本論文は、卵巣予備能が高い女性におけるPPOS法 vs. アンタゴニスト法の妊娠成績に関するランダム化試験です。
Fertil Steril 2024; 121: 937(中国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.01.027
Fertil Steril 2024; 121: 961(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.04.004
要約:2020〜2021年に胞状卵胞数(AFC)15個以上の43歳未満の女性784名を対象に、PPOS法(392名)とアンタゴニスト法(392名)にランダムに分け、初回胚移植の妊娠成績を前方視的に検討しました。PPOS法は卵巣刺激開始からトリガー日までMPA10mgあるいはデュファストン20mgを連日服用し、アンタゴニスト法は卵巣刺激の6日目からトリガー日までガニレスト0.25mgを連日皮下注射しました。PPOS法の2名で早発LHサージを認めましたが、アンタゴニスト法では1人も認めませんでした。また、両群ともに採取前に排卵はありませんでした。初回凍結胚移植 による出産率は下記の通りで、全ての項目に有意差を認めませんでした。
ITT解析 PPOS アンタゴニスト オッズ比(95%信頼区間)
臨床妊娠率 42.3%(166/392) 38.3%(150/392) 1.11(0.93〜1.31)
流産率 9.6%(16/166) 13.3%(20/150) 0.72(0.39〜1.34)
出産率 37.5%(147/392) 32.7%(128/392) 1.15(0.95〜1.39)
PPT解析 PPOS アンタゴニスト オッズ比(95%信頼区間)
臨床妊娠率 50.3%(166/330) 45.9%(150/327) 1.10(0.94〜1.29)
流産率 9.6%(16/166) 13.3%(20/150) 0.72(0.39〜1.34)
出産率 44.5%(147/330) 39.1%(128/327) 1.14(0.95–1.36)
解説:近年PPOS法が広く行われるようになり、全胚凍結が推奨されるような卵巣予備能が高い女性(高AMH、高AFC)に広く実施されています。これまでの研究の多くは非ランダム化試験であり、ランダム化試験が急務でした。本論文は、このような背景の元に行われた研究であり、AFC15個以上の女性ではPPOS法とアンタゴニスト法の初回胚移植の妊娠成績に有意差がないことを示しています。
コメントでは、PPOS法は、安価、経口投与、広く入手可能なことから、ART治療の簡素化につながる可能性があるとしながらも、安全性と有効性を明らかにするにはさらなる研究が必要であるとしています。
下記の記事を参照してください。
2023.6.3「MPAによる排卵抑制」
2024.5.19「☆PPOS法 vs. アンタゴニスト法:PGT-A成績」
2024.3.30「アンタゴニスト法 vs. PPOS法」
2024.2.9「☆卵胞期 vs. 黄体期スタート:ランダム化試験」
2023.2.21「☆癌患者さんにおけるランダムスタート法と通常法の違い」
2023.1.7「☆黄体期開始と卵胞期開始で正常胚率は同じ」
2022.11.7「黄体フィードバック(PPOS)法 vs. アンタゴニスト法:妊娠成績」
2021.10.3「黄体フィードバック法(PPOS):MPA編」
2020.12.5「☆黄体期スタートと卵胞期スタートの結果は同じ」
2020.9.23「☆早発P増加は正常胚率とは無関係」
2020.7.28「黄体フィードバック法での正常胚率は変わらない」
2019.10.5「黄体ホルモンによる排卵抑制は刺激途中からで良い」
2018.7.30「黄体ホルモン含有IUDの採卵への影響は」
2018.2.20「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その5」
2017.12.7「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その4」
2017.12.6「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その3」
2017.12.5「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その2」
2017.12.4「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その1」
2016.8.18「ランダムスタート法の有用性は?」
2014.12.4「刺激周期の開始時期による比較(day 2 vs. day 15)」
2014.3.8「ランダムスタート法」