☆ビタミン摂取と体外受精の成績は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、ビタミン摂取と体外受精の成績についてのEARTHスタディーをご紹介します。

 

Epidemiology 2019; 30: 427(米国)doi: 10.1097/EDE.0000000000000976

要約:2004~2015年に実施した349(平均年齢35.1歳、平均BMI 24.1)、588周期の体外受精を対象に、治療前からの食生活を食事摂取頻度調査票(FFQ)により調査し、体外受精の成績について前方視的に検討しました(EARTHスタディー)。ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE総摂取量と出産率との関連は認められませんでした。βカロテン摂取量上位1/4の方(50%)は下位1/4の方(22%)と比べ、出産率が有意に低下していました。同様に、ルテイン、ゼアキサンチン摂取量上位1/4の方(44%)は下位1/4の方(28%)と比べ、出産率が有意に低下していました。しかし、βカロテンサプリメント、レチノール、その他のカロテノイド摂取量と出産率との関連は認められませんでした。

 

解説:これまでに報告されたランダム化試験では、妊娠治療における抗酸化サプリの有用性は証明されていません。しかし、抗酸化サプリを個別に検討したものはありませんでした。本論文は、このような背景の元に行われた前方視的検討であり、食事によるビタミンA、ビタミンC、ビタミンE摂取と出産率との関連は認められませんでしたが、意外にも食事によるβカロテン、ルテイン、ゼアキサンチン摂取が多いと出産率が有意に低下することが示されています。

 

βカロテンはビタミンAの前駆物質で、緑黄野菜に多く含まれるカロテノイドです。ルテインは、強い抗酸化作用をもつカロテノイドの一つで、緑黄野菜、卵黄、動物脂肪に多く含まれます。ヒト生体内では、眼、乳房、子宮頚部に多く存在し、特に眼の水晶体と黄斑部ではルテインとゼアキサンチンが重要な働きをしています。

 

抗酸化剤については、下記の記事を参照してください。

2014.5.5「妊娠を目指す女性のための抗酸化剤

2014.2.26「☆精子にはやはり抗酸化剤が有効:これまでのまとめ

2012.11.26「男性はトマト、女性はニンジンとカボチャ?

 

EARTH(Environment and Reproductive Health)スタディーは、生活環境と妊娠を前方視的に検討するスタディーです。これまでに下記の論文を紹介してきましたが、どれもこれまでになかった貴重な知見を提供してくれています。これからもEARTHスタディーから目が離せません。

2018.12.13「有機リン酸エステルと流産

2018.2.18「☆葉酸と妊娠成績

2018.1.23「☆オメガ3脂肪酸摂取で妊娠成績向上

2017.9.5「アルコールとカフェイン摂取について

2016.12.29「フタル酸が胚発生に与える影響

2016.6.26「全粒粉摂取と子宮内膜厚、妊娠率の関係
2016.3.27「食生活は体外受精の成績に影響を及ぼすか?」
2016.1.19「フタル酸による卵巣予備能低下」
2015.6.11「☆野菜や果物の農薬量と男性不妊の関係」