☆第1子体外受精出産後の自然妊娠の確率は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

1人目を体外受精で妊娠したのですが、次もやはり体外受精が必要でしょうか?」よく訊かれる質問です。その答えは、今回ご紹介する複数の論文から、約20%となります。ただし、若い女性で、精液所見が悪くない場合に限ります

Fertil Steril 1999, 71; 35(日本
要約:1988年~1994年に体外受精で妊娠出産した142名の女性(出産時年齢、平均32歳)を5年後に電話調査しました。25名(17.6%)が自然妊娠され、その多くは第1子出産時の年齢が34歳未満で、第1子出産後2年以内に妊娠していました。なお、運動精子数100万/mL未満の高度男性不妊の方は除外しています。

Fertil STeril 2000; 73: 774(アイルランド
要約:1990年~1998年に体外受精で妊娠出産した469名の女性(採卵時年齢、平均34歳)を2年後に質問票調査しました。104名(22.2%)が自然妊娠され、女性の年齢が若いほど妊娠率がよく34歳以下で24.8%でした。なお、第1子出産後に体外受精をされている方は除外しています。

Hum Reprod 2012; 27: 2380(イスラエル
要約:2001年~2002年に体外受精で妊娠出産した102名の女性(採卵時年齢35歳未満)を2008年に電話調査しました。22名(21.6%)が自然妊娠され、不妊原因(男性因子、排卵因子、子宮内膜症、原因不明)による差は認めませんでしたが、自然妊娠群では精液所見が有意によい結果でした。なお、第1子出産後に体外受精をされている方、顕微授精が必要な高度男性不妊の方は除外しています。

解説:第1子体外受精出産後の自然妊娠の確率は、意外に高いことがわかります。しかし、34歳未満の若い女性に限ったものであり、35歳以上の方は、いたずらに時を重ねることは得策ではありません。自然妊娠の起こるメカニズムは明らかではありませんが、一度妊娠出産を経験することにより妊娠しやすい身体になるからとか、精神的にストレスから解放されるからとか、最初の体外受精が必要なかったかもしれないとか、いろいろなことが言われています。しかし、これを証明することはできません。どこにも通院していない方の検査や調査ができないからです。ですから、電話調査やアンケート調査などで後から調べることになり、事後の結果しかわかりません。もちろん、卵管が両側閉塞している場合と無精子症の場合には自然妊娠は望めません