今日の一曲!saya「The Girls Are Alright!」【'18冬A・切ない系編】 | A Flood of Music

今日の一曲!saya「The Girls Are Alright!」【'18冬A・切ない系編】

 【追記:2021.1.5】 本記事は「今日の一曲!」【テーマ:2018年のアニソンを振り返る】の第九弾「冬アニメ・切ない系」編です。【追記ここまで】


 本記事では2018年の冬アニメ(1月~3月)の主題歌の中から、「アニソン(切ない系)」に分類される楽曲をまとめて紹介します。本企画の詳細については、この記事の冒頭部を参照。

 なお、『カードキャプターさくら クリアカード編』OP曲・坂本真綾「CLEAR」(2018)については、過去に単独記事をアップしているのでそちらをご覧ください。ブログテーマではアーティスト名を優先させていますが、敢えて分類すれば「切ない系」となるのでここにリンクしておきます。





 メインで取り上げる「今日の一曲!」は、『宇宙よりも遠い場所』OP曲・saya「The Girls Are Alright!」(2018)です。ボーカルのsayaさんについては、38番名義のほうが通りが良いかもしれません。

 楽曲制作を手掛けたのはクラムボンのミトさんで、彼に関しては振り返り記事の第三弾および第七弾にも言及があります。アニソン界隈への楽曲提供も多いクリエイターなので、必然的に紹介数も多くなる道理です。



* オフィシャルにアップされている音源が見つからないため、代わりにアニメのPVを埋め込んでおきます。

 本曲でいちばん評価しているポイントは「サビの地味さ」です。これは勿論誉め言葉で、今回の振り返りシリーズでは第六弾で取り上げた「We can!! HUGっと!プリキュア」(2018)や、第七弾の中に過去記事で出した「ne! ne! ne!」(2018)に於いても、僕は似たような感想を記しています。特に前者は以降で再び引き合いに出す場面があるため、先に内容を把握しておいたほうがわかりやすいかもしれません。

 ともかく、詳しくはそれぞれのリンク先を「地味」で検索していただければと思いますが、要するに「サビまでの積み重ね方からは予想外に落ち着いた旋律が登場することのギャップを絶賛したい」という論旨なので、この点が伝わっていれば大丈夫です。


 ドラムカウントから始まるイントロは、ストリングスの流麗さが象徴しているように、なかなかにハイポテンシャルで派手な幕開けだと感じます。続くAメロは、前奏のサウンドスケープに比べれば落ち着いた歌い出しではありますが、主旋律の起点部を抑えるのは曲作りの方法論として自然だとの認識なので(サビ始まり等の例外はありますが)、Aが控えめであることに特筆性はないでしょう。そしてBメロに入ると、旋律と編曲が共に勢い付き、イントロで覚えたワクワク感も回帰してきて、"Let's go!"の掛け声を合図に、「どんなに盛り上がるサビが待ち受けているのだろう」と、期待値はMaxになります。

 …と、このように積み重ねてきたリスナー心からすると、この流れを受ける肝心のサビは、率直に述べれば「予想していたものよりは地味だな」というものでした。メロディラインは短いフレーズに分解しやすいシンプルなもので、ゆえにキャッチーではありますが、お利口さんが過ぎるかなとも思います。特に"ジャンプして"の部分は、「歌詞と旋律のベクトルが違くない?」と意外性に驚いたほどです。また、saya(38番)さんの他のワークスを知らないので、彼女の声質や歌い方に関する特徴的な言及は出来ませんが、少なくとも本曲については、敢えて声量を絞っている(そのような歌唱指示があった)のかなと推測したくなります。


 ここまでの記述だけだと「ディスじゃねーか!」と誤解されそうですが、前掲の通り僕はそもそも「サビに地味なメロディやアレンジを充てること自体に好意的」なので、地味さを説けば説くほどに褒めているのだということがまず前提です。更に言えば、この場合の「地味」には「初めて聴いた時にはそう感じた」という背景があり、幾度も聴いた後の最終判断としては「しっかりとした味がある良いアウトプット」にまで昇華されています。言葉遊びのようで恐縮ですが、「地の味の良さを気に入っている」という意味での語彙選択だと捉えていただければ幸いです。

 その上で、この「The Girls Are Alright!」には特有の「サビを地味にした意図」を感じるので、以降には本曲ならではの美点を掲載します。ただ、そのうちのひとつは先に曲名を出してリンクした「We can!!~」のレビューと重複する内容であるため、そこから表現を引用して簡単に済ませますと、サビの主旋律が地味なのは裏の「ストリングスを聴かせるため」で、ここまではアレンジの一部に過ぎなかった弦が「オブリガートにまで昇格し、ボーカルラインに対して強い寄り添いを見せているところが素敵」だと、このように解釈しました。つまりは編曲上の工夫に対する賛辞で、これを成立させるためには主旋律を地味にする必要があったのだろうという理解です。


 もうひとつは作品内容と絡めた解釈で、ここからは実質アニメ語りとなります。長くなったので文字サイズを小さくしてなるべく威圧感を減らしましたが、これでもかなり省略した(特に本編中の台詞の引用を)結果の文章であるため、主張の説得性には欠けるかもしれません。

 『よりもい』の主人公・玉木マリは、第一話の時点では何者でもありません。未だ高校二年生なのでそれも普通である…と言えば聞こえはいいかもしれませんが、自身の欲求の大きさ対して不意にかかる心のブレーキのせいで、何も成し得ていない現状を苦としているキャラクターです。敢えてぼかして説明しますが、そんな彼女が共通の目標を見据えた仲間を得て、ひとつの大事を成すまでがアニメでは描かれています。いくつかの偶然や幸運が重なった結果とはいえ、その大事は確かに珍しい経験であり、成し得たことを誇っていいものでした。そのために皆努力をしましたし、種々の障害を乗り越える過程も全て含めて、彼女が望んだ青春の一幕と言えるでしょう。

 しかしこれは文字通り「一幕」に過ぎず、事を終えた彼女たちは再び日常へと戻っていきます。勿論「後の日常」のほうが、あらゆる面で鮮やかに映るであろうことは想像に難くありませんが、今後の人生をどう歩んでいくかはニュートラルな意味合いで不明瞭です。劇的な経験を受けて、自己の精神性やポイント・オブ・ビューが開けること自体は素晴らしいものですが、過去から続く自分自身の連続性が潰えるわけではないので、「不変として残る自分らしさ」は依然存在すると考えます。むしろ、キマリ達の旅はそれを発見・獲得するためのものだったともいえ、別れ際の台詞「だって、もう私たちは私たちだもん」は、この気付きにフォーカスしたものではないでしょうか。

 この分析は、たとえば単なる部活モノや専門学校が舞台の作品に対しても成立しそうではありますが、部活動でも本業に関係することでもなく(報瀬だけは特殊ですが)、その関連分野に進まない限りは活かしにくい経験・知識が主体であることに加え、実際に携わっている人の数は全体から見ればごく少数ということも考慮すると、題材選びからして上手いなと思います。経験の限定性が大きい(多くの人が経験する類のものとは異なる青春を過ごせた)からこそ、寄り道の美学が宿ると言いましょうか、その人のパーソナリティに影響を与えるほどのポジティブな経験であっても、人生の本筋とはもしかしたら関係ないかもしれないという心地好い曖昧さが、まさに「青春」であると個人的には納得の描き方です。



 ここからが漸く「The Girls Are Alright!」への言及で、僕は上掲の「不変性」に係る点に「サビを地味にした意図」を見出しました。大事を終えても依然若者であることには変わらない少女たちが等身大の頑張りを見せた物語…の音楽的な解釈として、サビメロに感じられる地味なファクターはこれらのジュブナイルな感性(若者・少女・等身大の)を、アレンジやBメロに見られるハイポテンシャルな要素はシンプルに頑張り(物語上のサクセス)を、それぞれ意識したのかなと考えていて、壮大一辺倒になっていないところを高く評価しています。この絶妙な配剤のおかげで、設定上のというかフィクションに於けるある程度の都合の良さを、現実的に感動出来る物語として着地させた作品の内容に、相応しい主題歌たりえていたのではないでしょうか。

 …そう、ここまであれこれと文章を捏ね繰り回しましたが、つまるところ『よりもい』は良いアニメだったなぁということが言いたいのです。ご多分に洩れず、第12話の未読メールが増えていくシーンでは、こちらも文字通り堰を切ったように涙をあふれさせてしまいました。また、大オチ或いはエピローグもしくはサイドストーリーとも言える、ラストのめぐみの動かし方も実に鮮やかで、「彼女との関係性だけは少し心残りだったな」と、視聴後の評価をひとまず確定させようとしていたタイミングでのまさかのぶっこみにより、安堵と感心と笑いと涙が同時に寄せて来るという複雑な感情の揺さぶられ方をしたので、これを見事と言わなければ嘘でしょう。





 続いて紹介するのは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』ED曲・茅原実里の「みちしるべ」(2018)です。彼女のシングルでも聴くことは出来ますが、上にリンクしたボーカルアルバム『Song letters』にもフル尺で収録されているので、作品のファンにはこちらをおすすめします。OP曲も挿入歌もCMでお馴染みのイメージソングも多言語で収められおり、お得な一枚です。

 作編曲者はElements Gardenの菊田大介さんで、今回の振り返りでは第五弾の記事にもお名前を出しています。作詞は茅原さん自身によるもので、作品を通して綴られるメッセージ性を綺麗に切り取った、まさに手紙のような温かみを感じさせる内容が感動的です。




 先に『よりもい』で涙したことを書きましたが、実は2018年の冬アニメで最も泣かされたのは『ヴァイオレット~』の第10話でした。お話としてはそこまで斬新ではないというか、割と読める展開ではあった気はしますが、演出の巧さを含めた泣きの京アニの本領発揮によって、目頭を押さえる暇もなく感泣してしまった次第です。

 その主要因は第10話のプロット自体(母子に纏わるストーリー)によるところが大きいと思いますが、最後にヴァイオレットの号泣を描くことで、そこに至るまでの彼女の変遷(ここまでの全エピソードを踏まえたもの)が一気に畳み掛けて来るので、連載として観た場合にも積み重ねの鮮やかさが光る良シナリオだったと言えます。


 作品内容の掘り下げから始めましたが、これはその主題歌である本曲の展開もまた、この手の「積み重ねが美しい」ものであったことを意識してです。アカペラで幕を開け、1番の伴奏はピアノのみ、後の間奏でオケが色鮮やかになり、2番からは徐々にビートが顕となってリズミカルに展開していき、大サビ("授けられた翼を"~)で視点が空に舞い、ラスサビで完全なるピークを迎える。この次第に情報量が増えていく楽想を、ヴァイオレットの成長に重ねてしまうのは無理からぬことではないでしょうか。

 この楽想が映えるのには、主旋律の強さが寄与している面も大きいと主張します。感覚的な形容となって恐縮ですが、とりわけサビの旋律の流麗さは、繰り返されることでその良さが真に際立つ技巧的なものだという印象です。歌詞の良い意味での「正しさ」も相俟って、ともすればメロディにも「優等生らしい味気無さ」に支配されてしまいそうな危うさを覚えたのですが、アレンジも加味した総合的なアウトプットとしては、「正しく歩んだ先に光が射すような旋律」と呼べるほどに進化しているため、メロのポテンシャルを絶賛したく思います。





 お次は『たくのみ。』OP曲・内田真礼「aventure bleu」(2018)をレビュー。作詞のmeg rock(日向めぐみ)さんについてはこの記事で、作編曲のRasmus Faberさんに関してはこの記事で、それぞれ過去に言及したことがあります。また、後にレビューする予定の『はるかなレシーブ』のサントラも彼によるワークスです。

 後者は特にリンク先を参照していただきたいのですが、彼がこれまでに手掛けたナンバーでは、坂本真綾の「幸せについて私が知っている5つの方法」(2015)と、『マクロスΔ』の関連楽曲「Hear The Universe」(2016)および「チェンジ!!!!!」(2018)が特にお気に入りで、メロディ展開の豊かさに付随するセンスが群を抜いていると高く買っています。




 この観点で言えば「aventure bleu」は比較的大人しめの印象ではありますが、センチメンタルなボーカルラインにスピーディーな編曲を合わせているところは、ややもすると『Δ』の曲っぽさがある気がしました。内田さんと『たくのみ。』のファンの方には怒られるでしょうが、フレイア(鈴木みのり)の持ち歌にありそうな気がしませんか?別に他意はなく、そのくらい楽曲製作者の顔が窺えるナンバーだという感想です。

 内田さんの声の可愛さというか聴き易さが冴えていて、歌声同様にキュートでキャッチーなメロディにのせて、"ゆらり ふわり 身をまかせて/こころのままに"と濁音の無い歌詞が歌い上げられるサビ冒頭は、混然一体の魅力が宿っていて素晴らしいと言えます。これなら「可愛い系」に分類したほうがいいのではとも迷いましたが、宅飲みを主軸とする大人な作品の主題歌である以上、楽曲から滲んで来るほのかな苦みを取り立てて「切ない系」とする判断を下しました。

 ここで急に個人的なエピソードトークを付しますが、コンビニへ寄った時にたまたま店内で本曲が流れていて、それをBGMにしながらお酒の棚を何とはなしに眺めていたら、なかなかの没入感を味わうことが出来て、そこから俄に好きになったという経緯があります。アニメで聴いていた段階では正直そこまで印象に残っていなかったのですが、この偶然を機にきちんと向き合ってみたところ、聴けば聴くほどに心が軽やかになる良曲だと思えたので、この効能は実にお酒のようだと勝手に納得しました。





 同作ED曲・ましのみ「ストイックにデトックス」(2018)も、ポップセンスとユーモアと切なさとが良い塩梅で溶け込んでいて、作品内容ひいてはお疲れの現代人にぴったりの楽曲だと評せます。"お家に帰れば/変な格好のストレッチもできるし"には、普段やりもしないのに共感を覚えましたし、"努力が報われる子供の世界/飛び出したなら 生きるだけで精一杯"や、"大人になったら/自分しか自分を甘やかせれない"などの対ソーシャルな歌詞も、じんわりと心に沁み込んで来て癒しです。

 アーティスト単位で気に入る可能性を感じたのでアルバムごと手を出してみたのですが、『ぺっとぼとリテラシー』はメジャーデビュー作としては全体的にクオリティが高いと思いました。来年発売予定の『ぺっとぼとレセプション』にも期待します。




 ここからは「中身の濃いレビューには発展させられそうにない曲」をまとめて紹介します。こう書くとネガティブに聞こえるかもしれませんが、スペースを作ってまで紹介しようと思うくらいにはお気に入りの楽曲群であることに留意してください。「発展させられそうにない」のは、僕の技量不足&時間不足によるものです。

 なお、本記事は言及対象が多過ぎ&文章が長過ぎるせいで、字数制限への対策をしなければならなくなったため、以降では容量を食うAmazonリンクの表示を一部省略します。視覚的な仕切りとして使用しているだけなのでレビュー上は問題ありませんが、見づらくなってしまってすみません。



 『ゆるキャン△』ED曲・ 佐々木恵梨の「ふゆびより」(2018)。キャンプ・アウトドアを扱った作品の;それも冬アニメの主題歌として「これ以上の正解はない」と断言したいレベルで、内容にも季節にもマッチしていたあたたかくてナチュラルなナンバーです。特にギターから伝わる空気感と、リズム隊の心地好さは必聴に値します。

 立山秋航さんによるサントラも素敵でした。氏の音楽は『けものフレンズ』で一躍有名になり、当ブログでも過去にレビューを行っていますが、その中で「自然を感じさせるような雄大な楽曲のほうが素敵」と述べたように、この路線に秀でた劇伴作家であるとのアーティスト評が僕の中で固まりつつあります。個人的なフェイバリット・トラックのトップ3は、「ソロキャン△のすすめ」「ゆるキャン△のテーマ」「キャンプ場のテーマ~陣馬形山~」です。




 『恋は雨上がりのように』OP曲・CHiCO with HoneyWorks「ノスタルジックレインフォール」(2018)。実は過去に曲名だけは出していて、チコハニについて初めて取り上げた記事の中では、シンプルに「良かった」と記しています。

 サウンド的には明るさも感じられますし、ガーリーな可愛さもしっかりとあるのですが、アニメの内容としてもハニワ制作のイラストムービーとしても描かれているのは「年の差恋愛」なので、その切なさやもどかしさにフォーカスして本記事へと分類しました。とりわけCメロへ移行した際の翳り方が情緒纏綿で好みです。





 『スロウスタート』ED曲・三月のパンタシア「風の声を聴きながら」(2018)。振り返りの第七弾では過去記事へとリンクさせる形で同作のOP曲を「可愛い系」として紹介しましたが、同時に「切ない系」であることにも言及していました。

 これと近い感想は本曲に対しても抱いていて、サウンドにもメロディラインにも確かな愛らしさがありながら、何処か儚げなビジョンが浮かんで来るのは、スロウスターター達が頑張る作品の健気さが反映されているからだと分析します。




 『三ツ星カラーズ』OP曲・カラーズ☆スラッシュ<結衣(CV.高田憂希)、さっちゃん(CV.高野麻里佳)、琴葉(CV.日岡なつみ)>による「カラーズぱわーにおまかせろ!」(2018)。こちらも同作のED曲を第七弾の記事にてレビューしていて、その中で『OP曲は意外にも「切ない系」であった』と書いたように、作品内容からすると攻めた解釈だと感じました。

 作品語りは上掲記事内で行ったので省略しますが、"どーしたら どーしたら みんなを守れるかな?"という立ち上がりの一節を子供なりの「真剣」だと捉えて、楽しいだけではない現実的な要素をうっすらと忍ばせた結果、切ない主旋律もアリになったのではと推測します。上野が舞台であることも、リアルな面を補強する設定ですしね。

 コール&レスポンスで歌い手が交代する可愛らしいボーカルアレンジでもって、"ピン・ピン・ピンチは突然にくるよ/だから! だから? アレだ! 備え?/毎日ゆだんできないよ/チャンスと似てるよね どっちだろ"と含蓄のあることを歌われると、良い意味でドキっとさせられます。この観点では、"ココロの平和遠いと ココロの声が聞こえた"が最も印象的で、このフレーズだけでも戦隊モノやヒーローモノの主題歌として成立しうるパワーがあるなと、素直に感動を覚えました。流石畑亜貴さんだと絶賛します。





 『ダーリン・イン・ザ・フランキス』第一部ED曲・XX:me「トリカゴ」(2018)。振り返りの第八弾ではOP曲を紹介しましたが、そちらは順当に作品内容を解釈した仕上がりであったのに対し、本曲はEDの映像も含めてifストーリー然としていると言いましょうか、メタファーとして現実世界に当て嵌めたアウトプットである点が面白いと思いました。

 楽曲制作を担ったのは杉山勝彦さん。AKB48グループおよび坂道シリーズのナンバーも多く手掛けている方だけあって、僕も本曲を聴いた時の第一の感想は「大所帯アイドルソングっぽいな」でした。誉め言葉なので悪意はないのですが、"夢を魅せたくせに 叶えれる才能(チカラ)を/与えてくれないなんて 辛くなるだけだよ"という、ある意味ではみっともなくも映る他力本願を格好良く歌い上げているところも、僕が系列グループの楽曲に抱いているイメージや偏見と合致していたので、アイロニックに受け取った次第です。

 勿論、歌詞の全体を見ればこのように単純化出来る内容ではないとわかっていますし、作中のコドモ達の生い立ちや境遇や存在理由を考慮すると、みっともないも何も「事実を描いているだけ」だとフォローはしておきます。





 『刀使ノ巫女』前期ED曲・衛藤可奈美(CV:本渡 楓)、十条姫和(CV:大西沙織)、柳瀬舞衣(CV:和氣あず未)、糸見沙耶香(CV:木野日菜)、益子 薫(CV:松田利冴)、古波蔵エレン(CV:鈴木絵理)による「心のメモリア」(2018)。振り返りの第八弾ではOP曲を紹介しましたが、そちらは刀使としての側面を取り立てた格好良い内容であったのに対し、こちらは年頃の少女らしい日常感にフォーカスした曲名通りのメモリアルなナンバーです。

 歌い手が多いので短いスパンでメインボーカルが変わりますが、それがガールズトークらしさの演出につながっていて上手いと都合好く解釈しています。また、和の作風からは意外ですが、"Let's hang out/I wanna talk with you"が地味に好きな歌詞で、日本語詞の"次はどこで遊ぼうか/ノープランでも君と一緒にいると/退屈が楽しい"が、しっかりと'hang out'のニュアンスに対応していて細かいです。




 『刻刻』ED曲・ぼくのりりっくのぼうよみ「朝焼けと熱帯魚」(2017)。第八弾で紹介した同作のOP曲と同じく、アニメの放送前に音源がリリースされていたパターンです。当ブログでは嘗てサカナクションの記事にてぼくりりにふれたことはありますが、きちんと向き合う前に辞職(引退)を宣言してしまったので、自分のアンテナの鈍りを嘆きます。

 アーティスト像が独り歩きすることが苦痛だったようなので、あまり込み入ったレビューを書くのは控えますが(そもそも詳しくありませんが)、本曲のチルなサウンドは、緊迫感に満ちたストーリー内容からのクールダウンの役割を十二分に果たしていました。




 『ミイラの飼い方』ED曲・イケてるハーツ「ロゼッタ・ストーン」(2018)。アニメは実は観ていないのですが(そもそも視聴候補に入れていなかった)、CMで聴いて良いと思って音源にだけは手を出していたので紹介します。

 ツボだったのはサビメロに宿るセンチメンタルなキャッチーさです。実にアイドルソングらしくて、僕の好きなタイプの志倉千代丸ワークスでした。ただ、志倉さんの作曲に対しては個人的且つ僭越な嗜好があって、それは去年の振り返りでも言及しましたが、本曲では"シェキ!シェキ!"~と"誰でも大好きしちゃダメ"~のパートが、上掲記事内で言うところの「楽曲の骨子に対する、最終的なアウトプットの圧が強過ぎる」に該当するので、そこだけは申し訳ありませんがやや苦手です。

 これで記事を終えると感じが悪いので余談を書きますと、普段から観ているテレ朝土曜深夜の夏目アナ枠番組『chouchou』で、「アイドル」がテーマの回(2018.11.11)のゲストが志倉さんだったのですが、そこでアイドルが卒業した後のことまでもを考えた育成論を展開なさっていて、その真摯さに心打たれたことは補足しておきます。




 以上、【'18冬アニメ・アニソン(切ない系)編】でした。まさかの本文字数制限で焦りましたが、Amazonリンクを省略すれば大丈夫でしたね。今回は音楽レビューよりも、アニメに対する文章を考えるほうに時間がかかってしまいました。