Q 10年くらい前からブログで論文を紹介されている医師の最近のブログに「5個くらいの胚盤胞ができるくらいがちょうど良いと 」との記事がありましたが本当でしょうか、という質問がありました。
A 該当のブログでは、記事の根拠として、Fertil Steril 2019; 112: 866の論文を紹介しています。ここで注意が必要なのは、この論文は「新鮮胚移植の場合」の検討であることです。本来、妊娠成績を論じる場合に重要なのは、凍結胚移植を含めた累積妊娠率(出産率)です。同じ論文は、2019.11.27「新鮮胚盤胞移植の際の理想的な胚盤胞の数は?」の記事でご紹介していますので、こちらをご覧ください。
新鮮胚移植の時代と凍結胚移植の時代で考え方は180度変わっていますので、論文を読まれる際(記事を読まれる際)に注意が必要です。
下記の記事を参照してください。
2019.11.17「☆全胚凍結の場合の採卵数と赤ちゃんの状態との関係は?」14,170周期での検討
全胚凍結の場合には、採卵数による児の状態に有意な変化は認められない
2019.9.28「☆1回の採卵で最も累積出産率を高くできる採卵数は?」221,221周期での検討
凍結胚を含めた累積出産率は採卵数の増加に伴い増加し続ける
2019.1.10「☆☆一度に多くの卵子を採卵するメリット:その2」724周期での検討
正常胚数は、採卵数増加と有意な正の相関(+0.40)、年齢と有意な負の相関(-0.06)
2018.10.23「☆一度に多くの卵子を採卵するメリット」14,469名での検討
凍結胚を含めた累積出産率は、採卵数の増加に伴い増加(25個以上採卵で70%)
新鮮胚移植の場合には、採卵数7個まで増加し、7〜20個がプラトーで、20個以上では低下
2015.1.26「何個採卵したらよい?」7697名での検討
凍結胚を含めた累積妊娠率と累積出産率は、採卵数の増加に伴い増加(1個採卵で10.2%と9.2%、16個以上採卵で37.7%と31.3%)
2013.11.23「☆何個採卵したらよいか?」2455名での検討
新鮮胚移植の場合には、6~15個で出産率が最大(41.1%)
凍結融解胚移植を含めた累積生産率は、採卵数が多いほど高くなり、16個以上で最大(67.1%)
0~5個の時が最も出産率が低い
なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。