うれしはずかし恋愛生活 東京編 (10)罪悪感ありのクリスマスイブ
悩み悩んだ11月が過ぎて、街はもうクリスマス一色。
今年のクリスマス・・・雅和さんはちゃんと休みを取ってくれて、一緒に過ごす予定なんだ・・・。
あたしはあれから清原さんに会ってない・・・。清原さんはあたしにプロポーズしてくれたっけ・・・。あの時曖昧な返事しかしていなかった・・・。もちろんあの時は雅和さんと別れるつもりだったから・・・・。だから優しくしてくれる清原さんと一度だけ関係を持ってしまったんだ・・・。それも流産しちゃったけど子供まで出来て・・・。高1の誕生日の日、あたしに告白した清原さんの気持ちは本当だったんだね・・・。それを冗談だととらえてしまって・・・。相当ショックだっただろうな・・・。
最近パパは清原さんがおかしいって言うの・・・。仕事中もデスクに座って溜め息ばっかりついてるし、仕事の効率が悪いとかで、防衛部長に叱られてばっかり・・・。パパの前に来て何か話そうとするそうなんだけど、何も話さないまま部署に戻っていくらしいのよ・・・。きっとあたしのせいなんだって思ったの。
あたしと清原さんの関係を知らないパパは、気になって、あたしに様子を見てきなさいって言うのよ。 今日はパパから清原さんは非番だって聞いてたから、いつものように食事を冷凍して清原さんのいる官舎に行ったの。
「あ、綾乃さん・・・。」
清原さんは微笑んで、あたしを部屋に招きいれた。あたしは食事を渡して帰ろうとしたの。
「いつもありがとう・・・お茶でも飲んで行ってよ・・・。」
清原さんはあたしが持ってきた食事を冷凍庫に詰めて、あたしにお茶を入れてくれた。
「久しぶりだね、綾乃さん・・・。」
「う、うん・・・。」
「弐條さんとはどう?仲直りしたの?それとも・・・。」
「仲直りしたよ・・・。」
「よかった・・・。この前言ったプロポーズ、忘れてよ・・・。あとこの前はごめん・・・あんなことしちゃって・・・。」
「ううん・・・。あたしもどうにかしてた・・・。」
すると清原さんはあたしに何かを話そうとするんだけどやめちゃうの。
「何か言いたいことあるの?」
「ん?んん・・・。これはネットで流れている、あくまでも噂なんだけどね・・・。もしかして綾乃さん・・・・妊娠した?」
「え?」
「薬局で検査薬買ったとか、病院行ったとか・・・。」
「妊娠してないよ・・・・(今はね・・・。)」
「ならいいけど・・・。もし妊娠してたとしたら、俺が原因かもしれないって思ってたから・・・。」
「薬局は鎮痛剤かって、病院は・・・最近生理痛がひどいから・・・。悪いところがあれば今のうち治しておこうと思って・・・。だから噂は噂だよ・・・。清原さんは関係ないから・・・。」
清原さんはほっとした表情であたしを見てた。清原さんも清原さんなりに悩んでいたんだよね・・・。やっぱり本当のこと言えないよ・・・。清原さんの子供をちょっとの間でも妊娠してたなんて・・・。あたしは真実を言わないまま清原さんと別れたの・・・。
次の日から清原さんはいつもの清原さんに戻っていたってパパは言っていたの・・・。やっぱりあたしが原因だったんだね・・・。
やっぱりあたしは罪悪感があって、雅和さんと一緒にいるときも気持ちの安らぐ事がなかった。相変わらず雅和さんは優しくて、あたしを大事にしてくれるけど・・・。
クリスマスイブ、雅和さんは外は混むからってディナーは早くからホテルのケータリングを予約してくれた。ちゃんとシェフがついてコース料理をマンションのキッチンで作ってくれる。雅和さんは20歳になったから、ワイン。雅和さんって飲めるようになったんだね・・・。あたしはまだ未成年だから、水とジュースだけど・・・。雅和さんはすごくご機嫌で、あたしを見つめながら食事をする。その素敵な笑顔がさらにあたしを苦しめるの。
食事が終わって、シェフが帰っていくと雅和さんはあたしを抱き上げて寝室まで運んでくれて、そのまま・・・。雅和さんは酔っているのか、あれをせずに迫ってくるからあたしは雅和さんを止めたの・・・。
「やだ・・・雅和さん酔ってるよ・・・。今日は出来ないよ・・・。」
雅和さんは無理強いする人じゃないから、すぐにやめてくれたんだけど・・・。
キスだけして酔いを醒ますためにベランダに出たの・・・。
最近はじめたのかな・・・タバコなんか吸っちゃって・・・。
なんか最近雅和さんに知らないところが増えたのかな?
「雅和さん、あたし帰るね・・・。」
「じゃ、飲んでるから歩いて送るよ・・・。」
家の近所の有栖川宮記念公園前に着くと、雅和さんが言ったの。
「お父さん家にいるんだろ?酔った顔ではいけないよ。ちょっと公園で酔いを・・・。」
公園内は結構暗い・・・。なんとかベンチを見つけて、途中に買ったミネラルウォーターを一気飲みしていた。
「お酒飲むようになったんだね・・・。」
「うん・・・。付き合いがあるからしょうがないよ・・・。」
「タバコもはじめたの?」
「ん?んん・・・色々仕事上ストレスが・・・。」
「あたしどっちも知らなかったよ・・・。だんだん雅和さんがあたしを置いて大人になっていくような気がするの・・・。最近知らないこといっぱいだもん・・・。」
「別にいわなくったっていい事だってあるじゃないか・・・。綾乃だって最近なんか隠し事してる感じだし・・・。でも僕は綾乃に聞かないよ。綾乃が話したくなるまで・・・。」
「あたしタバコ吸う人嫌いだよ・・・。」
雅和さんは黙ってしまったの・・・。何で黙るんだろう・・・。ずっと雅和さんはすべてあたしに合わせてくれてたのかな・・・。酔っ払って普段見せない雅和さんが出たのかもしれない・・・。付き合って3年目・・・。3年目に何かあるって聞くけど本当かも・・・。ラブラブなのは相変わらずだけど、なんか以前とは違うのよね・・・。
雅和さんは立ち上がってあたしの手を引いた。
「さあもう帰ろう・・・。」
雅和さんはいつものようにあたしの手を引いて、あたしのマンションのまで歩いた。
「綾乃、最近よく清原さんの話をするけど・・・。」
「え?そ、そうかな・・・。」
「ああ・・・。最近特に多いよ。先月誤解された時も清原さんといたよね・・・。何かあるの?清原さんと・・・。」
雅和さんは気づいてる?
「別にないよ・・・。お兄ちゃんみたいな人・・・。いろいろ相談に乗ってもらってるから・・・。」
「ふうん・・・。もう会わないでくれる?」
「え?でもパパに頼まれて・・・。」
「もうあの人もいい歳だよ・・・。あの人は綾乃の事が好きだよ。見たらわかるから・・・。だから間違いが起こる前にもう会うのは辞めてくれないかな・・・。」
もう間違いが起きてるんですけど・・・。でも当たり前のことだよね・・・。婚約者のいるあたしが別の男性と会ってるんだもん。雅和さんにしたらいい気はしないのは確か・・・。だってあたしもこの前のように雅和さんが女の人と会ってたとき嫌だったもん。あたしはもう単独で会わないことに決めたの。
「ごめんね・・心配かけたようで・・・。」
「ん?いいよ・・・これですっきりしたから・・・。もうそろそろ結納の準備をしないとね・・・。年明けたらあっという間に春だよ。」
「そうだよね・・・。」
相変わらず雅和さんはとても優しい微笑であたしを見てくれた・・・。
「タバコのことだけど・・・綾乃のためにやめるよ。今からもう吸わない・・・。綾乃に嫌われたくないからね・・・。」
あの罪悪感は一生消えないだろうけど、あたしはこの人とずっと一緒にいようと決めたの。この人といれば、一時でもあの罪悪感を忘れられるような気がするから・・・。ホントに今日は決意のクリスマスイブだったな・・・。