秀逸だw 対象とする読者層は明らかにあまり本を読まないような層であることがわかるが、そのために非常に話が単純すぎて、もう少し専門的な部分を議論したい人には物足りない内容かもしれない。これは対象読者が異なるからであって、内容の軽さをもって批判するのは少しお門違いの気がする。


労働市場改革の経済学/八代 尚宏
¥2,310
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しかし、そういう意味では城さんの本もいくぶんは工夫が必要かもしれない。たとえば「経団連」「連合」という言葉が割と前触れなく出てくる。ようするにこの程度は前提知識として持っているはずだということだろうが、いまどき労働組合とかを目の前で目にするのは国営系の企業(NTTとかJR)とか、日本を代表する超巨大企業(パナソニックとかトヨタ)くらいでしか目にしないため、(この本が読者層だと想定しているような)若い世代はそもそも「労使対立」というものがどういうものなのかイメージがわきにくいと思う。だから、このあたりも少し解説があるともっと良かったかもしれない。


一方でアマゾンでやたらと評価が高かった大久保幸夫さんの本は今一つ消化不良だった。なぜこんなに評価が高いのだろうか? わたしなどは、かれ自身がこの本で何を言いたいのか今一つ理解できなかった。


日本の雇用--ほんとうは何が問題なのか (講談社現代新書)/大久保 幸夫

¥756
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この違和感の正体は何だろう、とぼんやり考えていたのだが、要するに雇用の専門家(?)という立場上、現在の労働市場について大枠では批判を加えることができないという制約があるのではないか、と思う。「新卒一括採用により若手の失業率を低く抑えられている」とか、「第二新卒市場が整備されたため、やり直しがきくようになった」とか、基本的には現行のシステムの組み替えでうまくいくというような論調が多いように思う。そのうえで、各自で考えてがんばれ、という話だ。雇用調整助成金についての議論も迷走気味だ。労労対立という構造にも慎重に交わしているようにすら思える。全体的に、今のやり方の延長線上に解決策があるというのがそもそもナンセンスな気がする。

そして最も重要なことだが、違和感の一番の理由は、経済成長の話と雇用がリンクしていないところだろう。だいたい雇用というのは経済活動に従属する話であって、雇用だけ考えるというのはナンセンスだろう。働き方とか雇用条件とか言う前に、どうやったら生産性が伸びるのか、新しい産業に人をシフトしていくのかというのが見えてこない。大久保さんの場合、(多分にポジショントークもあるのだろうが)ひたすら雇用が云々というから、結局何がしたいのかわからなくなるのだろう。

(まあ、これは「雇用」の本であって、「労働市場」の話ではないよ、ということかもしれませんがね)

リクルート事件・江副浩正の真実/江副浩正
¥1,575
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まだ読み終わってないのだが、小沢さんが大変なことになっているのでフライング。リクルート事件が起きた時分、わたしはまだ小学校だったが、なんとなく「なんか悪いことしている人なんだろうなぁ~」という印象だけはあった。政治献金? 収賄? リクルートコスモス株を不正に譲渡? まあ、こんな感じで、なんだか悪そうなイメージだけは植えつけられた気がする。そういう意味では検察の大勝利といえる。リクルートというどちらかというと非日本的な企業の創業者であり、イノベータであった江副氏を失ってもなお、リクルートにはその後もDNAは受け継がれ、現在もなお日本経済に息吹を与え続けている。素晴らしいことだと思う。こうした行為を倫理的に拒否反応を示し、受け付けずに排除しようとする社会は、今後どうなっていくのだろうか。


わたしもホリエモンが言っている通り 、検察はもはやバランスを欠いており、どうにかして最適化しないともはや大変危険な「官治国家」ならぬ「検察治国家」になるのではないかとの危惧をもっている(もう既にそうなっているかもしれない)。検察とくに東京地検特捜部についてはホリエモンの指摘が鋭いのでそちらを見てほしいが、やはり「正義の味方 検察による一罰百戒」という前時代的なシステムは今の時代にはそぐわないだろう。何度もいうがこうして検察批判をしているわたしや、善良な市民だと自認する平和なあなたを検察が検挙しないのは、わたしの社会的な地位が低く「見せしめ効果」が低いのと、かれらが非常に少数体制でわたしやあなたのような小物を相手にする暇がないからであって、その気になればいつでも送検できる力があるのは間違いない。起訴されれば99.9%の確率で有罪判決が出る。(と、思ったらまた池田先生(またか・・・)がこれについて書いていた 。何でも言及するなこの人w)


まあ、世間ではまだ検察は正義の代弁者。小沢は悪の象徴 。これは「痛いニュース」なので、書き込んでいるのは(たぶん)自民党の残党のような人たちばかりなのだろうが、この人たちは何に対して怒っているのだろうか? まるで真珠湾奇襲の報を聞いて「暗雲が晴れた」と言っていた戦時中の国民のようだ。とにかく小沢憎しという感じである。自分が検察に睨まれるようなことは生涯無いからこんなことが言えるのだろう。なんにしても、こうした減点主義というか、嫉妬深く変な方向に執念深いメンタリティこそがこの国の閉塞感の正体だと思うのだが、こうした考えはやはり「マイノリティ」なのだろうか?


徹底抗戦/堀江 貴文
¥1,000
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反転―闇社会の守護神と呼ばれて/田中 森一
¥1,785
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今日は成人式。各地で風物詩となっている「荒れる新成人」→「最近の若者は…」が見れる日だ。


どうでもいいといいつつ食いついてしまうのは、やはり「成人式」という制度(?)のもつイニシエーションの特異性が際立っているからだろう。これは一種の社会的通過儀礼なわけで、無事に通過できたものだけが「社会人」という立派な称号を得ることができ、世の中に認められるようになるわけだ。だから、毎度のように現れる「荒れる成人」たちは、成人したという自覚が足りない「子ども」なわけだ。まあ、そんなわけで、この社会を映す鏡としてはこの上なく象徴的なイベントである。


成人式を荒らすような連中は軒並み馬鹿にされて「自覚がたんねーよ」「いつまでもガキのままでいるんじゃねぇよ」「社会はこんなんじゃ通用しないよ」と、「社会人」の先輩方から集中砲火を浴びる。また同胞であるはずの同級生達からもアホ呼ばわりされて、わざわざ式典に参加するという従順さを発揮したにもかかわらず社会から排除されるわけだ。つくづく同情する。どうせ結論がわかってるんだから、やらなきゃいいのに、と思うのだが、一方で、この閉鎖的な社会に対して楔を打つという観点では、成人式を妨害するというのはある意味で本質を衝いているような気もする。


世捨て人的にいえば、まあ普通は成人式なんかには出ない。同級生に会えるからというので会場に行くことはあるかもしれないが、わざわざ式典に参列したりしないだろう。神妙な顔して「社会人の先輩方」から「社会人たるものは・・・」なんていう、聞かなくてもわかる不愉快な訓示をわざわざ聞くなんてあほらしくてやってられないと思うのだが、どうだろうか。最近の風潮としては、「リア充」たちに会いたくないから欠席する、という「降り組」もいるような気がするが・・・。いずれにしても、荒れる成人だろうがなんだろうが、ちゃんと式に出るだけ従順なほうだと思う。むしろ重要なのは、そもそも始めから式に行く気のない成人たち(つまり伝統的な意味で思考停止に陥っていない若者と、絶望して社会と隔絶する若者)をどう囲い込んでいくかだと思うのだが、どうだろうか。


母国を救うための海外へ進学するキャリアパス

[雑文]15歳の君たちに告ぐ、海外へ脱出せよ


こういうことを自信をもって言える人になりたいもんだ。

それにしてもコメント欄がひどいなぁ。。。

堀江貴文 人生論/堀江貴文
¥1,260
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トルストイの・・・じゃなくて、ホリエモンのです。


まあこんな本は立ち読みで済ませるべきなんだろうが、そこはそれ、信者なので、たまには金を出して買う罠(と、いうような非合理的な行動が徹底的に否定されている本です)。


わたしはまだ30代なのでギリギリ賛同できる世代だろう。個人的には、わたしも同じような感じだったので子どもの頃のホリエモンの苦悩が非常によくわかる。わたしは彼のような天才肌ではなかったが、周囲の同調圧力には非常に苦労させられたからだ。こういう人はものすごく多いんじゃないかと思う。ホリエモンの時代は体罰があったというが、われわれの時代は少しそれが緩和されていた。が、アウトサイダーに対する村八分具合はまるで一緒だ。世捨て人の庵 氏はこの同調圧力に屈した「敗者」だが、時代は下って、海外ニート さんはこの呪縛から脱出できた口だ。それにホリエモンのような「強いオピニオンリーダ」もいる。時代の移り変わりを感じざるを得ない。


これを読んでムカついた人は例外なく保守化していると判じてよいだろう。そういう、リトマス試験紙のような役割を、ホリエモンは自ら演じているといえよう。著書の中でもそんな感じの発言をしている。まあ、買ってまで読むかどうかは別にして、ホリエモンに拒否反応を示す20~30代の人は、騙されたと思ってかれの一冊くらい読んでみて、頭の中をガツ―ンとリセットしてもらう方がいいかもしれない。一通りイライラムカムカして、一晩寝たら、「あれ、もしかしてこういうふうに考えられないのって、俺がそう教育されてきたから?」と気付けばしめたものだ。知らないうちに老人たちの手先になっていませんか? と。まあ今の老人がホリエモンに反発するのは「合理的」だから、それ自体は不思議ではない。むしろこの本を読んで「そうだそうだ」と思う老人は、きっと早いうちに潰されて成功しておらず、今頃落ちぶれているか、アメリカにでも住んでいるだろう。


歴史を紐解けば、たぶん坂本竜馬なんかもホリエモンみたいな気持ちだったんだろうが、今や竜馬の支持層はまるで逆転して、老人たちのオピニオンリーダになっている。不思議な因果もあったもんだ。竜馬が粉砕したかったのはこういう固定化した、古臭い既得権益層の旧弊、改革を拒む抵抗勢力であったはずだが、時代は下り、いつの間にか守旧派のノスタルジーを投影する偶像になってしまっている。この逆転現象は一体何なのか。ホリエモンなんか、完全に坂本竜馬の役回りだと思うのだが、「竜馬伝」を見て留飲を下げる老人たちの感想は如何に。

労働市場改革の経済学/八代 尚宏
¥2,310
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先日、民主党の藤末議員が池田先生と喧嘩(?)して、「公開会社法」なる法を「思い入れのある法律 」なんていうもんだから、「新自由主義w陣営」からボコボコに批判されている。要するに「その規制脳をなんとかしろ!」ということだろう。「あまりにも行き過ぎた株主偏重の株式会社を規制しなければならない」と義憤に燃える藤末議員に対して、「この株主軽視の日本において、どこの株主が偏重されてるとか言ってんだこの野郎」というのが対立の骨子だ。藤末議員はどうやら元通産省のお役人らしく、お国が主導で産業を振興させ、国内企業の発展を促進させたいという希望に燃えるお人のようだ。


株主至上主義との決別 - Tech-On

日本を捨てる製造業 - Tech-On


高い法人税を嫌って海外に逃避する企業をなんとか国内に押しとどめておこう、という藤末議員の熱い気持ちが伝わってきます。


公開会社法の議論については、池尾先生が釘をさしておられるので、時間がある人はちゃんと参照すべきなのだろう。


池尾和人先生のつぶやき その1

池尾和人先生のつぶやき その2

第20回我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ議事次第 - 金融庁


と、いうことで、やっぱり民主党クオリティだったというオチ。


ずいぶんと脱線したが、この本は悪名高い「新自由主義者w」にたぶんノミネートされているであろう、八代教授の本。Googleで検索 すると、Wikipediaの次に批判ブログが出てきた。ちなみにWikipediaによれば、


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若い視聴者パネリストが正社員の職業に就けないことを「パネリストがいまの状態になっているのは自らの能力。自己責任」旨の発言を派遣業者代表とともに行っている。 また、同じく若い視聴者パネリストの「雇用の地域間格差があり、地方は厳しい」との主張に対し「(好景気の)東京や名古屋に引っ越せばいいじゃない。なんで引っ越せないんですか?」との発言を行う。

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とかなんとか言っているらしいw

これは嫌われるw


まあ本自体はそこまで過激な言い方はしていなくて、至極まっとうな労働市場改革についての分析と提言が書かれている。要するに労働市場が硬直化して時代にあった働き方ができなくなっている、だからもっとフェアで競争的な労働市場にしなければならない、という内容。ちなみになぜか、アマゾンには書評がなかった。よほど人気がないのだろうか。

ふらりと立ち寄ったコンビニで2010.1.18号の「プレジデント 」誌があった。新年早々ビジネス誌なんか出てるのか・・・と思って、パラパラとめくってみると、「ワースト経営者」というところにホリエモン がダントツでノミネートされていた。「なんだこれ?」と釣られたので、ちょっと読み進めてみると、平均年齢46.9歳、男94.3%・・・どうやら典型的な「ミドル層w」3000人からアンケートを取ってみた結果だそうだ。プレジデントは社畜御用雑誌というイメージしかなかったが、どういう層が読んで、どういう意見を吐いているのかと気になったので買ってみた。(一緒に「ヤングアニマル嵐」も買ったw)


面白いのでアンケート結果を転載してみよう。


------------------------------(以下引用)------------------------------

好きなビジネス書著者:


1位 大前研一 (217人)

2位 勝間和代 (79人)

3位 ピーター・ドラッカー (70人)

4位 稲森和夫 (67人)

5位 松下幸之助 (63人)


嫌いなビジネス書著者:


1位 勝間和代 (122人)

2位 大前研一 (65人)

3位 竹中平蔵 (30人)

4位 森永卓郎 (27人)

5位 長谷川慶太郎 (19人)


ベスト経営者:


1位 松下幸之助 (438人)

2位 柳井正 (241人)

3位 稲森和夫 (134人)

4位 本田宗一郎 (99人)

5位 永守重信 (83人)


ワースト経営者:


1位 堀江貴文 (142人)

2位 山崎正夫(JR西) (58人)

3位 御手洗冨士夫 (45人)

4位 西松遙(JAL) (41人)

5位 西川善文 (40人)


現在、支持している政党:


民主党 (46.2%)

自由民主党 (19.2%)

支持政党なし (26.2%)


2009年、最も印象に残った出来事:


政権交代 (38.1%)

新型インフルエンザ (22.5%)

オバマ新大統領就任 (19.9%)


日本の格差について:


格差が大きすぎる (41.3%)

今のままでよい (35.6%)

もっと競争を促進するべき (22.2%)

------------------------------(引用ここまで)------------------------------


テレビのワイドショウ(テレビをほとんど見ないので、今は違うのかもしれないが)とあまり変わらない、どうでもいい結果が出ていて非常に笑わせてもらったw


これがプレジデントという由緒正しいビジネス誌の、しかもそのアンケートにわざわざ答えるくらいのリテラシの高いビジネスパーソンたちの多数派意見かと思うと、池田先生の言うとおり、「衰退の10年 」というのはもうすでに確定したと言わざるを得ない。もうわたしなどができることは、せいぜい来るべき世代間闘争に向け、いかにして自己防衛するか、くらいしか思いつかない。


なんというか、わたしのような馬鹿にはうまく要約できないのだが、要するに城さんのいう「昭和的価値観 」を言葉を変えアプローチを変えて表現しているだけで、全然構造的な話に立ち入っていないのだ。で、最後は結局「精神論w」。既得権益をいかにして切り崩すかとか、労・労対立をいかにして解決するかとか、避けえない世代間闘争をいかにしてコントロールするかとか、そういう血が流れるような本質的な話題は、見事に一切出てこない。


この時期に、こうした話題に一切触れないで「働き方、生き方全予測」とか言っても誰も説得されないだろう・・・と思ったのだが、よーく考えてみると、要するにこれは既得権益層の機関紙なのだということを思い出した。自分のところの利害関係者の神経をわざわざ逆なでするような馬鹿な真似をするわけないじゃないか、と思ったら、なんだか非常に無駄な時間とお金をかけてしまったと後悔。