黄体ホルモンによる排卵抑制は刺激途中からで良い | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、黄体ホルモンによる排卵抑制(リプロでは黄体フィードバック法と呼んでいます)は刺激途中からで良いことを示しています。

 

Fertil Steril 2019; 112: 677(トルコ)doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.06.009

要約:2017〜2018年にドナー卵子採卵の87名(20〜35歳)を対象に、MPA法と通常のアンタゴニスト法で半年以内に2回採卵を行い、レシピエント191名新鮮胚移植を実施し、培養成績と妊娠成績を後方視的に検討しました。なお、MPA(10mg分2/日)とセトロタイド(0.25mg/日)の開始時期は、CD7あるいは最大卵胞径14mmのどちらか早い方としました。結果は下記の通り(有意差の見られた項目を赤字表示)。

 

         MPA   セトロタイド   P値

刺激日数     11日     11日     〜

総HMG投与量  2475IU    2400IU    〜 

採卵数      33個     26個     0.02

成熟卵数     24個     21個     <0.01

排卵済み      0       0      〜

臨床妊娠率    63.9%    62.9%     〜

妊娠継続率    50.0%    48.6%     〜

   

解説:黄体ホルモンによる排卵抑制法は最近行われ始めたものであり、薬剤選択や投与方法、投与開始時期について定まった方法は確立していません。本論文は、アンタゴニスト法と同様に黄体フィードバック法でも排卵抑制開始時期はCD7あるいは最大卵胞径14mmの早い方で良いことを示しています。しかし、本論文は後方視的検討ですので、結論づけるには前方視的検討が必要です。

 

下記の記事を参照してください。

2018.7.30「黄体ホルモン含有IUDの採卵への影響は

2017.12.4「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その1

2017.12.5「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その2

2017.12.6「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その3

2017.12.7「☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その4

2016.8.18「ランダムスタート法の有用性は?

2014.12.4「刺激周期の開始時期による比較(day 2 vs. day 15)

2014.3.8「ランダムスタート法