EARTH(Environment and Reproductive Health)スタディーは、環境、栄養、生活習慣と妊娠成績との関連を前方視的に検討するスタディーです。本論文は、これまでに発表したEARTHスタディーをまとめたものです。
Hum Reprod Open 2018; 2: hoy001(米国)doi: 10.1093/hropen/hoy001
要約:2004~2017年に登録した女性799名(18〜45歳)、男性487名(18〜55歳)を対象に、環境、栄養、生活習慣と妊娠成績との関連を前方視的に検討しました(EARTHスタディー)。これまでに発表したEARTHスタディーを全てご紹介します。
内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)
女性のDHEP(フタル酸)は、体外受精の採卵数、臨床妊娠率、出産率を有意に低下させる。
女性のDHEP(フタル酸)は、流産率を有意に増加させる(体外受精もそうでない場合も)。
男性のDOP、DiNP(フタル酸)は、体外受精の着床率、出産率を有意に低下させる。
女性のBPA(ビスフェノールA)は、体外受精の着床率、臨床妊娠率、出産率を有意に低下させる(大豆摂取なし)。
女性のBPA(ビスフェノールA)は、体外受精の着床率、臨床妊娠率、出産率を有意に低下させる(葉酸摂取なし)。
女性のDHEP(フタル酸)は、CD3の胞状卵胞数を有意に低下させる。
女性のBPA(ビスフェノールA)は、CD3の胞状卵胞数を有意に低下させる。
女性のBPA(ビスフェノールA)は、血糖値を有意に増加させる。
男性のDBP(フタル酸)は、精子数を有意に低下させる。
栄養
女性の葉酸摂取は、体外受精の出産率を有意に増加させる。
女性のビタミンB12摂取は、体外受精の出産率を有意に増加させる。
女性の全粒粉摂取は、体外受精の出産率を有意に増加させる。
女性のビタミンD摂取は、体外受精の出産率を有意に増加させる。
女性の大豆製品摂取は、体外受精の出産率を有意に増加させる。
男性のカフェイン摂取は、体外受精の出産率を有意に低下させる。
男性の大豆摂取は、精子数を有意に低下させる。
男性の飽和脂肪酸摂取は、精子数を有意に低下させる。
男性のトランス脂肪酸摂取は、精子数を有意に低下させる。
男性のオメガ脂肪酸摂取(魚)は、正常形態精子を有意に増加させる。
男性の加工肉摂取は、正常形態精子を有意に低下させる。
男性の残留農薬のあるフルーツ・野菜の摂取は、精子数、正常形態精子を有意に低下させる。
生活習慣
正常BMI女性の適度な運動は、体外受精の出産率を有意に増加させる。
女性が仕事で重いものを持つことは、体外受精の採卵数、成熟卵数、CD3の胞状卵胞数を有意に低下させる。
男性の運動は、精子数を有意に増加させる。
男性のBMI>35は、精子数を有意に低下させる。
解説:EARTHスタディーは、これまで漠然としていた環境、栄養、生活習慣と妊娠成績との関連について、前方視的にかつ長期的に検討する研究であり、これまでに数多くの新しい知見を提供しています。しかし、本当のエビデンスを構築するためには、EARTHスタディーと同じような他国での研究も必要だと思います。医学の進歩と共に、過去の常識が非常識になり、過去の非常識が常識になる分野です。エビデンスは常に更新されるものですので、最新情報に目を光らせる必要があります。
下記の記事を参照してください。
2019.6.12「☆ビタミン摂取と体外受精の成績は?」
2018.12.13「有機リン酸エステルと流産」
2018.2.18「☆葉酸と妊娠成績」
2018.1.23「☆オメガ3脂肪酸摂取で妊娠成績向上」
2017.9.5「アルコールとカフェイン摂取について」
2016.12.29「フタル酸が胚発生に与える影響」
2016.6.26「全粒粉摂取と子宮内膜厚、妊娠率の関係」
2016.3.27「食生活は体外受精の成績に影響を及ぼすか?」
2016.1.19「フタル酸による卵巣予備能低下」
2015.6.11「☆野菜や果物の農薬量と男性不妊の関係」