本論文は、妊娠を目指している方のアルコールとカフェイン摂取についてのEARTHスタディーからの報告です。
Hum Reprod 2017; 32: 1846(米国)doi: 10.1093/humrep/dex237
要約:2006~2016年に300名の女性で493周期の体外受精を行い、アルコールおよびカフェイン摂取と妊娠成績の関係を前方視的に検討しました(EARTHスタディー)。アルコールおよびカフェイン摂取の中央値は1日5.6gと124.9mgでした。アルコールおよびカフェイン摂取量別に、最大E2値、子宮内膜厚、卵成熟率、受精率、臨床妊娠率、出産率を検討したところ、全ての項目で有意差を認めませんでした。有意差はありませんが、一例として出産率を示します。
1日アルコール摂取量 補正出産率
0 34%
0.1~6.0g 46%
6.1~12.0g 41%
12.1~24.0g 42%
24.1~85.8g 41%
1日カフェイン摂取量 補正出産率
0.3〜50mg 46%
50.1~100mg 44%
100.1~200mg 42%
200.1~300mg 40%
300.1~642mg 40%
解説:妊娠を目指している方のアルコールとカフェイン摂取には制限を設けるべきであると、米国生殖医学会(ASRM)では以下の指針を提示しています。
1 妊娠前のアルコール摂取1日1単位(20g)まで、妊娠中のアルコールはゼロ
2 妊娠前も妊娠中も中等量のカフェイン摂取1日100~200mgまで
本論文は、妊娠前のアルコールとカフェイン摂取は問題ないことを示しています。これまでの常識とは逆になりますが、本論文の著者は、少なくとも1日12gまでのアルコールと1日200mgまでのカフェインは問題ないとし、それ以上の摂取量については今後の検討が必要としています(対象患者数が少ないため)。
下記の記事を参照してください。
2013.2.25「☆妊娠を目指している方のアルコールは?」
2013.3.2「☆妊娠を目指している方のカフェインは?」
また、EARTH(Environment and Reproductive Health)スタディーは、生活環境と生殖を前方視的に検討するスタディーです。これまでに下記の論文を紹介してきました。
2016.12.29「フタル酸が胚発生に与える影響」
2016.6.26「全粒粉摂取と子宮内膜厚、妊娠率の関係」
2016.3.27「食生活は体外受精の成績に影響を及ぼすか?」
2016.1.19「フタル酸による卵巣予備能低下」
2015.6.11「☆野菜や果物の農薬量と男性不妊の関係」