本論文は、葉酸サプリと胞状卵胞数(AFC)の関係について調査したEARTHスタディです。
Fertil Steril 2022; 116: 171(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.09.037
要約:2007~2019年に体外受精や人工授精を実施する552名(18〜46歳、中央値35.0歳)を対象に、葉酸摂取(食事+サプリ)と胞状卵胞数(AFC)の関係について前方視的に調査しました(EARTHスタディー)。なお、葉酸摂取は食事調査(FFQ)で、AFCは日常臨床の中で計測しました。食事+サプリ合計の葉酸摂取量が1200μg/日まで、サプリの葉酸摂取量が800μg/日まで、AFCは用量依存性に増加しましたが、それ以上の摂取量では逆にAFCが低下しました。しかし、実際のAFC増加量はわずかであり、サプリの葉酸摂取量が400μg/日と800μg/日のAFCの差はわずか卵胞1.5個でした。なお、AFC増加は食事よりもサプリでより顕著でした。
解説:葉酸摂取による赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスク低下がよく知られており、妊活中や妊娠中の葉酸サプリ摂取が推奨されています。一方、葉酸摂取による妊活に関するその他の効能を示す論文も最近増えており、無排卵率低下、排卵改善、卵巣機能改善、妊娠率増加、妊娠までの期間(TPP)短縮などが報告されています。その作用機序として、葉酸摂取量低下による細胞分割抑制、メチル化異常、炎症性サイトカイン増加、活性酸素産生増加、アポトーシス増加などが報告されており、葉酸摂取量低下より閉鎖卵胞増加や卵巣予備能低下が起こり得ると推察されます。このため、妊娠治療中の方の葉酸摂取量による胞状卵胞数(AFC)の変化が推測されますが、これまでにそのような研究はありませんでした。本論文は、葉酸サプリとAFCの関係に関する初めての前方視的検討であり、食事+サプリ合計の葉酸摂取量が1200μg/日まで、サプリの葉酸摂取量が800μg/日まで、AFCは用量依存性に増加することを示しています。また、それ以上の摂取量では逆にAFCが低下することも明らかにしました。しかし、実際のAFC増加量はわずか1〜2個であり、この程度の増加が実際の臨床で役立つのかどうかは不明だとしています。
EARTHスタディからは、多くの新しいエビデンスが誕生しています。これからも注目していきたいと思います。
葉酸については、下記の記事を参照してください。
2020.7.25「MTHFR遺伝子変異とビタミンD、ホモシステイン、NK活性の関係」
2020.7.22「☆葉酸を含んだサプリ使用法」
2019.6.5「☆葉酸は過剰も不足も良くない!?」
2018.2.19「☆☆葉酸とメトホルミン」
2018.2.18「☆葉酸と妊娠成績」
2018.2.17「☆葉酸 vs. 葉酸塩」
2015.11.18「Q&A909 ☆葉酸塩と葉酸の違い」
2015.10.27「☆葉酸摂取と喘息の関係」
2015.3.21「Q&A638 ☆葉酸サプリメントの選び方」
2013.2.27「☆葉酸の効能」
EARTHスタディについては、下記の記事を参照してください。
2020.12.30「Chavarro先生と対談」
2020.12.13「磁場と妊娠の関係」
2020.10.19「食生活と卵巣予備能の関連は?」
2019.10.21「☆EARTHスタディーのまとめ」
2019.6.12「☆ビタミン摂取と体外受精の成績は?」
2018.12.13「有機リン酸エステルと流産」
2018.2.18「☆葉酸と妊娠成績」
2018.1.23「☆オメガ3脂肪酸摂取で妊娠成績向上」
2017.9.5「アルコールとカフェイン摂取について」
2016.12.29「フタル酸が胚発生に与える影響」
2016.6.26「全粒粉摂取と子宮内膜厚、妊娠率の関係」
2016.3.27「食生活は体外受精の成績に影響を及ぼすか?」
2016.1.19「フタル酸による卵巣予備能低下」
2015.6.11「☆野菜や果物の農薬量と男性不妊の関係」