今日の一曲!立花 響(CV:悠木 碧)「エンドレス☆サマータイム」【'18・シンフォギア編】 | A Flood of Music

今日の一曲!立花 響(CV:悠木 碧)「エンドレス☆サマータイム」【'18・シンフォギア編】

 【追記:2021.1.5】 本記事は「今日の一曲!」【テーマ:2018年のアニソンを振り返る】の第五弾『戦姫絶唱シンフォギア』編です。【追記ここまで】



 今年はアニメの放送がなかったので、関連CDの発売は多くありませんでした。というか唯一のリリースがこの『戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED キャラクターソングアルバム 1』(2018)で、アプリ向けのオリジナル楽曲を収録したディスクとなります。BD/DVDの特典盤(サウンドトラック)を除けば、シリーズ初のアルバム形態ですね。

 第4期『AXZ』の円盤の5巻と6巻は今年の発売なので、それらの特典曲も言及の対象にしようと思えば出来ますが、中途半端になってしまうため、本記事では上掲のキャラソン集のレビューに注力します。




 「今日の一曲!」としてメインで取り上げるのは、立花 響(CV:悠木 碧)の「エンドレス☆サマータイム」です。本作ではいちばんのお気に入りナンバーで、アプリ内のイベント「ヴァルキリーズ・エンドレス・サマー」にて実装されました。

 作詞作曲共に上松範康さんが手掛けた主人公のキャラソンだけあって、全体的にクオリティは安定していると評せます。しかし、僕が本曲を好む最たる理由は「ギターの表現力」にあるので、プレイヤーの渡嘉敷維さんおよび編曲者の岩橋星実さんの功労をとりわけ絶賛したいです。


 曲名からも察せる通り、本曲はテーマからして"Kira×2,Shining"な感じで、歌詞も夏真っ盛り、メロディも文字通り弾けるようなポップさを内包していて、非常にわかりやすいアウトプットとなっています。

 歌詞内容的にはオフの楽曲、しかもシーズンは夏であるため、作品を象徴する'熱'い名曲の数々とは異なり、'暑'さに重きを置いたフレッシュなイメージが強くなることは充分に理解可能です。ただ、これだけでは面白みに欠けるというか、夏にフォーカスした至って普通のキャラソンだな(=『シンフォギア』でなくとも成立するよな)といった感想が最初は優勢でした。


 この「普通」を破るのが、先述した「ギターの表現力」であると主張します。ギターは様々なシチュエーションに馴染むことの出来る楽器ですし、夏のサウンドには定番と言っていいものでもあるので、その存在自体を特筆したいわけではありません。言わんとしているのは、「ギターが奏でる旋律によってボーカルラインを立てる構成が素晴らしい」ということです。

 サビ後のリフのキャッチーさが顕著ですが、サビとAメロの間をこのメロディアスなギターが取り持つことで、連続性の妙が際立っているんですよね。感想として「普通」が出てきたことにも関わる点ですが、サビの主旋律だけを取り立てると正直地味だと思います。しかし、後に続くリフまでを含めてひとつの大きなメロディだと考えると、補完による美が窺えて非常にしっくりきました。

 Bメロ裏のメリハリのあるバッキングと、ゆっくり左右にパンしながら絶妙な距離感を演出しているギターも、ボーカルラインに生じた隙間を巧く埋めていて、これまた相互補完的で格好良いです。これらの要素を総合して、「ギターの表現力」と形容しました。間奏のギラギラしたソロも素敵ですし、アウトロの余韻も味わい深く、つくづくギターサウンドが似合うとまとめます。


 ここからは妄想逞しい解釈を披露しますが、ここまでに示したような「一方が他方を立てる」、或いは双方向で見て「相互補完とする」スタイルには、響と未来の関係性の如き尊さがあると感じました。それは「ひびみく」だけではなく「きりしら」や「かなつば」でも当て嵌まるのでは?とセルフツッコミをしておきますが、「より(百合)夫婦らしい支え合い」を重視した次第です。

 歌詞を考慮に入れると更に'アツ'くて、"そう「大好き」は/永愛だって/証明して君と未来―あす―に/全力生きよう"に、"夏の花火を/二人で見上げ/いつか来る大人へのロード/一緒に生きよう"は、もはやプロポーズですよね。メモリアの「2人で見上げる花火」をバックに流せば、より一層の尊さを噛み締められ、「ここにカ・ディンギルを建てよう」となること必至です。笑




 ここからは他のアルバム収録曲を数曲ピックアップして、雑多に振り返るセクションです。


 まずは話の流れ的に都合がいい、小日向未来(CV:井口裕香)の「永愛プロミス」から。同曲はイベント「翳り裂く閃光」で実装され、未来が傍に居ない並行世界の響が登場するifストーリーが印象的でした。歌詞に"例えどの世界の 違うキミに出会ったとしても"とあるのは、こういった事情を背景にしているからです。

 未来の代表曲「歪鏡・シェンショウジン」(2013)もそうでしたが、ワブリーなサウンドが顔を覗かせているところや、疾走感よりも焦燥感が勝るスピーディーなビートメイキングは、未来の「愛の重さ」を象徴しているようで好みの編曲です。シンセリフも音自体はクリスタル系で綺麗なのに、何処か仄暗さを感じさせてゾクゾクします。"陽だまる為の太陽―ヒカリ―/未来は負けはしない"に、"正義を握り締め 立つ花をいつも見てきたから"と来て、極め付きは"この愛を嘗めないで…!"。流石としか言いようがありません。

 別の方向から音を解釈すれば「サイバー系」とも形容出来ますが、未来のギア・神獣鏡の外観にヘッドマウントディスプレイが採用されていることからも推察可能な「近未来感」から着想を得たアレンジであるなら、ネーミング的にも巧くて納得です。菊田大介さんの高いアレンジ力に感服します。




 続いては、マリア・カデンツァヴナ・イブ(CV:日笠陽子)の「裸になって…夏」を紹介。こちらはエンドレスの付かない「ヴァルキリーズ・サマー」での実装曲。アルバムの中では2番目に好みのナンバーで、奇しくも夏の楽曲が個人的なワンツーとなりました。

 マリアだって羽目を外したいよねということで、こちらも「エンドレス☆サマータイム」と同様、夏らしいポップな仕上がりを見せています。ギターが取り入れらている点でも同じですが、主な使用は間奏のソロ、後はフィルイン的な挿入が耳に残るぐらいで、全体的には電子制御の向きが強いサウンドです。それに由来するキラキラ感がひたすらに眩しくて素敵。

 "ハートに着飾ってる/洋服を脱ぎ捨てて/夏より 輝いて/裸の自分…生きてゆきたい!"や、"もっと裸になるわ/もっと強くなる為/夏だわ「わたし」の/グッバイ脱ぎきれなかった自分"などと力強く歌えるのは、外見的にも内面的にもマリアがぴったりだと思います。




 続いてはそんなマリアの妹、セレナ・カデンツァヴナ・イブ(CV:堀江由衣)の「此の今を生きて」をレビュー。イベント「イノセント・シスター」にて、同じくセレナの楽曲「誰かのためのヒカリ」と共に実装されました。アルバムには両曲とも収録されていますが、より好みだったのは前者です。

 基準世界に於けるセレナの設定上、こちらも並行世界でのお話でしたが、存命の奏者はセレナだけという厳しい世界線であったため、タイトルの「此の今を生きて」も、歌い出しの"命が燃やされ尽きて/灰になるまで/諦めたくない"も、重い説得力を伴って響いてきます。

 "此の「今」を生き尽くしたい/儚き一瞬だから/命は可憐に燃えて"という歌詞にも表れていますが、この「儚さ」を取り立てているからか、旋律には「和」の趣が宿っており、それがキャラクター的には意外と言えるセレナに馴染んでいる点も高評価です。




 最後は時節柄の楽曲として、暁 切歌(CV:茅野愛衣)の「サンタが街にやってくる」をチョイス。これはカバーで、クリスマスソングとして有名な「Santa Claus Is Comin' to Town」(1934)を原曲として、神戸孝夫による訳詞で広く知られている日本語バージョンを、更に切歌仕様にアレンジしたものです。

 実は去年の振り返り記事でも同曲には軽く言及していて、そこに記したように『「デス」の使い方が鮮やかで好み』という感想に尽きます。もう少し実際の発声に近く書けば「デース♪」となりますが、要所要所に挿入されるそれらがひたすらに可愛いです。

 アプリでは去年のクリスマスイベ「暁のサンタクロース」にて実装され、現在復刻開催もなされています。




 以上、『戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED キャラクターソングアルバム 1』から、その半分にあたる5曲に言及しました。来年にはいよいよ第5期『XV』が放送される予定で、三ヶ月延期になったとは言え依然楽しみです。

 去年のこの記事では『AXZ』を指して「シリーズ内では微妙な気がします」と書いてしまいましたが、これは謝罪と共に撤回させてください。アプリに『AXZ』の本編が実装されて物語を振り返れたことと、関連イベの「アルケミック・オーダー」をプレイしたことで、錬金術師陣営の面々をより魅力的に感じられるようになり、ストーリーの熱さも再認識出来て、僕の中での評価が変わりました。