☆妊娠を目指している方のアルコールは? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

「アルコール飲んでもいいですか?」外来でよく訊かれます。アメリカ生殖医学会(ASRM)は学会の見解として次のコメントを発表しています。2013.1.27「トラピストビール」のコメントに少し記載したのですが、外来や説明会ではかなりの頻度で質問がありますので、改めて記載することにしました。

Fertil Steril 2008; 90: S1
要約:7393名のストックホルムの女性のアルコール消費量と不妊について前方視的に調査したところ、1日2杯(単位)以上飲むと、1日1杯以下の方と比べ妊娠率は0.64倍になりました。一方、29844名のデンマークの妊娠女性の妊娠までの期間(TTP)は、(赤)ワインを飲む方の方がアルコールを全く飲まない方より短くなっていました。1769名のイタリアの女性では、アルコール消費の有無で妊娠率に違いはありませんでした。これらの結果を踏まえて、ASRMでは1日2杯(単位)以上のアルコールは避けた方がよいとしています。妊娠中のアルコールはもちろん一切禁止です。胎児の発生に安全というアルコールレベルはありません(ゼロにするしかありません)。

解説:不妊治療中のアルコールについては、2012.11.14「ライフスタイルと妊娠」に、妊娠中のアルコールについては、2012.12.11「妊娠中のアルコール」にも記載しています。
アルコールの摂取量が多くなるほど妊娠率が低下します。アルコールの目安は、少量が週に50g未満多量が週に140g以上。また、1日のアルコールの摂取の適量は20gで、週に2日は休肝日をといわれていますので、1週間では20g x (7ー2) = 100gとなります。アルコール20gを1単位と考えています。

アルコール量(g)=アルコール度数 x 飲酒量(mL)x 0.8ですので、1単位の目安は、、、
アルコール度数5%のビール  500mL(1缶)
アルコール度数5%の缶酎ハイ 500mL(1缶)
アルコール度数12%のワイン 208mL(1/4本)
アルコール度数14%の日本酒  178mL(1合)
アルコール度数20%の焼酎  125mL
アルコール度数40%のウイスキー 62.5mL(ダブル1杯)
となります。

赤ワインはポリフェノール(レスベラトロール)の関係でお勧めリストに入っていますが、フレンチパラドックス(ワイン好きのフランス人は健康で長生き)のひとつの現れ方だと思います。