超自己満足的自己表現 -460ページ目

うれしはずかし恋愛生活 東京編 (12)結納

 今日は綾乃と僕の待ちに待った結納の日。ホテルの料亭を貸切って弐條家、源家の結納が行われるんだ。仲人は官房長官夫婦。今は結納さえしない人達が増えたんだけどね。 両家とも関西出だから、関西式の結納になった。


関西式は結構豪華だ。仲人の藤原官房長官夫婦は関東出身のため、昨日は夜遅くまで冠婚葬祭の本を読んで練習していたそうだ。ホテル側も、関西式はあまりないし、総理大臣家の結納だから粗相のないように大慌て。


綾乃のお父さんは今日結構何を着ようか悩んだみたいだ。自衛官に大変誇りを持つお父さんは結局礼装制服に決めたらしい・・・。濃い緑色で上着には階級章や様々な付属品がいつもの制服よりも多い。そして儀礼の時にはめる白手袋。本来だったら剣を携えるのが本式の礼装みたいだけど・・・。よく儀礼とかに着るあれだ。もちろん上官と相談の上決めたそうだけど・・・。


綾乃はおばあちゃんがこの日のために買ってくれた、有名作家の一点物の京友禅。白地に伝統的な手書きの絵柄が入ったすばらしい振袖。


 僕と父さんはモーニングを着て作法にのっとった結納がひととおり済むまで隣の部屋で待つ。見えないのでよくわからないけれど、声は聞こえるので様子はわかる。 一応僕も本を見て調べた。流れはこうだ。


仲人はうちから預かった結納品を持参して、「お床拝借します」と挨拶し、結納品を飾りつけ、それが済むと、綾乃と綾乃のお父さんが仲人さんの前に座って結納品の目録を渡すんだ。そして作法にのっとった挨拶が始まる。


もちろんホテルでするときは進行役の司会者がつくんだけど・・・。


「本来ならば、ご結納を源家へお持ちするべき所でありますが、この場をお借りしまして、結納をさせていただきます。よろしくお願いいたします。本日はお日柄もよろしくおめでとうございます。弐條様からのご結納の品でございます。幾久しくお納めくださいませ。」

「有難く拝見させていただきます」


そのあと綾乃のお父さんは別室に下がって受書を確認した上戻ってきてまた受書を仲人のほうに向きかえて挨拶。


「本日は誠に結構な結納の品々をいただき有難うございます。幾久しくお受けいたし ます。」


と答礼する。まああといろいろ作法があるんだけど、緊張し過ぎて覚えていない。同時に綾乃の家から結納返しを仲人が受け取った。一通り礼儀作法どおりの結納が終わると、両家が集まって挨拶をする。そして一応結納品のまえで記念撮影。


そして別室で両家と仲人夫婦で会食を始めた。やっぱり緊張する。やっとこれで正式に婚約したんだ。まだ日取りは決まっていないけどね・・・。やっぱり綾乃も緊張しているようだ。特に綾乃のお父さんははじめて官房長官と直にあって緊張している様子。ホントに和やかな会食だった。ホテルの人たちも滞りなく済んでほっとしていることだろう。


雅和綾乃結納
やっぱり大事な結納だから、記念にプロのカメラマンに写真を撮ってもらう。これは予約した時に決めていた。もちろんどこで取るかも決めていたんだ。ホテル内のきれいな日本庭園。歴史ある庭園だし、丁度桜がきれいだ。今年は桜が早いようで、3月末の今日満開ではないがそれに近い。池の辺の橋の上で、両家で写真を撮ったり、綾乃と二人で写真を撮る。いろんなところで何枚も撮った。


そのあと二人で庭園を散策する。400年も歴史のある庭園だから、ホントに日本らしい最高の庭園・・・。綾乃は頬を赤らめながら、桜を見上げるんだ。その姿は本当にきれいで、絵になる。つい僕はその姿を携帯カメラで写した。


僕は今日綾乃に伝えなければならない事があった。結納が終わったら伝えようと思っていたんだ。


「綾乃・・・。あのさ・・・。」

「ん?何?」

「驚かないで聞いてくれる?」

「だからなにってば・・・?」


僕はとても美しく微笑む綾乃の顔を見つめながらいったんだ。


「綾乃、僕さ、8月からアメリカに留学するんだ。ワシントン大学に交換留学生として1年・・・。」

「え?何で?」

「教授の勧めもあって、国際的な政治を勉強できるワシントン大学に・・・。綾乃、ついてきてくれると嬉しいんだけど・・・。僕も世界の中心アメリカで政治の勉強をしたい。父さんも賛成してくれたよ。あとは綾乃の意見を聞きたいと思って・・・。」

「もう決めたんでしょ・・・。あたしは大学があるもん・・・。入ってすぐやめたり休学はいや・・・。もちろん雅和さんとは離れたくない。いってきなよ。あたし待ってるから・・・。」


綾乃はすごく悲しそうな顔をして下を向いた。さっきまでのとても嬉しそうな顔とは正反対・・・。


「雅和さん、もうちょっと時間をくれる?」

「いいよ・・・。まだ時間はあるから・・・。」


僕はもちろんこういうことになるのはわかっていた。でも僕のスキルアップのために行く決心をしたんだ。でも悩んだよ。1年綾乃と超遠距離恋愛になる。だからこの結納をまって留学の話を切り出したんだ。


「綾乃、本当に今まで黙っていてごめん。」

「いいよ別に・・・。寂しいだけだから・・・。」


ホントに僕は綾乃の気持ちなんか考えていなかったのかもしれない。自分のスキルアップや好奇心ばかり・・・・。ホントに僕って熱中する事があれば周りの事が見えなくなるのは悪いくせだ・・・。


やっぱり僕達の結納は注目されているんだよね・・・。まるで皇室の結納のようだ。もちろん父さんが史上最高の支持率だからかもしれない。その上、綾乃のお父さんが陸上自衛隊上層幹部だから・・・。やっぱりホテルロビーには報道陣が多いらしくって、しょうがないのでこの日本庭園で報道陣撮影をすることになった。今まで綾乃は高校生だったから顔はあまり出なかったけれど、高校を無事卒業して、大学進学も決まったから、今回はばっちり顔と名前出しOK。インタビューはNGだったけどね・・・。


撮影に入るので、綾乃はきちんと化粧とか髪型を直してやってくるのを待つ。綾乃のお父さんは僕に話しかけてきた。


「わかってきたら、モーニングにしていたが・・・。いくら礼装とはいえ、制服ではちょっとね・・・。」

「お父さんは誇りある自衛官じゃありませんか・・・。」

「そうですね・・・。」


お父さんは苦笑しながら、緊張した表情で準備をする報道陣たちを見つめていた。


本当に綾乃のお父さんは有能だ。昨年もいろいろ有名な事案を指揮し、実績を上げている。本当にこの僕からも見て尊敬できるお父さんだ。


綾乃はホテルの女性従業員に誘導されながら、こちらにやってきた。さっき留学の件を切り出したためか、ちょっと不機嫌そうな顔をしている。


「綾乃、今日はお前のお披露目なんだからもうちょっといい顔しなさい。」

「わかってるわよ、パパ・・・。」


綾乃は深呼吸をして僕を見つめると、いつもどおりの顔に戻る。(多分無理してだろうけど・・・。)ホテル従業員の誘導で、撮影場所に案内されると、僕らを中心にして、両端に親と官房長官夫婦が立つ。綾乃のお父さんは被っていた制帽を脱ぎ、白い手袋をつけた手で制帽を持つ。


何枚か6人で写真を撮って、あとは二人で写真を撮る。もちろん写真だけではなく、映像も撮られる。何気ない表情も撮られるから大変だよね、映像は・・・・。やっぱり綾乃は切り替えが早いのか、こういうところではさっきと違ってニコニコしている。こういうところは綾乃のすごいところだと思うよ。ホント政治家の妻向き・・・。未だにこういう表立ったところに出るのは慣れないんだけどな・・・。


やっと報道陣相手も終わって、ほっとしたよ。父さんもいろいろ忙しいから終わったらすぐに公邸に戻っていった。僕は藤原官房長官夫婦にお礼を言って、帰る準備をしたんだ。


綾乃達はやっぱり荷物が多いから大変だね・・・。お父さんも礼服制服からスーツに着替えて、ロビーで待っていてくれたんだ。もちろん僕も着替えたんだけど・・・。ロビーで待っている綾乃に、綾乃の友人たちが駆け寄って何か話していた。


「綾乃、おめでとう!はいこれ!」


綾乃の友人たちは綾乃に花束を渡していたんだ。


「ありがとう・・・嬉しいな・・・来てくれるなんて思わなかったよ・・・。」

「なにいってんのよ!あたしら親友じゃん。幸せになりなよ。」

「いつ結婚するの?」

「まだわからないの、ホントは・・・。とりあえず結納だけね・・・。あ、雅和さん・・・。」


綾乃と目があって僕は綾乃に歩み寄り、綾乃の友人に挨拶をする。


「今日はおめでとうございます!わあ本物よ。写真では見たことあるけど。」

「ホント綾乃は幸せだよね!」


まだ綾乃は話している。僕は乗ってきた車を玄関前に移動してきて、後ろに綾乃の家の荷物を積む。車に乗ってきたから会食の時は、お酒を飲まなかったんだ。


「綾乃、帰るぞ!」

「ハーイ!パパ!じゃあ入学式でね!」


綾乃は友人と別れて大事そうに花束をかかえながら僕の車の助手席に座った。はじめて僕の車にお父さんを乗せる。やっぱり緊張するんだよね・・・。


「弐條君、綾乃のこれからのこと頼んだよ。もうこれで弐條君に綾乃をやったのも同然なんだから・・・。」

「はい・・・必ず・・・。」


綾乃は僕が留学することを知っているので、顔を下に向けたまま黙っていたけど・・・。


やはり夕方のニュースとかでちょこっとだけど流れたし、次の日の朝刊にはちっちゃいけど写真つきで掲載されていた。やっぱり綾乃はきれいに写っている。



『首相次男、陸上自衛隊幹部令嬢と結納 


 昨日午前、都内ホテルに於いて内閣総理大臣弐條常康氏(51)の次男で慶應義塾大学2年弐條雅和さん(20)と、陸上自衛隊幕僚監部幕僚副長源将直氏(54)の長女で、4月より慶應義塾大学入学予定の源綾乃さん(18)の結納が、藤原官房長官ご夫婦が仲人となり滞りなく行われた。結婚の日取りは未定。』



朝のワイドショーでも結構取り上げられて、大騒ぎとまではいかないものの、報道された。週刊誌ではいつも過激報道をする週刊誌が綾乃の曾おじいちゃんやおじいちゃんの経歴や写真を掲載し、お父さんの経歴、綾乃の生い立ちとかも詳しく調べてのせていた。もちろん僕のことも書かれていたけれど・・・。やっぱり綾乃は未来のファーストレディーとか書かれて、注目されている。まあ中立的な内容だったから安心したけど・・・。ホントもう僕らって公人扱いだね・・・。プライベートもくそもないや・・・。



やっと結納を交わした2人・・・その途端雅和は留学・・・。二人の愛はどうなるんでしょう・・・。

自作小説の挿絵~何度結婚するの?波乱の姫君、源彩子


yasuaki&sayako
またまた挿絵からキャラの紹介です。二人描かれていますが、男は以前ご紹介した医師、和気泰明です。

手前が今回ご紹介する彩子。ああ、泰明のバランス悪!!!


名前:大和守二の姫源彩子


大和守の二の姫として生まれた彩子。都に上がる前は、大和で天真爛漫に育ち、流行病で両親をなくした同じ年の和気泰明と一緒に育ちます。


天災や疫病があったときは姫君でありながら、父や国医師和気智明や和気泰明と共に大和中を回り、手当てや援助に回りました。


17歳の時豊明節会の舞姫に選ばれ、上京。雅和帝に見初められ、右大臣の養女となり入内。大和女御とされる。


雅和帝が大和行幸の際、彩子もついて行き、泰明と再会。泰明の恋心に気づく。ためらいながら、この時は何もなかった。大和滞在中に雅和帝の子を懐妊していることに気がつくが、流産の兆しが見られ、彩子のみ大和に残る。


年が明け、彩子は体調が安定した。帝により、泰明が大和女御の主治医として派遣され、帰京する直前、彩子は本当の気持ちは泰明にあると気づき、懐妊しながらも泰明と契ってしまう。その後、泰明を慕いつつ、京に戻り雅和帝の五の姫宮綾子(りょうこ)を出産。もちろん雅和帝は彩子の気持ちは和気泰明にあると気が付いてしまうが、何もなかったように振舞う。


重責と、彩子の思いを断ち切れなかった泰明が失踪。失踪の理由は自分にあると悩み、籠もりがちになる。何年たっても帰ってこない泰明を待ち続けたが、もうこの世にいないと覚悟し、二度、帝の子を懐妊するも、心労のため流産。そして六の宮誠仁を生むが、やはり気持ちの整理はできない。


泰明失踪から5年後、泰明が帰京。そして再会。雅和帝も、2人の関係を認め、譲位後彩子を泰明に嫁がせることを決める。


しかし彩子は東宮康仁に乱暴され、康仁の皇子良仁親王を産む。


雅和帝譲位後、彩子は和気泰明に嫁ぐ。本当に幸せな日々を過ごし、泰明との子、泰大を産んだが、康仁帝の策略により泰明と離縁させられ、東宮良仁の御生母として、立后し皇后とされる。


狂気の帝康仁は、彩子を独占し、御殿に閉じ込め、籠の鳥に・・・。その後、康仁帝二の宮博仁親王を生む。地獄のような日々を過ごすが、はじめの夫、後二条院は康仁帝退位を計画し実行。無事に彩子は解放され、泰明のもとに戻される。


泰明に再び嫁いだ彩子はおなかに康仁帝の子を懐妊していることを泰明に告げるが、泰明は承知の上、自分の子として生まれてきた姫、小夜を大事に育てる。


三人の男の間を行ったり来たり・・・。最後は一番好きな泰明と寄り添います。4度結婚し6人の母。


お相手とお子様一覧^^;

①雅和帝(後二条院)・・・①五の姫宮綾子内親王(伊勢斎宮)  

                ②六の宮誠仁親王(醍醐源氏の養子となり源誠仁となる)


③康仁帝(後宇治院)・・・③一の宮良仁親王(東宮→良仁帝) 

                ⑤二の宮博仁親王(のちの東宮) 

                ⑥三の姫宮小夜子三品内親王(後の四品親王輝仁妃)

②④典薬頭 和気泰明・・・④和気泰大



うれしはずかし恋愛生活 東京編 (11)新しい年

 雅和さんと付き合って3回目の元旦。去年はいろいろあったけど、今年は心機一転心を入れ替えてがんばることにしたの。


大晦日、パパは仕事の関係で帰ってこなかった。年越し演習でもあるのかな・・・。初めて雅和さんと年越ししたの。いっしょに年越しそば食べて明治神宮まで初詣・・・。そしてあたしの部屋で元旦の朝を迎えたの。年賀状が届くまで、ゆっくり寝てた・・・。形だけだけど、昨日までに作ったおせち(もちろんパパにお弁当で持たせたけど)を出して、一緒に食べたりなんかしたんだけど・・・。


「年賀状見てくるね・・・。」


あたしはコートを着て足早に下にあるポストまで行った。やっぱり元旦の朝の空気はなんか違う・・・。なんていうのかなぴんっと張り詰めた清々しい感じで・・・。毎年思うのよね・・・。今年はがんばろうって!


相変わらず年賀状の量は多い。ほとんどパパ関係。あたしの場合は友達みんなに写真つきメールで日が変わってすぐに一斉送信。もちろん雅和さんにはこうして会うことわかっているからいらないし・・・。


弐條家年賀状
毎年恒例の雅和さんのお父さんからの年賀状。私的なものなんだけど、毎年親子三人の写真つき。一昨年は官邸の階段で。去年は公邸前で。今年は・・・これはどこ?


「ああこれ?官邸の総理執務室だよ。」


お父さんが総理大臣の椅子に座って両側にお兄さんと雅和さん。三人並ぶとホントによく似た親子。お兄さんはお父さん似だね・・・完璧。雅和さんはお母さんに似ているの?少し女性っぽい顔つきなのよね・・・。お兄さんはちょっと古風な感じなんだけど、雅和さんは今風の顔つき。もて顔ってやつね。写真の下には近況が入っている。


『昨年党総裁の再選を果たし、おかげさまで再び・・・・・(省略)・・・・長男雅孝は昨年文科省に入省し、次男雅和は慶大で政治学を学びながら、私の後継者として日々精進しております。皆様の・・・・(省略) 内閣総理大臣 弐條常康』


そして直筆で一言添えてあった。雅和さんのお父様は大変まめな方で、党議員(もちろん地方議員も)、その家族の誕生日をすべて把握して、誕生日には直筆のメッセージカードを送っているらしいの。あたしもそうだけど、あたしの家族にもちゃんとカードを送ってくださる。まああたしの場合は、食事をしてくれたりして家族同様に扱ってくれるんだけど・・・。ホントまめよね・・・。きっと年賀状の一言も公務の合間に書いているんだろうな・・・。そういうまめさを雅和さんは受け継いでいるのかな・・・。


夜、雅和さんとお父さんのところへ新年のご挨拶に行くんだけど、それまでは家でゆっくり・・・。


「ねえ、また今年も新年会に出ないといけないの?」

「さあ・・・。今日言われるかもしれないけれど、でも官房長官には挨拶しておかないと・・・。」

「どうして?」

「僕らの結納の媒酌人を引き受けていただいたんだよ。官房長官は次期総理大臣と言われている人だからね・・・。官房長官ご夫婦が僕らのバックアップをしてくれるのだから、先は安泰ってことだよ。」


本当にあたし達の結納&結婚は党内一大イベントらしいのよ・・・。いろんな人たちから仲人の申し出があったそうなんだけど、お父さんが一番信頼をおく官房長官にお父さんは頼み込んだんだって・・・。ホントに雅和さんは将来有望なんだね・・・。なんせ2代総理大臣やってる家柄だから・・・。まあ期待はかかるかな・・・。20歳になって雅和さんは正式に家族党員から党員になったから、雅和さんは出席するんだろうけど・・・。お父さんと同じ派閥に入るんだね・・・。弐條派に・・・。まあ当たり前か・・・。


まあなんとか恒例行事を済ませて家に戻ってきた。やはり新年会は出席しないといけない・・・。んんん・・・。まあ官房長官夫人も出席だからご挨拶しないといけないんだよね・・・。やっぱり着物かな・・・。夏休みにおばあちゃんが京都で作ってくれた振袖着ようか・・・。でもあれは結納用だしな・・・。やっぱり去年食事会で着たやつかな・・・。雅和さんは何でもいいよって言ってくれるけど、気になるじゃない?


まあそんなこんなであっという間に当日・・・。 また雅和さんは開始時刻よりも早く会場入りして、準備を手伝っているの。あたしはというと、一緒にニューオータニに入って、着付けとか髪の毛とかで大変なんだけど・・・。今日は帰りアルコールが入るからって雅和さんとタクシーで来た。あたしはまだ着付けの予約時間になっていないから、ホテル内をぶらぶらしてた。


ここは3月の佳き日に結納をするホテル。結婚式もここでするんだろうな・・・。有名な日本庭園を眺めたり・・・。もちろんブライダルサロンも・・・。年末に結納の予約に二人できたっけ・・・。ここのホテルは永田町にも近いから便利でいいけど、結婚式はやっぱり神戸でしたいな・・・。雅和さんと出会った神戸で・・・・。


新年会の行われる会場では忙しそうに雅和さんが走りまわってた。きっとあたしなんかに気がついていないだろうな・・・。ああもうそろそろ行かなきゃ・・・。


あたしは着付けを済まし、会場に向かった。


去年の新年会はあたしと雅和さんの婚約を発表して大騒ぎになったな・・・。あれからもう1年か・・・早いな・・・。


会場は続々と人が集まってきて、受付を済ませた人たちは会場で名刺交換をしていたり、話し込んだりしている。あたしは宴会場前にある椅子に腰掛けて、人ごみを眺めていた。やっぱり党最大の派閥だから、報道陣も多いのよね・・・。雅和さんはどこにいるんだろう・・・。


「綾乃。」


雅和さんがあたしの前に立ってそっと手を差し伸べたの。


「あれ?お手伝いしなくていいの?」

「ん?手伝いは準備だけだから・・・。受付済ませて中に入ろうよ・・・。」

「うん・・・。」


あたしは雅和さんの一歩後ろに歩いて受付に向かう。やっぱりあたし達って注目の的なんだわ。すごく視線を感じるのよね・・・。気のせいじゃないのよ。会場に入るといろんな人達が集まってきて、雅和さんはさすがに愛想よくしゃべっている。別にあたしは人見知りしているわけではないけど、なんとなく気が重い・・・。たまに誰かわからないご夫人に話しかけられて、微笑みながら話すのだけど、人が多すぎて誰が誰かわからない。名前と顔が一致しないのよね・・・。


「まあ雅和君。お久しぶりね。」


着物を着た品のいいご夫人が雅和さんに話しかけてくるんだけど、誰だかわからないのよ。きっと議員さんの奥様なんだわ・・・。


「お久しぶりです。綾乃この方はね、官房長官の奥様ですよ。」

「まあこの方ね、雅和君のお相手の方は・・・。まあ可愛らしいお嬢様だこと・・・。」


なんと仲人を引き受けてくれることになった官房長官の奥様・・・。未来のファーストレディーね・・・。


「始めまして・・・源綾乃と申します。この度はお目にかかれて光栄でございます。」

「まあ雅和君にぴったりの方ね。親御さんもきちんと躾されているのね。ホントに可愛らしい。遅れましたが、わたくしは官房長官藤原貞利の妻、聡子と申します。よろしくね。ご結婚された暁には、議員婦人会においでになってね。綾乃さんならみんな大歓迎よ。」


やっぱりそういうものがあるんだ・・・。付き合いたいへんそう・・・。


このあと官房長官も合流して、雅和さんとあたしは3月に行う結納のご挨拶をしたの。本当に官房長官ご夫婦は仲がよくって、理想的なご夫婦・・・。お子様はいらっしゃらないらしいけれど、いつまでも新婚夫婦のような仲のよさはあたしの目標になりそう。奥様は大きな会社の元社長令嬢。官房長官が駆け出しの頃にお知り合いになられて恋愛結婚だったそう・・・。あんな夫婦になりたいな・・・。ホントに・・・。


いろいろもみくちゃにされながらやっと終わった新年会・・・。もうあたしはくたくたよ・・・。去年は途中で気分悪くなっちゃって途中で帰ったけど、今回は最後までいたわ。雅和さんはいろんな人にお酒を薦められて、やっぱり偉い人ばかりだから断れないでちびちび飲んでた。3時間も飲み続けて大丈夫かな・・・。あたしは水を持ってきて雅和さんに渡したの。


「大丈夫?これ飲んだら?」

「ありがとう・・・。さ、帰ろうか・・・。」


結構雅和さんは相当酔っていたの。しょうがないからあたしは服に着替えないで、そのままの格好で雅和さんの荷物まで持ってタクシーに乗り込んだの。


「広尾までお願いします。」


雅和さんはタクシーに乗るなり寝てしまったの。紀尾井町から広尾までそんなにかからないんだけど、おきてくれるのかな・・・。おきてくれなかったら運転手さんに手伝ってもらおうかな・・・。なんて考えながら、広尾の雅和さんのマンション前に着いた。


あたしはタクシー代を払って、雅和さんを起こしたの。まあなんとか起きてくれたんだけど、部屋まで連れて行くのが大変だった。あたしも着物でしょ、余計大変よ・・・。まあ無事部屋の中に入って、リビングに到着。すぐに雅和さんはソファーで寝てしまったのよね・・・。あたしは寝室で着物から服に着替えて、きちんとたたんでから、雅和さんの様子を見に行ったのね。


「雅和さん、こんなところで寝たら風邪ひくよ。明日は成人式でしょ。」

「ん?んん・・・。」


あたしは雅和さんに水を飲ませてから雅和さんを寝室に運んだの。そしてスーツにしわがいくのが嫌だから、きちんと脱がせてかけておいたの。何でこんな時に限って響貴さんはいないんだろう・・・。あっそうか、成人式のために神戸にいるんだ・・・。


「綾乃、一緒に寝よ・・・。」

「もう!あたし帰るね。パパが心配してるし・・・。」


あたしは雅和さんの頬にキスをして帰ったの。もうやになっちゃうな・・・。明日はきっと二日酔いでしんどいって電話かかってくるんだろうな・・・。無理して飲むから・・・。


案の定、次の朝、雅和さんから電話あって、二日酔いだから助けてって・・・。だからいったじゃん。あたしは電話越しに大きな声を出してあげたの。そしたら辞めてくれって・・・。ちょっと意地悪して楽しかったけど・・・。もちろんあたしは雅和さんのためにさっぱりしたものを作って家に行ったわよ。家に行ったらやっぱり雅和さんは死にそうな顔であたしを迎えてくれた。


「あああああ!もう酒飲まない!やめる!」


まあこんなこといっても付き合いで飲むくせに・・・。最近デートではお酒を飲まないでくれるけどね・・・。もうちょっとセーブしながら飲まないとね、雅和さん。


結局渋谷区の成人式に出ないで、一日中あたしの相手をせずに寝てたんだよね・・・。なんとか夜になったら復活してきたけど・・・。明日大学いけるんだろうか・・・・。もう心配かけないでほしいわよ!

自作小説の挿絵~幼くして帝になった良仁(ながひと)親王


良仁親王(幼少)
自作小説の最後のほうに出てくるキャラです。


名前:康仁帝一の宮良仁親王(ながひとしんのう)


父は狂気の帝、康仁帝。母は皇后(生まれたのは雅和帝大和女御時代)源彩子。


母彩子が大和女御として雅和帝の側室であった時に当時東宮であった康仁親王に乱暴されて懐妊してしまった親王。


母彩子は当初この宮を嫌い、抱こうともしなかったかわいそうな宮である。生後1年未満で東宮にたつ。


はじめは雅和帝七の宮として親王宣旨されたものの、康仁帝御世に康仁帝が彩子を我が物にしたいがために慣例を破り改めて一の宮として親王宣旨。


父康仁帝の譲位に伴い、4歳の時に即位する幼い帝です。後見は祖父の後二条院と醍醐源氏当主源将直。祖父が院政をし、形だけの帝となる。(成人後はきちんと政治を行いますが・・・。)


番外編「縁」では、無事元服し、元典薬寮頭、四位参議和気泰明の一の姫であり、宋国と倭国の混血児蘭姫(宋国王姫君と和気泰明の姫。遠縁の摂関家の養女となる)を妃に迎え、幸せに暮らすのです。


性格は後二条院に似て温厚。妹姫である和気小夜(本名:康仁帝三の姫宮、小夜子三品内親王)にとって優しい兄宮である。

うれしはずかし恋愛生活 東京編 (10)罪悪感ありのクリスマスイブ

 悩み悩んだ11月が過ぎて、街はもうクリスマス一色。


今年のクリスマス・・・雅和さんはちゃんと休みを取ってくれて、一緒に過ごす予定なんだ・・・。


あたしはあれから清原さんに会ってない・・・。清原さんはあたしにプロポーズしてくれたっけ・・・。あの時曖昧な返事しかしていなかった・・・。もちろんあの時は雅和さんと別れるつもりだったから・・・・。だから優しくしてくれる清原さんと一度だけ関係を持ってしまったんだ・・・。それも流産しちゃったけど子供まで出来て・・・。高1の誕生日の日、あたしに告白した清原さんの気持ちは本当だったんだね・・・。それを冗談だととらえてしまって・・・。相当ショックだっただろうな・・・。


最近パパは清原さんがおかしいって言うの・・・。仕事中もデスクに座って溜め息ばっかりついてるし、仕事の効率が悪いとかで、防衛部長に叱られてばっかり・・・。パパの前に来て何か話そうとするそうなんだけど、何も話さないまま部署に戻っていくらしいのよ・・・。きっとあたしのせいなんだって思ったの。


あたしと清原さんの関係を知らないパパは、気になって、あたしに様子を見てきなさいって言うのよ。 今日はパパから清原さんは非番だって聞いてたから、いつものように食事を冷凍して清原さんのいる官舎に行ったの。


「あ、綾乃さん・・・。」


清原さんは微笑んで、あたしを部屋に招きいれた。あたしは食事を渡して帰ろうとしたの。


「いつもありがとう・・・お茶でも飲んで行ってよ・・・。」


清原さんはあたしが持ってきた食事を冷凍庫に詰めて、あたしにお茶を入れてくれた。


「久しぶりだね、綾乃さん・・・。」

「う、うん・・・。」

「弐條さんとはどう?仲直りしたの?それとも・・・。」

「仲直りしたよ・・・。」

「よかった・・・。この前言ったプロポーズ、忘れてよ・・・。あとこの前はごめん・・・あんなことしちゃって・・・。」

「ううん・・・。あたしもどうにかしてた・・・。」


すると清原さんはあたしに何かを話そうとするんだけどやめちゃうの。


「何か言いたいことあるの?」

「ん?んん・・・。これはネットで流れている、あくまでも噂なんだけどね・・・。もしかして綾乃さん・・・・妊娠した?」

「え?」

「薬局で検査薬買ったとか、病院行ったとか・・・。」

「妊娠してないよ・・・・(今はね・・・。)」

「ならいいけど・・・。もし妊娠してたとしたら、俺が原因かもしれないって思ってたから・・・。」

「薬局は鎮痛剤かって、病院は・・・最近生理痛がひどいから・・・。悪いところがあれば今のうち治しておこうと思って・・・。だから噂は噂だよ・・・。清原さんは関係ないから・・・。」


清原さんはほっとした表情であたしを見てた。清原さんも清原さんなりに悩んでいたんだよね・・・。やっぱり本当のこと言えないよ・・・。清原さんの子供をちょっとの間でも妊娠してたなんて・・・。あたしは真実を言わないまま清原さんと別れたの・・・。


次の日から清原さんはいつもの清原さんに戻っていたってパパは言っていたの・・・。やっぱりあたしが原因だったんだね・・・。


やっぱりあたしは罪悪感があって、雅和さんと一緒にいるときも気持ちの安らぐ事がなかった。相変わらず雅和さんは優しくて、あたしを大事にしてくれるけど・・・。


クリスマスイブ、雅和さんは外は混むからってディナーは早くからホテルのケータリングを予約してくれた。ちゃんとシェフがついてコース料理をマンションのキッチンで作ってくれる。雅和さんは20歳になったから、ワイン。雅和さんって飲めるようになったんだね・・・。あたしはまだ未成年だから、水とジュースだけど・・・。雅和さんはすごくご機嫌で、あたしを見つめながら食事をする。その素敵な笑顔がさらにあたしを苦しめるの。


食事が終わって、シェフが帰っていくと雅和さんはあたしを抱き上げて寝室まで運んでくれて、そのまま・・・。雅和さんは酔っているのか、あれをせずに迫ってくるからあたしは雅和さんを止めたの・・・。


「やだ・・・雅和さん酔ってるよ・・・。今日は出来ないよ・・・。」


雅和タバコ
雅和さんは無理強いする人じゃないから、すぐにやめてくれたんだけど・・・。


キスだけして酔いを醒ますためにベランダに出たの・・・。

最近はじめたのかな・・・タバコなんか吸っちゃって・・・。

なんか最近雅和さんに知らないところが増えたのかな?


「雅和さん、あたし帰るね・・・。」

「じゃ、飲んでるから歩いて送るよ・・・。」


家の近所の有栖川宮記念公園前に着くと、雅和さんが言ったの。


「お父さん家にいるんだろ?酔った顔ではいけないよ。ちょっと公園で酔いを・・・。」


公園内は結構暗い・・・。なんとかベンチを見つけて、途中に買ったミネラルウォーターを一気飲みしていた。


「お酒飲むようになったんだね・・・。」

「うん・・・。付き合いがあるからしょうがないよ・・・。」

「タバコもはじめたの?」

「ん?んん・・・色々仕事上ストレスが・・・。」

「あたしどっちも知らなかったよ・・・。だんだん雅和さんがあたしを置いて大人になっていくような気がするの・・・。最近知らないこといっぱいだもん・・・。」

「別にいわなくったっていい事だってあるじゃないか・・・。綾乃だって最近なんか隠し事してる感じだし・・・。でも僕は綾乃に聞かないよ。綾乃が話したくなるまで・・・。」

「あたしタバコ吸う人嫌いだよ・・・。」


雅和さんは黙ってしまったの・・・。何で黙るんだろう・・・。ずっと雅和さんはすべてあたしに合わせてくれてたのかな・・・。酔っ払って普段見せない雅和さんが出たのかもしれない・・・。付き合って3年目・・・。3年目に何かあるって聞くけど本当かも・・・。ラブラブなのは相変わらずだけど、なんか以前とは違うのよね・・・。


雅和さんは立ち上がってあたしの手を引いた。


「さあもう帰ろう・・・。」


雅和さんはいつものようにあたしの手を引いて、あたしのマンションのまで歩いた。


「綾乃、最近よく清原さんの話をするけど・・・。」

「え?そ、そうかな・・・。」

「ああ・・・。最近特に多いよ。先月誤解された時も清原さんといたよね・・・。何かあるの?清原さんと・・・。」


雅和さんは気づいてる?


「別にないよ・・・。お兄ちゃんみたいな人・・・。いろいろ相談に乗ってもらってるから・・・。」

「ふうん・・・。もう会わないでくれる?」

「え?でもパパに頼まれて・・・。」

「もうあの人もいい歳だよ・・・。あの人は綾乃の事が好きだよ。見たらわかるから・・・。だから間違いが起こる前にもう会うのは辞めてくれないかな・・・。」


もう間違いが起きてるんですけど・・・。でも当たり前のことだよね・・・。婚約者のいるあたしが別の男性と会ってるんだもん。雅和さんにしたらいい気はしないのは確か・・・。だってあたしもこの前のように雅和さんが女の人と会ってたとき嫌だったもん。あたしはもう単独で会わないことに決めたの。


「ごめんね・・心配かけたようで・・・。」

「ん?いいよ・・・これですっきりしたから・・・。もうそろそろ結納の準備をしないとね・・・。年明けたらあっという間に春だよ。」

「そうだよね・・・。」


相変わらず雅和さんはとても優しい微笑であたしを見てくれた・・・。


「タバコのことだけど・・・綾乃のためにやめるよ。今からもう吸わない・・・。綾乃に嫌われたくないからね・・・。」


あの罪悪感は一生消えないだろうけど、あたしはこの人とずっと一緒にいようと決めたの。この人といれば、一時でもあの罪悪感を忘れられるような気がするから・・・。ホントに今日は決意のクリスマスイブだったな・・・。




自作小説の挿絵~実は親王 源博雅

また×5 自作小説のキャラ紹介です。源博雅といっても陰陽師に出てくる源博雅ではありません。ま、設定では実在する源博雅の末裔のおうちに生まれるんですが・・・。


名前:頭中将、源博雅(実は雅和帝と同腹の親王)

父は常康帝(宇治院)、母は雅和帝と同じ中務卿宮家の和子女王。


博雅の母は常康帝の子、博雅を身籠ったまま、醍醐源氏の右大将、源将直に嫁ぎます。もちろん帝は七の宮として親王宣旨をしようとしますが、和子女王が断ります。右大将の子として育った博雅。博雅の名は、右大将家の祖、雅楽で有名な源博雅から名づけます。


10歳のときに東宮侍従として童殿上します。その時に博雅は実は親王であることを兄である雅和帝から知らされます。雅和帝は弟宮として親王宣旨するか、それともこのまま右大将家の残るか選択させます。もちろん博雅は右大将家をとります。


東宮と、二歳年上の東宮の伯父でありながら、兄弟のように育ちます。もちろん東宮の側近としていろいろ活躍もします。


狂気の帝、康仁帝の側で最後まで見守り続けた博雅。最初から最後まで、康仁帝の良い理解者でもあり、味方でありました。もちろん康仁帝の退位の際は兄宮の意に従い、退位を支持します。このときだけ康仁帝を裏切ることになりました。

しかし、退位後はもちろん良き伯父として最後まで後宇治院に従います。

博雅幼少 東宮侍従のころ


結構裏方さんとしてうろちょろ出てきます。

自作小説の挿絵~心の広すぎる優しい帝、雅和帝(後二条院)

後二条院 また×4 自作小説の挿絵兼キャラ紹介を・・・。もう飽き飽きしましたか?


名前:常康帝(宇治院)二の宮雅和親王


一番最初の主人公、常康帝の第2子。母は常康帝の幼馴染の元中宮、中務卿宮和子女王。もともと中務卿宮家を継ぐために養育されていたが、兄宮雅孝親王の精神的な病により、三品親王中務卿宮からタナボタで東宮になった親王。


幼少期は中務卿宮家にて養育されていたが、祖父が亡くなって後宮で養育される。常康帝の姫宮達の遊び相手として女童として出仕していた右大将家の綾乃姫と出会い、初恋。元服時の副臥役に綾乃が選ばれ、婚約者に決まる。


中務卿宮として出仕し始めた雅和は綾乃と早く婚儀を挙げるために昼夜問わず仕事に精を出す。


出仕から数ヵ月後、東宮雅孝親王が原因不明の病にかかり、原因を追究する。これは雅和が生まれてすぐ、ある摂関家の女御のいたずらが、謀反ととられ、一家流罪になったときの怨念によるものとされる。何とか無事に解決したものの、兄宮は東宮を雅和に譲る。


東宮になったが、後ろ盾のないに等しい雅和は綾乃との婚約を白紙にされる。しかし父帝の配慮により、綾乃は源氏長者右大臣の養女とすることで東宮妃入内の宣旨を受ける。しかしそれは二番目の入内。一人目は摂関家である左大臣の姫。


東宮時代にもうけた子は2人。東宮女御藤原桜子姫に一人(生まれてすぐに母子共に死亡)、東宮女御源綾乃姫に一人(後の康仁帝)。


妃は綾乃のみと決めていたが、帝になる半年前、宇治にてある姫君に出会う。そして一晩限りの関係。その姫は摂関家堀川大納言の大姫で、即位後の初めての女御入内が決まっていた。名前は藤原鈴華。もちろん雅和も鈴華も2人が再会できるなど思ってはいない。そして婚儀の夜の御帳台のなかで雅和は藤壺女御が宇治の姫君鈴華であることにおどろく。この女御との間には二の姫宮、双子の三の宮、四の宮がいる。


27歳の時、最愛の皇后、綾乃が病により崩御。悲しみのあまり、公務を疎かになるが、その年の豊明節会にて綾乃と瓜二つの舞姫と出会う。綾乃と遠縁の姫君大和守中姫源彩子である。はじめは入内に戸惑ったが、綾乃の父が彩子を養女に迎え、何とか入内。寵愛を受ける。この大和女御の間に五の姫宮、六の宮がいる。しかしこの彩子には想い人がいる。いろいろあり、東宮に譲位後彩子を、彩子の想い人和気泰明に譲る。


譲位後、異例ではあるが、後二条院の立場でありながら、中務卿宮として出仕する。


息子であり、狂気の帝康仁に怒り、自ら退位を迫る。もちろんこれは悩んだ末のこと。康仁帝退位後、孫の良仁帝の後見として院政を行う。


性格的には温厚で誰にでも気を使う優しい親王である。


うれしはずかし恋愛生活 東京編 (9)誤解から始まる過ち

高校生活最後の十月祭が終わり、あたしは大学の学部を決めた。文学部にする!よく調べてみると、1年は日吉にいるけど、2年からは三田なのよ・・・。まあいろんな学部がある中で一番適してたからかな・・・。先生もあたしは文学部のほうが向いているって言ってくれたから、文学部に決めたの。2年生になったら雅和さんと通学できるかもしれないし・・・。(うふふ・・・。)まあ入試がないのが救いよね・・・。日ごろの成績がすべてだから・・・。勉強なら雅和さんが見てくれるし・・・。


あたしは雅和さんのバイトがないとき必ず雅和さんのマンションに行って、夕飯作ることにしているの。マンションには同居人の響貴さんがいるでしょ。4人分作って、半分家に持って帰ることにしてるの。


今日は前から雅和さんが食べたいって言ってたものの買い物をいつものスーパーで済ませて雅和さんのマンションに行ったの。今日はパパは夜いらないって言ってたし、響貴さんも用事でいないって聞いたから、今日は時間をかけて愛する雅和さんのために料理を作ろうと思ったの。


だから今日は家に寄らずに雅和さんのマンションに直行!もちろん制服のままで・・・。勉強も見てもらおうと思ってたし・・・。 学校も今日は早く終わって、まだ雅和さんは大学から帰っていないと思ったから、合鍵で玄関を開けて入ったの。


そしたら何で????何で見たことのない女物の靴があるのよ!もしかして浮気????あたしは気が動転して、キッチンに買い物した荷物を置いて部屋の中に入っていったのよ!


「誰かいるの?!」


あたしはいろんな部屋を開けてみて最後に雅和さんの勉強部屋へ!そしたら知らない女がいるわけよ。あっちもいきなりドアが開いたからびっくりしたんでしょうね・・・。きょとんとしてたわよ!


「あんた誰よ!」

「もしかして妹さん?」


あたしはムカッとしたわよ。いくら高校の制服着ているからって、妹なわけないでしょう!男兄弟ばかりなのに!


「あたしは妹なんかじゃないわよ!あたしのこと知らないの?!」


そういってあたしは雅和さんの勉強机にあるこの前撮ったツーショットの写真を見せたのよ。あれよあれ。夏の夕食会のときにとってもらった着物の写真!あと雅和さんの高校の卒業式の写真よ!


「あたしはこれ!」


丁度その時、雅和さんが帰ってきたのよね!


「ごめん、ごめん!」


雅和さんは驚いてたわよ。


「何なのこの女!ねえ雅和さん!」

「え?大学の・・・。」

「信じらんない!あたし以外の女の子を上がらせるなんて!浮気してたんでしょ!」

「ちょっと誤解だよ!この子はね・・・。」

「もう聞きたくないもん!帰る!」


あたしはカバンも忘れてマンションを飛び出したの。そして家に返って自分の部屋で泣いたの。あたしひとりって言ったのに!泣いて泣いて目がウサギのようになってしまったの。


もう婚約解消よ!まだ結納だってしてないんだから!婚約なんて解消してやるわよ!


あたしは家を出て気がつくと清原さんの部屋の前に立ってたのよね・・・。やっぱりマニア事件で親身になってくれたからかな・・・。


あたしは玄関のベルを押してみた。まだ早いかなって思ったんだけど、非番だったのか、清原さんがいたの。


「あれ?綾乃さん・・・どうしたの?泣いてるけど???ここでは官舎の目があるからまあ中に入って・・・。」




清原&綾乃
 あたしは泣きながら清原さんの部屋に入って無意識のうちに清原さんの胸に飛び込んでいたの。 清原さんは真っ赤な顔をしてあたしを離すと、部屋を片付けだした。


「ごめん!汚い部屋だけど上がって・・・。」

「うん・・・。」


あたしはリビングのソファーに座ってもまだ泣いてた。清原さんはあたしに紅茶を出してくれて、言ったの。


「どうかしたの?お父さんに怒られたの?それとも?」

「雅和さんがね、弐條さんがね、浮気したの・・・。だからあたし・・・。」

「ほんと?そんなことないよ。弐條さんに限って・・・。」

「だって見ちゃったんだもん・・・。弐條さんのマンションに女の人がいたの。」

「同居人の彼女とかじゃないの?」

「ううん。だって弐條さんの部屋にいたんだもん。」

「そっか・・・。」


清原さんは泣いてるあたしを抱きしめたの。清原さんの鼓動はすごく早くて・・・。


「綾乃さん・・・。俺さ・・・。」

「何?」


すると清原さんはあたしを押し倒してキスしてきたのよ!なんでだろあたし・・・清原さんを拒否しなかった・・・。


「あれだけ綾乃さんを守るって約束したんだろ!それならもう別れたらいい!そんなやつと一緒にならなくていいよ。おれはまだ綾乃さんが好きなんだ!俺が綾乃さんを守ってやるから!あんなやつ諦めてこの俺と結婚してくれ!」


あたしは清原さんを受け入れてしまった・・・。清原さんはあのあととても優しくしてくれて、車で家まで送ってくれたの・・・。そのあとすぐに誤解だってわかったんだけど・・・。


雅和さんは家の前であたしのカバンを持って待っててくれて、清原さんとあたしに鉢合わせ。清原さんは雅和さんに掴みかかって一発殴ったの。


「お前、綾乃さんの気持ちわかっててやってるのか!浮気なんかやって!」

「誤解です。まあ誤解されるようなことをした僕も悪いけど・・・。あの子は僕の同級生で、同じセミナーの子。二人で組んで研究テーマを決めてレポートを書いていたんだよ。ちゃんとあの子は彼氏もいるし、何にもない。なんとも思ってないよ!」

「嘘つくな!」

「嘘じゃない!綾乃、僕は君に嘘ついたことあった?」


もちろん雅和さんはあたしに嘘なんてついたことなかった。やっぱり誤解だったんだ・・・。


でもあたし、清原さんと・・・・。


清原さんは怒って帰っていったけど・・・・。清原さんと浮気しちゃった私はどうなるの? まあ雅和さんとは仲直りしたんだけど、問題が起きちゃったのよ。


半月経って来るはずのものが来ない!


あたしは急いで薬局いってこっそり検査薬を買ってきたのよ・・・。すると・・・陽性・・・。雅和さんはいつも避妊していてくれたから出来るはずない・・・。ということはあの時勢いで清原さんとしてしまったとき?うそ!あの時だけだもん避妊してなかったのは・・・。どうしよう!雅和さんにも相談できないし、パパなんかに言ったら殺されるわ!清原さんは?でも迷惑かけたくないし・・・。もう一人で処分するしかないかな・・・。でも未成年だから・・・。でもひとまず病院へ行ったの。


「妊娠してますね・・・。」


先生のこの一言がショックでたまらなかった。


「相手の人は知ってるの?あなたまだ高校生でしょ。ご両親は?」

「知りません・・・。」


先生は超音波の写真を見せながらいったの。


「ここに袋があるでしょ。これは赤ちゃんが入っている袋なの。でもあなたの週数では赤ちゃんの姿が見えてもいいんだけど・・・。見えないのよね・・・・。もしかして隠れて見えないのかもしれないから、来週もう一度来てください。」

「はい・・・。」


ああ妊娠確定的・・・。やっぱり清原さんに相談するしかないのかな・・・。おなかの子のパパは清原さんだし・・・。赤ちゃんには悪いけどあたし清原さんの子を産めない!来週もう一度病院行ってから決めよう・・・。


すると明日検診って言う日にすごくおなかが痛くなって、学校休んで横になってたの・・・・。すると出血!いつもの生理よりすごく多い・・・。あたしは慌てて病院に駆け込んだ。


「流産ですね・・・。見た感じすべて流れたんでしょう・・・。痛み止めを出しますから、三日後にまた来てください。もし赤ちゃんが残っているようでしたら手術が必要ですが、週数が少なかったのでたぶん大丈夫でしょう。出血が治まるまでお風呂は控えてください。」


流産か・・・・。嬉しいような悲しいような・・・複雑な気持ち。安静支持も出たので次の診察まで休んでじっとしていた。パパは心配してたけど、流産したって言えないでしょ・・・。それも雅和さんの子じゃなくって清原さんの子だもん・・・。あたしすごい罪悪感・・・。誰もこのこと知らないから、あたしだけの秘密にするけど・・・・。


なんとか手術はなく、出血も止まって、通常の生活が出来るようになった。パパも雅和さんも生理のひどいやつと思ってくれてるよう・・・。産婦人科行った事がばれても、生理痛でいったって言うしかないな・・・。


もうこれは一生の秘密ごと!大変な過ち・・・。




綾乃ちゃん、いくら勢いとはいえ・・・。やってくれましたね・・・。今までずっと綾乃を慕い続けていた清原君。たった1回の関係がこのようなことになっているなんて知りません。もちろん雅和も、これから先ずっと綾乃と清原の一度きりの関係は知らないままです。もちろん綾乃が清原の子を少しの間だけでも身籠ったことなんて・・・。でも流産したことは将来雅和と綾乃が結婚して子供が出来た時にばれちゃいますが・・・・。それは後ほど・・・まだまだ先の話ですから・・・。

自作小説の挿絵~康仁帝(後宇治院)三の姫宮 小夜子内親王

小夜自作小説「縁~えにし」の主人公 和気小夜(本名:康仁帝(後宇治院)三の姫宮 小夜子内親王)です。


実は狂気の帝、康仁帝と皇后源彩子(後の典薬頭和気泰明の正室)の三の姫宮。この子を身籠ったまま彩子は典薬寮頭であり幼馴染の想い人和気泰明と再婚します。もちろん和気泰明は康仁帝の子を身籠っていることを承知の上の再婚。


8年間小夜は和気泰明の第3子、和気小夜として何不自由なく育ちます。


父である、正四位下参議、和気泰明のお使いで薬草を持って宇治のある邸に行きます。


そこで後宇治院に出会います。この後宇治院は、小夜の母、彩子の前の旦那様。いろいろ悪い噂ばかりのこの院・・・。でもいろいろ話しているうちに世間の噂とは違う何かを感じます。


この院のお妃様にご招待されたときに小夜は庭で迷い、院に助けられます。気を失った小夜はそのまま院の寝所で朝を迎えます。


「きゃ~~~~~~~~~~!!!!!」


小夜はこの院に何かされたのではないかと勘違いし、院を力まかせにひっぱたきます。もちろんこれは誤解・・・。ただ院は自分の姫宮ではないかと思い、可愛さのあまり、小夜の寝顔を見ながら眠っただけなのでした。


院は小夜を下賀茂の和気邸に送ることにします。そのついでに絶縁状態の父院、後二条院に面会を求めようとするも、断られる。後二条院と仲のよい小夜は2人の橋渡しをします。もちろん小夜のおかげで2人は仲直りをします。


小夜は異父兄妹(本当は実の兄妹)の良仁帝の元服式になぜか招待されます。そして告げられた誕生の秘密。小夜はなんとなく感づいていたからか驚かなかったのです。


元服式の前に小夜の内親王院宣。これをもって和気小夜から先帝三の姫宮 小夜子三品内親王となりました。もちろんこれは小夜の将来のためを思ってのこと。和気小夜のままでは決していい家には嫁げません。内親王であれば、きっといい縁談があるからです。


問題はどちらで縁談がまとまるまで過ごすかということ。小夜は和気邸のある下賀茂も、実の父後宇治院の住む宇治も大好き。結局交互に行き交うことにしたのです。


和気邸では子供らしい生活をし、一方宇治では姫君らしい教養を学ぶという二重生活。決して小夜は嫌な事ではなく、充実した生活を過ごします。


4年後、ついに裳着。その年のある節会で出会った、父後宇治院の従兄弟で、小夜より三歳年上の従五位下侍従であり四品親王輝仁と婚約し、幸せな生活をするのです。

うれしはずかし恋愛生活 東京編 (8)夏のお食事会と総裁選挙

 僕の父さんには奥さんがいないから、ファーストレディーもいない。だからたまに首脳会談のあとの夕食会が非公式だったり、家族同伴の場合、僕も呼ばれる事がある。


夏休みに入り、僕はいつものように父さんや官房長官について公務の雑用をする。それも朝から晩まで平日毎日。もちろんバイト代はいい。それなりに責任のある仕事をしているからね・・・。私設秘書くらいの給料はもらっていると思う。勉強半分、仕事半分って感じかな・・・。この夏休みは外遊はないものの、もうすぐ党総裁任期切れの父さんは公務と共に総裁選挙の準備をする必要があり、全国の党大会を回っている。もちろん雑用係として僕も同行するので必然的に綾乃に会えない。


 今日は官邸にてマレーシアの首相と会談があった。ご家族での訪日であり、この首相は若い頃日本に留学経験があって、父さんと一時高校時代に一緒に学んだ経緯がある。プライベートでは結構仲がよく家族同士の交流がある。会談中も父さんは非公式に僕の婚約のことを聞かれて一度綾乃に会ってみたいといわれたみたいで、明日の家族同伴の夕食会では綾乃もはじめて出席することになったんだ。


 会談後の非公式の昼食会で、僕は首相と昼食を同席したんだけど、本当に気さくでいい人。昼食後、父さんに呼び止められて、明日の綾乃の出席について報告を受けた。すぐに綾乃と綾乃のお父さんに報告。もちろんすごくびっくりしてたよ。橘さんがやはり綾乃の服はドレスじゃなくて、着物にしましょうということで、綾乃と共に紹介された呉服屋さんに足を運ぶ。 なんとかすぐ着れる状態のものが見つかって、色々他のものの色あわせとかで結構時間がかかって、もうくたくた。


 次の日、昼過ぎから永田町近くのホテルに綾乃ははいり、美容院で髪の毛をアップにしてもらったり、着物を着付けてもらったり、化粧をされたりでもう大変そうだった。 仕上がったのは夕方5時。ずっと美容院や着付け室の前で待っていた僕は、仕上がった綾乃を見て驚いたよ。


「弐條さま、なんとも可愛らしいお姿ですわね・・・。」


品のいい振袖を着た綾乃は少し照れながら、僕を見つめた。ホントに綾乃は着物が似合う。やはり僕の婚約者として間違っていなかったなってしみじみ思ったよ。


「雅和さん、おかしいかな?」

「いや、綾乃とてもきれいだよ。よく似合ってる。」


僕も夕食会用のスーツを着込んでいたので、父さんの私設秘書海藤さんが綾乃と一緒に写真を撮ってくれた。なんか結納のようだな・・・。結婚式は神前式でもいいかな・・・。


 とりあえず公邸に入った僕らは久しぶりに兄貴に会う。兄貴も招待を受けたようだ。兄貴は今年大学を卒業して文科省のキャリア。なんだかんだ言って政治関係に勤めるんだもんな。兄貴と綾乃は初顔合わせだから、きちんと兄貴の綾乃を紹介したよ。


「むっちゃきれいな子だよな!お前がうらやましいよ。いつ結婚するんだ?」

「結納もまだだよ。あと4,5年先かな・・・。僕が一人前にならないとね・・・。どう?文科省は・・・。」

「毎日残業残業・・・。キャリアといっても今は雑用ばっかでさ、今日は事情を説明しては早退できたけど・・・。もうくたくたさ・・・・。俺は文科省の頂点を目指すんだ!お前は親父のように首相かな?」

「まだまだそんなんじゃないよ。」


時間が来て官邸に移動する。やっぱり報道関係は僕と綾乃に注目している。一応報道陣の前で、記念撮影はしたよ。父さんを中央にして、左側に兄貴、右には僕と綾乃が並ぶ。もちろん夕食会の会場でも・・・。


乾杯して会食が始まった。僕は意外な綾乃を見たんだよ。綾乃はマレーシア首相夫人とご子息にはさまれて座っていたんだけど、なんとマレー語を話していた。夫人はすごくご機嫌で会食しながら綾乃と色々話す。ご子息も綾乃の着物姿を気に入って、色々楽しそうに話している。こんな綾乃を見て官房長官をはじめ様々な内閣官僚達が驚いているんだよね。英語が堪能なのは知っているけど・・・マレー語まで・・・・。僕はマレー語はできないから、首相と英語で色々しゃべってたんだ。首相は綾乃との出会いとか、家柄とか色々聞いてこられたんだけど・・・。もう恥ずかしくって、綾乃ほど和やかに話せなかったよ。


 なんとか無事に会食が終わって、父さんたちと首相一家をお見送りしたんだ。父さんも綾乃のことをすごく褒めていた。


「綾乃、何であんなにマレー語が堪能なの?」

「え?言っていなかった?あたしイギリスの前は2年ほどマレーシアにいたんだよ。小学中学の頃だけど・・・。その前は韓国。なんかとても懐かしくって色々話し込んでしまって、あまりご飯食べる事が出来なかった・・・。着物もきついし・・・。おなか空いた・・・。」

「じゃあ韓国語も?」

「まあ生活できるくらいは話せるかな・・・専門的なものは無理だけど・・・。」


バイリンガルなんだね・・・綾乃って・・・・。さすが帰国子女。でもこんなところでおなか空いたって・・・。そういうところが綾乃らしいけどね・・・。


綾乃は公邸の一室で着物を着替えて、きちんと着物をたたんでいた。今時ここまで出来る子はいないって、公邸にいる初老のお手伝いさんが感心してたよ。アップにした髪型はちょうど着替えのワンピースにもあっていて、そのままにして帰ることにしたんだよ。これからもこのような機会があるかもしれないから、公邸に振袖一式を預けて僕らは僕の車に乗って帰路につく。


「雅和さん・・・。やっぱりおなか空いたよ・・・。」

「綾乃、もう8時過ぎたから今食べたら太るぞ。」

「おなか空いたもん。かえっても買い物してないからないし・・・。」

「じゃ六本木なら・・・。軽く食事しようか・・・。」


僕は六本木ヒルズの駐車場に止めて、ヒルズのイタメシを食べる。僕はおなか空いていないからコーヒーを飲みながらちょっと綾乃の食事をとったりしてたけど・・・。ホント綾乃って華奢なのによく食べる。デザートもいい?ってきくし・・・。綾乃は満足そうな顔をして、店を出て、せっかくだからって、森タワーの東京シテイビューに行くことにした。


やっぱり平日でももう9時過ぎると恋人同士ばかり・・・。自宅は車ですぐそこだから、あの辺かなこの辺かなって言いながら夜景を眺めてた。


「雅和さん、もうすぐ誕生日だね・・・。その日って東京にいる?」

「北海道なんだよね・・・。」

「いいな・・・北海道か・・・きっと涼しいんだろうな・・・。」

「かもね・・・。また埋め合わせするし・・・。」


綾乃は寂しそうな顔をするからつい僕は綾乃にキスをしたんだ。


「きっとだよ。ゆっくり休みを取ってね・・・。一昨年も去年も一緒じゃなかったし・・・。」

「わかってるよ・・・。ごめん今年は特に忙しいから・・・。」

「そうだね、総裁選があるんだもんね・・・。」


10時を過ぎてたから、テレビ朝日前の大型ビジョンには丁度生放送でニュース番組をしていた。丁度夕食会のことをやっていて、ここにいる僕らが映っていて、すごく変な感じがして二人で笑ったよ。夕食会は慣れていると思ったけれど、客観的に見ると、やっぱり緊張しているのか、顔が固かった。でも綾乃はホントに普段どおりで、朗らかなお嬢さんに映っていたし、印象はすごくよかった。まだ綾乃は高校生だから詳しく紹介はされていなかったけれど・・・。


次の日から僕はまた忙しい生活に戻る。綾乃は受験生だけど、そのまま慶応に上がるそうだから、できるだけ成績が下がらないようにがんばるのみ。どの学部に行くかはまだ決めかねているようだけど・・・。まああの学校のほぼ100%は上がれる。ただし希望の学部に行くにはそれなりに勉強しないとね・・・。綾乃はいつも中の上をキープしてるし、まあなんとかなるんじゃないかな・・・。


平日はだいたい東京にいるんだけど、週末は全国行脚。今週末は地元神戸へ戻る。響貴も今帰省中だから、仕事が終わり次第会うんだ。綾乃も行くことになっている。だって父さんの地元だろ、後援会の人たちもたくさん来るから、党大会のあとの後援会の懇親会できちんと報告しないといけないんだ。それが礼儀。将来的には僕が後継者になるんだから・・・。きちんと名前と顔を売っておかないと・・・。綾乃だって将来僕の妻として選挙の際には地元を走り回ってもらわないといけないし・・・。まあ綾乃は世渡り上手ってところがあるから任せる事が出来るかな・・・。


週末金曜日の夜、僕は綾乃と一緒に神戸に帰ってきた。綾乃は芦屋のおじいちゃんにきちんと挨拶をして、神戸のおばあちゃんのうちに行った。おじいちゃんは本当に綾乃のことを気に入ってしまって今からでも一緒になるといいのにとも言う。未だ後援会の中では後援会長の土御門さんをはじめ、何人か僕らのことのいい顔をしていない人達がいると聞いた。おじいちゃんがその人たちに対して説得してくれるといってくれたから助かったけれど・・・。土御門さんはこの僕と一人娘の桜ちゃんを結婚させようとしていたようだけど、実を言うとあまり桜ちゃんは好きじゃない・・・。なんていうのかな・・・。綾乃と違って高飛車なところとか、まあ色々あるんだけど・・・。うんざりする事が多いんだ。あの子といると息が詰まる。その点綾乃は側にいてくれるだけで安らぐし、仕事で疲れていても疲れが吹っ飛んでしまう。色々気がつくし、教養もあって、朗らかなところがいい。ちょっとドンくさいところがあるけどね・・・。まあそれが可愛いところなんだけど・・・。まあいう癒し系かな・・・。


きっと今頃、神戸のおうちでおばあちゃんや妹さんとゆっくりしているのかもしれないし、お兄さんもいるかも?明日の夜挨拶に行かないとね・・・。


土曜日朝から僕はバタバタしている。ホテルの宴会場で午後から行われる党大会の資料作りのお手伝い。手作業だから、大変なんだ・・・。参加人数も多いしね・・・。それが終わったら僕が担当の受付の最終チェック。名簿に名札、資料と渡す順番を確認。まあ数人で受付するから、なんとかなりそうだけど・・・。早めのお昼を済ませてまた準備・・・。今度は新神戸まで父さんを出迎えに行く。その移動中に綾乃に電話して懇親会の時間と場所を再確認したんだ。まあ綾乃の家から会場まで歩いていける距離だからいいんだけど・・・。 受付開始前、僕は名札や無線の確認をして受付に立つ。僕は参加者に資料や名札などを渡す役だから渡し忘れがないかの確認で精一杯だった。もちろんスタッフの中で一番若いから、途中色々無線で呼び出される。資料がなくなれば、控え室に行って重い箱をかかえて受付に戻る。党大会が始まればこっちのもので、やっと休憩・・・。配られたペットボトルのお茶を受付の椅子に座って口に含みながら、余った資料を眺めながら、時間をつぶす。これが終われば懇親会・・・。別室に移って、立食形式で食事が出る。これが一番疲れそうだ・・・。疲れたからって疲れた顔は見せることは出来ないし、ああ、その前に服を着替えないと・・・・。これが毎週続くんだもんな・・・。休みがほしい・・・。そんなことをうだうだ考えながらあっという間にお開きが近づいた頃、無線で指令が入る。今度は記念品を控え室までとりに行って、受付前に並べる。そして出てきた人から順に一人一人に記念品が入った紙袋を渡していく。報道陣もちらほらいる。渡し終わると受付の後片付け・・・。


手が空くと今度は待ち構えたかのようにこの僕にいろいろな人がやってきて、挨拶をしながら名刺交換。僕は党名と名前、党住所のみが書かれた名刺を一応渡されてそれを名刺交換の際に使う。まだ僕は未成年だし有権者じゃないけど・・・。こうやって地盤を築いていくんだと、父さんに言われてきたから丁寧に対応をしたんだ。もちろん名刺交換した人たちは満足そうに帰っていったけど・・・・。


懇親会のほうはスタッフ的なことはしなくていいから、控え室として借りているホテルの客室に入り、党大会でかいた汗を流して、懇親会用のスーツに着替えた。するとベルが鳴る。ドアを開けると綾乃が立っていた。


「橘さんにここって聞いたの・・・。」


やっぱりワンピース姿の綾乃も可愛い。素顔も可愛いけど、うっすら化粧をした綾乃はもっといい。綾乃を部屋に招きいれると綾乃を抱きしめる。


「やだ・・・服にファンデつくよ・・・。」

「いいよ、綾乃のだから・・・。」

「あ、スーツちゃんと掛けとかないとだめじゃん・・・。」


綾乃はベッドの上に脱ぎ散らかした僕の服をきちんとかけて、胸についている党のバッチをはずして今きているスーツにつけてくれた。


「綾乃ありがとう・・・。」


僕は綾乃に御礼のキスをした。


「せっかくのリップが取れちゃう・・・。」

「また塗ればいいじゃん。」

「でも・・・。」


やっぱり疲れているのかな・・・。綾乃にキスしたら疲れが飛ぶかなって思って、再びキスをする。この後、懇親会さえなければこのまま・・・って事があるけど、時間が来てしまった・・・。綾乃は化粧を直し髪や服の乱れがないか鏡を見て確かめる。


「さあいこう・・・。」


僕は綾乃の手を引いて、懇親会の行われる宴会場に向かう。まあおじいちゃんやみんなのおかげで、綾乃のお披露目は上手くいったよ。綾乃も朗らかで人当たりがいいから、後援会の人たちは結構気に入ってくれたみたい・・・。おじいちゃんは綾乃のことを政治家の妻として申し分ないと太鼓判を押してくれた。


 9月にはいると総裁選は激化する。なんだかんだ言っても国民の支持率の高い父さんだから、2期目当確のようなもんだよ。まあこの僕も遊説先でいろんな人にあって挨拶したり頭下げたりしたし・・・。この夏休みの間に何千枚も名刺を配ったんだ。もちろん地方周りが終わった今は大量に休みをもらっている。あとは父さんの結果を見るだけなんだけど・・・・。 党員による総裁投票が行われる前日、関東各所の街頭にて候補者演説が行われるんだけど、この日だけまたスタッフとして動員されたんだ。


開始前にもみくちゃにされながらチラシを配ったり、人員整理したり、交通整理の警官たちと色々相談したりするのが僕の役目。こういう不特定多数の場所では僕はめがねをかける。一種の変装に近いと思うけど、実はコンタクトが落ちた時があって、困ったからこういうところではめがねに変えるんだ。


「弐條!ロープもってこい!」

「はい!」


僕は先輩スタッフに言われてロープをたくさん持ってくる。その端を持って人ごみの整理をしながら人ごみを区切っていく。文句言うおばちゃんや、おっちゃんに謝りながら・・・。まあこういう人ごみにもまれるのも度胸がついていいんだって聞いたよ。候補者が到着して演説用の車の上に立つと、演説が始まる。始まると同時にロープを持ちながら、しゃがみ、終わるのを待つ。終わると同時にロープを回収して整理する。最後にごみ拾い・・・。この繰り返しで3回ほど行われるんだから、すべて終わった頃にはもうくたくたで、立っていられない・・・・。ああ、もうちょっと体力つけなきゃ・・・。


最後の演説場所はホント下町っぽいところで、後片付けを終えると見ず知らずのおばあちゃんがこの僕にすごく冷えた缶入りのお茶をくれたんだ。


「若いのに大変だね・・・。今日は暑いのに・・・。さ、飲みな。」

「あ、ありがとうございます!」


僕は微笑みながらおばあちゃんに礼を言うと、ガードレールに腰掛けてお茶を飲む。


「お兄ちゃんは学生さんかい?」

「はい。」

「えらいね・・・。私としてはもう一期弐條さんにやってほしいよ。弐條さんはね、お父さんが総理大臣の頃、総理大臣の息子さんだったのにお兄ちゃんみたいに一生懸命裏方さんをやっていたよ。いろんな人に頭下げて、怒鳴られると誤って、かわいそうなくらいだったよ。国会議員になってもそれは変わらず、何事にも一生懸命で、派閥にとらわれないで、自分の意志を貫く。今もそうだろ?だから最年少で総理大臣になったんだと思うよ私は・・・。」

「父、いえ、総理はそんな人だったんですか?」

「ホントに庶民的で、いい人。お父さんもそうだったよ。将来は政治家になるの?お兄ちゃんは。」

「はい、父さんのような政治家になりたいです・・・・。」


おばあちゃんは僕のIDカードを見て驚いていたよ。


「お兄ちゃんは弐條さんの息子さんかい。きっといい政治家になるよ。いいお嬢さんと将来結婚するそうだね。がんばっていい政治家になりな。お父さんのような国民のために一生懸命な政治家にね・・・。」


僕ははじめてこんな言葉を聞いて、なんだか嬉しくなった。父さんも若い頃僕と同じようなことしていたんだ・・・。僕はおばあちゃんにお茶のお礼を丁寧に言って、名刺を渡しておいた。父さんはこういう仕事も若い頃に経験したからこそ、国民の側に立った政治ができるんだろうな・・・。


もちろん父さんは総裁選挙を大差で快勝。もう1期総裁をすることになった。これまで色々父さんを助けて仕事をしてきたけれど、今回ほど、政治家になりたいと思ったことはなかった。きっと父さんのような政治家になってやるんだ・・・。




全然恋愛的な話じゃありませんね^^;政治的な話だわ・・・。

気にせずに流してください・・・。

ただ今回の話は雅和君が政治家を本格的に目指すエピソードなので・・・。政治家目指してレッツゴーです^^;