☆1回の採卵で最も累積出産率を高くできる採卵数は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、1回の採卵で最も累積出産率を高くできる採卵数を検討したものです。

 

Hum Reprod 2019; 34: 1778(オーストラリア)doi: 10.1093/humrep/dez100

要約:2009〜2015年にオーストリアとニュージーランドの体外受精のデータベースから、自己卵を用いた221,221周期の1回の採卵あたりの累積出産率を採卵数と年齢後方視的に検討しました。なお、生産率(出産率)は20週以上の生児の誕生とし、採卵数ゼロの場合は除外しました。中央値は採卵数7個、年齢36歳で、累積出産率32.2%でした。全体の成績は下記の通り、採卵数増加に伴い累積出産率は増加しました。

 

採卵数   累積出産率

1〜3     0.21

4〜9     0.56

10〜14    1.00

15〜19    1.38

20〜24    1.75

25〜     2.10

 

34歳以下では採卵数25個で累積出産率は頭打ちになり(72〜73%)、35〜44歳では採卵数増加に伴い累積出産率は増加し続けました(30個以上の採卵で最大40〜68%)。45歳以上では採卵数9個で頭打ちになりました(最大5%)。ただし、45歳以上のデータは少ないため確かなことは言えません。

 

解説:これまでにも「何個採卵するのが良いか」について同様な検討が報告されていますが、本論文が最多症例数での検討です。重要なポイントは、累積出産率は採卵数の増加に伴い増加し続けることです。この事実は「沢山採れると卵子の質が悪くなる」という考えを否定します。刺激しても卵子の質は低下しませんので、ご安心ください。刺激周期の正当性を明らかに示した重要な論文です。44歳以下の方では可能な限り刺激することをお勧めします。

 

下記の記事を参照してください。

2019.1.10「☆☆一度に多くの卵子を採卵するメリット:その2」724周期での検討

 正常胚数は、採卵数増加と有意な正の相関(+0.40)、年齢と有意な負の相関(-0.06)

2018.10.23「☆一度に多くの卵子を採卵するメリット」14,469名での検討

 凍結胚を含めた累積出産率は、採卵数の増加に伴い増加25個以上採卵で70%

 新鮮胚移植の場合には、採卵数7個まで増加し、7〜20個がプラトーで、20個以上では低下

2015.1.26「何個採卵したらよい?」7697名での検討

 凍結胚を含めた累積妊娠率と累積出産率は、採卵数の増加に伴い増加(1個採卵で10.2%と9.2%、16個以上採卵で37.7%と31.3%)

2013.11.23「☆何個採卵したらよいか?」2455名での検討

 新鮮胚移植の場合には、6~15個で出産率が最大(41.1%)

 凍結融解胚移植を含めた累積生産率は、採卵数が多いほど高くなり、16個以上で最大(67.1%)

 0~5個の時が最も出産率が低い