本論文は、黄体期スタートと卵胞期スタートの妊娠成績と母児の健康状態は同じであることを示しています。
Hum Reprod 2020; 35: 2598(イタリア)doi: 10.1093/humrep/deaa203
要約:2015〜2019年に採卵し、3BB以上の正常胚を1個初回移植した389症例を対象に卵胞期スタート182例と黄体期スタート207例の妊娠成績と母児の健康状態を前方視的に検討しました。なお、卵巣刺激は全く同じプロトコールを用いました。結果は下記の通り、全ての項目で有意差はありませんでした。
卵胞期スタート 黄体期スタート P値
正常胚率 36% 32% NS
妊娠判定陽性率 57% 62% NS
化学流産率 10% 8% NS
流産率 15% 14% NS
出産率 44% 49% NS
妊娠合併症率 7.5% 10% NS
周産期合併症率 5% 0% NS
低出生体重児率 2.5% 5% NS
NS=有意差なし
解説:黄体期スタートと卵胞期スタートの培養成績が同等であることを示す論文は複数報告されていますが、妊娠成績や母児の健康状態に関する報告はほとんどありません。本論文は、黄体期スタートと卵胞期スタートの妊娠成績と母児の健康状態は同じであることを示しています。しかし、現在までのところ長期予後は不明ですので、今後の長期にわたる経過観察が必要です。本論文を含めランダムスタートを正当化する報告が多くなっています。
下記の記事を参照してください。
2020.9.23「☆早発P増加は正常胚率とは無関係」
2020.7.28「黄体フィードバック法での正常胚率は変わらない」
2019.10.5「黄体ホルモンによる排卵抑制は刺激途中からで良い」
2018.7.30「黄体ホルモン含有IUDの採卵への影響は」
2018.2.20「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その5」
2017.12.7「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その4」
2017.12.6「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その3」
2017.12.5「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その2」
2017.12.4「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その1」
2016.8.18「ランダムスタート法の有用性は?」
2014.12.4「刺激周期の開始時期による比較(day 2 vs. day 15)」
2014.3.8「ランダムスタート法」