後見制度支援信託って実際のところどうなんだろう① | 成年後見日記

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「後見制度支援信託」って実際のところどうなんでしょう?

 

「後見制度支援信託」とは、被後見人本人の財産のうち、日常的な支払をするのに必要な金銭を預貯金等として親族後見人が管理し、通常使用しない金銭を信託銀行等に信託する仕組みのことです。

 

イメージとしては、親族後見人の手元に100万円~500万円程度を残して、その他の預貯金等を信託銀行にぽんっと移して鍵をかけてしまうという感じでしょうか。

鍵は裁判所が持っているので、親族後見人はお金を勝手に引き出すことができません。

引き出したいときは、鍵を裁判所に貸してもらって(指示書をもらって)、引き出すことになります。

 

「後見制度支援信託」は、親族後見人の横領を防止するために、平成24年2月から運用が開始されました。今では親族後見人だけでなく、専門職後見人の横領防止のためにも利用されています。

 

東京家庭裁判所後見センターにおける後見制度支援信託の利用件数(信託契約締結件数)は、平成28年12月末時点で約2500件に及んでいるそうです。

 

私もすでに20件以上後見制度支援信託の契約を締結した経験があります。

 

この経験に基づいて、もしあなたが親族の後見人になって、後見制度支援信託の利用を検討することになった場合、どういった点に注意すべきかについて、何回かに分けて書きたいと思います。

 

①信託がいいの?それとも後見監督人がいいの?

 

まず、今日のテーマは、信託と後見監督人のそれぞれのメリット・デメリットです。

 

本人の財産(流動資産)が一定額以上の場合(東京家庭裁判所では500万円~1000万以上)、親族後見人は家庭裁判所から「後見制度支援信託を利用しますか?利用しない場合は後見監督人が付きます。」と言われます。

 

つまり、あなたは、信託か監督人かを選ばなければならないのです。

 

なんだかよくわからないけど、後見監督人が付いたら、年に何回か報告を監督人にしなければならなくて面倒だし、監督人に報酬も支払わなければならないし…

信託にした方が安くすみそう…

 

そう考えて信託を利用する人がほとんどなのではないでしょうか。

 

信託と監督人にはそれぞれメリット・デメリットがあります。

それをしっかり理解したうえでどちらにするか検討した方がいいと思います。

 

以下、それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。

 

【信託のメリット】

・専門職に報酬を支払うのは通常は1回だけで済む。

 東京では、継続案件の場合は約13万円、新規案件の場合は約 18万~20万円。(※かかった期間や行った業務の内容によって金額は変わってきます。)

・信託後は手元の100万円~500万円程の預貯金等を管理していけばいいので管理が楽である。

 

【信託のデメリット】

・本人の財産の管理方法を変えてしまい、本人の意思に反するおそれがある。信託した後に遺言書が見つかって遺言書の内容に抵触する可能性もある。

・現在は信託の予定配当率が低く、金利の高い定期預金等を解約して信託にすると本人にとって不利益である。

・信託銀行等が破綻して元本を補填できない場合、預金保険制度により元本1000万円と破綻日までの分配金は保護されるが、後見制度支援信託を扱っている信託銀行等が少ないため、ペイオフ対策で分散させて信託するのに限界がある。

・本人のために急にお金が必要になった場合、いちいち裁判所に報告のうえ指示書をもらってその指示書を信託銀行に提出する必要があり、迅速性・柔軟性に欠ける。

・信託銀行は支店等の数が少ないため、親族後見人の地元にない場合に、遠くの支店等へ行ったり、郵送で手続をしたりする必要があり不便である(そもそも三菱UFJ信託銀行のように本店営業部で郵送手続しか対応しない銀行もある。)

 

以上が後見制度支援信託のメリット・デメリットです。

長くなってしまったので後見監督人を付ける場合のメリット・デメリットはまた後日。

 

(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)

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