人生論 | One of 泡沫書評ブログ

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堀江貴文 人生論/堀江貴文
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トルストイの・・・じゃなくて、ホリエモンのです。


まあこんな本は立ち読みで済ませるべきなんだろうが、そこはそれ、信者なので、たまには金を出して買う罠(と、いうような非合理的な行動が徹底的に否定されている本です)。


わたしはまだ30代なのでギリギリ賛同できる世代だろう。個人的には、わたしも同じような感じだったので子どもの頃のホリエモンの苦悩が非常によくわかる。わたしは彼のような天才肌ではなかったが、周囲の同調圧力には非常に苦労させられたからだ。こういう人はものすごく多いんじゃないかと思う。ホリエモンの時代は体罰があったというが、われわれの時代は少しそれが緩和されていた。が、アウトサイダーに対する村八分具合はまるで一緒だ。世捨て人の庵 氏はこの同調圧力に屈した「敗者」だが、時代は下って、海外ニート さんはこの呪縛から脱出できた口だ。それにホリエモンのような「強いオピニオンリーダ」もいる。時代の移り変わりを感じざるを得ない。


これを読んでムカついた人は例外なく保守化していると判じてよいだろう。そういう、リトマス試験紙のような役割を、ホリエモンは自ら演じているといえよう。著書の中でもそんな感じの発言をしている。まあ、買ってまで読むかどうかは別にして、ホリエモンに拒否反応を示す20~30代の人は、騙されたと思ってかれの一冊くらい読んでみて、頭の中をガツ―ンとリセットしてもらう方がいいかもしれない。一通りイライラムカムカして、一晩寝たら、「あれ、もしかしてこういうふうに考えられないのって、俺がそう教育されてきたから?」と気付けばしめたものだ。知らないうちに老人たちの手先になっていませんか? と。まあ今の老人がホリエモンに反発するのは「合理的」だから、それ自体は不思議ではない。むしろこの本を読んで「そうだそうだ」と思う老人は、きっと早いうちに潰されて成功しておらず、今頃落ちぶれているか、アメリカにでも住んでいるだろう。


歴史を紐解けば、たぶん坂本竜馬なんかもホリエモンみたいな気持ちだったんだろうが、今や竜馬の支持層はまるで逆転して、老人たちのオピニオンリーダになっている。不思議な因果もあったもんだ。竜馬が粉砕したかったのはこういう固定化した、古臭い既得権益層の旧弊、改革を拒む抵抗勢力であったはずだが、時代は下り、いつの間にか守旧派のノスタルジーを投影する偶像になってしまっている。この逆転現象は一体何なのか。ホリエモンなんか、完全に坂本竜馬の役回りだと思うのだが、「竜馬伝」を見て留飲を下げる老人たちの感想は如何に。